第44話
ゴキブリ、宇宙へ飛び立つ! 注:今回降り立つ場所は、火星ではありません
第44話 切り込み? 俺の仕事に決まってるだろ!
刻蝋値「…………と、言うわけで、今回の選抜メンバーは素早さとパワー、そして回復能力で決めさせてもらった。2号機から順に乗組員を発表する。2号機、ラピス、マリン」
ラピス「マリンさん、よろしくお願いします」
マリン「ええ、こちらこそ」
刻蝋値「3号機、ダイア、レフト」
レフト「ぜ、絶対変な気は起こさないから、ぼ、暴力は勘弁してくだせぇ!」
ダイア「なにもしないよ。と言うか、私何かしたっけ?」
刻蝋値「4号機、ニクス、イーズィ」
ニクス「フギニャア~」
イーズィ「あはは…………食べないでね…………? 後で肉を多めに要請してみるよ…………」
刻蝋値「5号機…………」
と、続いていき…………
刻蝋値「9号機、アレス、ハード隊長」
アレス「よろしくな!」
ハード「うむ、アースまで責任を持って運転しよう」
刻蝋値「ラスト10号機、ラズリ、トルマ」
ラズリ「運転はお任せください!」
トルマ「便りになるな~!」
刻蝋値「なお、1号機は俺とライトが乗船する。パール、サファイア、シトリンはチキュウ軍と共に、有事の際に防衛を頼んだぞ」
パール「ビームが来ようとミラーシールドで跳ね返す!」
サファイア「ぶるるっ!」
シトリン「狙撃は任せて!」
刻蝋値「おう、頼んだぜ! それじゃあ出発だ!」
10機の宇宙船はアースへと向かって飛んでいった。
~アース、上層部~
ミドル隊長「何故私に黙ってライトとレフトの殺害命令を出した!!」
軍司令官「ミドル隊長、彼らは反逆者だ。このやり取りを聞きたまえ」
軍司令官が出したタブレットには、刻蝋値に命令されて降参の願いを訴えてるライトの姿が写った。
軍司令官「こんな命ひとつ投げれない者を生かしておく道理があるかね?」
ミドル「…………ライトはこの星で一番の知能を持っています。その彼が現場を見て絶対に敵わない敵だと判断しただけです。敵う相手なら、メッセージの中に戦闘のヒントを混ぜるだろう」
軍司令官「私は命を投げ捨てられないことについて問題視しているんだ」
ミドル「軍人は死ぬことが仕事ではありません! 国を守ることが仕事です!!」
軍人の本当の存在意義を履き違える軍司令官に対し、ミドル隊長は憤りを見せた。
軍司令官「ふん、死んで隠蔽すれば守れただろう。追加で20名も失ってしまったではないか。彼の失態だ」
ミドル「彼が死のうが機体が残れば同じです! 攻撃指令を出したのも貴方の判断だ!! 責任は貴方にあります!!」
軍司令官「…………まぁ、君がそのつもりなら、君の未来も閉ざすことになるね。ご苦労様」
ミドル「チッ! 上等です!」
~宇宙船・2号機~
ラピス「自動操縦に切り替えました。後は目的地に自然と着きますから安心してください」
マリン「運転お疲れ様。…………」
ラピス「皆が心配ですか?」
マリン「ええ、流石に他の星に行くことになるとは思いもしませんでしたので…………」
ラピス「こんなこと無いように願っているけど、裏切り者が出たら、俺が始末しますのでご安心を。まぁその前に」
マリン「刻様が対処しますわね。きっと平気ですよ、彼らも人の心を持っているはずですから…………」
ラピス「…………だと、いいですね」
そう返したラピスの顔には、影がかかっていた
~3号機~
レフト「これでよしと」
ダイア「ちょっと! 席を離れて大丈夫なの!?」
操縦者のレフトが席を離れ、くつろぎ始めたので、ダイアは慌てて問い詰めた。
レフト「ええ、自動操縦に切り替えたので、これから1日間でアースに到着しますよ」
ダイア「…………まぁ、流石にろうちの目の前で裏切りはしないか」
乗っている宇宙船を貫き、呼吸困難でライトを殺しつつ、レフトを殺した後、自分事ラピス達と合流するのだろうなと思った。
レフト「刻蝋値さん…………でしたっけ。彼は一体何者なんですか?」
ダイア「…………ゴキブリだよ」
レフト「…………え?」
ダイア「だからゴキブリ。普通のゴキブリ時代に変なスキルを取ったら、あんな姿になったんだって」
