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第141話

今話から、数話だけ休憩回を挟み、最終章へと向かいます。

第141話 入団者の面接でもやってみるか!


刻蝋値「さて、時間か」


今日は面接の日だ。うちの傭兵団は、どんなに弱いやつでも採用されることがある。入団後の研修で、大抵のやつに勝てるように強くするからだ。


刻蝋値「ルビー、アレス、ホネット、バレット。今日はよろしくな!」


4人「ああ(はい)!」


~集団面接~


刻蝋値「えー、では、左の方から順に、自己紹介をお願いします」


一番左の人「はい、アレク・サンドラ。21歳です! ジョブはソードマンで、……」


これは想定質問だ。取り合えず下手でも言えてれば、問題なし。一定のやる気があると見なせるのだ。……まぁ、人殺しとか、ヤバい趣味のやつは落としたりするがな。


ルビー「では、当社への志望理由をアレクさんから順に、お答えください」


これもまぁ、やる気とかだな。


アレス「あなたが人生で一番苦労したお話を、聞かせてください」


これはストレス耐性や、忍耐力を測るための質問だ。弱いやつを落とすため……ではなく、訓練時に適切な負荷を与えるための指標にするのさ。


ホネット「ふう。では皆さん、少し息抜きにストレッチでもしましょうか。まずは背筋をグーンと伸ばしましょう!」


本日の分岐点、ホネットのストレッチ講座だ。俺達ゴキブリ星人は、チキュウではやはり少数しか居ない。ゆえに偏見を抱かれやすい。俺やバレットは厳ついので、舐められないが、ホネットは見た目通り、年相応の少年だから、バカなヤツはストレッチに応じなかったり、ヤジを飛ばしてくる。

要はソイツの差別意識や素直さを測るのが目的で、こういうヤツは、素直に効率的なプログラムにも応じないので……即、落とすぜ!


……そして


バレット「おう、俺からテメーらに質問がある。とりあえず、そこの金髪小僧」


金髪の戦士「は、はい!」


バレット「好きな食い物を教えろや」


そう、威圧枠、バレットだ。普段から口は悪いといえば悪いが、加えて、足を机にあげてもらい、背もたれにも深々とかけてもらう。要はやーさんみたいなオーラを出してもらっているのさ。


金髪の戦士「俺の好物は……チョコです。………………」


バレット「へぇ……チョコかぁ……んーな甘ったるいもんばっかり食ってると……テメーの根性も甘ったれてねーかぁ? ええ?」


金髪の戦士「お、俺自身は決して……甘ったれていません! それは、貴社に入ってからも継続します!!」


圧迫面接。志望者に圧力をかけ、ソイツの感情コントロール力を測るのが目的だ。うちでは、ビビる分には構わないが、やはり怒り出したり媚びへつらったりするヤツは落とす。基本的には、聞かれた質問に答える事を正解としているのさ。


バレット「はっはっは、だったらどうやってその根性を示すんだぁ? なんか言ってみろや」


こういう質問も、凄みこそ効かせているが、訓練をサボらないだの絶対寝坊しないだの、それなりの事を普通に言えば良い。ま、嘘はバレるがな!


