第27話
鼻血って、鼻の血管が脆い人はちょっとしたことで出ちゃうよね。……苦労したよ。
第27話 お次は遊牧の大地へ行こうか!
やあ、俺の名は刻蝋値。ちょっと喧嘩っぱやいけど、平和を愛する心を確かに持つ、義賊団のリーダーさ。一昨日2度目の魔王討伐…………というかただの喧嘩を経て、色々と面白そうな情報を得た後、昨日砂漠町で別行動していた仲間達と合流したんだけどよぉ…………
刻蝋値「あー、あれは間違いなく俺を悩殺しに来ていたな…………」
ゴキブリ人間のコスプレをしていやがって、これが可愛いったりゃありゃしねぇ! 腕に抱きつかれた瞬間、思わず鼻血をぶちまけてから気絶しちまったし、ラブホでは過去一番に張り切っちゃったよ! それも朝までな。今は出港して海の上だけど、今度はどこに行こうかな…………? お、あれは
刻蝋値「おぅ、ガーネット、おはよー。いや、こんにちはか」
ガーネット「ロ、ローチ…………」
刻蝋値「なぁ、コスプレしてくれよ! もう一回…………」
ガーネット「うわあああ! それだけは勘弁してええええ!!」
…………逃げられた。いつもは俺にがっついて来るくせに…………、そんなに昨晩は激しかったかなぁ?
マリン「刻様、お話が」
刻蝋値「おう、なんだ?」
まさか一時間ほど説教を食らうはめになるとはな…………。要約すると、ハメを外しすぎて団員を怖がらせないでくれ、だってさ。まぁ、マリンからすれば、いらない仕事を大量に増やされたようなものだから、怒って当然だよな。
ニクス「ゴロロロロロ…………ニ"ャー」
刻蝋値「おう、ニクス! しっかり目に話すか。メタモルフォーゼ・ビースト!」
俺は獣形態に変身した。
ニクス「お、会話できるようにしてくれたか! 亜人形態だとたまにアタシの言葉が通じねぇもんな!」
そう、俺は獣形態になれば、猫型獣魔獣であるニクスの言葉を理解できるのだ。
刻蝋値「おうよ、そのうち獣形態じゃなくてもニクスの言葉を理解し、喋れるようにしてやるぜ! それで、何か用でもあるかな?」
因みに、皆に分かりやすいように人の言葉で表記してはいるが、実際は獣語で話しているから、ガウガウニャゴニャゴ言っているぜ。おっと、メタ発言だったかな?
ニクス「腹減った! 肉ちょうだい!」
刻蝋値「任せろ! 極上の味付け生肉を作ってやるぜ!」
コックの出番! とばかりに、亜人形態に変身し、厨房へと向かった。
~夜・食堂~
刻蝋値「今度はどこへ行きたいとか、希望のあるやつはいるかー?」
エメラルド「う~ん、海や砂漠や魔界のような、緑が少ない場所ばかりだったから、たまには草原地帯とかいってみたいかなぁ?」
刻蝋値「草原地帯…………ねぇ」
ガーネット「ああ、草のベッドでおもいっきり寝転がりてぇ!」
ニクス「ニ"ャー、ゴロゴロ!」
ガーネット「お? お前も同士か!」
ダイア「私には思い切り走り回りたいって聞こえたぞ」
パール「両方じゃない?」
ルビー「ええ、両方ですね。刻蝋値様、私からもニクスをのびのびとしたところに連れていって欲しいので、草原地帯を希望します」
刻蝋値「よし、草原地帯へ向かうか。アメジストとマリンも異論は無いな?」
マリン「ええ、ありません。むしろ僧侶として行ってみたい位です」
刻蝋値「お? そりゃまた一体どうして…………」
マリン「草原には、遊牧の民が住んでいると聞きます。彼らの宗教文化を知りたいのです」
アメジスト「私も草原の呪術師、シャーマンがどんな魔法を使うのか、興味ある~!」
刻蝋値「じゃ、満場一致ってことで、行きますか!」
団員達「おおーーー!」
それから4日ほど、海賊をぶっ飛ばしたり、巨大生物を釣り上げては料理メニューを増やしながら、航海を続けた。
~4日後・コリアンダー大陸沖~
刻蝋値「おーーーーい! どなたかーーー! 居ませんかーーーー!!…………やっぱ姿を見せてくれないなぁ」
アメジスト「皆、シャイなのかなぁ…………」
ダイア「いやいや、普通私達みたいなのが現れたら怪しむよ。ろうち、お前本当に偽装フェロモン出してるんだよな…………?」
刻蝋値「出してるぜ、それも普段の5倍ほど。これだけ出してたら、ゴキブリ型のモンスターには見えないはずだが…………」
ルビー「…………もしかしたら、この大陸の民たちは紛争の最中なのかもしれません。平和な国なら誰かしら迎えが来るのが普通ですもの」
ガーネット「あたし、田舎者だから分かんないだけかもしれんけど、この大陸の国々の知名度って、ヒュージシティがある大陸や、ヘルデザートがある大陸でもかなり低いんじゃないのか?」
エメラルド「確かに、アタイもここは全く知らないなぁ」
パール「コクロウ、ここまで来てなんだが、上陸は考え直した方がいいかもしれん。どうする?」
刻蝋値「…………上陸は、しよう。ただし、パール、アメジスト、お前たちは船の番を頼む。他は俺に着いてこい」
パールの盾で防御を成し、アメジストの魔法で撃退する算段だ。
マリン「と言うことは、上陸して探検するのですね?」
刻蝋値「いや、上陸はするが、まずは島の状況を把握しよう。探検するかはそれからだ」
~しばらくして~
ダイア「まあまあ歩いたよね」
ガーネット「へへ、そこらかしこから殺気が溢れてるなぁ」
刻蝋値「なんかあったら俺が全て解決してやるぜ!」
ニクス「ガウウ!ゴロゴロゴロ…………」
刻蝋値「おお、鋭いな。今の発言は建前で、本当の目的は…」
突如矢の雨が降ってきた! 団員達は皆気づいており、避けるのは簡単そうだが、俺は敢えて超スピードで周囲を動き回り、矢をひとつ残らず掴んで回収した。
刻蝋値「そう、圧倒的な実力を殺す気のやつらに見せつけるのが目的さ! 出てこい! 囲んでるのは気づいてるんだぞ!」
奴等は立ち上がり、姿を見せたかと思うと、今度は全方位から真っ直ぐ矢を放ってきやがった!
刻蝋値「へへ、遅すぎるぜ」
ま、こんな攻撃なんて、音速以下の速度で走っても、余裕で阻止できるんだけどな。
刻蝋値「部隊長さん、流石に無駄だと気づいただろ? 話し合おうぜ」
第28話 草原の豊かさと人の豊かさの違いが悲しすぎる……に続く。




