第51話
刻蝋値なしで、魔王と渡り合うものは居るのか……居ないのか!?
第51話 後は敵陣に乗り込むだけだ!
ラズリ「魔力解析結果…………陽性!」
キッド「仕留めるぜ!」
コンバットマグナムを1発撃った次の瞬間、2丁目を取り出して撃ち、1丁目を再び撃ち…………を繰り返し、計6発撃った。
魔王「フッ、俺に攻撃を当てれるわけがない」
弾丸が、フードを被った護衛騎士の姿をした魔王の目の前まで来た瞬間、時速1mまで速度を落とし、全て魔王に摘まみ取られた。
シトリン「曲射!!」
魔王の目の前に見えない壁があると判断したシトリンは、曲線を描く軌道で矢を放った。
魔王「この程度の矢を掴むことなぞ容易い」
ラズリ「物理が効かないのならば、特殊攻撃を撃つまで!灼熱砲!!」
手のひらから灼熱の熱線を放った。ラピスとは名前が違うだけで同じ技である。
魔王「マイクロブラックホール」
対して魔王はすぐに消える小規模なブラックホールを展開し、砲撃を吸収した。
魔王「貴様らに、我を倒す力なぞない。そこの哀れな王女もろとも楽にしてやる」
キッド「ラズリ、王女様を守ってくれ、俺達は自力で何とかする」
シトリン「中将、アタシを守ってね!」
シトリンは、不安を和らげるがてら、キッドに悪戯っぽい仕草でウインクをした。
キッド「…………てめぇも自分の身は自分で守りやがれ」
魔王「カースデュランダル!!」
全員が身を低くし、闇で具現化した大剣を避けた。
キッド「3距離で対応するぞ!」
キッドが2発撃つ。
魔王「無駄無駄」
ラズリ「ペネトレイトラッシュ!」
籠手を装備した腕を筋力とジェット噴射で加速させ、魔王に殴りかかる。
魔王「くぅ! 銃弾並の速度を持つ拳…………マッハ10レベルまでは想定に入れる必要がある…………なっ!!」
ラズリ「!?」
魔王に傷をつけ続けていたラズリの拳が、突如時速1m/sまで減速した。誰から見ても、魔王が何らかの干渉をしているのはあからさまであった。
魔王「貴様から死ね! かつて我のオモチャだった女よ」
ラズリ「くっ…………!(私は…………あのときから変わらないの…………?)」
シトリン「強射!!」
魔王「ぐぅ!?横から…………」
射出までに時間がかかるが、最大限に玄を引き、最大の速度で発射した弓が魔王の頬に突き刺さった。
キッド「でかしたぜ、シトリン!」
キッドも素早く魔王の横顔から少し離れたところに移動し、両手で一丁だけを持ち、確実に狙いを定めた1発を魔王の横顔に命中させた。
魔王「よくぞ…………我を倒…………せてなぞいるわけ無いだろう!! ハハハハハハ!!!! これは人形!! ジークリンデ王女の隠れた双子の兄、ジークムント? そんな奴は存在しない! 貴様らのように、人形には脳は要らん!俺の力がある限り、肉体の結合が途切れない限りは動き続け…………」
ラズリが突きを放つも、またしても急減速させられて止められた。
キッド「バカヤロウ! 奴には正面からの攻撃は効かんぞ!」
魔王「そうだ、我の技をもう忘れたか。速さなぞ無意味…………」
ラズリ「正面の攻撃のみに対してですよね」
ラズリはロケットパンチを曲線を描くように発射し、先ほど魔王に刺さった弓を掴んだ。
魔王「…………そうだ、お前は…ぐああああ!!!」
ラズリはそのまま高圧電流を流し、魔王に感電させ始めた。
ラズリ「身体組成に塩分を含めたのが間違いでしたね。分子レベルまで分解させます!!」
魔王「おのれぇ…………奴隷の分際でぇ…………」
シトリン「いつまでも調子に乗ってるんじゃないよ。ラズリは私と同じ、傭兵団を率いる幹部よ! いつまでも過去にすがり続けるあんたに負けるわけないじゃない!」
そう言って、右足にも矢を刺した。
ラズリ「ありがとう! シトリン。これで、全身くまなく分解できる!」
魔王「やめろおおおお!! 奴隷の分際でえええええ!!!」
キッド「遅かれ早かれ本体もこうなるだろうな」
キッドは醜態を見せる魔王の人形を見て、その後の行く末を予想した。
ラズリ「くっ、…………魔力も電力に還元しているが…………奴を分解するには足りません…………なにか策を…………」
ジークリンデ「私の魔力をあげる…………ジークムント、いや、魔王を滅して!」
魔王「ジークリンデ! 俺と愛を誓い合ったではないかああああ!! 止めろ!! 止めてくれ!!!」
ここに着さきて、嘘の助命を懇願し始めた。
ジークリンデ「黙りなさい、私の部下達を扇動して私にけしかけ、あまつさえ英雄を騙り、虐殺を楽しんだ悪魔!」
魔王「おのれええええ!!!」
遂に魔王の人形が消滅し、力が外に溢れだした。
ラピス「禍々しい核を狙って!」
キッド「任せろ! 全弾ぶちこんでやるぜ!!」
先ほどの間にリロードした2丁マグナム計12発を全て核に命中させた。
魔王「ふははは! 鉄で俺の核を破壊できるわけ」
ジークリンデ「ライト・オブ・サンズレイ!!」
魔王「ぬおお!? 忌々しい太陽! 覚えておれ!!」
核を破壊された魔王は、早々に力を持ち帰っていった。