レフト「はぁ、ネオアース…………チキュウって不思議な生き物が居るものなんですね」
ダイア「え、アースってゴキブリ居ないの!?」
レフト「居ますよ。不思議な生き物は刻蝋値さんのことです」
ダイア「あ、普通はそうだよね。ちょっとずれたこと言っちゃったな」
レフト「…………」
ダイア「どうしたの?」
レフト「こうしてダイアさんと話していると、チキュウの人達も俺らと変わらないのだと思い知らされまして…………俺達は絶対にしてはいけないことをしてしまった」
ダイア「そうだね。私は絶対に2人を許すつもりはないけど、でも、1番許せないのは主犯格だよ。だから元凶を打つための協力をしてよ。ね」
レフト「はい…………今できる精一杯の償い…………です」
そう語るレフトの拳は震え、目には涙を滲ませていた。
~4号機~
イーズィ「ニクス君…………」
ニクス「ガルルルル!!」
イーズィ「ひぃ!?…………あ、そうか。ニクス…………ちゃん」
ニクス「ミ"ャー!」
イーズィ「君のパートナーさん経由で肉を沢山貰えたから、我慢せずに食べたくなったら言ってね」
ニクス「ゴロゴロゴロゴロ…………」
イーズィ「…………ふかふかだ。俺もミケって言う名前の猫がいてね。ミケも君のようにキレイでふかふかな毛並みをしているんだよ。それで…」
~5号機~
ルビー「ノーマさん紅茶をどうぞ」
ノーマ「…………ありがとうございます。ズズズ…………!、美味しいです!」
ルビー「良かった」
ノーマ「…………侵略者の僕が怖くないのですか?」
ルビー「フフ、ノーマさん、今の立場を考えてみてください」
ノーマ「まぁ、確かに捕虜なのは僕らですが…………」
ルビー「何か悪いことをしようとしたら…………この鞭で愛の調教を行いますのでご安心を」
不敵な笑みを浮かべて鞭を握るルビーは、誰が見ても恐ろしいオーラを放っていた。
ノーマ「はい、絶対に悪さしません(ああ…………この人マジでヤバい人だ!)」
~6号機~
アメジスト「良いこと?絶対に私の寝込みを襲ったりしないでよ!そんなことする素振りを見せたら、あんたを蝋値様に頼んで挽き肉にして、蝋値様のおやつにするからね!」
ソフト「嫌ですね~、俺がそんなこと(するわけねぇだろこのチビ女!! お前の体からは1つも色気を感じねぇよバーカ!)出来るわけないじゃないですか~。神にだって誓えますよ!」
アメジスト「…………よろしい。私だけ条件を押し付けるのもあれだから、魔法の事を少しだけ教えてあげるわ」
ソフト「ありがたい限りです!是非お願いします!!」
~7号機~
ガーネット「1つ忠告しとくぜ、少しでも怪しいと思ったら叩き切る! お前らはあたし達にそれほどの事をしたんだからな。分かってるよな?」
ストレング「も、勿論です…………(この人怖すぎる)。しかし、仮に俺が死んだら宇宙船の操縦が出来なくなりますが…………(とにかく生存率をあげるぞ)」
アースのセンター帝国だと考えられない高身長(ブーツ込みで175cm)にくわえ、筋肉ムキムキなガーネットに威圧されては、ストレングも縮こまるしかなかった。
ガーネット「確か自動操縦だったら勝手に着くって言ってなかったっけ? じゃあなんとかなるな!」
そして、ビックリするほど楽観的だった。
ストレング「大まかにはなりますけど、僅かな軌道のズレの微調整や着陸はやはり俺らの手が必要でして…………(この人悪い意味で色々気にしない人なのかぁ~…………死ぬ覚悟は今決めないとダメだな~…………ああ、あの魔法使いの女の子から魔法について色々聞きたかったなぁ~…………ソフト~、変わってよ~…………)」
~1号機~
ライト「…………チキュウ、アースとそっくりです」
刻蝋値「青くて丸い、世間一般で言われている通りだな。アースもそうなのか」
ライト「はい…………チキュウに来る少し前に確認し、その美しさに感動しました。今だって…………チキュウとアースがそっくりなことに感動していますよ」
刻蝋値「…………ライト、お前に1つだけ謝らないといけないことがある」
ライト「ヘ?」
刻蝋値「お前の家族を侮辱したことだ。これについてはすまなかった」
