第15話
初めに得意な仕事から始めていくゴキブリ少年であったが……?
第15話 義賊団の第1任務。山賊団を1つ残らずぶっ潰せ!
俺の名は刻蝋値。異世界転生したら、ゴキブリになっていた中学生だ。今日は非人道的な事をしていないにも関わらず、S級賞金首になるという災難を受けたが、一方で2人の女の子と出会ったぜ。…………この世界に来てから女運が良いのかもしれないな。
パール「…………王城から抜け出してきた理由か。2つあるな」
刻蝋値「…………」
パール「1つ目は、君たちに付いていって、強くなりたい」
刻蝋値「2つ目は?」
パール「2つ目は、…………国王のセクハラが我慢できないから、逃げたいんだ」
女性陣 (うわぁ…………あのオッサンマジかよ)
刻蝋値「…………話逸らすようで悪いけどよ、国王こそ逮捕されるべきだろ。ただの色欲魔じゃねえか。差し支えなかったら、何されたか言ってくれるか?」
パール「胸さわったり、臭い息を吐きながらキスしようとしてきたり、隙あらば、ドゴォン(発砲音)!! も触ろうとしてきたな…………最悪だよ、本当に」
刻蝋値「分かった。お前もさっき設立した義賊団のメンバーに入れて、クソ国王から匿うわ。俺は刻蝋値。よろしく!」
パール「よろしく頼むよ。槍での攻撃と盾を用いた防御が得意だから、いつでも頼ってね!」
おっ、魔王戦で課題になったタンクの加入か!
刻蝋値「おう! 頼りにしてるし、パールこそ俺らを頼れよ!」
こうして、取り合えず山賊退治がてら、寝床を探しに山を登り始めた。
~崖の前~
エメラルド「うへぇ…………これ登るのはキツいなぁ~」
ガーネット「アメジスト達は聞くまでもないとして、パール、登れそうか?」
パール「なんとか行けそうかな?…………でもギリギリだと思うわ」
刻蝋値「よし! アメジストとマリンは脚、パールは背中、エメラルドは俺の頭にしがみつけ」
後衛二人「はい!」
エメラルド「え!? あんたアタイ達を背負って登るの!? て言うか頭にしがみつくってどういうこと?」
刻蝋値「肩車だ、普通の奴を窒息死させるくらいの力加減で脚を閉じとけよ」
エメラルド「これくらい?」
刻蝋値「上出来だ! パールも遠慮するな、俺はその気になれば、腕1本で馬より速く動ける腕力がある。女4人を運ぶなんて、朝飯前だ」
パール「で、ではお願い…………します」
相当恥ずかしいのか? 頬がめっちゃ赤いな。ま、掴まってくれたし良いか。
刻蝋値「4人を置いたら直ぐ迎えに来てやるぞー!」
ガーネット「分かった! それまでなるべく登っとくわ!」
ダイア「ガーネット! 勝負だ!」
フッ、全く前衛二人の仲の良さには呆れるぜ、さてと、崖を登りきると…………
~崖の上~
刻蝋値「到着! お? 山賊がわらわら居やがるな。四人とも、コイツら黙らせとけるか?」
パール「任せ!…………うっ!」
エメラルド「何か気持ち悪い…………!」
アメジスト「酔ったんだね! うんうん、誰しもが通る道だよ」
エメラルド「むぅ! 悔しい…………うっぷ」
マリン「まぁまぁ、二人とも無理は禁物よ。私だって、山賊には遅れを取りませんから」
パール「アハハ、王城兵をビンタして倒していたもんね…………」
パールは、王城でのマリンの無双ぶりを思い返し、苦笑いを浮かべた。
エメラルド「少しはマシになってきた!」
刻蝋値「じゃ! 頼んだぜ」
こうして俺は、崖を登っている二人を回収しに行った。
二人「うおおおおお!!」
刻蝋値「ご苦労! 後は俺にまかせときな!」
ダイア「わっ!」
ガーネット「もうちょっと遅くてもよかったんだぜ?」
手早く二人を両脇に抱え、羽ばたきで飛行して、崖の上まで運んだ。
刻蝋値「お? この場は制圧できたか!」
パール「ええ、山賊討伐は慣れたものよ!」
エメラルド「コックー、コイツら貧乏だから、盗みがいがないよー」
刻蝋値「山賊のしたっぱだからな…………、一旦飯にしようぜ!」
ガーネット「賛成! 腹減ってたわ!」
今日の料理は、ヘビーボアのステーキだ! トッピングに激辛唐辛子を少々いれたから、これはテンションが上がるぜ!
