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第57話

町でばったり義賊団!


第57話 お、銀の爪団…………だっけ? 剣術勝負? いいけど。


閃影「どうだ?」


白地のミニワンピースとヒールを合わせた閃影が試着室から出て来た。


刻蝋値「最高だぜ!」


よう、俺の名は(こく)(ろう)()。地球…………まぁ、この世界でいう、アースとかチキュウとか…………の重力すら振りきってしまうほどのスピードをもつゴキブリだぜ! 今はアースで親友レベルまで仲良くなった、スパーク兄妹と服屋に立ち寄っているのさ。


スパーク「ああ、似合っているぞ。この服なら、パーティーの潜入任務にも使えるだろう」


刻蝋値「おいおい、任務の実用性は後で考えりゃ良いだろ? 純粋に誉めちぎってやればいいんだよ」


スパーク「フッ、任務漬けの人生だったのが災いしてるな」


刻蝋値「ま、仕方ないか。あ、そうだ。2人、並んでみてよ」


スパーク「…………お前、この数日で成長したのか…………?」


並んでみると、ハイヒールを履いた閃影の方がパッと見の身長が高くなっていた。


閃影「フフ、違いますよ。靴が高いから、私が大きく見えてるに過ぎません」


刻蝋値「あっはっは! 思った通り、スパークが小さく見えるぜ!」


スパークだって181cmはあるけど、前世基準なら間違いなくモデル体型な閃影がハイヒールを履けば、190cmに到達しちまう。こうすりゃイースト国(小人国)では長身に鼻をかけて、威張っているスパーク(俺が勝手にそう思ってる)も、美形の小柄な弟のように見えるわけさ!


スパーク「…………こいつは何がおかしくて笑っているのだ? 時折理解に苦しむ言動を行うものだ」


閃影「でも、なんだか兄者が弟のようになった気分です。こうしてみると、とても可愛らしい顔をしておられ…………顔が赤くなった。何故?」


純然たる(いつく)しみの眼差しで、スパークの顔を見つめた閃影だったが、次の瞬間、スパークの顔が赤くなったので、不思議そうな表情に変わった。


スパーク「そ、それ以上は言うな…………よ」


刻蝋値「ははっ! この服で外に出よu…」


スパーク「ダメだ! 買ってやるから、外には元の着物で出るんだ! 良いな!?」


閃影「???、はい」


~外~


スパーク「!、武器屋か。2人とも、俺はここに立ち寄るぞ」


刻蝋値「俺はパスかな」


閃影「私も闇影と行動します」


スパーク「そうか、ならば1時間後に広場で落ち合おう」


刻蝋値「オッケー!」


しばらく2人で他愛もない話をしながら歩いていた。


閃影「闇影、あれはなんだ?」


刻蝋値「あれはソフトクリームっていってな。食べ過ぎると太るが、甘くて幸せな気分になれるぞ。食うか?」


閃影「食べる!」


再びソフトクリームを食べながら歩いていると、俺の尾葉センサーが閃影に近づく痴漢の動きを検出し、足払いでコケさせてから金で示談にするという流れが2度ほどあり、ショートストーリーを見たり、ハンマーでボタンを叩き、その反作用で鉄球を100m上にある鐘にぶつけたら100万ゴールドの催しで金を手にいれたりと、あっという間に50分が過ぎた。


刻蝋値「あー、楽しかった!」


閃影「フフ、たまにはこういうところに来て、息抜きするのも悪くないな!」


刻蝋値「全くだぜ、頭領も(いき)な人だよな~。ん? あいつらは確か…………」


俺は目の前にワイルドな雰囲気をもつ4人を見つけた。彼らも俺と同様に、俺たちを見つけて何かを思い出した顔をした。


ウィント「えーと確かブラッド…………傭兵団の刻蝋値だったか?」


リーダー格の一番容姿が整った男が問いかけてきた。


刻蝋値「そうだぜ、あんたは確か、銀の爪団…………だったか? のウィントだよな」


ウィント「シルバーネイル義賊団だぜ。名前だけでも覚えていてくれて光栄だぜ」


刻蝋値「こちらこそ覚えていてくれて光栄だよ。因みに俺の傭兵団は、Blood(ブラッド) of(オブ) dark(ダーク) wolf(ウルフ) mercenary(マーシナリー) corps(コープス)だ。お互い分かりにくい団の名前だよな!」


 クセモノ同士、フレンドリーにいこうじゃねーか!


