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第31話

データ消失の事故により、最新話を心待にしておられた方々にはご迷惑をおかけしました。明日の0時台に投稿予定の32話共々お楽しみください


第31話 おい、そこの人魚を侍らすドザエモン!俺と一騎討ちだ!!


俺の名は(こく)(ろう)()!…………今は海中を下へと泳いでいる。訳を話そうか、昨晩…………


~昨晩・ヴィクトリア号~


刻蝋値「よし、ニクスとサファイアも仲良くなってくれたし、俺は寝るとするか」


そう言って、自室の扉を開けた。


ダイア「ろうち、いらっしゃーい」


…………船上生活に戻って早々、俺の部屋でパーティーする気かよ。しかも見張りのエメラルドと寝る前の掃除を行っているルビー以外皆居るし


ガーネット「おらっ! さっさと一緒に寝るぞ!」


刻蝋値「引っ張らなくてもそうするよ。個人的にもお前らが恋しくなってたし」


俺としても、草原で孤独に寝ると清々しかったが、寂しさもあった。こうして気をおか(無さすぎるが…………)ずに共に寝れる仲間が居ることが嬉しくてしょうがない。


刻蝋値「さーて、次はどうしてくれ…………タイム、喉乾いたわ」


俺は喉が乾いたので、棚の上にある水をとろうとしたが、アメジストがすかさず手持ちの水を飲みだし…………


アメジスト「んー!」


刻蝋値「んんっ!…………ゴクゴク。…………あのな、口移ししなくたって俺は水を飲めるんだぞ」


この時は、またからかっているだけだと思っていたが、後にそうじゃないことがわかった…………


パール「まあまあ、最年少なんだから、無理せずお姉さん達に頼めばいいんだぞ」


様になる色っぽい表情(かお)でこちらを見つめてくる。


刻蝋値「最年少だからってそこまでガキじゃねぇ! こんなガタイの幼児がいてたまるか!」


マリン「あら? 竜族なら刻様位の大きさのお子さんは沢山いましてよ?」


刻蝋値「俺は竜族じゃなくてゴキ……ブ…………リ……………………あれぇ?」


急に回りがボーーっとし、場面が暗転したのだ。先程の口移しで睡眠薬を盛られたに違いない。


~今朝~


刻蝋値「んあ?」


…………朝だと?


ガーネット「モグモグ…………あ、 おっはー! 1口目は食べさせてやるよ」


刻蝋値「ムグ!…………モグモグ、ゴクン…………だから俺は幼児じゃねぇんだって!!」


ガーネット「なんだよ。愛情表現すら素直に受け止められない奴が幼児以上の精神年齢な訳無いだろ」


刻蝋値「はぁ!? どんな理屈だよ!!?…………あれ? 何で俺が飯を作ってないのに飯が並んでるんだ?」


訳わからん理屈に驚いたことで、かえって冷静さを取り戻した俺は、今の状況の異常さに気づいた。普段はルビーに起こされる・あるいは起こしに行き、共に食堂まで歩いてから料理を作り出す。なのに、今日に限って既にできている。


刻蝋値「…………ルビーが勝手に飯を作るとは思えねぇ。それに明らかに食事の量が多すぎる! こんな勝手な事をした奴は名乗り出ろ!」


エメラルド「…………ごめんなさい」

アメジスト「…………ごめんね」

ルビー「すみません!」


刻蝋値「お前ら…………と、ルビーだと? とりあえず経緯を説明しろ」


まぁ、ざっくりと言うと、食事量の少ない遊牧民達との生活で、ギリギリまで食欲を我慢したルビー以外の女達が、全員で共謀して冷蔵庫から大量の肉を出して解凍したらしい。


そしてルビーが何故謝ったのかと言うと…………


ルビー「私が今朝気づいたときには既に、調理しなければ味が損なわれそうになっていたので、全て調理しました…………」


刻蝋値「昨日のほぼ全員集合時にエメラルドだけ居なかったことといい、水飲もうとしたときにアメジストがあわてて口移しで飲ませたことといい、成る程合点がいったぜ」


ダイア「だけど、私達もう限界だっt…」


刻蝋値「るせぇ!! これが原因で食料不足になって、数日飢餓状態で過ごしてぇのか!?」


マリン「…………それは」


刻蝋値「嫌だろ! だったら微妙に足りないくらい我慢しろよ!!」


パール「な、コクロウは脂肪の栄養貯蔵量が多いから私達の気持ちが分からないんだ!」


エメラルド「そ、そうだよ! もっと食べさせてよ!」


露骨に抗議の声が上がった。


刻蝋値「じゃあ、せっせと釣りでもしとれば良いんだよ! そうだ! そうしろ!!」


ガーネット「はぁ!? いきなり何を言い出すんだよ…………」


あまり見られない困惑の顔。


刻蝋値「じゃねぇと予定航行日数の5日以内に食料が失せる! 飯食ったら、全員釣竿を垂らせ! 勝手に食糧庫を漁った罰だ!!」


アメジスト「もう! そんなに倉庫を詰め込みたいなら蝋値様もとびきりの巨大魚を捕まえてきてよ!!」


いつもの膨れっ面。だが!!