エメラルド「うまーい! 本当にコックさんだー!」
刻蝋値「おうよ! だからそう呼んでくれたときは、嬉しかったぜ!」
料理は俺の誇りの1つさ♪。
パール「食べ物は体の源、だから美味しいにこしたことはないよね」
ガーネット「お前、分かってるじゃねぇか! この分なら、すぐにあたしくらいの強さになれそうだな!」
ダイア「ろうち! おかわりあるー?」
刻蝋値「猪ステーキは無いが、骨髄スープの麺なら作れるぞ」
ダイア「頂戴!」
刻蝋値「分かった、分かった」
俺は、追加の料理を作ることにした。後衛二人はステーキで満足したらしいが、俺を含む前衛は食い足りねぇからな。
刻蝋値「よし、完成! 好きなだけ食え、残りは俺が頂く!」
そう言って、俺は山賊のアジトに向き直った。丁度奴等が奇襲を仕掛けてきたからだ!
山賊「死ねぇーー!! っうぇ!?」
刻蝋値「弱ぇぞ!」
斧の一撃を敢えて頭で受け、足払いで頭蓋骨を地面に強打させて倒した。
山賊の1人「袋叩きだ!」
山賊たち「オオー!」
刻蝋値「纏めて来い!」
俺は、尾葉センサーで空気の流れを感じ取り、山賊達の斧を避けつつ微妙に軌道をずらしてやった。
山賊達「うわ! 外れねぇ!? テメェの斧が邪魔だ! このバカ共が!!」
面白いほどに言い争いが起こり、連携が取れなくなったので、首筋に手刀を当てて昏倒させた。
刻蝋値「ちょっと遊んでくるわ、お前らはゆっくりしてな~」
ガーネット「いってらー」
アメジスト「頑張ってー!」
~山賊のアジト内部~
頭「テメェかぁ!? このバンデッド様率いるバンデッド山賊団に攻め込む命知らずはぁ!」
刻蝋値「おー、おー、頭痛が痛ぇよ。あー、痛ぇなあ!」
うん、3回同じ意味の言語を発したな。
バンデッド「バカにしやがって! 野郎共! 挽き肉にして虫の餌にしてやれ!!」
山賊達「うおおおおお!!」
刻蝋値「ソニックナックル!」
俺はマッハ4.1程の速度に加速した拳で宙を殴り、その時に発生したソニックブームで山賊達を気絶させた。
刻蝋値「あーあ、頭痛が痛い頭まで気絶しやがったよ。まぁ良いか」
とにもかくにもこのアジトを当分の基地にすることに成功した。ラーメンの残りを持って、入ってきた女性陣にもこれからの予定を説明し、今日のところは合計5つの山賊団を壊滅させた。
刻蝋値「ふぁーあ、やっと行方不明者の救助と山賊の身柄引き渡しが終わったな!」
夕暮れ時、漸く本日のシゴトが終わった。
ガーネット「…………あんたがアジトを壊滅させまくった弊害だろ?」
マリン「流石に疲れましたわ」
皆、疲労が見てとれる。
アメジスト「蝋値様~! アジトまで空輸してー!」
ダイア「私もー!」
エメラルド「アタイもー!」
パール「私も頼む」
空を飛べねぇ人間とは、つくづく不便だなと思いつつ、
刻蝋値「仕方無ぇな。メタモルフォーゼ・マンキー! そして外骨格カット! ギガウィング!」
俺は飛翔に適した形態になった。
エメラルド「わー! アタイと同じくらいの身長だー!」
パール「うっ!…………失礼だが気持ち悪いな…………けど、ちょっと可愛いかも…………」
…………本当にこの形態は騒がれるよな。地味に喜んだのはエメラルドが初めてかもしれん。
刻蝋値「文句はいいから、一人一本の腕に捕まれ、鎧とか筋肉で重たいガーネットとパールは真ん中の腕を掴めよ。他は自由にしろ」
そうして飛んだのだが、流石に6人となると、少し飛翔速度が落ちてしまった。元々ゴキブリって飛べないしな…………
途中、アメジストとエメラルドの子供コンビが言い争いをしたりしたけど、無事にアジトに帰れた! 晩飯も食ったし
刻蝋値「さて、寝るか!」
ガーネット「待てよ!ローチ!」
刻蝋値「なんだよ、寝かせてくれよ…………」
顔を赤らめて俺の肩を掴んできた。この臭い…………酒なんてあったっけ? ってかお前はギリ未成年だったような…………??
ダイア「私達、ムラムラしてるから楽しもうよ~」
刻蝋値「…………これまたストレートに言ってきたな。あの方法以外なら付き合ってやるよ」
アメジスト「新入り二人も混ぜて楽しもっ!」
こうしておぞましい宴がまた始まってしまった。
刻蝋値「お前ら、無理して来ることはねぇからな…………んっ!?」
こっちを顔を赤らめて見てる二人が可哀想だったので、無理をするなといった瞬間に、アメジストに唇を奪われた。
アメジスト「ぷはぁ☆、お子ちゃまにはこんな大人のキスを真似することはできないよねー!」
エメラルドへの当て付けらしい…………そもそも年齢的に、エメラルドにコレを見せていることがアウトなのに、コイツらは…………
エメラルド「アタイだってそれくらいできるよ!見てろ~!」
刻蝋値「いや、よく考えろ!初めてのキスならなにも俺じゃなくてもぐっ!!」
エメラルドに躊躇いはなかった…………才能も悪くない感じだ…………
パール「私も…………良いかしら?」
刻蝋値(いつの間にか鎧脱いでるけどよぉ…………モデル体型じゃねぇか。俺の理性が飛んじまう! もう…………限界だ!!)