フォール「いやいや、分かりにくい団の名前はテメェだけだ。ウチらの団は、兄貴の姿が由来になってるから普通は直ぐに覚えれるんだよ」


サム「おー、珍しく正論ぶつけたな」


ウィント「悪いな、コイツらはお世辞とか言えるほど頭よくないのさ。これから接していれば、良い奴等だってわかるはずだから許してほしい」


刻蝋値「良いよ良いよ。俺の名前だけ覚えとりゃ問題ねぇし。で、会っちまったからには何かしねぇとなぁ?」


ウィント「単刀直入に言うぜ。刻蝋値…………の隣にいる剣士の彼女」


閃影「私か?」


ウィント「俺はあんたと手合わせしたい。受けてくれるか?」


閃影「…………お主ほどの実力者相手だと、加減が効かぬが、それで良いなら受けてたとう」


ウィント「よし、広場のステージが空いてるから、使わせてもらおうぜ。金は俺が払う」


~ステージ上~


司会「さあ! 突然始まりました、決闘! シルバーネイル義賊団の団長が、イースト国の女侍に手合わせを申し入れた模様! それでは左、シルバーネイル義賊団・団長、ウィント!」


女性観客から黄色い声援が上がった。


司会「右、イースト国の(うるわ)しき女侍、閃影!」


男性観客から桃色の声援が上がった。


ウィント「悪ぃな。外野なんて呼んじまって」


閃影「どちらでも構わん。はやく斬り合おう」


司会「両者とも構えて…………始め!」


しばらくはなにも起きない時間が流れた。


閃影「はあっ!」


始めに動いたのは閃影だった。イースト国の忍に伝わる特殊な歩法により、初動から最高速度に近い速さで距離を詰め、縦に斬りつけたのだ。


観客達「うわああ!? なんだ今の風!? 速すぎる!!」


ウィント「フッ、そこらの雑魚とは比べ物にならんな」


移動だけでも衝撃波が巻き起こるレベルの一撃を余裕で受け、ウィントは切り返しで横凪ぎを繰り出してきた。


閃影「ふっ! はっ!」


横凪ぎを避け、突きを放つが避けられ、通り過ぎ様に放ってきた一撃を、刀の側面で受け流した。


ウィント「楽しいな!」


飛ぶ斬撃、エアカッターを放つ。


閃影「これからもっと面白くなる!」


空裂斬波を放ち、エアカッターを斬り消しつつ、ウィントに向けて飛ばした。


ウィント「じゃあこんなのはどうだ? クードプルシャドウ!」


突如ウィントが4人に別れ、全て別々の動きを行い始めた。


閃影「…………お主、忍の心得があるな」


ウィント「いかにも、片方の親はイースト出身だ。スラッシングアタック!」


複数の飛ぶ斬撃が次々と閃影に襲いかかる!


閃影「む…………手強いな。だが、二分影!」


閃影も影分身を行い、飛ぶ斬撃の標準をずらすことで、対処を容易にした。


閃影「(しゅん)()蛇腹空裂斬(じゃばらくうれつざん)!」


加えて、蛇腹状に飛んでいく斬撃をはなち、ウィントの影分身を全て消し去った。


ウィント「良いぞ…………その速さ、やはりあの男を思い起こさせる」


蛇腹空裂斬をいなしたウィントの脳裏には、刀と石がぶつかることで生じた火花が散ってから消えるまでの0.5秒ほどで、1000を超える無法者で構成された軍隊を斬り伏せた金髪の男が浮かんでいた。


閃影「(ぜつ)()雷連斬(らいれんざん)!」


閃影の必殺技がウィントに炸裂!…………否、連続斬りの3太刀目で受け止められた。


ウィント「素晴らしい技だ。俺の顔に切り傷をつけたのはあの男を除いてお前が初めてだ」


閃影(冷や汗に…………震え! この男、強すぎる!!)