ライト「あ、謝らないで下さい! 侵略した僕らが悪いのですから。僕の方こそチキュウの皆様に…………彼らを愛していた、刻蝋値さんに」
刻蝋値「やめろ、その謝罪は彼らの命の価値を下げる。俺は二度と今件を許すことは無い。だが、お前が協力し、その後も償い続けるのであれば、命を奪うことはない。それだけだ、だから絶対に謝るな。謝ったら殺す」
ライト「わ、分かりました」
刻蝋値「話を変えよう。ライト、お前は学生時代、歴史が得意だったか?」
ライト「得意…………というより、勉強は全て分かりましたね。100点ばかりとってましたし」
刻蝋値「…………マジかよ。俺は理科しか取ったことがねぇから羨まし過ぎるぜ。数学はいつもケアレスミスで若干届かねぇし、他は30点越えるのが稀、国語は0点3連続の記録を取ったくらい酷いしな! あっはっは!」
ライト「…………逆にどうして理科だけ満点で数学も凄く出来ていたのですか? それに、チキュウって他種族も差別なく、教育を受けれるのですね!」
刻蝋値「単にゴキブリが好きで、ゴキブリを隅々まで調べていくうちに、高校で習うような生物学、物理学、化学とかまで小学生の頃から手を出してな。気づいたら、中学で習う内容がことごとく既に知っていたんだよ。チキュウの学習環境については俺も知らんな、俺は元々別の次元から転生してきたんだ」
ライト「ええ!? 転生…………また信じられないことをしれっと言いますね…………あ、話が脱線しています! どうして僕に歴史が得意か聞いたのですか?」
刻蝋値「そうだった。いや、歴史が出来れば魔王についても詳しいかと思ってな」
ライト「僕が分かることなら、刻蝋値さんにも分かりやすく説明をします! 何なりとご質問ください」
刻蝋値「…………お前しれっと俺の文系学力の低さを馬鹿にしたな?」
ライト「ヘ?そ、そんなつもりは…………(チラッ…………これは謝らないと殺される!)すいませんでしたぁ!!」
刻蝋値「はぁ、まあいい。魔王についてだが、過去に魔王に憑依されたが、憑依をはね除けた者って存在するか?」
ライト「うーん、あ、居ますよ! 閃撃のライトニングという名の偉人で、センター帝国の東にある国、イースト国出身のハーフの剣豪でした」
刻蝋値「閃撃…………格好いい名前だな。下の名前はもしかしなくても、お前の名前の由来だったりするのか?」
剣が閃く姿がカッコいいだの毎秒1000回もの攻撃を繰り返せるだの、中二病の俺にはたまらねぇ異名だぜ!
ライト「はい、良くわかりましたね! なんか嬉しいです!」
刻蝋値「はは、流石にレフトとあわせて右左って名付けるやつは居ねぇよな!」
ライト「ああ~! 学生時代は確かにセットでそう呼ばれてました!」
刻蝋値「やっぱりな。話を戻して、閃撃はどうやって憑依をはね除けたんだ?」
ライト「初めてはね除けたときは、精神力で…………要は気合いで追い出したそうです。確かこの時に、少しでも欲に弱いものは魔王に近づくなという名言を残しています」
刻蝋値「なるほどな…………精神的に軟弱だと操り人形になるか。因みに、操られてから元に戻った奴はいないのか?」
ライト「…………残念ながら」
刻蝋値「そうか…………これだと皇帝ごと殺すしか無いのか。出来れば皇帝の意思でチキュウ侵略をしたのか、全て魔王の意思だったのかを知りたかったんだがな」
ライト「いや…………いました。閃撃のライトニングです」
刻蝋値「んん? そもそもあいつには効かないんじゃ…………」
ライト「彼が他国の勇者たちと魔王との激戦を繰り広げていたとき、同じパーティーには彼に想いを寄せる魔法使いが居ました」
刻蝋値「精神力が強くて力もあれば、モテるわな」
ライト「顔も相当整っていたそうですよ」
刻蝋値「チッ、結局イケメンか。それで何があった?」
転生前の地球で持て囃されていた、顔だけ整えた骨と皮だけの男達を思い浮かべた。
ライト「その魔法使いが魔王に捕縛され、人質にされたのです。当然閃撃は動けなくなり、かねてより彼を気に入っていた魔王に憑依されます」
刻蝋値「ん? 魔王は閃撃の肉体がほしかったのか?」