刻蝋値「あー! あー! よーーーくわかった!!! そんなに太りてぇなら、とびきりの大物取っ捕まえて、お前らを皮下脂肪と内臓脂肪でダルッダルにしてやるよ!! 醜くなったら一緒に寝てやらねぇからな!」


俺はそう言って、自分の分のご飯を瞬食してから、某怪盗のごとく器用に衣類をはずしながら、海へと飛び込んだ。


ダイア「あ!ろう……ち…………」


ルビー「…………行ってしまいましたね」


ニクス「ガウ~…………」


サファイア「ブルルッ…………」


アメジスト「ヒグッ…………グスッ…………もう帰って来ないのかなぁ…………」


ガーネット「帰っては来ると思うぜ。…………けど」


マリン「今回は私達に原因があります。食事を終えた人から釣りを始めましょう」


パール「…………そうだね」


~海中~


…………で、今に至るわけだ。ま、俺も感情的に怒っちまったのは良くなかったよな。何がいけないかを分かりやすく言うべきだ。例え相手が子供であれ、大人であれ関係なく…………な。さてと


触覚や尾葉センサーを用いて現在の遊泳速度等を把握した。


刻蝋値(遊泳速度は12m/sって所か。本気出したら4倍くらい速度はあげれそうだな。悪くないが、他の形態も試そう。メタモルフォーゼ・ケンタウロス)


俺は人馬形態に変身した。


刻蝋値(お、重たいから水の抵抗をグイグイ押して進むな、スイミングペースが2倍ほど増したか。が、筋肉が多すぎるから酸素消費量がバカみたいに増えたか…………これは止めておこう。メタモルフォーゼ・ビースト!)


次は速度を獲得すれば最強の破壊性能を持つ、獣形態に変身した。


刻蝋値(速度が更に増し、人馬より総合的な筋肉量が少ないお陰で、基礎酸素消費量が少ない…………が、運動量が増えた分、結局同じくらい消費してやがる…………。人馬より遥かにコスパ良しではあるが、やはり他も試そう。メタモルフォーゼ・ギガバグ! 外骨格強化!)


巨大ゴキブリ形態になった上、外骨格の厚みを増やして体重を増加させた。こうすることにより…………


刻蝋値(狙い通りだ。なにもしなくてもそれなりの速度で沈んでいくし、見た目より筋肉量が少ないから酸素消費量も少く済む…………が、遅いな。泳いでみるか)


俺は6本の足をバタバタ動かしてみた。


刻蝋値(………………進まねぇな! おい!!! 流石に遅すぎだ。ならばラスト、メタモルフォーゼ・マンキー!)


何かと女達から文句を言われがちな、猿形態に変身した。


刻蝋値(…………おおおおおお!6本腕を連携させることによる効率的な泳ぎ! 亜人形態の4分の1ほどだけの酸素消費量…………これだ!)


俺は求めていた省エネな長距離遊泳方法を遂に発見することが出来た。


刻蝋値(ぶっちゃけ獣形態で爆速遊泳すれば、すぐに海底につくかもしれんけど、万が一に備えて酸素を温存しておくに越したことは無い。へっ、女共め! いつもキモイだの馬鹿にしてる猿形態によって惨めにブクブク太らされるが良い!! ハーッハッハッハ!)


