第6話
注釈・主人公は、あくまでゴキブリです。人間っぽい形態に変身していますが、あくまで変身です。……つまり何が言いたいのかと言うと、物語をみればわかるよ
第6話 ゴキブリはやっぱり強い!転職する必要は欠片もねぇよ!
刻蝋値「ふぁ……朝か」
マリン「あら、おはようございます」
刻蝋値「おう、おはよう。2人は?」
よく見ると整った顔をしてるんだなぁ。
マリン「刻様の腕にしがみついて寝ていますわ」
腕……本当だ。今の今まで感覚がなかった。ゴキブリみたいな虫には痛覚が無いって聴くけど、それが関係してるのかな?
アメジスト「スー、スー」
かわいい寝顔だ。やはり2人を引き入れてよかった。
ガーネット「んぐぐ……ギリギリ……ガジガジ…………」
……寝ながら俺の腕に噛みつくなよ。どんな夢を見てるんだ?何にせよ……
刻蝋値「2人とも朝だ。さっさと起きろ~!」
アメジスト「久しぶりにグッスリ寝れましたわ…………これも蝋値様のおかげ…………どうかもう少しこのままで……」
やべぇ…………やられそうだ………………逆洗脳しようとしていてもおかしくねーぞこれ。
ガーネット「あ、ごめん。あんたの腕食おうとしてたっぽいわ。あはは……」
刻蝋値「やれやれ、前の仲間よく食われなかったな…………」
本日最初のバトルは、女性陣の希望もあり、彼女らに任せることになった。何だかんだ連携もとれており、心配は無さそうだ。
その間、俺は人間時代にはなかった腕の鍛え方を考えていたぜ。
刻蝋値「よし、あっちの断崖絶壁を登ろうぜ。3人とも、背中か脚にしがみついてくれ」
ガーネット「しがみついたけど……まさか抱きついて欲しかっただけなんじゃないだろうな?」
刻蝋値「こうするんだよ!」
俺は4本の腕を巧みに使い、瞬く間に絶壁を登りきってしまった。この姿は人間の動き方にも、ゴキブリの動き方にも適しまくりだぜっ!
後衛2人「うっ!!うええぇ……」
かなり加速度がかかったからか、後衛二人は崖下にぶちまけてしまった。シンクロリバー・ペアリングだな。
ガーネット「……もうちょっと優しくしてほしいかなぁ?それに、ここってまさか!」
刻蝋値「メタルゴブリンが住むと言われる秘境だ。ここは俺が戦うぜ!」
昨晩、寝る前にこの辺の地形を軽く聞いていた。この秘境には超絶経験値を保持する"メタル系"が多いとのことだ。昔やってた幾つかのゲームとまんま一緒なので、金のゴールド、銀の経験値と覚えたら良いかもな。
マリン「とても私たちの力では太刀打ちできないモンスターばかり……」
アメジスト「だけど蝋値様なら大丈夫。頑張って……!」
その時、大量にモンスター達が出現した!俺の尾葉センサーはいち早くそいつらの動きを読み取り、俺の拳はいち早く奴等を打ち砕く。人の3倍ほどの巨躯を持つサイクロプスも、ローキックでバターのように引き裂いてしまった。
ガーネット「うおお!さっきの倍近く強くなったぞ!?」
マリン「大量の経験値が入ったからですわ」
アメジスト「蝋値様……強い」ポッ
そして、クズ勇者が狙っていたように、自身が倒したモンスターの経験値の一部は、仲間認定している奴等にも分配されるのだ。
刻蝋値「俺も更に強く速くなっちまったな。新しいメタモルフォーゼでも習得しようかな?」
そんなこんなで、反日レベルアップした後、新しいメタモルフォーゼを試してみた。
刻蝋値「メタモルフォーゼ・ケンタウロス!!」
馬の下半身に、人の上半身がついているアレになったのだ。
刻蝋値「どうだ!馬の下半身は!この形態は移動スピードを獲得しつつ、攻撃力、単発の攻撃速度をあわせ持つぜ!更に羽を羽ばたかせれば」
ブーンと音を立てて、少しだけ浮いた。
刻蝋値「まるでペガサスにでもなった気分だ!」
マリン「え、ええ……逞しいですわね…………」
う~ん、あまり好評じゃ無いのか?
ガーネット「アレは……下の後ろにあるのか」
アレって…………何見てるんだよ……?
アメジスト「蝋値様、私、背中に乗りたい……」
刻蝋値「勿論だ!3人も乗れよ!全速力で空をかけるぜ!!」
マリン「お、お手柔らかに……」
刻蝋値「しっかり掴まれよ!うおおおお!!!」
アメジスト「ヒイイイイ!!!」
ガーネット「おおお!めっちゃ速ぇ!って空飛んでるー!?」
まずは猛スピードを出すことで、前から強い空気抵抗を受ける。そして羽根を広げることで、この抵抗を揚力に変えているのだ。エアプレーンフィジクスだぜっ!!
