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君の神様になりたい  作者: 夜月綺麗
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僕らの物語

初めてまして夜月綺麗です!

今回は学生物の作品になります!

元は君の神様になりたいと言う歌のイメージ台本として書いていたのですが、これは終わりを作らなければいけないと思い、小説と言う形にさせてもらいました!

思春期ならではの心の葛藤、劣等感などを描きました!


文章力ないので自身無いのですが、是非読んで下さると嬉しいです!



 『君の神様になりたい』

       作・夜月綺麗

  

 一人の男がいた。自分を犠牲にしてでも他人を助けようとする男がいた。顔は思い出せないが記憶の中の男はいつも泣き笑いをしていた。

 

 〈俺はお前を助けたい、、お前を必ず助ける。〉

 


 「はっ!」

 

 揺れる電車の中、俺は久しぶりにあの夢を見た。俺の退屈な日々が消えた...あの日の夢を。


 『次は〜』

 車内アナウンスが鳴る。

 

 「あっ、寝過ごした....。」



これから俺はある人との約束を果たしにいく。


顔も思い出せない大切な人との約束を。




【三年前】


笹木愛久ささき あいくは、とある中学校に通う平凡な学生だ。

朝九時にホームルームが始まり四時に学校が終わる。そしてその後何を求め街に出る。毎日その繰り返しだ。


それが退屈で仕方なかった。まるで、底のない暗闇に沈んでしまうようような気がした。

神様に何度もこの退屈から解放して下さいと心の底から願った。しかし、神様は忙しく、それかはたまた僕みたいなちっぽけな存在には目もくれないのか、この退屈から未だに解放されていない。

所詮やはり、神様なんて人々が作り出した幻想にしか過ぎないのだ。


 はぁ...本当に退屈だ。退屈すぎて時間が止まっているかのようにも感じる。

それに比べて小さい頃は楽しかった。退屈なんて考えた事もなかった。そのせいか、小さい頃は夢みてた大人になると思い込んでいた。何でも出来ると、壁を飛んでいけると思っていた。


しかし違った。


大人になると待ち受けているのは壁でも、楽しさでもない。


そこにあるのは〈退屈〉だった。


 気を紛らわそうと友人を作り、遊んだりもした。


しかし、無理だった。


そこには僕の求める何かはなかった。次第にはこの世界で生きることは、死ぬよりも苦しいだろうと感じるようにも感じた。


信号の色が赤から青に変わる。同タイミングで足を前に出す。当たり前のことだ。まるで僕の人生のようだ。


信号の音、靴が地面に擦れる音、喋り声、周りの声や音が嫌いで僕は耳を閉じた。脳内で流れ始めるradの新曲が僕の心をえぐる。



 「今日も何もなかった」


 今日もいつも通り街には僕が求める何かはなかった。

PASMOを改札にかざし、ホームを登る。そして、いつも通り電車に乗り、いつも通りの帰宅路を歩んだ。


帰宅路を歩んでいる時にはradからボカロに変わっていた。そのボカロの曲は初めて聴く歌だけど聞いていると何故か鼓動が高まった。


『僕らは命に嫌われている〜♪』


空を眺めながらつい口ずさんでしまう。


そうしているうちに煉瓦造りの大きな家が現れる。僕の家だ。

両親は共働きで帰ってこない日が多々あった。

鞄から鍵を取り出し玄関を開け、靴を脱ぎ、洗面台で顔を洗った。そしてキッチンに向かい冷蔵庫から牛乳パックを取り出す。


" ゴクゴクゴク"


詰まっていた排水口の水が一気に流れるような豪快な音を立て僕は牛乳を飲み干した。


「ふぅ...」


袖で口をぬぐい、空の牛乳パックを食卓に置いた。

そして、キッチンを後にし、自分の部屋へと向かう。


階段を登り奥の部屋へと進む。


部屋に入り鞄をベッド付近に投げ、制服を脱ぎ捨てる。


そして部屋着に着替えベッドに横になる。


いつもと同じだ。


静寂な部屋に時計の針の音が鳴り響く。

外からは子供達の笑い声が聞こえてくる。

自分のこの生き様を笑われているかのようにも聞こえた。


僕は鞄からスマホを取り出し、イヤホンをさしてもう一度あの曲を聴いた。


「命に...嫌われている..か」


恐らくこの曲に惹かれる理由は、歌詞に共感しているからだろう。この曲の歌詞に僕の求める何かがあったのかもしれない。


満足いくまでその歌を聴いていると


"ピンポーン"