ああ…………この2人もダメかぁ…………
結局俺は戦車砲を60発撃つことになった。あのやりかたもパールにお願いされたら断れなくて…………くそっ!ダメだった………………。
これで6人食っちまったか。前世にいた頃は考えもしなかったことだぜ。
~翌日~
刻蝋値「残すところ、この大陸の山賊団は後3つだ。俺が2つ壊滅させるから、お前らは左側の1つを頼んだぁ。…………じゃ、よろしくー…………」
昨晩は…………ドッッッッッ!!!!と疲れた!!
パール「昨夜はごめんね、元気だしてよ!」
刻蝋値「…………誰のせいだと思ってんだよー」
ガーネット「はっはっは! まだまだお子ちゃまだな!」
刻蝋値「うるせぇ! 6対1で攻めといて何を言ってやがる!! 仕事だ! 仕事!!」
もうやってられん、俺はさっさと仕事場に向かった。
ダイア「怒っちゃったね」
マリン「年頃の子は難しいですね」
エメラルド「え!? コックって年頃だったの!?」
~午後・アジト~
刻蝋値「終わった終わった!」
ガーネット「なぁ! 終わったから楽しもうぜ!」
刻蝋値「はぁ!? お前、どんだけもの足りねぇんだよ!? これからの方針を説明したいのによぉ……」
ガーネット「楽しみながら説明すればいい!」
聞いてくれなさそうだからそうすることにした。
刻蝋値「えー、話を聞きづらいと思うが、…………気にせず聞いてくれ」
他の人たち「…………うん」
流石の他メンバー達も、一本取られた表情だな。…………あれ? 驚きではなく、一本取られた表情だと…………? 兎に角。
刻蝋値「俺はこの二日間、山賊共の命を取らないように命令をしたが、何でか分かる人はいるか?」
マリン「…………優しさ?」
刻蝋値「逆だ。あのクソ国王への当て付けにするために、敢えて不殺主義を掲げることにした。つまり、どちらかというと他者を苦しめるためだ」
エメラルド「確かに、あの王様もだけど、山賊たちも量刑によっては拷問に晒されるもんね!」
刻蝋値「そそ、苦しんでる奴が"○んだ方がましだー!"って言うよヴッッ!?な状況にしてやるのさっ!」
…………しまった、弱点突かれ始めたぞ…………てかこの状況も拷問だよな??
パール「だけど、あの国王を苦しめようとしてくれるのは素直に嬉しいな!ローチはやっぱり仲間思いだよ!」
刻蝋値「まぁ、それもあるな。話を戻そう。義賊として名を馳せるには、悪い賊を潰すだけじゃ足りねぇ。何をしたらいいと思ヴッッッ?」
ヴヴ、そろそろまずいぞ……
アメジスト「迷える子羊に施しを与える?」
刻蝋値「ぞうだ。奪っだ金でどうじようもないぐらい困っでる奴を助げる!ぞじで最後、も"ヴびどづあ"る"!ぞれはなんでしょヴ…………?」
エメラルド「悪徳な金持ちから盗む!」
刻蝋値「正解だ! 流石怪盗! いつかあの国王からも盗むぞ! それこそ戦争を始めるぞっ! って時とかなっ! うっ! ダメだッッ!!」
ガーネット「っしゃあっ!!」
刻蝋値「クソッ…………これ以上は…………無理…………」
…………くっそぉ、ダメだった!! 義賊団のリーダーがコレじゃあ示しがつかなすぎる。ゴキブリも生物から逸脱はできねぇんだよ…………
ガーネット「あー、スッキリした。ありがとな」
刻蝋値「そりゃどうも…………え? お前らまさか」
パール「ごめんね、私も我慢の限界だ」
アメジスト「癒してあげるわ!」
マリン「一仕事が終わったのですし、よろしくて?」
…………もう勝手にしろよーーー!!
俺は心の中で泣くしかなかった…………こんなとき、男友達が居たら、負担が分散されるんだろうな。いや、そいつが死ぬか。
…………結局詰んでやがるんだよなぁ。この先大丈夫なのか、早くも心配だぜ。
んでもって、気絶という最悪の睡眠を取らされたのさ。
第16話 金だけではどうにもならねぇこともあるのか…………に続く。
 




