第74話
便利な奴には弱体化補正。それが映画クオリティー!
第74話 え!?うっそだろおいぃぃーーー!?!?
外では黒ゴキの塔で人質になっていた者達が、ケアリゴキブリ達に護衛されながら都市を目指して歩いている。
子供「もう、疲れたよぉ……」
ケアリゴキブリ「しゃあねぇな、おぶってやるよ」
子供「お兄ちゃんありがとう!」
ケアリゴキブリ「へへ……ん? ありゃあ……黒ゴキ!」
普段都市や町に人々をさらいに来る黒ゴキだ。全員に動揺が走る!
ケアリゴキブリ達「お前ら落ち着け!ケアリ隊は戦闘準備……え!?」
急に黒ゴキ達が倒れていく様子に、ケアリゴキブリ達は驚いてる。
スナイプ「ハイドロスナイプ。ただの黒ゴキ程度なら水さえあれば十分だ。お前たちは伏兵の接近にだけ気を付けていればいい」
ケアリゴキブリ「心強いぜ、スパイさんよ」
スナイプ「さて……刻蝋値、そっちは頼んだぞ」
~黒ゴキアジト・最下層~
クロム「行け! 俺の作品たち!!」
約100体の黒ゴキが壁や天井、床から現れた。
クロム「パラポネラとアシダカグモ、サバクトビバッタにシオヤアブ……そしてムカデを組み込んだ、完成されし身体能力の暴力を味わうがいい!!」
刻蝋値「へへ、筋トレと修練を重ねた、ただのゴキブリの前には無力だって教えてやらねぇとなぁ」
俺はそう言って、黒ゴキの群れに突っ込んだ。
黒ゴキ「ギイッ!!」
マッハ30の拳!
刻蝋値「キネテイック・カウンター!」
俺は顔を少し横にそらして避けつつ、正真正銘全速力、マッハ35の右ストレートを放ち、黒ゴキの頭を吹き飛ばした。この頭は他2体の頭にぶつかり、そいつらの頭蓋も粉砕した。
黒ゴキ達「ギイイイ!!」
刻蝋値「キネテイック・スピンキック!!」
周囲を囲むように襲ってきたので、これもマッハ35の回し蹴りで頭蓋を粉砕して対応。
刻蝋値「おおおおっ!キネテイック・ラッシュ!!」
そして更にラッシュで20体程倒した。
刻蝋値「どうよ!」
クロム「ふ、ふん!25、6体相手に余裕だからって、残りの75体に勝てると思うなぁ!!」
刻蝋値「あっそ、これくらい一気に終わらせてやるよ。メタモルフォーゼ・ケンタウロス!」
黒ゴキ「ギイッ!!」
背後から襲ってくるやつには……
刻蝋値「キネテイック・バックキック!」
後ろ蹴り!
黒ゴキ「ギイィ!!」
空中から襲ってくる奴には……
刻蝋値「キネテイック・ナックル!」
アッパーカット!
黒ゴキ「ギイィェ!!」
虚をついて地中から襲ってくる奴は……
刻蝋値「キネテイック・スタンプ!」
踏み潰すまでだぁ!!