俺は何故か、途中から変なことを考えつつ、海底へと潜り続けていった。


~海底・竜宮城~


ここは海底に存在する、空気のあるスペース。その中でもとりわけ有名な、人魚の住みかとも呼ばれる竜宮城である。


???「ねぇねぇ! リシアちゃん、トルマちゃん、ケイちゃん、恥ずかしがらずに僕のほっぺにチューしてよぉ」


かなり酷悪に太った水死体・ドザエモンのような人物が、人魚達にキスを求めている…………


リシア「えぇ…………それはちょっと」


ケイ「あなたねぇ、自分の姿を省みてから物申してよ!」


???「んー? 僕はすれ違う女性という女性を振り替えらせてしまう、絶世のイケメンだぜ? 恥ずかしがることはないさ、ベイベー!」


表情から察するに、彼は本気で言ってるようで、躊躇いを全くと言って良いほど感じない。


トルマ「ねえ、アレスさん、何千年ここに居られるおつもりですか? いくら年を取らず、ここに人が来られないからと言っても…………」


アレス「では聞くがトルマちゃん、もしまたあのリヴァイアサンが襲いかかってきたら、誰が撃退するんだい?」


トルマ「うっ…………」


アレス「以前はたまたま僕が通りかかったお陰で、リシアちゃんを助けれたけど、竜宮城に攻めいられたら、今度こそ僕の力無しではどうにもならないはずさ!」


リシア「それはそうですg…」


刻蝋値「うおおおーーー!?!? なんだここはぁ!! 息できるし、空中並みに速く落下したぞ!? どうなってんの?」


突如、翅を羽ばたかせながら、ゆっくりと着地した刻蝋値に、皆目を丸くした。


ケイ「キャッ! あ、あなた一体何者!? それに、どうやってここに来たの…………?」


刻蝋値「ん?俺は地上に住んでいる、人と仲良しなゴキブリさ」


トルマ「ゴキ…………ブリ?」


刻蝋値「そ、ゴキブリ、地上で昆虫の1種に分類されてる生物さ。ここへは泳いできたよ」


リシア「はぁ!? 泳いで!!? 普通水圧で圧死するわよ!!」


刻蝋値「俺は強いから平気さって、おおお! 人魚じゃねーか!! なぁ、速く泳げる泳ぎ方教えてよ!!」


ケイ「え? 私達に会って、要求することそれ!?」


リシア「普通、何て言うかキスしてくれとかチョメチョメしてくださいとか、皆そんな感じだよね…………?」


トルマ「あはは! あなた面白ーい!」


刻蝋値「いや…………キスとかチョメチョメならわりといつもされてるって言うか…………」


アレス「えーっと…………ゴキブリが人間と仲良く過ごしてるって?」


刻蝋値「うん、(悪い金持ちと賊以外なら)人間と仲良く過ごしてるぜ!」


アレス「信じられないなぁ…………。だって害虫だろ? 僕のパーティーメンバーだった魔法使いなんて、見つけたら即ヘルブレイズで周辺の色んな物ごと焼き払おうとしていたよ」


刻蝋値「えーっと…………その前にドザエモンっぽいあんた、誰?」


アレス「ド、ドザエモン!?」


刻蝋値「おっと失礼、俺は刻蝋値、適当に呼んでくれて構わない。そしてあんたは?」


アレス「こ、この僕、勇者アレスをドザエモン等と!?」


刻蝋値「え! マジで!? これだけ太っててよくもまぁ初期の魔王さんを倒せたものだなぁ!!…………すまん、さっきから失礼極まり無ぇよな」


トルマ「ウププ…………彼、気に入っちゃったかも」


うん、さっきからいくら相手の姿がまんまドザエモンだからって、失礼すぎる。今後どこかの偉い人と交渉事をするのが心配になってきた…………。


アレス「貴様! 人に化けた魔物だな!? 魔王の知り合いということは、差し向けられたエリートモンスター!」


刻蝋値「いーやいやいや!! 違うから! マジで失言は謝りますって!!」


アレス「人と仲良くしてるなぞと嘘ついて、人魚達を連れ去りに来たな!! そうはさせん! 例えエクスカリバーが無くとも、素手で蹴散らしてくれる!!」


そう言って、勇者アレスは構えをとった。初期の魔王さん相手に勝っただけあり、中々のオーラを放っている。


刻蝋値「めんどいから弁明はケンカの後でいいや。それよりも、さっきの話を聞いて正解だったぜ! ほらよっ!!」


俺は、勇者以外が握ると拒絶反応を示すエクスカリバーを投げ渡した。


アレス「!?…………どういうつもりか知らないけど、僕がこの剣を手に取ったということは、君はもう助からないことを意味するぞ。逃げるなら今のうち」


刻蝋値「ビビってるのか? 早く来いよ。楽しもうぜ?」


アレス「後悔しても知らないぞ! ハアアア!! ギガブレイヴ・ストライク!!」


アレスはかなりの加速で音速まで速度をあげつつ、俺との間を縮めて間合いに入った瞬間、勢いを全て剣速に変えて突き刺してきた!


人魚達「キャアッ!!」


アレス「言ったろ!後悔しても…………え!?」


刻蝋値「その姿で速いとシュール…………ゲフン! ゲフン! 流石の一撃だけど、今の俺の甲皮には傷ひとつつかないんだな。ちょっとガッカリしたぜ」


アレス「あ……あ……全力の…………エクスカリバー装備の僕の一撃が…………効かないだと!?」


刻蝋値「よーし、ゴキブリの凄さ、見せてやるぜ。はあっ!」


俺は全身の反動を用い、1つの拳を初速から音速に加速させ、その後は敢えて音速のまま、等速で伸ばしきり、ややゆっくりと引き戻した。こうすることで、常に拳と同じ位置でソニックブームが発生するので、音エネルギーが増大し、眼前の対象に大きなダメージを与えれるのだ。


アレス「アバッババババッ!!!」


ドザエモン…………もとい、勇者アレスは衝撃により、凄まじいダメージを受けている。衝撃波は大体アレスに吸い込まれたらしく、人魚達にダメージを与えていないところは、刻蝋値の配慮と言えよう。


刻蝋値「どーだ、ゴキブリはすげぇだ…………ろ………………あちゃあ」


ケイ「やだー」


リシア「汚ーい!」


ドザエモンのような勇者アレスの体が衝撃に耐えきれなかったらしく、吸い込んだ水分や、蓄積した乳酸などの体液を大量に放出しながらしぼんでいった…………。汚い。


刻蝋値「3人ともゴメン…………掃除用具貸してくれる?」


トルマ「ううん、迷惑なお客さんにガツンと1発入れてくれてスカッとしたよ! 皆で掃除しましょ♪」


刻蝋値「…………そうだな」


こうして俺たちは、大掃除と気絶したアレスの介抱を行った。


第32話 リヴァイアサン、獲ったどーーーー!に続く。


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