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神は夢見る少女を好まない。

少女は大切な仲間のことを見捨てはしない、たとえそれがもう間に合わないと知っていても。

「なあ、聞いたか、老亀の泉であの『白騎士』がでたらしいぜ。」

「ああ知ってる知ってる。でもそれガセじゃね?最近全然現れて無かったし。」

「うーん、確かになぁ。」

革鎧の男とフルプレートの男が何か話しこんでいる、どうやら話題の『白騎士』についての事らしい。

『白騎士』神が始めたこのデスゲーム、その初期に現れた伝説的人物だ。鬼気迫る連撃と圧倒的な防御力によって目に映る敵を次々と倒していったとされるプレイヤーで、なんでもその名の通り真っ白な細身のフルプレートを着けていて誰も白騎士の顔を見たことが無いらしい。

だが、このデスゲームに巻き込まれた女性達にはそんなところもミステリアスでいいらしく、とてもファンが多い。まぁ、かく言う私もそのファンの一人ではあるのだが。

「ミウー、そろそろいくよー。」

同じパーティーでありリーダーのねこ先輩から声がかかる。

「はーい。」

ねこ先輩は、ぴょこんと立った二本のくせっ毛がトレードマークのイケメンさんで、普段はおっとりしてるけど、いざとなったらとても頼りになるすごい人。

「おせーぞ!何してたんだよ。」

「まあまあ、女の子なんだから仕方ないよ。」

彼らはマー君とテツ君。マー君はアタッカーで、口調は大雑把だけど意外と優しいお兄ちゃんのような人で、テツ君は、少し臆病なところがあるけど戦いになったら鉄壁の壁となるギャップの激しいタンクだ。

「そんなことよりも早く行きましょう。」

あのメガネの似合うボサボサ髪は、村さん。パーティー唯一のクール系メイジ。

「よーし、今日も冒険頑張るぞー。」

これが私のパーティー、『レットバレット』のメンバー。私達は毎日の様にダンジョンの奥深くへと進んで行く、いわゆる前線組と呼ばれるチーム······に、なりたいと思っている中堅チームだ。

「今日は何がドロップすっかなー。」

神のデスゲームが始まってから4ヶ月、死亡者はかなり減った。たった一年と言う短い時間のなか、我こそはと攻略を目指す人は多かったがその大半がとある理由で死亡していった、それはこのデスゲームに対する神の説明不足だ。神は一番重要な『ステータスカード』の説明を全くしなかった、プレイヤーのHP、MPや身に付けている防具、武器さらに覚えたスキルなど個人の全ての情報が詰まったまさにプレイヤーとしての命とも呼べる物の説明をまぁっったくっしなかったのである。今でこそ料理人が商人が食べ物を売ってはいるが、最初の頃は自動販売機のようなものから食料を確保しなければならなかった。だがこの販売機はお金を入れる投入口が無く、ステータスカードをかざして料金のやり取りをするシステムで、ステータスカードの使い方すら分かってなかった私達にとっては、そこに食べ物があるのに食べられないと言う生殺しの日々だった。他にも神に対する不満はいっぱいあるが、とりあえずは目の前の戦闘に集中だ。

角から黒い豹『ブラックパンサー』が現れる。

「おーし!上玉上玉、狩りまくるぜ。」

真っ先にマー君が飛びかかる。

「おらっ『ストライク』!」

そう叫ぶとともにマー君はさらに加速する、そして流れるような素早さでブラックパンサーの首をはね飛ばした。

あれがスキルだ、技名を口にすると身体が勝手に技を繰り出す不思議な力、このダンジョンにおいて最も大事なことの一つだ。(ちなみに神はこれの説明さえしていない。)スキルはレベルが上がるごとに追加され、当然レベルもステータスカードに載っている。