ウィント「さ、俺の速度も見せてやろう」


ウィントが突如ざんばらにマッハ8ほどで動き回り、周囲に凄まじい衝撃波を巻き起こした。そして、閃影の眼前まで迫って剣を降り下ろす振りをし、真横まで移動してから首元にマッハ11の剣速で、ロングソードを突きつけた。


ウィント「チェックメイト。楽しかったよ、付き合ってくれてありがとう」


閃影「…………完敗だ」


刻蝋値「あいつ、閃影のアレを防ぐか…………思ったより強いんだな~」


俺は客席から2人の手合わせを見て、シンプルにウィントも強いと思った。最も、観客達は巻き起こるソニックブームとプラズマに怯え、2人の勝負を楽しむどころでは無さそうだった。


~数分後~


刻蝋値「2人ともお疲れ、良い試合だったぜ!」


ウィント「同感だ。流石奴の妹と言ったところだ」


閃影「少々気になっていたがウィント、お主は過去にイースト国で忍をやっていたのか?」


ウィント「ああ、このアサシン、リングと共に5年前まで忍をやっていたぜ」


リング「俺の誘いで…………コイツに忍びを学ばせた」


閃影「そうだったか! 2人は私の大先輩だな!」


閃影は、2人を先輩だと知った途端、表情がパッと明るくなった。ああ…………前世でもこんな妹がいたら良かったのに。…………ん、誰かの顔が…………パッツンショートカットの女の子?…………消えちゃった。ま、良いや!


ウィント「俺もたまには頭領さんに顔を見せてやるかな?」


刻蝋値「俺たち明日イースト国に向かうから、お前らも来いよ」


フォール「そうしてやりてぇが兄貴、わがまま王女と魔道王女の護衛任務はどうすんだ?」


ウィント「…………すまんが、フォール、サム。お前達に数日任せて良いか?」


サム「正気か!? あのわがまま王女、兄貴がいなけりゃ駄々こねやがるんだぞ!!」


フォール「俺たちじゃ色々不安だ…………」


ウィント「俺の分の報酬を半分やる。2人で山分けしろ…………これで勘弁してくれ」


サム「まぁ、兄貴がそこまでするなら俺たちも頑張りますが…………」


フォール「ええい! サム、切り替えるぞ!」


サム「へえへえ」


ウィント「2人とも、ありがとうな」


刻蝋値「なあウィント、お前が俺らに声かけたのってもう1つ理由があるよな?」


ウィント「いいや、2つだ。1つはスパークと斬り合いたいこと。そしてもう1つは、刻蝋値、お前と俺たち4人の全力…………比べさせろ」


刻蝋値「良いけど、多分俺の圧勝だぜ?」


ウィント「それくらいは予測できる…………が、どうしてもやりたい理由があるんだ…………」


~回想~


ウィント「お前、実力に自信がありそうだな」


ガーネット「あんたもだろ、一戦軽くやるか?」


斧を右肩で弾ませながら、肉食獣の笑みを浮かべた。


ウィント「望むところだ。1つ忠告すると、俺に斧やハンマーはやめとけ。当たらんぞ」


ガーネット「あたしだって、それくらいはわかるよ。さぁ、行くぜ!!」


ガーネットはロングソードに持ち替え、ウィントにいきなり斬りかかった。


『ガァァアン!!』


ウィント「流石の重さだな」


ガーネット「嘘つけ」


ウィント「どう(さば)く?」


ウィントの目にも止まらぬ素早い連撃をガーネットは危なげなく防いだ。


ガーネット「ヒュウ~♪速い速い」


ウィント「冗談は止せや」


ガーネットの機敏さと重さを兼ね備えた剣技をウィントは避けたりいなしたりし、隙をついては自らのペースで静かに、そしてしなやかでありつつ、重みも確実に乗っている連続斬撃を放っていく。2人は2分ほど、このような拮抗した打ち合いを繰り返した。


