第117話
スタンドプレーは良いときもあれば、大迷惑な時もあるものさ……
第117話 全力の代償
刻蝋値「うおおおおおおおっ!」
俺は刻蝋値! 海をも潜りきるゴキブリだ! 今、キャビテーションを発生させながら、ウェンズデースターの海を泳いでいるのだが、この星の海は想像以上に深く、なんとも泳ぎ甲斐があるぜ!!
刻蝋値「どけどけー!」
その辺を泳いでいたリヴァイアサンを退散させながら、刻蝋値はマッハ200で泳ぎ続けた。
刻蝋値「おっ、漆黒の深海に一筋の光。あれが竜宮城に違いねぇ! 待ってろよー、マーメイド達!!」
だが……そんな自身の泳ぎぷりが後方に大損害を与えていることを、ゴキブリ少年は知るよしもなかった……。
アレス「平気かい? リシア」
リシア「ええ、でも熱いし痺れるわ……」
アレス「暫くは進めそうも無いね……」
刻蝋値やインフィニティ、更にはインフィニティに挑発されたラピスが全力で潜ったため、衝撃波に加え、高熱、そしてプラズマが発生し、水中で遅いメンバーに被害が出たのだ。
シックル「生きてるか? 人魚ちゃん」
ケイ「ええ、あなたが衝撃波を斬ってくれたお陰でね」
シックル「おうさ! にしてもスナイプの野郎はつめてーな!」
ウッド「ウォータとゴールドも冷たいでやんす!」
フレイ「速く泳げるからって調子乗りすぎだよな。でも、二人とも、クソ遅い俺に合わせる必要なんて無いからな」
刻蝋値に泳ぎの基礎を教えてもらったとはいえ、まだまだマグロ以下の速度でしか泳げないフレイは滅茶苦茶遅い部類なのだ。
ソイル「何言ってるんだよ、5人揃ってこその表部隊だ。君を置いてはいけないよ」
ウッド「右に同じく!」
フレイ「ソイル……ウッドォ~~」
フレイは優しい2人に感激しているようだ。
タート「しかし、この環境悪化した海をどうやってわたるか……そうだ!」
タートは甲羅から小さな穴の空いたシートを取りだし、自身の甲羅にセットした。
タート「皆、ここに入ってくれ」
アレスが入ろうとすると……
アレス「うわあっ!? 小さくなった……」
なんと縮小化して、シートの中に入ったのだ。他の皆も入っていく。
タート「そして超耐性付与の丸薬さえ飲めば……うん、熱もプラズマもへっちゃらだぜ」
シックル「おー! おー! コイツは良い! そのまま竜宮城まで頼むぜぃ!」
タート「おう! 任せろ!!」
なんとか無事に進むことが出来そうだ。
~競争組~
インフィニティ「オラオラ、どうしたぁ! ラピス。これ以上は速度が出ねぇか!!」
最大出力で推進機構を稼働させているラピスに対し、本気より少し遅いペースで潜水しているインフィニティが挑発を行う。
ラピス「クソッ……まだお前には遠いか…………スパークさんとも実力を開けられている以上、お前を超えることは難しいのかっ!」
遂にはエネルギー切れを起こし、減速し始めた
インフィニティ「俺は刻蝋値に追い付くぞ! ウハハハハハッ!」
高笑いしているインフィニティを見送ることしか出来なくなった。
ラピス「……まぁ、こうなった以上は深海遊泳を楽しもうか。プラズマチャージ、ヒートチャージ、そして、フィジクスチャージ」
周囲に有り余るプラズマと熱、そして、自身の速度に比例して抵抗になっている水圧の力を利用し、発電機のごとく、エネルギーを蓄えていく。
ラピス「奴が巻き起こすプラズマを吸い続ければ、半分ほどのエネルギーは帰ってきそうだな」
下らない遊びで消耗し、実戦で動けないほど馬鹿なことは無いのだ。
~もうひとつの競争組~
ウォータ「な、なぁ、ゴールド……」
ゴールド「ウォータ、やはりお前も立ち止まるか」
後方でもプラズマが荒れ狂い、熱量も半端じゃないとは言え、前方は見るのも嫌なほど、荒ぶる環境に変化している。
ウォータ「生身の俺たちじゃあ、こんなの行けねぇだろ! あの3人どんな速度で素潜りしてんだよ!!」
ゴールド「俺に聞くな……後方と合流するのを待とうか」
スナイプ「つっても俺達で進める限界がこれだと、人魚どもは躓いているだろうな……」
トルマ「え、でも何か近づいてきてるよ!」
スナイプ「お、うさぎと仲良しの亀か」
タート「待たせたな、後は俺が運んでいくぜ」
先程のアレスのような反応をしながら、4人は袋に収まった。
タート「うっし、一風変わった深海の景色を楽しんで行こうぜ」
優雅に楽しみながら行くようだ。
~竜宮城~
人魚達「お待たせしました」
刻蝋値「おーおー美味そうな料理だ! 本当にただで食って良いのですか?」
俺の眼前には凄まじく豪華な海の幸が並べられている。
ナブー「うむ、遠慮はいらん。本家竜宮城は客人を最大限にもてなすのがしきたりじゃ。さぁさ」
竜宮城の王様、ナブーさんが進めてきた。それじゃ遠慮なく
刻蝋値「いただきマンボウ!」
特徴的な食前の挨拶をすると、数名の人魚達がツボりだした。だが、俺はそんなことを気にしていられない。何故なら
刻蝋値「ほっぺたが落ちる美味さってこの料理のことなんだなぁ!」
ナブー「フォッフォッフォ、気に入ってもらえて何よりじゃ」
刻蝋値「しっかし驚きましたよ。なんせここから下に文明があるって言うのですからね」
ナブー「ああ、……じゃが、魔物たちの文明じゃ。とてもじゃないが干渉することなぞ出来ぬ」
刻蝋値「だったら……」
第118話 俺達が魔王と話をつけてきましょうか?に続く。