黒ゴキ達「ギイイイイイイ!!!」
刻蝋値「纏めて倒してやる。キネテイック・ストライク!」
人馬形態最高速度のマッハ36で70体を文字通り一掃した。宇宙まで飛んでいかないように、最後の奴に衝突した瞬間に、地面を思いきり踏み抜いたら、止まれたのだが地面が溶けるどころか1部気化してしまった。
刻蝋値「あー……お前ら無事か?」
反作用で衝撃波が飛んだ、後ろの表部隊の連中の生存確認をする。
ソイル「な、なんとか……無事です」
ゴールド「しかし生きた心地がしなかった……」
ウォータ「本気出すなら一言お願いしますぜ……」
ウッド「でも正直助かったでやんす」
フレイ「あいつら相手に無双するなんて流石ですね!」
刻蝋値「はっはっは! ざっとこんなもんよ。……(あれ、何か嫌な予感がするぞ?)」
一段落ついたので、亜人形態に戻りながら、さっきから感じる胸騒ぎに注意を払うことにした。
ソイル「どうしました?」
刻蝋値「……いや、なんでも……無くねぇ! お前らそこ開けろ!!」
陰陽五行達「ええ……」
よくわからんがヤバイ! あいつらが道を開けた次の瞬間、俺はヤバイ気配を放っているソレに向き直った。
主犯の男「我が娘エマに命ずる。お前の卵銷を1つ使い、奴をこの星から弾き飛ばせ」
奴の命令が終わったのと同時に、ソレからマッハ38で卵銷が飛ばされた。そして更に……
た……す…………
刻蝋値(まただ……この声って……あ! 出遅れた!……腹筋固めるしかねぇな、これ)
神経が極限まで興奮し、何もかもスローで見える世界に入っても、卵銷は凄まじい速度で飛んでおり、異質さが際立っていた。
刻蝋値「ゴパッ!!(……うっそだろおい)」
さしもの俺も、この一撃には大きく吐血をしてしまい、そのまま壁……地中を溶かして掘り進めながら、水中、空中と飛ばされ、体が動くようになった1秒後には既に空気が殆んど無く、空中を蹴って減速することが出来なくなってしまった。
刻蝋値(…………俺は劇場番でポンコツになる青狸かよ!? 畜生! 隕石でも小惑星でも届け! 蹴ってフレイムスターに戻らねぇと!!……一か八か)
フレイムスターを周回する人工衛星と化した俺は、とある端末を取りだし、応援要請をしてみることにした。
~黒ゴキアジト最新部~
クロム「た、助かったぞ……ユニバース」
クロムは自身の渾身の作品を軽々と仕留めた刻蝋値を追い出したことに、安堵した。
ユニバース「奴の発言はハッタリでは無かった。逆に今の一撃で追い出せたことは、我々にとって大きな利だ。エマも殆どの活動エネルギーを使ってしまったよ。まぁしかしクロム、君には少々がっかりだな」
心底蔑んだ目で、両膝をついているクロムを見下ろす。
クロム「なっ!?」
当のクロムは心底驚いているらしい。
ユニバース「当たり前だろう? 筋肉だるまの数の暴力が最強だとか言っていたのに、転生しただけのただのゴキブリに壊滅されたんだ。がっかりしない方がおかしいよ」
クロム「ぐぬぬ……まだ……まだあるんだ!」
反論はできず、次の手を提案するしか無かった。
ユニバース「私に施した手術とやらも信頼できん。どれ、この弱者たちで試してみるか」
ソイル「……プフッ」
ユニバース「おや?何かおかしいことでも言ったかな?」
ソイル「いいえ、刻蝋値さん以外をおまけだと侮っている、あなたの軽薄さがあまりに滑稽でしてね……」
ゴールド「我らは刻蝋値殿に鍛えられたのだぞ。並の黒ゴキ程度はとるに足らない位の強さはある」
ウォータ「加えて、俺らは裏部隊の方々よりも連携に優れてるんだぜ?」
ユニバース「烏合の衆であろう?」
ウッド「チッチッチ、連携を取れる鳥は、2匹が4匹に、3匹が9匹に……数の分だけ掛け算式に強くなるでヤンス!」
フレイ「俺たちは、25人力だ!!」
ユニバース「笑止、纏めて娘の餌にしてやる」
ウォータ「先手必勝!!アバンガルド・ストライク!」
ユニバース「ぬぅあ!」
ウォータの突進とユニバースの蹴りがぶつかり、互いに威力が相殺される。
ゴールド「魔神斬り!!」
ユニバース「ぐおお!? ッブァ!!」
死角からマッハ21に加速された両手斧をもろに食らってしまったが、毒霧を放った。