ウィント「ギアを上げるぜ」


ガーネット「何!? 見えねぇ!」


どうやらガーネットがウィントの実力を量り違えていたらしく、ウィントが全速力の7割近い速さの動きをし始めた途端、動きを追えなくなった。


フォール「はっはっは! 勝負あったな姉ちゃん! 俺も見えねぇ速さだぜ!!」


サム「悔しいが、残像が見えるかどうかだな…………」


こと速度に関しては、同じ団の重量級二人もまともに追えないらしい。


リング「…………」


感覚機能に優れるアサシンであるリングは、ウィントの動き自体は追えているらしい。


ガーネット「くっ…………そこか!!」


剣を横凪ぎに振ったが、そこにウィントは居らず、首元に剣を宛がわれていた。


ウィント「剣に重みを持たせるのも大切だが、身を素早く動かすことも大切だぜ? チェックメイトだ」


ガーネット「…………へへ、負けか。だけどあんた、なんであたしに仕掛けたんだ?」


ウィント「…………そうだなぁ、俺の女になってみる気はないか?」


表情が真剣なので、冗談では無さそうだ。


ガーネット「………………断る」


フォール「おい、負けたくせに調子に乗るなよ」


ガーネット「ま、理由は話さないとな。理由は簡単、うちのリーダーはこんなもんじゃないってことさ。魔王のいる島で存分に見ることになるさ」


サム「てめぇ…………兄貴をそんなもの呼ばわりするか…………俺が思い知らせてやるぜ!」


ウィント「止せよ。実際に会って斬り合えば良いさ。ガーネットの言う通りなら引き下がるよ」


ガーネット「まぁ、頑張りなよ。斧持ってるオッサンも戦おうぜ? 多分あたしが勝つけど」


サム「上等だ!! この(ごう)火獅子(かしし)のサムの一撃に震え上がりやがれぇ!!! 後、俺は兄貴とタメだぞゴルゥアア!!!」


~回想終了~


刻蝋値「おいおい、悪いこと言わねぇから、ガーネット…………というかうちの団の女に下手に手を出すのは止めとけ! 絞り殺されるぞ!!」


ウィント「なんだ? そんなに必死になりやがって。俺はそう言うことも慣れっこなつもりだが…………」


くそっ…………伝わらねぇか。万が一の万が一にもコイツらには勝たねぇとな。


サム「あの野郎、兄貴と戦っているときは勝てそうだと思ったんだけどなぁ…………」


フォール「お前は持久力が皆無だからなぁ。後2秒動けたら勝ててたぞ。俺は良い勝負だったが、勝てたしな」


ウィント「後は技だろうな。あの()、ああ見えて中々のテクニシャンだぜ。それとお前らの試合は泥仕合だ。超パワーファイター同士の殴り合いが、3分間続いたのは始めて見たぞ」


刻蝋値「あーあ、俺もその試合見たかったぜ。さて、4人ともやりますかい?」


ウィント「ああ…………やr…」


スパーク「待たせたな、2人とも…………お前も居たのか」


ウィント「よう、規格外の後輩君(スパーク)。会いたかったぜ」


スパーク「試合位なら受け付けてやる。ただし、よく考えて挑むんだな」


ウィント「既に考えはした。試合をしてくれ」


スパーク「心得た。あの台で行おう」


刻蝋値「ステージな。世間知らずめ」


~ステージ上~


司会「まさかまさかの…………超有名義賊団団長と、かの有名な人斬り、閃殺のスパークの一騎討ちだぁ!! 両者とも構えて…………始め!!」


刹那、刻蝋値以外のギャラリーから2人の姿がかっ消えた!!