家のチャイムが鳴る。母さん?いや、ないな。さっき今日も遅くなるからご飯食べて寝てね、ってメールがきていた。だとしたら宅配便か?それなら出なくていいや。


もう一度イヤホンをつけ横になった。



カーテン越しに入ってくるオレンジ色の光がだんだん濃くなってくる。

ベッドに横たわって何分経過したのだろう。かなり経った気がする。子供達の声が聞こえなくなり、無音の時間が長い。


この世界に僕一人だけがいるみたいだ。


もし...


ー もし、この世界から僕が消えたら ー


 何故かそう考えてしまった。


もし...もしもの話だ。


僕がこの世界から消えたらどうなるのだろうか。親は悲しむのだろうか?学校の先生、友人は泣いてくれるのだろうか。いいや、そもそも僕が消えたことに誰が気づくのだろうか。


何を期待してるんだ僕は。


僕が消えても時間は進むし、人は何事もなかったかのように歩み続ける。


心に溜まっていたモヤモヤが少し漏れてしまったのかもしれない。


普段ならこのまま眠気が来て少し寝るのだが、何故かこの日は眠くならなかった。


 「何考えてんだ僕は...。」


あぁ...わかったぞ。このように考えてしまうのはこの曲のせいか。この曲は僕に問いを突きつけているんだ。命に嫌われている奴が周囲に起こす影響はどういったものなのか...を。


悲しみ?それとも怒り?


違う



正解は.....



 〝なんとも思わない〟だ。

 

 当たり前の事だ。僕が皆んなを愛してないし、思ってもいない。そんな奴が他人から愛されるはずもない。僕は欲にまみれた常人のなりそこないなのだ。


人間は所詮偽りで出来ている。欺瞞に満ちている。そう、人の殻を破るとそこには欺瞞の塊があるのだ。誰も本音で話さない、偽って他人に良い人だと思われたい、ただの偽善者だ。それが人間の本性なのだ。

未来なんてない。未来は過去なのだ。都合のいい言葉で、綺麗な言葉で、ごまかしているだけにしか過ぎない偽りなのだ。

僕はそんな醜くて、残酷で偽りで出来ている世界が嫌いで仕方ない。


だが 、一番嫌いなのは、そんな世界で生きてる僕自身だ。


僕は偽りの鎧を着ている。その鎧は一度着ると二度と中からは開かない仕組みになっている。開けたいと思った事もあったが無意味だと気付いた。何故ならその鎧を着ていないと、僕は死ぬからだ。心を食われたちまち死にいたる。この世界で生きていくためにはこの鎧を着続けなければならない。

だが、この鎧を着ていると、名前の通り偽りという悪魔が近づいてくる。退治しても退屈しても、増える。増えていくたびに心が重たくなる。


毎日が綱渡りをしているよう気分なのだ。


それなら、いっそ...飛び降りた方が...。


そう思うのと同時に、何か黒い影が僕に襲いかかってくるように感じた。



ー 楽だぞ ー



心の何処かでそう言っている。


一瞬の痛みでこの重みから解放されるならどんなにいいか。


ー ほら、早く。おいで ー


僕はベッドから立ち上がり机の方へ向かった。


頭が少し痛い。


机の引き出しからカッターナイフを取り出し、カチカチと音を立て刃を出した。



ー さぁ、それを手首に当ててごらん ー



僕は心の声の通り刃を手首に当てた。この腕を引けば、僕は...。もう...頑張らなくてもいいだろ?もう...楽になってもいいだろ?



