第21話
海賊が主人公のフィクションって、面白いよね!
第21話 お前の宝は俺のもの!俺の宝は俺のもの!
ソーン「ふぅ、時にはのんびり海を眺めているのも良いな」
俺の名はソーン・カラム。海賊団船長をやっている。ハンサムフェイスに反して、非常に残虐性の高い気性を持つことが、ギャップ萌えのポインt…
したっぱ「お頭!3時の方角からスッゲェゴージャスな船が来ていま!」
ソーン「気分をぶち壊すなぁ!!」
『バァン!!』
したっぱ「ヒッヒィ! すいやせん!!」
…………野郎、俺の銃撃を避けるとは、したっぱの風上にも置けねぇな。
ソーン「ッチ、3時か…………あ!? なんだあの船! 金ぴかじゃねぇか!! 野郎共! あの船を奪ってこのオンボロ船を乗り捨てるぞぉーーー!!」
~ゴールデン・ヴィクトリア号~
刻蝋値「お、気づきやがったぜ。義賊団員につぐ! 戦闘準備をしろぉー!」
義賊団員達「ヨーソロー!」
俺の名は刻蝋値だ。黒狼血義賊団の団長であり、現在は海賊団のキャプテンでもある! 狙うのは勿論悪い海賊船や麻薬密売船、悪い金持ちの船だ! 襲いまくって名前を広げてやるぜ!!…………にしてもあの船長、どっかで見たな。
刻蝋値「オラァ! 聞こえるかぁ! オンボロ海賊団! 俺は黒狼血義賊団、もとい海賊団船長の刻蝋値だ!! 今からてめぇらを義賊活動の一環で壊滅させる!! 覚悟しろぉ!」
対してオンボロ海賊団の船長は
ソーン「義賊海賊だぁ!? ふざけんな! 野郎共! 多少の船の損傷は構わん! 撃って撃って撃ちまくれぇ!!! あ…………! 思い出した! てめぇは通りすぎ様に俺様をボコったゴキブリ野郎! あのあと務所から抜け出すのに苦労したんだぞ!!」
刻蝋値「知るか! 悪いことくらい反省しやがれ!」
ソーン「つーか俺の独白を奪ってんじゃねぇ!!」
刻蝋値「お前の独白は俺の物!! 俺の独白は俺の物だ!! つーか、元々俺のだろ!」
いつの間にか会話が明後日の方向へ行っている様子を見て
ダイア「うっわ、いつの間にか心底どうでも良いことで言い争いしてるし…………」
ダイアは心底呆れていた。
ソーン「今回は負けねぇぞ!ファイアーーー!!」
号令と共に砲弾が複数飛んできた。
刻蝋値「ここは俺に任せろ!」
刻蝋値は物凄い水平な角度の立ち幅跳びで、一番はしっこを飛んでいる砲弾に飛び移り、飛び移った瞬間マッハ4.2の突っ張りを行うことで衝撃波を飛ばし、一直線に並んだ砲弾を全て破壊した。
ソーン「んなっ!? 何をした!!」
刻蝋値「左端の砲弾を足場代わりにして、残りを衝撃波で一掃した。ついでに足場にした砲弾も遠くへ飛ばせて一石二鳥!」
水面を足踏みしながら答えた。一方ゴールデン・ヴィクトリア号は…………
マリン「キャアッ!?」
パール「平気?」
アメジスト「あ、ありがと~」
刻蝋値の立ち幅跳びの衝撃で船が揺れ、バランスを崩した後衛達をパールが受け止めていた。
ガーネット「こんのド阿呆!! 船壊す気か!」
刻蝋値「まー、まー、そう言わず、お前らも出撃しろよ」
ダイア「じゃ、3人で行く?」
パール「ええ」
ガーネット「これ以上船上で跳ばれたくないからなっ!」
3人が同時に跳躍し、敵船に乗り込んだが、ゴールデン・ヴィクトリア号は殆ど揺れなかった。いかに刻蝋値が無理な方向へ馬鹿力で跳躍したのかが伺える。
敵船クルー「怯むなー! 撃てー!」
敵も負けじと砲撃を続ける。
刻蝋値「あらよっと!」
刻蝋値は海を踏み込んで跳躍し、鮮やかなムーンサルトキックで砲弾を蹴り返した。
敵船クルー2「くっ……だがもう一発は返せまい!」
そう、空中に居るのなら、次の弾を蹴り返しは出来まいと考えたのだ。
刻蝋値「エアロウォーク!」
しかし刻蝋値は、爆発的な脚力で空気を蹴り、更に羽ばたきで加速を行うことで弾の前へ移動、そのまま両足で豪速球の砲弾をお見舞いしたのだ。
敵船「ウギャアア!!」
速度は破壊力に直結し、敵船に大きな風穴が空いた。そんな威力で蹴ったのだから、刻蝋値も当然後退し、自分の船に戻った。