「ふいー、大量大量。」

マー君がカードを見ながらそう呟く、どうやら終わったようだ。

「お疲れー、『ヒール』。」

初級魔法『ヒール』、少しだけどHPと疲労を回復してくれる。

「おお、サンキュ。」

我ながら私はいいヒーラーだ、マー君に向けて胸を張ってみる。

「···しっかし、俺らのレベル的にここも生ぬるくなってきたな。」

スルーされた。

「確かにそうだねえ。だけど、これ以上深くは危ないよ。」

「でも、俺達だって強くなったじゃんか!」

確かに私達は強くなった、強いスキルだって覚えた、けどここから先に行くのは少し怖い。ここから先はプレイヤーの間で上級者になるための登竜門と呼ばれてるからだ。

「先輩!」「マー君」、どちらも譲らなかった。

「いいんじゃないかな、行っても。」

突然発せられた声に、少し驚く。

「···村。」

「ぼっ僕も、いいと思う···よ。」

「テツ!」

この状況では、ねこ先輩も折れるしか無かった。

「···はぁ、分かったよ。でも、危なくなったらすぐ逃げるからね。」

「よっしゃあぁぁ、さっすがねこ先輩。」

マー君は飛び上がるほど、と言うか本当に飛び上がってよろこんだ。

「じゃあまず、ドロップした素材を売ってこようか。」

ダンジョンには一定間隔にオレンジ色の扉がある。それらは全て同じ場所に繋がっていて、そこはモンスターの湧かないセーフゾーンとなっている。攻撃職じゃない人達や戦いたくない人はそこで武器や防具を作ったり料理を出したりしていて、多くの人に活気や勇気をくれる。

「うーん、全部合わせて2000KM位かな。」

KMって言うのは、距離の事じゃなくてここでのお金の単位だ。意味は『コインメーター』、『金の幻』など諸説あるが圧倒的に支持者が多いのは『神の恵み』で、何か口調的に上から目線ぽいかららしい。

「分かりました、じゃあそのお金で回復ポーションを50個ください。」

「はいはい、回復ポーションと、お釣り。」

回復ポーションはヒールと同じくらいの効果があるなかなか便利なポーションだ。

「あんたらも登竜門に行くのか?」

隣にいた男が話しかけてくる。

「ああ、これで俺達も前線組の仲間入りだぜ。」

もちろんそんなはずは無く、前線組はもっと奥深くにいる。

「ははっ、やっぱりそうか、実は俺もなんだ。同じような奴がいてうれしいよ。」

「お前もか!」

まさに偶然だ。

「お前ら、奥行くのにポーションだけで大丈夫か?」

「そのつもりだけど。」

「奥は色々やべぇらしいからな、準備はしっかりしといた方がいいぜ。ポーション買うのもいいけど、やっぱ武器をいいのにしないとな。」

そう言って男は、真新しい長剣を取り出す。

「見ろよこの光沢、やっぱ剣ってのはこうでないと。それにこの中心にある赤色のライン、これがまた剣を際立たせてんだ。それから···」

男の話はどんどんヒートアップし、止まらなくなっている。

私達は男が話し込んでいる内にこそっとその場を後にした。

「よーし!じゃあダンジョンへレッツゴー。」

マー君はいつも以上にテンション高めである。

「まあまあ、ダンジョンは逃げないんだからゆっくり行こうよー。」

「甘いぜテツ!もしかしたら、黒剣が全部狩り尽くしてるかもしんないだろう。」

「黒剣?」

聞いた事の無い名前だ、そう思って首を傾げると横にいた村さんが教えてくれる。

「黒剣は、前線組の一人だよ。全身黒ずくめの双短剣使いで、なかなかの美形らしいぞ。」

もー村さんったら、私は白騎士様一筋ですよ!

「こらー!お前らー、さっさと行くぞー!」

マー君はもう扉の前にいる。扉はいつ、誰と出ようと自分が入った所に戻ってしまうため、注意しないといきなり仲間とバラバラになることもある。

「はーふー、はーふー。」

ゆっくりと深呼吸をする。

「緊張か?」

「うん、すっごいドキドキする。」

「私もだ、まるで初めて戦闘をおこなう時のような感覚だ。あの時は呪文を失敗しないか気が気じゃなかった。」

ぽん、と私の頭に手を置いてフッと笑う。

「コツコツと頑張って行こう、5人で。」

「うん、5人で。」


暗い廊下はいつの間にか石を積み上げたものに変わっていて、さっきよりも構造が複雑になっている。

「···さすがわ前線の登竜門って呼ばれてるだけあるわ。さっきと雰囲気が全然ちげぇ。」

マー君もこの時ばかりは慎重に進んでいる。そこへ一振りの鎌が!

「マー君!」

「···!、おらっ。」

寸前のところで剣で弾き、火花が飛ぶ。

「グゥゥゥゥゥゥ」

鎌を振り下ろしたのは、ボロボロのローブを着た骸骨だった。

「しっ死神っ。」

「落ち着けテツ、俺達ならできる!」

「マー君、···うん!」

そうだ、私達はいつだって皆で乗り越えて来たんだ、今やれない理由は何処にもない!