ー 早く楽になろ? ー



手が震える。


 「は...?震えてんじゃねぇよ」


鼓動が高まる。


 「まさかっビビってんのかっ!!? っ!これを引けば終わりなんだっ...この退屈な日々に終止符が打てるんだっ!」


ー さぁ...さぁ... ー


「うるせぇ!!ちと黙ってろ!」


更に脈を打つスピードが上がる。


息が荒れ、額の汗が手首に落ちた。

僕を急かすように時計の秒針の音がやけに早くやたら大きく聞こえてくる。


 「はぁ....はぁっ...っ!だからっ...お願い..だ...引いてくれっ...。な?お願いだから」

 

 心が拒絶しているかのように手の震えがさらに大きくなる。


 

ー また、一人ぼっちになるの? ー


その言葉と同時に、公園のブランコに乗る昔の自分の姿が浮かんだ。


嫌だ。もう一人は...!


 『嫌だぁぁ!!!』


僕が刃を引こうとしたその時...!

 

 《もう、よせ。》

 

 「ハッ!!?」


 後ろから声がし咄嗟に振り返ると、そこにはグレーのパーカーを着た、高校生ぐらいの黒髪の男が立っていた。 身長は大きく、恐らく180はあると思う。大きい瞳に少し前髪がかかっていて、芸能人に例えるなら福士●汰君に似ている。ごめん、言い過ぎた。これじゃあ福士●汰君に申し訳ない。 閑話休題


それより...

 

 「お前は...っ!誰だ!?」


 冷静になったのか、手の震えは収まり、鼓動も収まりかけていた。

 

 「俺か?俺はなぁ、、お前の神様になる男だ!」

 

 男はニコッと笑い言う。僕は一瞬男が何を言っているのかが理解出来ず放心状態になってしまった。神様?あー...あの参拝したら願いを叶えてあげるって言ってる存在しないものか。僕はそんな胡散臭い話に耳を傾けてる暇はない。早く帰ってくんないかな。 そう思いながら僕は男を睨んだ。

 

 「おいおい〜つれないなぁ〜....あっ。座らせてもらうぜ!」

 

 男は僕のベッドの方に歩み出しベッドに座る。


この男、本当何なんだ?


外のオレンジ色の光が男を照らす。


「くぅー!!日が落ちてきたなぁ!」


男は手を大きく広げ伸びをして言う。


やむ終えない。


僕は受話器をとり警察に電話しようとした。


すると男が笑いながら言う。

 

 「やめとけやめとけ、無駄だから〜」

 

 「は?何だよ。何が無駄なんだよ。知らない奴が家にいて、それを警察に通報することの何が違うってんだ。」

 

僕は受話器を耳から離し男に言う。すると男は、大きい目を片方閉じ、空中で円を描くように人差し指を一周回して言う。


 「いいや、無駄だね〜。その行為自体が無駄なんだ。どうせお前は通報しない。しかも、さっきインターホン鳴らしたじゃん〜...居留守とか、よくないぜ」

 

僕は受話器を元に戻した。正直言うと通報をする気はなかった。少し脅かして出て行かせようとしただけだ。けど、やけに自信満々に語るものだから本当に通報してやろうかと思った。


「誰だが知らないけど、早く出て行ってくれないか?本当に警察のところに行くことになるぞ」


僕は出しっ放しにしていたカッターナイフを机に戻しながら男に忠告した。


 「今のお前の考えてること、当ててやろうか?」

 

 男は人差し指を僕に向け言う。

 

何だ?この男。占い師か何かか?だったらお金だけ払うから出て行ってくんないかな?


 「は?お前なんかに僕の気持ちがわか...」

 

 〈退屈〉

 

 「え??」

 

 男は僕が言い終わる前に言った。そして僕の表情をみて少し笑い、話を続けた。 

 

 「とにかく退屈で仕方ない。誰も信用してないし愛してもいない。自分がそうだから他人もそうだと決めつけている。欲しいものは特にないが、この退屈を消してほしいと願っている。」

 

 男はスラスラと語る。一体何なんだこの男は。この男が言っている事は悔しいぐらいに事実だ。だから否定の仕様がない。強いて言うなら欲しいものはたくさんある。例えば....例え...ば。何もねーや。

 

 「あぁ、そうだよ。退屈なんだ。全てが、生きる事が退屈なんだ。他人を信用したり愛したりするのも馬鹿馬鹿しい。」

 


 「はぁ〜?馬鹿馬鹿しい〜?いいや違うね。本当は自分の事を知って欲しかったんだろ?共感して欲しかっただけなんだろ? けど、誰も自分を理解してくれないからそういう建前を作って自分はそうであると思い込んでいるんだ。」