エメラルド「コックお帰り~。そろそろ出番?」
刻蝋値「おう、宝物庫へ行こうぜ」
エメラルド「うん!」
俺はエメラルドを小脇に抱え、今度は軽やかな跳躍で、先程ぶち開けた穴へと入っていった。
ルビー「これが黒狼血義賊団の戦い方…………」
新入りのルビーは戸惑っている。
~敵船・甲板~
ダイア「フッ! ハッ! ソラッ! どうした? 海賊ってこの程度かい?」
したっぱ達は、格闘技の達人であるダイアに手も足も出ないようだ。
パール「ハアッ!」
海賊達「グワァッ!」
こちらもパールの一撃で、2,3人が纏めて片付けられている。
ソーン「チッ! だらしねぇやつらだ! 手本を見せてやる。オラオラ!」
業を煮やした船長が、拳銃を取りだし、パールに撃ち始めた。
パール「無駄よ! その程度で私は倒せないわ!」
左手に構えた盾を的確に移動させ、銃弾を防いでいく。
ソーン「ああ、そうらしいな。ならこれはどうだぁ!!」
不意にカトラスを持ち、思いきり降り下ろしてきた。
パール(!、重い。だけどリーチは私が上!)
盾で受け止めたソーンの一撃は想像以上に重かったが、リーチで勝るパールの槍がすぐさまソーンに襲いかかる。
ソーン「当たるかっ! オラァ! ドリャア!」
パール「うっ…………うわっ!」
ソーンの横凪ぎをどうにか盾で受けたものの、体勢が崩れたところで、渾身の振り下ろしが襲いかかり、槍で受けたパールは立っていた甲板が抜けて、落ちてしまった。
ソーン「上と下で分けてやる! エアカッター!」
船ごと真っ二つにするのでは!? と思うほどの飛ぶ斬撃を放った!
ガーネット「エアカッター!」
同じ威力の技で、相殺したのは歴戦の女戦士、ガーネットだった。
ガーネット「パール、あんたは雑魚を頼む。コイツはあたしが責任をもってぶっ飛ばす!」
パール「ガーネット…………うん、了解!」
ソーン「へっ! てめぇには因縁があったな!」
以前もソーンが放ったエアカッターを、この時はガーネットに軌道を反らされており、今回も邪魔をされたのだ。
ガーネット「ああ、だったらなおさら楽しもうぜっ!!」
ソーン「おおっ!」
両者ともが飛びかかり、鍔迫り合いが始まった。
海賊達「うわあっ!」
ダイア「ヒュウ♪」
剣同士がぶつかり合う衝撃で暴風が吹き荒れ、したっぱ達があちこちに吹き飛ばされる。
ソーン「おらっ!」
ガーネット「フッ!」
ソーンの振り下ろしをガーネットは余裕で受ける。
ガーネット「ほらよっ!」
ソーン「おおっ!」
ガーネットの横凪ぎをソーンは受けたが、少し体勢がぐらついた
ガーネット「ほらほら、どうした!」
ガーネットの連続の突きをソーンは紙一重で避け続ける。
ソーン「舐めんなぁ!」
ガーネット(へぇ……)
最大パワーの横凪ぎを剣で受けたガーネットは、流石に横へ大きく滑らされてしまった。
ソーン「とどめだぁ!!」
ガーネット「武器破壊!」
ソーン「何っ!?」
ソーンが飛びかかりつつ剣を振り下ろした瞬間、横移動を急停止したガーネットの強烈な横凪ぎで、ソーンのカトラスを破壊したのだ。
ガーネット「終わりだな」
ソーン「チッ、く……そ…………!!」
ガーネットは急所を外してソーンを斬り、戦闘不能に追い込んだ。
ガーネット「終わったぞ! そっちは?」
ダイア「終わったよー!」
パール「さっきは助けてくれてありがとうね。自分の未熟さが分かったよ」
ガーネット「おう、それなんだが、今のパールやエメラルドに良い修行の場所が…」
言いかけた瞬間、刻蝋値が甲板をぶち抜いて現れた。
刻蝋値「よう! まぁまぁの宝があったぜ!」
ソーン「あ! てめぇ! 俺の宝を盗るな!」
切り傷から大量の血を滴らせながらも、元気そうに喚き散らしてきた。
刻蝋値「あ? 海賊同士なんだし奪い合いが普通だろ」
ソーン「俺は見ての通り怪我人だ! 医療費くらい置いてけ!」
刻蝋値「うるせぇ!お前の宝は俺の物!!俺の宝は俺のものだ!!!」