ジークリンデ「ううっ、ジークムント…………そんな都合のよい存在、私には居るわけないよね…………」
シトリン「王女様…………」
キッド「早々に安全な場所へ行くぞ」
ラズリ「お待ちください。我らの団長に連絡します」
ラズリはマジフォンを取りだし、刻蝋値に電話をかけた。
~サウス王国のホストクラブ~
ガーネット「オラァ! 神魔断の威力はどうだぁ!!」
こちらの魔王は巨大な獣のような姿を具現化したらしい。ガーネットは全力の両手斧でその獣の足の一本を切り落としたようだ。
魔王「貴様は随分と人間離れした力を持つようだな。我に付けば更なる怪力を得れるぞ?」
感情の籠らない声で、戦闘力の高いガーネットのヘッドハントを試みる。
ガーネット「へっ、ローチと筋トレした方が圧倒的に早く、大きく強さを増せる。おとといきやがれだ」
アメジスト「それが道理よ。炎と光の極み、グレイテスト・サン!!」
魔王「ぬおおおお!?!?」
効果抜群の魔法攻撃が魔王の体を焼き尽くす。
トルマ「火種を追加するよ~竜化・火竜! ドラゴフレイム・極!!」
1年前、祖父が刻蝋値に打とうとしたとろ、油を過剰分泌した体で口に突っ込まれ、口内引火大爆発で返り討ちにされていた技を成功させ、更に魔王を焼き尽くす。
エメラルド「スーパープロテアーゼダガー・ストライク!!」
肉体…………タンパク質を高速分解する酵素を塗ったナイフを魔王の傷口に命中させた。
魔王「ふん、こんなもの…………な、体が…………崩れる」
エメラルド「タンパク質分解酵素っていう物を塗ったナイフだよ~。肉が溶けるんだって。たまにコックは難解な説明するから分かんないんだよね~」
ガーネット「はは…………あたしには絶対にかすらせないでくれよ?」
エメラルド「筋肉溶けるもんね」
サウス王「皆、離れてくれ。私の今纏っている魔法石を全て使い、魔王を完全に滅してやる。さあ、退いた退いた!」
ホスト達「うわああ!! 王様が珍しすぎるくらいお怒りだー!!」
トルマ「私達も逃げよっ!」
皆逃げていった。
魔王「我の人形を消すためにすべての魔法石を使うか。貴様は真性の馬鹿なのだな!」
サウス王「残念だったな、魔法石は宝物庫に1000個ほどある。
消え失せろ! マジック・ビックバン!!」
ホストクラブの床を全て吹き飛ばす大爆発で魔王を核ごと消滅させた。
ガーネット「うわ~ローチにこそ及ばねぇけど、なかなかえげつねぇ威力だなぁ…………」
アメジスト「ちょっと私、あの人から勉強したいかも…………」
サウス王女「父はロマンばかり追い求めるので、あまり実用性は期待できないわよ…………でも、こんなに私を心配していたなんて……」
アメジスト「ちゃんと本人に伝えれば喜んでくれるわよ。えーと……」
サウス王女「ネフェルティティだよ。力になれないかもしれないけど、一緒に魔王を倒そう! ネフティって呼んでネ!」
アメジスト「うん!」
サウス王「いやー、まさか俺の服ごと前を焼かれるとはなぁー、アッハッハ!」
ガーネット「…………下は隠そうぜ?」
刻蝋値への態度とは裏腹に、冷たく言い放った。
トルマ「本当だれとくなの? それ」
サウス王「ん? 国の女性は喜ぶのだがな、お気に召さなかったかい?」
ネフティ「…………父さん、恥ずかしいから隠して」
~夕方・ノースの病院~
刻蝋値「そうか!これでイースト国以外は全て片付けたんだな!
俺は明日すぐにでも、あたりをつけてるところに向かうから、皆は王子王女達とコミュニケーションを取って、魔王への対策を立ててくれ。
イースト国さえどうにかすれば、後は敵陣に乗り込むだけだ!」
その後も一時間ほど話し合い、俺はマジフォンを切った。
刻蝋値「さて、俺達も頭領の元へ帰るか。スパーク、動けそうか?」
スパーク「…………お前が俺の出撃禁止を勝手に決めた時には既に動けた。行くぞ」
~海の上~
刻蝋値「…………閃影、お前も町を歩いたことで、いかに自分がモテるか分かったろ?」
閃影「ああ…………町の男どものイヤらしい視線をすごく感じたぞ。海外では拙者のような見た目が好まれるのがよく分かった」
スパーク「…………早くイースト国も開国したいものだな」ボソッ
刻蝋値「おお、やはり兄としては妹が注目されるのは嬉しいのか!」
スパーク「チッ、聞こえていたか。確かにそれは間違いではなかったが、闇影、お前なぜあの男を斬ろうとした俺を止めた?」
刻蝋値「いや、セクハラ未遂位で命とるやつがいるかよ。未遂で阻止させて、金をとれば良いんだよ」
閃影「そのお陰でいい土産が買えた。闇影は世の渡り方が上手いのだな」
スパーク「金にがめついだけだ。俺達の給料なら海外でも存分に買い物ができる」
刻蝋値「ゆっくりとショッピングを楽しむ為にも、さっさと魔王を倒そうぜ!」
2人「ああ!」
~翌日~
刻蝋値「いよいよ将軍殺害指令か」
スパーク「お前には殺させんぞ。だが、閃影、お前は自らの手で奴を始末したいか?お前になら譲ってもいい」
閃影「…………私は」
第52話 魔物軍!? ならこっちも攻めるぞ!! に続く。




