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神は忘れる事を好まない

悠希に助けられた弥羽。彼女は小さな願いを叶えるため、運命の渦に巻き込まれていく。

「ん、飲め。ここは冷える。」

「···ありがとうございます。」

私はモンスターに襲われリーダーを失い、仲間に裏切られた。私自身もモンスターの手で殺されそうになった、そんな私を助けてくれたのが悠希さんだった。

「······」

「助けられなくて···ごめん。」

「えっ···いえ、これは私達の責任ですから。」

カップを持った手が震える。

「こんなの···もっと奥に行けば、日常茶飯事でしょう。」

彼はうつむきながら頷く。

「あーあ、何もかも無くなっちゃたなぁ。」

「······」

「私ね、最初はソロでやってたんですよ、でも段々モンスターが強くなってきて一人じゃあうまくいかなくなっちゃって。そんな時だったんです、先輩に会ったのは。凄く強くて一人で何でも出来るのに、私みたいな人集めてパーティー作って、ホント頼りになる先輩でした。···ああゆう人のことをヒーローって言うんだなぁ、なんて思った時もあったんですよ。」

散々泣いたはずなのに、まだ涙が出てくる。

「人って、あんな簡単に死んじゃうんですね。誰にでも優しくて···いつも···守ってくれて······」

彼は何も言わず、私の叫びを聞き続けた。

「···なんでよっ、なんで先輩が死ななきゃいけなかったのよっ!誰かを助ける為に、いつも頑張ってたのに···なのに、なんで先輩が死んで私が生きてるのよ···」

出来る事なら代わりたい。そう思った瞬間、頭の中で何でも叶えてくれると言う神の言葉が繰り返される。

「悠希さん、私とパーティーを組みませんか?」

頭の整理がついた時にはもう、彼に頼んでいた。


「とりあえず、セーフゾーンに行く。二人分の食料と武器の研磨に。」

「分かりました。私も仲間が無事か見に行きたいので。」

裏切られたとは言え、元仲間なのだから。

私は、血が出そうなくらい手を握りしめた。

「いらっしゃい···あら?悠希じゃない、お帰り。」

セーフゾーン唯一の商業店に入ると、優しそうな女の人が悠希さんに声を掛けてくる。···以外と美人。

「ああ、追加の食料と武器の研磨を頼む。」

「まいど!あんたも食べざかりだ···あれ、そっちの嬢ちゃんは誰だい?」

不意に私に気づき駆け寄ってくる。

「えっ、えっと···その···」

「おやおや、結構可愛いじゃないかい。軟派でもしたのかい?」

間近で顔を見詰められ返答に困ってしまう。

「···新しいパーティー。」

悠希さんがそう言うと女の人は即座に振り向き、悠希さんを凝視した。

「そりゃあ···めずらしい。あんた、名は?」

「冬深、弥羽···です。」

「そう、弥羽ね。あたしはここのオーナーの芝多雪、別に『シバタさん』とか『雪さん』なんて呼んでもいいけど、あたし的には雪姉って呼んで欲しいかな♪」

明るさに押され、危うく雪姉と呼びそうになった時あることに気づく。

「あっあの、今オーナーって···。」

「うん?あたしだけど、オーナー。」

「えっ、ええぇぇぇぇぇ!!」

ダンジョン唯一の商業店のオーナーと友達になりました。

「あはははっ。悠希、言わなかったのかい?」

「······」

「ふふっ、まあそうなるよね。ダンジョン唯一のよろず屋『矛盾』のオーナーに突然自己紹介なんてされたら。」

「いっいえ、大丈夫、です。」

私は何とか持ち直す。

「雪、また来る、それまでに用意しといてくれ。」

それだけ言うと悠希さんは店を出ていった。

「さてと、色々と準備しないとね。おい、あんた達!黒糖パン25個と研磨材を持ってきな!さ、弥羽ちゃんはこっちおいで。」

完全に逃げる機会を逃してしまい、しぶしぶついていく。わりと落ち着いた雰囲気の廊下を進んだり曲がったり、さすがに覚えられない。

「アイツは元気にやってるかい?」

「あれで元気なのかどうか。」

「ははっ、確かに。」

何度目かの角を曲がると、確実に場違いなピンクの扉を見つけた。雪さんは当然その扉に手を掛ける。

「さ、ここだよ。」

そう言って中に入れられた私は、その内装に驚いた。

可愛いく飾られた白いクローゼット、何種類と化粧品が置かれた鏡台、柔らかそうなピンクのベット、枕の横にはウサギと黒い熊のぬいぐるみが置かれていて熊の両手には小さな剣が握られている。

