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怖い話21【お届け物】800字以内

作者: 雨間一晴

 ガタン!


 私は玄関から響く音に思わず身構えた。


 どうやら、何かドアの郵便受けに届いたらしい。しかし、今は午前一時だ、郵便が来て良い時間ではない……


 安いし角部屋だからと、古いアパートに一人暮らしをしていた。今もそのドアの向こうに誰かいると思うと、無防備な部屋着でいるのが心細くなった。


 女子なんだから、ちゃんとオートロックのところに住みなよ。そう言ってきた友達を思い出した。


(友達のいたずらかな?一応見てみよう……)


 恐る恐る、年季の入ったクリーム色に変色している郵便受けに近づき、音を立てないように中身を確認した、小さな茶色い紙袋だ。


(なんだろう……)


 嫌な予感がしたが、中身が気になってしまい開けた。未開封の一箱の風邪薬だった、紙袋の音が玄関に響いた。


「あのーすみません」


 ドア越しから男の声が聞こえて、私は動けなくなった、聞き覚えの無い声だ。


「あの、場所間違えて入れてしまいました。友達が風邪で苦しんでいるって聞いて届けに来たんですけど、ごめんなさい、返してもらっていいですか?」


 私は、返事をするか迷ったが、さっきの物音で、ここにいるのはバレているし、本当に友達が苦しんでいるなら助けたいと思ってしまった。でも、確認したい事がある。


「その友達は、どちらに住んでいますか?」


「え?あー、隣の部屋です」


「……隣に人は住んでませんけど」


「……」


 異様な静寂の空気に呼吸が詰まる、私は冷や汗が止まらなかった。


「あー、そうなんですか。それなら大丈夫です、失礼しました」


 次の瞬間、短い舌打ちの後で、外からドアを蹴ったのか、すごい音が響いた。


 私はしばらく動けずに固まり、震える手でドアのチェーンロックをかけて、引っ越す事を決意した。


 手の上に残された風邪薬が重く感じた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 本当にありそうで怖かったです。最初から最後まで緊張感が続いてとてもいいと思いました。 [気になる点] 「私」とドアの位置関係ですが、「私」からドアは常に見えているのでしょうか。もしそうなら…
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