ウィント「痛ッ!!」


衝撃波と電撃が収まったステージ上には、片膝を着いたウィントと、刀をしまったスパークの立ち姿があった。回りにはウィントが発生させたと思われる氷が溶けきりそうになっているものが散乱している。


スパーク「随分と腕を上げたのだな。後少しで速度差を補いかねない技術だ。またいつでも相手にしてやろう」


ウィント「ふっ、その余裕、近々崩してやろう」


刻蝋値「急所は外してるな。よしよし」


スパークがウィントの急所を外して居ることが確認出来、俺は一安心だ。


スパーク「なんだ、その言い方は」


刻蝋値「お前だったら真剣勝負だからとか言って、ガチで殺しそうだなって思ってな。安心したよ」


スパーク「…………お前は俺の保護者か。余程力が拮抗しない限り、そんなヘマはしない」


刻蝋値「まぁ、これで目的の1つは達成できたな。ウィント、俺との勝負も今やるのか?」


ウィント「当然。最強の後輩が動きに支障の無いように斬ってくれたんだ。ならば貪欲(どんよく)に目的を果たすぜ」


刻蝋値「…………アサシン寄りだと思っていたが、案外盗賊寄りの思考なんだな」


司会「かのチキュウの英雄怪人、人間ゴキブリの刻蝋値が無謀にもシルバーネイル義賊団全員に挑みかかります!!」


観客達「ヘッヘッヘッヘ…………」


刻蝋値「…………絶対皆、俺の敗けを望んでるよな」


フォール「馬鹿な奴等だ。俺らに挑む時点でふさわしい実力があると言うことが分かんねぇらしい」


サム「勝利はキツいが…………敬愛する兄貴の為だ、勝つぞ!」


リング「…………柔の心得も…………相当と見た」


ウィント「個人の実力差が半端ねぇ、殺す気で行かせてもらうぜ」


司会「さあ! 彼をなます斬りにすることになるのは勢揃(せいぞろ)いしたシルバーネイル義賊団ッ!!」


全観客の声援が義賊団へと向かう。


司会「全員構えて…………始めっ!」


相変わらず超人的な速度で彼らは迫ってきた。


サム「ブラストスラッシャー!!」


フォール「ギガトンアースアッパー!!」


リング「春風縮(しゅんぷうしゅく)刃撃(じんざん)!!」


ウィント「()(がら)しの銀風(ぎんぷう)!」


対角から業火を纏った飛ぶ斬撃に、超冷気を纏った飛ぶ斬撃…………上からは春一番を凝縮したような小さくも高エネルギーな飛ぶ斬撃、そして地面からは1秒で百メートルのタワーを作れそうなトゲ山を作る一撃が放たれた。それでも俺は、余裕で全てを回避し、攻撃が炸裂した地点の真横に佇まった。


リング「…………終わりだ」


シルバーネイルの連中でも気づけるか分からない忍び寄りも、確実に把握してナイフを回避し、少し指で顎を弾いてやった。


ウィント「!、アイスカッター」


ウィントは氷結した飛ぶ斬撃を俺の周辺に放った。


サム「バーンクラッシュ!!」


全身全霊の打ち下ろしも少し横にずれて避け、軽い回し蹴りでサムの頭を逆に蹴り飛ばし、土の壁にぶつけてやった。


ウィント「(少しは体が冷えたか? これで決める!!)(たい)氷瞬(ひょうしゅん)(ざん)!!」


先程の氷の斬撃を外した理由は、注意を引くためだけでなく、俺の筋温をさげることで、動作を鈍くする狙いもあったようだ。ウィントはそこに全速力の一撃を加える腹積もりらしい。


刻蝋値「狙いは良かったが、俺の全速力には程遠いな」


ウィント「俺も…………まだまだヒヨッコか…………」


奴のロングソードを下の右腕でつまんだ俺は、上の右腕でデコピンをしてノックアウトをした。


フォール「兄貴達の敵は俺が!…………な、んだと…………!?」


俺はフォールの回りをグルグル回っているのだ。残像が連なり、壁にしか見えない速度でな。


刻蝋値「スピードトレーニング頑張れよ!」


軽い中段突きで奴を気絶させた。


司会「お、収まった…………え!?…………シルバーネイル義賊団が…………全滅…………いや、どこかにリング選手が、おお、上から降りて」


おいおい、たまたま見えたからって、アサシンの隠れ場所を解説するなよ…………まぁ、


司会「…………え?…………頭から落ちた?」


既に顎ピンで気絶させていたから、意識は無いんだけどな。


刻蝋値「俺の勝ちだぜ! 群集ども! ざまぁみろ!!」


観客達「ブーブー!! 痴漢冤罪のカツアゲゴキブリめ! イケメンじゃない癖に調子に乗るなー!」


刻蝋値「ヒャッヒャッヒャー!! 残念だったなぁ!!」


俺は何故か奴等の悔しがる顔を見ると、謎の優越感が湧いてきた。マジで理由が分かんない。というか、やっぱり閃影に痴漢しようとした奴らが全力でブーイングしていたのね…………それは自業自得だろ。