 

 「なに...を」

 

 「お前は自分の愚かさ無力さに気づいていながら見て見ぬ振りをしているんだ。」

 

 「違う!!僕はそんな事してない!」

 

 「してるんだ。いやー....とんだ被害者面だよなぁ....」

 

 「!!」

 

 腹が立った。今すぐコイツをぶち殺してやりたい。この全て見透かしたような大きな瞳をえぐってやりたい。


「お前の..っ!!お前のその小さい物差しで僕を測ってんじゃねえ!!わかったような事いいやがって!!!僕はそういう人間なんだよ!それの何がいけないんだ!人に迷惑かけてないだろっ...!?

一生懸命誰にも迷惑かけず、小さく、細身になって生きてきたんだっ...!」


あぁそうだ!何がいけないってんだ!僕は...僕は!!


視界がぼやける。涙のせいなのか、それとも....


心に溜まっていたものが、一気に溢れ出た。


「誰も...僕の事なんか分からない...分かろうとしないじゃないか!」


男は無言で僕の事を見ている。僕が思っている事全部聞こうとしている。


はっ。なら、聞かしてやるよ。この気持ち悪い退屈な話を。


「家に帰っても誰もいない、今日起きた事を話す相手も、テストで満点取った事を伝える相手もあない。」


ー 退屈だ... ー



「いてもいなくても変わらないっ!道端に落ちてる石ころのようだ!」



ー 気持ち悪い.. ー



「仲間を簡単に捨て強者の方へつく。信じていたのにっ...!」



ー 悔しい.... ー



「ありがとうって...! 助かったよって...!言って欲しかった!」



ー 本当にくだらない 。皆んな死んじまえ ー


沢山の顔が浮かんでくる。横山、金田、父さん、母さん、先生...キリがない。

お前らなんか嫌いだ。死んじまえ。死ね...死ね...っ死ね!!



「僕はっ!!」



自分でももう何を言っているのかが分からなくなってきた。この心に溜まっているものを全て吐き出したくて、必死だったのかもしれない。

思い出したくない記憶、思い出したくない顔、思い出したくない時間...そんないくつもの過去が走馬灯のように見えた。

こいつに、こいつに僕の全てを言ってやりたい。 どんなに悩んだか、どんなに辛かったか、どんなに...苦しかったのかを。

だけど、もう何もない。


「僕は...」


一生懸命その言葉の先を探しているが、見つかるのは暗い部屋のベッドに座る男と、月光の反射で鏡に映る、泣いている男とかだ。


その先がないのに気付いたのか、男はベッドから立ち上がり僕の方へ近づいてきた。


そして、少し微笑んで言う。


「知ってるよ。辛かったな。苦しかったな...。憎かったな。けど、安心しろ。今度は俺がいる。そんなお前を救うために俺がいるんだから」

 

 「っ!!!!」


泣くな。泣いちゃダメだ。泣いたら認めてしまう。


「だから俺を...君の神様にさせてくれ」

 

男の目は本気だった。


「僕の....神様?」

 

 「あぁ。だから、お前のその〈退屈〉を俺にくれないか?」


 

 少年は言った。もし、この退屈が消えたらどんなにいいか....。


 

 神様が人々の作った幻想ではなく、実在するのなら、この退屈から解放して欲しいと。

 

 いいや、違うな。別に神様じゃなくてもいいんだ。親でも、担任でも、悪魔でもいい。僕は願っていたのだ。この退屈から救い出してくれる人物が現れるのを。ただの傲慢な願いだとは分かってる。けど、どうしても願ってしまうのだ。表向きの関係じゃなく、本音で話し合うことの出来る楽しさを。

 どうやら神様の事を誤解していたらしい。神様は千を助けるため一を捨てると思っていたが、どうやらそうでもないらしい。むしろこんな僕の事を助けようとするほど人が良い。けど僕は、

 

  そういうお人好しを...。

 

 「わかった」

 

 「よっしゃ!宜しくな!」

 

  探していたんだ。

 

 

 〈その日、久しぶりに僕の心臓が動いた〉



ありがとうございました!!

是非コメント等宜しくお願いします!

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