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贖罪のブラックゴッド 〜神への反逆者〜  作者: 柊 春華
~果てなき誓いをこの胸に~ 第二章:遠く夢見たもの《アンビシャス》
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第二章 遠く夢見たもの⑥


 時刻は午前三時を回った。


 携帯端末の着信履歴を見て神楽夕姫は苛立ちを含んだため息を漏らす。


 数分もしないうちに携帯端末を見る。着信履歴に変化はない。ため息をつく。もう何度これを繰り返したかわからない。



「帰ってこない!」



 バンッとテーブル叩く。並べられた食器が音を立てた。


 テーブルの上には輝に買ってきてもらった食材で作った料理の数々が並んでいる。


 一緒に夕飯を食べる約束をして腕を振るって調理したもの。出来上がってからずっと手はつけられず、とうに冷え切ってしまった。



「輝くんの、ばか。ここまでしてるんだから、わかってくれてもいーじゃん」



 テーブルに突っ伏して帰ってこない家主について不平を口にする。自分だけが空回りしている気がして遣る瀬無かった。


 部屋の静寂が耳に痛い。広い部屋で一人でいると、自分は何をしているんだろう、と陰鬱な気持ちになる。


 静けさに耐えかねてテレビをつけた。どの局も取り上げているのは夕方からずっと同じニュースばかり。


 敵性覚醒体が現れて『アルカディア』の東ゲートが壊された。防衛にあたった人たちに多くの死傷者が出たが、都市に侵入した魔獣はなく、被害は最小限に留められた。敵性覚醒体も防衛にあたった狩人が討伐。壊されたゲートは『ティル・ナ・ノーグ』と狩人で防衛中。ゲートの修復には約一ヶ月かかるという。


 繰り返し同じ報道がされた後は、なぜ敵性覚醒体が現れたのか、なぜ被害が出たのか、どうして未然に防ぐことができなかったのか。結論なんてわかりきっていることを専門家やコメンテーターが延々と論議している。



「大丈夫、だよね」



 敵性転生体を討伐した狩人。それが輝のことを言っているように思えてならない。


 輝が飛び出して行った後にこの報道。大丈夫。きっと違う人。仮にそうだったとしても、討伐したのだから無事に決まっている。


 そう自分に言い聞かせても、連絡がつかないせいでどうしても不安が拭えない。


 目を閉じる。しばらくそうしていると眠気が襲ってきた。時間も遅いのだから当たり前か。



(きっと大丈夫だよ)



 眠りに落ちる直前に、不安な気持ちに寄り添ってくれる優しい音色が頭の中に響いた。

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