ウッド「イオニウム・グレネード!!」
ユニバース「小癪な!」
自身の回転により、プラズマが巻き起こるほどの暴風を起こすことで、空気を利用した毒攻撃等を強引に封印した。
ユニバース「貴様は隙だらけだな!」
いきり立ったユニバースは、ウッドを投げ終えて隙を見せてるソイルに標的を定め、パラポネラの毒針を出した拳を奮う。
フレイ「ハイパーフィジクスバースト!」
ユニバース「ぬおお!?」
間一髪フレイが間に入り、攻撃を防いだ。腕を破壊することは叶わなかったが、複雑骨折させることには成功した。
ソイル「隙だらけなのは……貴方だ! 剣の舞い!」
ユニバース「グオオオオオ!!!」
日本刀の4刀流で、ユニバースを滅多斬りにする。
ユニバース「ここで負けるわけにはいかない! クロム! あの計画を発動させるぞ!!」
ソイルを振りきり、クロムに指示を出した。
クロム「やはり俺の科学力は世界一だあぁ!!」
そう言って、ユニバースがエマと呼んでいた塊に、注射を打った。
ユニバース「おおお! 素晴らしい! これぞ数の暴力!」
なんと、塊から黒ゴキがどんどん産まれ、瞬時に成体まで大きくなった。
ウォータ「普通の黒ゴキなら倒せる!」
ゴールド「数を減らしながら奴等を討ち……」
ソイル「あの塊も破壊する!」
フレイ「俺も攻めに回るぜ!」
ウッド「刻蝋値さんにオイラたちの勇姿を見せるでヤンス!」
数で負けれど、決して戦況は悪くなかった。
クロム「ここにこんなものを入れたらどうかな?」
クロムはシオヤアブ・オオスズメバチ・ミイデラゴミムシ複合黒ゴキと、ネズミ・ムカデ・アギトグンタイアリ複合黒ゴキ、カマキリ・テッポウウオ・アシダカグモ複合黒ゴキを投入した。
ソイル「しまった、突破される!!」
空や地中、更には地上からも突破され始めた。
クロム「はーーっはっはっはーーー!! この絶望の味はどうだぁ!! あえてしばらく生かし、地獄の苦しみを味会わせてやる!!」
ゴールド「このままでは……負けてしまう!」
ウォータ「くっそぉ!!」
ウッド「もっと! もっとオイラに力があれば!!」
フレイ「クッソォオオ!!」
ポイズン「やれやれ、敵を倒すのにカッコいい必殺技は要らないと言っただろう?」
ソイル「え?」
あれだけ埋め尽くしていた黒ゴキ達が、ほぼ一瞬で倒れていく様子にソイルは驚く。
ゴールド「毒か」
ポイズン「ああ、大切なのは効率性。上に行ったやつらもシックルが斬り伏せ終えた頃だろう」
シックル「おうよ! 加勢にきたぜ!」
クロム「バカなぁ!……だが、お前たちだけならすぐに殺…」
ポイズン「俺たちだけな訳無いだろ?」
~地下2階~
ホッパー「……おう、アリアドネか」
地上のアリアドネに連絡を入れている
~地上~
アリアドネ「ちょっと、ホッパー! 人質の救出が最優先とはいえ……私が加勢に行けないじゃない!」
ホッパー『はは、悪いがお前は人質の迅速な救助を頼むぜ』
アリアドネ「まぁ、さっさと皆助けて、私も加勢するわ。コクローチが何処かに飛んでいった姿を見たもの、気が気じゃ無いわ」
ホッパー『だから俺達は早速親玉を倒しにいくぜ。じゃあな』
アリアドネ「あ、ちょっ……!」
通信が切れてしまった。
ホネット「良いのですか?」
ホッパー「アイツはスタミナに難があるからな。長期戦に誘うわけにはいかない」
ソルトイル「それに……今の刻蝋値に最も必要な存在……」
ブラット「彼女、気づいていないけど、刻蝋値さんに惚れてますもんね」
バレット「刻蝋値は宇宙に出ても死ぬわけねぇだろうが……」
ファング「俺達は本当の無茶を出来ない。ならば選択肢は1つ、効率良く動く事だ」
ホッパー「行くぞ!」
~大気圏外~
刻蝋値(くっそー、離れていく一方だぜ……お?あれは!!)
俺は一筋の希望、宇宙船を見つけた。
~宇宙船内~
レフト「ライト! 船にすげぇスピードで何かぶつかりそうだ!」
ライト「全員衝撃に備え……え? 何もない……」
レフト「いや……ありありたぜ」
ライト「ん?」
ライトは船外を見てみた。
刻蝋値 (よう!)
ライト「刻蝋値さん!?!?」
第75話 屈しない奴等はカッコいいぜ!に続く。