観客の1人「だったらあんたの苦手分野の顔で、ウィント様とスパーク様と勝負しなさい!…………これで勝ったら認めてあげるわ」


刻蝋値「上等だ! やってやらぁ!!」


バーカ、真っ向勝負なんかしてやるかよ。久々にあれを使ってやるぜ!


こうして3人がステージに並んだ。


スパーク「なぜ俺まで付き合わないといけないんだ?」


ウィント「何、直ぐに終わる。普通に考えれば俺らの勝ちなのだろうが、刻蝋値には秘策があるらしい」


刻蝋値「準備オッケーだ! さっさと始めよう」


司会「では、女性の皆様、好きな方の近くによってください!」


女性半分「キャーー! ウィント様ーー!!」

女性半分「キャーー! スパーク様ーー!!」


それぞれ半分に別れ、ウィントかスパークの方へと駆け寄っていく。


ウィント「互角か? 刻蝋値の秘策なしだと、数えるスタッフが大変だな…………」


スパーク「酷い茶番だ。さっさと秘策とやらを使え」


刻蝋値「分かったぜ。超超特濃・性フェロモン大放出!!」


ウィント「…………ハハ」


スパーク「ゴキブリならでは…………だな」


女性達「な、なんて猛々しくも、美しいお方なの…………スパークとかウィントとかどうでも良い! 刻蝋値様ーーーーー!!!!」


2つに別れていた女性達が一斉に俺目掛けて1つになった。ついでにベンチでシルバーネイル義賊団の3人と共に座っていた閃影までフェロモンの影響を受け、こっちに走ってきた…………


刻蝋値「ギャッハハハハハハ!!!! ざまぁみろ、群集どもぉ!!! またしてもお前らの思い通りにはさせなかったぜぇぇーーーーーーー!!!」


…………これが2つの星の魔王に打ち勝ったゴキブリ男の姿である。英雄が清きものとは限らないのだ。


スパーク「実におぞましい、司会、さっさとジャッジして帰らせてくれ」


司会「ハッ、しょ、勝者…………刻蝋値選手~~」


男達「ブーー!ブーー!!卑怯だぞゴルゥアァ!! クソゴキブリめーーー!!」


刻蝋値「ギャッハハハハハハ!!!!ハアッww↑!!!ハアッww↑!!!ハアッww↑!!!」


俺は笑いが止まらねぇ!…………マジで、どうして止まらねぇんだろう? なんか俺自身がおかしくなってるぞ…………元から? それもそうか!


ウィント「…………なぁ、スパークよ」


スパーク「何だ?」


ウィント「俺はお前になら努力しだいで勝てる気がするのだが、刻蝋値相手だとどう足掻いても勝てる気がしない。奴は一体何なんだろうな?」


スパーク「同感だ。奴を知れば知るほど次元の違いを突きつけられる…………最も、それが(俺達)を惹き付ける魅力になっているのだろうがな」


ウィント「これが…………か」


全力でキスを仕掛けてくる幅広い年代の女性達を、紙一重で鮮やかに避けている刻蝋値がそこにはいた。


スパーク「そうだ。これがだ…………」


そして俺は、うまいこと閃影だけを抱き締め、強烈なキスを見せつけながら、性フェロモンを解除した。当然男女問わず、猛烈なバッシングが俺に襲いかかったが、そんなものでこの俺を潰せると思ったら大間違いだぜ!!


第58話 ゴキブリだけの惑星? 行く! 行く! 絶対行くぜぇ!!! に続く。

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