「似合わない、かい?」

雪さんは少し恥ずかしそうだ。

「まあ、あたしにこうゆうのが似合わないことぐらい分かってるんだけどね。」

雪さんは、なんとゆうかすごくグラマラスな人だ。出てる所は出ていて引っ込む所は引っ込んでいる、一言で言うとボン キュ ボンと言うやつで、正直無いこともないとしか言われないスレンダーな私としては凄く羨ましい。

「私は、いいと思います。」

雪さんはとても驚いたような顔をして、すぐに笑顔になる。

「弥羽は優しい子だね、悠希が引かれたのも分かるよ。」

「いや、引かれたなんて、私が強引に組んでるだけですよ。」

「どっちが、なんてどうでもいいんだよ。あいつが誰かと一緒にいるって事に意味があるの。」

まるでどこか遠い場所を見るかのように、雪さんは悲しげな表情になる。

「あの二人が生きていれば、こんな状況にはならなかったかも知れないのにねぇ。」

あの二人。もしかしたら雪さんも大切な人達を亡くしているのかもしれない。

「元気を出し···」

「姉さん!荷物の用意が出来ましたぜ。」

言い終わる前に扉の奥から声がかかる。

「あいよ、悠希が来る前に表に運んどきな。」

流石オーナーと言うべきか、急なかけ声にも冷静に判断している。

「さっ、あたしらは当の本人を探しに行こうか。」

そう言って私達は外に出た。


悠希はおもいのほかすぐ見つかった、彼はセーフゾーンの中心にある噴水に腰掛けていた。だがその前を何十人の白鎧に囲まれていた。

私は急いで駆け寄る。すると、白鎧達の先頭に立っている男の声が聞こえて来た。

「僕の所へ来る準備は整ったかい、悠希。」

騎士のような格好をした男は、まるで悠希を威圧するかのように目を見開く。

「僕らはこの地獄から人々を救おうとする同士じゃないか、これからは手を取り合っていこう。」

だが、悠希は少しも反応せずただ座っている。

「そろそろ独りでやるのも限界だろう?僕の下に来れば必要な武器や人材、アイテムまでなんでも揃う。これは君にとっても悪い話では無いと思うのだけどね。」

男は、全く反応しない悠希の様子を見て眉をひそめる。

「···ここまで言っても君は変わらないのだね。チッ、帰るぞ。」

男がそう言うと白鎧達は一斉に道を開けた、その隙に弥羽は急いで悠希のもとへ駆けよる。

「だだっ大丈夫ですか、悠希さん。」

「!···ああ。」

弥羽の行動を見た男は、鼻で笑う。

「君にも心配してくれる友くらいはいたのだな。」

さすがに弥羽も限界だった。

「だったら何なんですか、あなたには関係無いでしょう。これ以上悠希さんを馬鹿にするなら同じパーティーとして許しませんよ。」

男の動きがぴたりと止まる。

「君は彼のパーティーなのか。···一つ忠告しておく、彼とはすぐに別れたほうがいい、じゃないと君もその人殺しの餌食になるぞ。」

「えっ」

男はそう言うと白鎧達を連れて帰っていく。

「······す···。」

悠希はふらりと立ち上がる。

「ごめん、少し一人になりたい。」

そう言うと足早にダンジョンに消えた。

「あーあ、行っちまったねぇ。」

男と入れ違いに現れた雪は寂しそうに呟く。

「あの様子じゃあ一週間は帰ってこないね。」

「···なんで、何で悠希さんがあんなこと言われなくちゃいけないんですか!悠希さんは私を助けてくれた、モンスターに殺されかけた私を助けてくれた優しい人です。なのに、何で人殺しなんて呼ばれなきゃいけなあんですか!」

弥羽は悔しかった、それが自分の事では無いとしても悠希を馬鹿にされるのは嫌だった。

悔しむ弥羽に雪はそっと手を乗せる。

「仕方ないんだよ。悠希が悪い訳じゃない、むしろ悠希だって被害者だった。それでも一人生き残っちまったてだけで許せない奴もいるのさ。」

「悠希さんが、何をしたって言うんですか···。」

「よくある話さ。ただそれが大勢の人に絶望と落胆を与えただけでね。」

「聞かせてください。」

即答する弥羽に雪は少し困った顔をする。

「···いいよ、あたしが語れる事は少ないけど、出来る限り教えてあげる。」

「あれは確か、あたしが高二に上がってすぐのことだったかな···」

今回でやっと3話目ですよ、小説書くって大変ですね。ま、自分みたいな小市民には今回のような平和なお話が一番ですね★


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