そう言って俺は、アフリカ像二頭が全力で踏みつけたのと同等の威力の拳を奴の顔面に叩き込んでやった。全く、宝を盗られただけですんで、ありがたいと思ってほしいくらいだぜ。
刻蝋値「本当なら、お前みたいな虐殺魔野郎はぶっ殺されても文句言えないんだぞ! 取り合えずその辺の島まで送って、海軍に引き渡すからな。覚悟しとけ!」
ソーン「ックソ…………(この野郎、俺の嫌がる点を的確に突いてきやがる。何なんだ?)」
ソーンは顔に拳の跡を残し、鼻血を出しながら考えた。
~1時間後~
俺は今、ヒュージタウンの港に、海賊共を連行し終えた所だ。パンチやキックで風圧を起こして船の推進力にしたら、あっという間に着いちまった。
海軍「賞金稼ぎのMr.G氏でよろしいですね?」
刻蝋値「おう!」
俺は亜人形態で黒いローブに身を包み、上の方の両腕を外に出している。そして偽名を名乗ることで、別人として行動する。所謂変装だ。
海軍「賞金首ソーン・カラムの捕獲報酬1億ゴールドをお渡しします。逮捕の協力ありがとうございました!」
刻蝋値「気が向いたらまた、こんなやつらを連れてくるぜ!」
実は海軍などの軍連中は、俺が黒狼血義賊団のリーダーと同一人物であることくらい、とっくに気づいてはいる。では何故捕まえないか? 1つは俺が強すぎて、迂闊に手が出せない。もう1つは、強すぎる俺が、強い賊を捕まえてくれるから、無駄に犠牲者を出さずに済むということが理由だろう。こうしてちょっと変装するだけですんなり金をくれる辺り、よっぽど賊共に困っているようだ。…………最も俺達も金持ちを困らせている以上、迷惑な所があるのだろうけど。
刻蝋値「さて、戻るか」
~夜、ヴィクトリア号~
刻蝋値「御馳走様、さてと、本日の収穫のお披露目だ!」
アメジスト「キャーーー!☆☆ 大金!☆★☆」
ガーネット「おお! 強い武器買い放題だな! 黄金の斧とか欲しいぜ!」
刻蝋値「ガーネット、残念だけどそれ、重い上に脆いからバトルで使えねぇぞ」
ガーネット「……???どういうことだ!?」
刻蝋値「簡単に言うと、まず金は鉄と比べてかなり脆い。加えて同じ大きさの鉄よりも約2.5 倍程重い。今ガーネットが使ってる斧が金で出来ていたと仮定したら、大体20キロ位か。そんな重くて脆いものを思いきり何かにぶつけるのを想像してみろ」
ガーネット「う~ん、泥んこが落ちる感じでぶっ壊れるな」
刻蝋値「だからシンプルに強い武器を買っとけ」
ルビー「しかし…………恐ろしく儲かりましたね…………義賊団というものは、こんなに儲かってしまうものなのでしょうか?」
ダイア「う~ん、多分ここだけだと思うよ?」
マリン「皆さん戦闘力がお高いですからね!」
エメラルド「ルビーもその内慣れるよ! 弱い方のアタイももう慣れっこだし」
刻蝋値「ま、気楽が1番だ。無理はしないに越したこと無いぜ。団員達に忠誠とか誓わせる気はこれからもないし」
ルビー「はい、マイペースに頑張ってみます!」
刻蝋値「ルビー、コイツらを見てみ、誰一人俺に忠誠心を持ってないだろ?」
ガーネット「何いってるんだよ?あたしはあんたが魔王を討伐してから忠誠しぱなしじゃないか」
ダイア「私もこんな風にっ!」
…………早速始まりやがった。少しはルビーに気遣え! 顔赤くしてるじゃねーか!
刻蝋値「ぷぁっ、これのどこが忠誠心のある態度だ!」
エメラルド「チュー精神ならあるじゃん!」
ガーネット「満天の船の上とかロマンあるじゃん!さ、ヤろうぜ。ルビーも一緒にな!」
刻蝋値「俺はゆっくり夜空を見るんだぁーー!」
パール「コクロウ、私たち、何処までも追いかけるわよ」
刻蝋値「ああ、もう、夜の海には出られないし、詰んでるじゃねえか! くそっ!」
ルビー(…………この分野なら私、役立てるかも!)
ルビーは何かを見いだした表情をしていた。そして、彼女の口元の動きが少し変化していた。
第22話 海には海の良さがあるなぁ~に続く。