ライト「はい、自分の攻撃をことごとく避け続ける程の速さを利用し、迅速な殺戮を行おうとしていたのです。パーティーの戦士と兵士は瞬く間に殺され、捕縛中の魔法使いにも刃が向いたとき、彼は…………」
刻蝋値「…………どうなった?」
ライト「全力で魔王に抗い、自らを刺しました」
刻蝋値「…………それで?」
ライト「魔王は彼自身の痛みに呼応するかのように苦しみだし、彼はそのまま憑依を解き払いました。そしてその剣で魔王を切り刻み、見事討伐したと伝えられています」
刻蝋値「成る程な。…………推測するに、大切な人間と、"痛み"か」
ライト「まさか…………皇帝を殴るのですか?」
刻蝋値「流石天才、ご名答だ。ついでに聞くが皇子か皇女はいるか?」
ライト「…………皇子なら居ますが」
刻蝋値「彼にも協力してもらう。絶対に皇帝を死なせはしない。真実に従い、悪いやつを懲らしめるんだ!」
ライト「僕だって本当に悪いやつを懲らしめたいです!…………でもセントラル皇子はまだ8才です。この若さで父が殴られる現場を見せるようなこと」
刻蝋値「じゃあ甘んじて皇帝を死なせるか? それこそセントラル皇子の心に一生ものの深い傷が残るだろ」
ライト「…………それは」
刻蝋値「信じろとは言わないが、俺は誰がなんと言おうと皇帝を正気に戻してやる。誰かの死を招く方法以外でな!」
~次の日~
ライト「着陸に入ります!」
刻蝋値「頼むぞ!」
ライト「高度1万メートルに突入!…………大変です! ミサイルが飛んできます!」
刻蝋値「俺を外に出せ!」
ライト「え!? 分かりました!…………ええ!?」
ライトが我に帰ったときには刻蝋値は既に獣形態で空気を蹴り、マッハ21の落下速度でミサイルに向かっていた。
刻蝋値「捕虜まで殺そうとしてんじゃねぇ!!」
俺は瞬時に体重のある人馬形態に変身し、マッハ10で向かってくる極超音速ミサイルを両腕で掴んだ。そして明後日の方向へ投げ飛ばして爆破した。
刻蝋値「オラァ!ミサイルとか大砲とか全部廃品にしてやらぁ!!」
地面すれすれまで一気に来た後、猿形態に瞬時に変身し、手裏剣の様に回転して攻撃兵器を全て切断した。
兵士たち「何だ!? 大砲が全て使えなくなったぞ! ミサイルも使えません!」
刻蝋値「ちゅうもーく!!」
兵士たち「え?…………」ガクッ
1秒前に叫んだ俺に釘つけになっている間に、全ての兵士を気絶させた。
刻蝋値「オーイ! もう安全だぞー!」
1番最初に降りてきたのは、猛スピードで着地(落下?)してきたライトだった。
ライト「刻蝋値さん、あなたは仮にもリーダーなのに、切り込みもしているのですか!?」
刻蝋値「切り込み? 俺の仕事に決まってるだろ!」
ライト「ええ…………?」
刻蝋値「お、みんな来たか」
全員が揃ったので、作戦を伝えることにした。
刻蝋値「よし、それじゃあ役割分担だ。ガーネットとエメラルドは西軍を、ルビーとニクスは東軍を、ラピスとダイアは北軍を潰すんだ。残りはここで防衛、そして、裏切り者が出ないように監視を頼む。中央軍は俺とライトが行く」
レフト「待ってくれ!」
刻蝋値「…………何だ?」
レフト「俺も…………行かせてください!」
刻蝋値「却下だ、2人も足手まといは連れてけない。それにお前はまだ信用できん」
レフト「俺は足手まといになりません! それにあんたがライトを人質にしている限り、裏切ることも無いし、何よりタイマンならこの国の誰にも負けないぞ! センター帝国の城には俺たちの隊長が居ます。彼なら、皇帝は兎も角、上層部の悪い奴は把握しているはずです! 何としても彼から聞き出します! お願いします!!」
刻蝋値「わかった。但し、裏切る真似をしたら…………」
レフト「…………ごくっ」
刻蝋値「お前の目の前でライト君を凄惨な殺し方をし、その後でお前の関係者も殺し、お前だけ生かすぞ。わかったな」
冷酷な目で見据え、言い放ってやった。
レフト「…………はい!」
傭兵団員達「…………」
刻蝋値「では作戦実行だ! 一先ず余程の事がなければ、殺しは無しでいくぞ!」
俺たちは散っていった!
第45話 久しぶりだな…………てめぇは必ず殺しにいくからな! に続く。




