神は二人を好まない
戦いは、どちらかが倒れる事で勝敗が決まる。
でも、それじゃあ駄目なんだ。
黒のローブが紅く染まり、何も無く世界に吸い込まれていく。
もう、何百回喰らったかわかんねーな。
足も腕も、とっくに限界越えちまってら。
それでも、強さは立ち続ける。
どれだけ血ヘドを吐こうとも、数十の骨が折れようとも、一度たりともその背を地面に着けはしない。
強さはただ、真っ直ぐ前の優しさを見続ける。
「···何で···何でなんだよっ!」
優しさは叫んだ。
明らかに、誰もが見ても歴然に、自分は勝っている筈だった。
否、今も勝っている。
相手は立っているのがやっとの程ボロボロで、自分は傷一つ無い。
なのにっ、奴は一向に倒れないっ!
まるで倒れようとしないっ。
私は、己の欠点を理解し、足りない部分を奪った完全な存在だ。
神と言う手の届かない高次元の存在に遅れを取ろうと、そこの残り香のような存在に負ける筈は無い···無いのだ···。
「···なのにっ!何故お前はそこに立っていられるんだ。」
強さと言う自身のアイデンティティを奪われ、その確実とした力の差を何百回と見せつけられたな筈だ。
「そんなの決まってんだろ···。」
もはや剣すら握れない拳を振りかざし、踏み出す度に血が吹き出る足を引きずって、強さはただ優しさだけを見つめる。
「お前に奪われて···お前に触れて···知ったからだ。···誰かを大切だと言う気持ちを、誰を護りたいと言う気持ちを、誰かを愛すると言う気持ちをっ!」
その眼力に押され、優しさは無意識に後ずさる。
何なんだよ···お前は残り香の筈だ。なのに···
「何でそんな力が、強さが在るんだよっ。」
優しさには訳がわからなかった。
強さはフッと笑う。
「お前と同じだよ。」
「お前が俺の強さを欲しがったように、俺もお前の優しさが羨ましかった。」
「えっ。」
優しさには分からなかった。
大切な人々を守れる強さを持ち、誰で在ろうとその超然とした姿勢を崩さなかった強さが、弱き者の象徴である自分を羨ましがるなど、夢の又夢だったからだ。
強さは静かに語り出す。
「あの時、俺と仲間達の基地に乗り込んできた彩と誠を、俺は本気で、殺す気で殴ろうとした。だけど、それを止めたのはそのどちらでも無く、お前だった。
今まで強さと言う一点だけを見つめ、努力して来た俺を、お前は止めた。
優しさが、強さに優った時だ。
あの時は訳がわからなかったが、強さとして、仲間として、親友としてあいつらと接して来た今なら分かる。」
強さは、笑った。
「誰かを守る為に、誰かにら優しくする為に、強さは在るんだ。」
暗かった世界に、光が溢れ出て来る。
優しさは、大盾から手を放した。
「違う、違うぞっ。強さが在るから、優しさは成り立つんだ。」
否定する。
親友の死を前に何も出来なかった自身を
何も守れ無かった自身を
奪うことしか出来ない自身を。
否定する。
「優しさなんて、強さがなけれはただの自己満足だっ。」
「それは強さも同じだ。」
強さは優しさに手を差し出す。
「お前が羨ましかった。お前が妬ましかった。でも、だからこそ、俺達は手を取り合って行けるんじゃないか。あの日とは違う様に。」
···強さと優しさが、手を取り合うだって?そんなこと、有り得る訳ないじゃないか。
「今まで、散々お前に酷い事して、私は、許されない事までした。
なのに、お前は何故、私に手を差し出してくれるんだ。」
優しさは怖かった。自分は本当にこの手を取っていいんだろうか。
強さはただ、優しさだけを見つめて、笑う。
「お前だからだよ。」
二人は、今初めて、分かり合えた。
反撃、開始だ。
手を取り合った強さと優しさ、彼らは神に勝つことは出来るのか!?
次回もよろしくぅっ!!