刻蝋値「ちょっとずつ降りていくぞ」
それからはゆっくり下降することにした。馬の下半身に、ゴキブリの筋力を持つ俺の脚は、1蹴りで強い空気抵抗を生み出し、重力による落下速度を抑えるには十分すぎる効果を発揮していた。
刻蝋値「ん?なんか飛んでくるな」
マリン「刻様!ガーゴイルの群れです!」
刻蝋値「任せろ!エアカッター!」
俺はガーネットから剣術を学んだことで、剣の先端から衝撃波を放てるようになっていた。
刻蝋値「よし!このまま大陸を移動するぞ!」
空気を蹴ることで落下速度を抑えれると言うことは、当然抵抗の大きい水なら上を歩くことすら出来ると言うことだ。俺は水上を全力疾走し、夜になる前に、別大陸に到着した。
刻蝋値「ふう、流石にこの姿は腹が減るな。飯にしようぜ」
やはり、食欲は形態の大きさに依存するらしい。人馬形態は、亜人形態よりも巨大で筋肉量も多いため、強くて速いがスタミナに難があるようだ。
刻蝋値「食った食った。メタモルフォーゼ・ヒューマン!」
食い終わり、十分に消化した後、人形に戻ることにした。
ガーネット「そうか、人前に出るときは人型にならないとな。だけど、アレは馬の方が凄いのか」
アレって……さっきから何てこと言いやがる…………
マリン「馬小屋で寝るわけにもいきませんし……」
うん、それは人としてちょっとな……
アメジスト「あ、あの、蝋値様……」
刻蝋値「ん?どした?」
アメジスト「下の服を……着てください!」
あ、そうだ。さっきまで馬だった部分はすっぽんぽんだわ!ガーネットがアレに言及したのってそう言うことだったのか!!
取り合えず、ズボンを装備してから宿を取り、寝ることにした。
てか、普通馬は服を着ねぇから、人馬形態の時は、人の上半身にシャツだけ着れば良いのかな??
翌日は、転職を行える施設に行ったのだが、誰も転職する必要性が見当たらなかったのですぐに出ていった。
相変わらずモンスターどもは張り合いがない……メタルゴブリンを殺しまくったからか、女性陣すら無双出来るようになっている。
刻蝋値「お前らも十分戦えるな!案外3人で魔王を倒せるんじゃねーの?」
マリン「いいえ、魔王だけはそう簡単にいきません」
ガーネット「物理攻撃も魔法も殆ど効かねぇって話だぞ」
アメジスト「ですが、蝋値様がエクスカリバーを振るえば、魔王も恐れるに足りませんよ!」
刻蝋値「まぁ、最強武器を使えば楽勝なんだろうけど、俺は出来るだけ素手で倒したいんだよね」
ガーネット「策はあるのか?」
刻蝋値「前も言ったが、筋トレでパワーとスピードを上げる。それと、明日新しいメタモルフォーゼを試すぜ」
馬鹿共は言う。筋肉をつけすぎるとスピードが落ちると。逆なんだよ!筋肉が肥大するほど鍛えれば、体重増加をはるかに上回る筋力が身に付き、それが加速力となって超スピードの糧になる!ノータリンが鍛えた筋肉を使いこなせなくてそれを筋肉のせいにする。馬鹿が馬鹿ゆえの惨状だぜ。
マリン「フフ、真っ直ぐなのですね。楽しみになってきました」
刻蝋値「おう、面白いものを見せてやるよ!そんじゃおやすみ」
俺はすぐに寝たようだ。
翌日
うん……。!?この悪寒は!まずい走り抜けるぞ!!
巨大な柱か何かが俺を潰そうとしやがった。当然ゴキブリの速度で逃げる!……というか俺、何でノーマルコックローチ形態なんだ?人型で寝たはずなのだが……
『そこかあ!!』
俺は追撃を紙一重で避け、その柱を登り始めた。
『うわああああ!!!』
!、柱がしゃべったと言うことは、柱は人間の脚!……それにしてもどこかで聞いた声だな……
『ガーネット様!落ち着いて!』
ん?ガーネット?
『落ち着けるかぁ!ゴキブリが体を這い回っているんだぞぉ!!なのにローチの奴がいないんだぞ!!』
あー、これは……
『落ちやがれ!!』
振り払おうとしてきたので、俺は跳躍して飛翔を行った。ゴキブリって普通は滑空しか出来ないんだけど、俺は強くなったから空をも飛べるのさ!
さて、この辺でいいだろう。メタモルフォ
刻蝋値「ーゼ・ヒューマン!」
アメジスト「!!!蝋値様ぁ!」
ガーネット「うわびっくりした!!」
マリン「あのゴキブリが……刻様!?」
飛行可能であることを除き、何の変哲もないゴキブリが、突如スッポンポンの亜人の若者(?)になった。女共は揃って腰を抜かしている。
刻蝋値「そうだぜお前たち。全く、俺を踏み殺そうとしやがって……お仕置きが必要だよなぁ…………」
4本の手指をワチャワチャさせながら、凄みを効かせてやった。
3人「あわわ…………」
第7話 脱皮直後はクソ弱い!!だけど一時間たてば更に最強だぜ!に続く。