~終了~


刻蝋値「では、お疲れ様でした。結果は後日通達しますので、魔物や交通事故にお気をつけてお帰りください」


志望者達「失礼しました」


しばらく時が流れ……


バレット「あー! 慣れねぇ姿勢で話すのも疲れるなぁ、おい!!」


刻蝋値「よくやってくれたぜ。今日は3人泣かせてたな」


女性2人に、男性1人。半数泣かせてた事になる。


ルビー「フフフ、でも、彼ら彼女らは質問に答えれてましたね」


アレス「僕は3人とも採用で良いと思うよ」


刻蝋値「そうだな、泣いてない奴等だったら、金髪の彼が良いかな?」


ホネット「僕のことも舐めてませんでしたし、ストレッチの爽快感を共感してくれたのは嬉しかったなぁ~……」


バレット「アイツは良い! 俺がみっちりしごいてやるぜ!」


刻蝋値「決まりだな」


4人採用。残り2人はヒドイ差別野郎と、想定質問も答えず、ストレッチにも応じない舐めた奴だったので、落とす事にした。


刻蝋値「さてと……ん?」


身なりのボロっちぃ男「ちきしょう……あんなに鍛えたってのに…………」


ガーネット「惜しかったな。さて、牢屋行きだ!」


刻蝋値「ガーネット、ソイツは何だ?」


ガーネット「ローチ! いつぞやの海賊が復讐に来たから、コテンパンにしてやったぜ!」


海賊「ソーンカラム様だ!」


刻蝋値「……誰だっけ?」


ソーン「ぐぬぬ……お前は6tパンチで顔を凹ませたイケメンすら忘れたのか……!!」


刻蝋値「忘れた。ってか話的に、凹んだ顔を戻したんだな。スゲーじゃん!」


面白い特技の奴だと思った。


ソーン「くっそぉ……監獄で出来る筋トレを極めつくし、絶対的なパワーとスピード、スタミナだって蓄えたつもりだったが……お前らには遠かったか!!」


なんかよくわからんが、結構な執念深さだと思った。……ので


刻蝋値「じゃあさ、うちの傭兵団に入って、強さを極めてみるか?」


ソーン「何だと!? 下僕になれと!!?」


刻蝋値「チゲーよ。そんなクソッタレ関係じゃねぇ。俺はお前に力と金を与えるから、お前は対価として平和活動を行う。うちの団はそんな関係なんだよ」


ソーン「……フ、打ちのめすべき対象が近くに居るのも悪くない。良いぜ、俺をヘッドハントしたこと後悔するなよ!」


刻蝋値「ぜってぇ負けねぇよ。今後の働きに期待してるぜ!」


空白の1つが埋まった。そしてもう1人が……1悶着ありそうな奴だった。


~翌日・早朝~


「……おい……おいいい!!」


外で誰かが叫んでやがるな。


アリアドネ「うるさいわねぇ……ちょっと黙らせてきてちょうだい」


刻蝋値「うん、行ってくるわ」


~外~


ボロボロな勇者「離せバカヤローーーー!!!」


俺のペット枠になった巨木、ユグドラシルに拘束され、身動きが取れなくなってる。


刻蝋値「あれ? お前どっかで会ったよな」


勇者「レックズ様だ!!」


刻蝋値「えーっと……あ、昔アメジストとマリン……あと、カーボンを顎で使ってたチキン野郎か。いやー、懐かしいなー!」


レックズ「いーから解放しろ!!」


刻蝋値「そんでよー、次会ったときが確か、品の悪い3人組を騙そうとして、返り討ちに合っていたんだよな! そしてついでに俺を殺そうとして、無様に敗けた」


レックズ「それだけじゃねぇ!!」


刻蝋値「そうそう、確か王様に俺を指名手配させたんだけど、結局俺は、それを義賊生活の足がけにしたんだよなぁ。御愁傷様だぜ」


レックズ「だーかーらー! その後が重要なんだよ!! あれから数日後、1人で森に迷ってた俺に、大小様々な岩が降ってきた! そしてその1年後、そこの巨木とお前の争いに巻き込まれ、死にかけた!!」


刻蝋値「うーん、どっちもプアビレッジ周辺の話だよなぁ……あそこの爆発トマト、マジで美味くなってるよなぁ……」


レックズ「真面目に思い出せ!!」


刻蝋値「うるせぇなぁ。ユグドラシルとの思い出は分かるんだけど、落石って……ああ! 村の開拓時に、邪魔な岩を人通りのないポイントに蹴飛ばしたんだった! お前、本当に御愁傷様だな!!」


レックズ「お前っ! 野生の勇者として強くなった俺の実力、思い知らせてやる!! うおおおっ!!」


が、ユグドラシルに強く締め付けられ


レックズ「イダダダダダッ!!!」


まともに動くことすら出来ないのが現実だ。


刻蝋値「ユグドラシル、もう放して良いぜ」


ユグドラシル「ギュオオ……」


レックズ「ぶあっ!……死ぬかと思った。お前、こんな怪物従えるなんてスゴいな」


刻蝋値「従えてるんじゃねぇ、友人関係なんだよ」


レックズ「だが、俺のポテンシャルはそれ以上! もし、仲間にしたいと願うのなら、ならんこともないぜっ!!」


刻蝋値「えー……」


仲間にしたってアメジストに焼却されるのが見え見えなんだよなぁ……


刻蝋値「よし! こうしよう!!」


~魔界~


刻蝋値「てなわけで、こいつをしごいちゃってください!」


魔王・デストロイブラスト「心得た。勇者よ、死を覚悟して望め」


豪腕の指を鳴らし、心臓が潰れそうな程の重低音を響かせている。


レックズ「……うっそぉ」


第142話 中性子星……最っっ高の修行場だぜ!!に続く。

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