死神は次々と鎌を振り回していく。

「任せて、『ヘイトガード』!」

死神の注意がテツ君に集中する。その隙に攻撃しようとするが死神の攻撃が速すぎて手が出せない。

その時、村さんの足下に光り輝く魔方陣が現れる。

「深淵より出でし緋、我が創弓にて放たれん、『フルフレイム』」

村さんが放った炎の矢は、勢いよく死神に突き刺さり全身を炎が包む。

「ウオォォォォッッッ」

だがまだ倒れるまでには到っていない。

「次は俺がっ、『ブレイジングクロー』」

左下から上へそしてその威力を殺さずに横へ一閃、緋い刀身は触れたものすべてを焼き焦がし灰にする。

「ミウ、回復はテツ君優先的にいつもより多くかけてあげて。『スパイクランス』」

ネコ先輩はそう言うと、華麗に飛び上がり目にも止まらぬ速さで死神を貫いていく。

「さっすがネコ先輩、槍もったネコ先輩にはかなわねぇわ。」

「ありがとう、でもあんまり気を抜かない方がいい。」

奥から次々とモンスターが溢れてくる。

「やってやらぁ!!」

その時私達は、安定した狩りでわなく、どちらが負けるか分からない冒険をした。


「ミウッ!ヒールだ!」

全身に打撲痕や切り傷を付けたマー君が叫ぶ。

「もうMPがないよ!」

ヒーラーにとってMP切れは致命的だ、それだけでパーティーを潰しかねない。

「クソォ!何なんだよこのモンスターの数は!」

いくら倒しても次から次へとモンスターが現れる。

「もぉ···抑えきれない···。」

一番防御力に優れているテツ君でさえ限界に近い。

「皆っ、今から村の魔法と僕のスキルで道を開く、全員一斉に逃げるんだ!」

ネコ先輩でさえ表情に余裕がない。

「万物の頂であり死を届けるもの、我が魔力を糧に、ここに現れん、『ドラゴフレイムノウ"ァ』」

一体の竜と化した炎が、敵を焼き払いながら道を作る。だがその道もすぐに狭まっていく。

「させない!『ベルゼロンド』」

狂戦士となり理性を失いながらも仲間の為に道を切り開いて行く。

私達は惨敗した。でも私達には仲間がいる、今度はもっと強くなってここに帰ってくる!

そう思った時、あれはやって来た。

「ブシュゥゥ。」

そんな音と共にネコ先輩は足を止める。

「ネコ···先輩?」

いや、ネコ先輩の足は止まっていない、なのに前に進まない。まるで何かに押し戻されているようだ。

恐る恐る私は前に出る。するとそこには、蜘蛛のような下半身とゾンビのような上半身を持った怪物と、胸を剣で刺された先輩の姿があった。

「いっ···いやああぁぁぁぁぁ。」

怪物は、真新しい赤色のラインが入った剣を引き抜くとニタァと笑う。

「嘘···だろ···。」

「せっ先輩が···。」

私達にとってそれはまさに悪夢だった。

「おい!今はとにかく逃げるんだ。」

だが帰り道はあの怪物が塞いでいる。

「何か手は···。」

村は、ネコを必死に起こそうとしているミウを見てほんの少し笑う。

「···お前ら、助かりたいよな。」

「?、ああ」

「うん。」

「だったら、奴の右側に向かって走れ。いいな。」

二人は頷く。

「俺はまだ死にたく無いんだ、分かってくれるよな。『エアーハンマー』」

ミウは村の魔法によって左前の壁に叩きつけられた、まるで怪物に差し出すように。

三人はその隙に怪物の右側を通り抜けた。

「皆···なんで···そっちに行くの?···先輩はここにいるよ?早く、治さないと。ねぇ、皆待ってよ。」

なぜ自分が吹き飛ばされたのか、それさえ理解できぬまま、走り去る三人に手を伸ばす。だが、

「あっ」

だがその手を掴んだのは、無慈悲な怪物だった。

怪物は剣を捨て、ゆっくりと、だが確実にミウの首を締め上げた。

「あ···あ······が···。」

その確実な死がミウを現実に引き戻す。

仲間が自分を捨てて逃げていったこと、信頼していた人が死んでしまったこと、大切な人に···裏切られたこと。心が砕けるにわ、十分過ぎるものだった。

「あ···あ······あ···。」

もう、抵抗する気力も力も持ってはいなった。目を閉じて、早く終われと願うだけ。

···なのに、私の口は誰にも聞こえない様な小さな声で、そっと呟いた。

「···助けて···。」

その時、怪物の腹に剣が生える、艶やかで今にも吸い込まれそうなほど深い黒色の剣が。

「離せ。」

その一言で怪物の上半身は十字に切り裂かれた。そして、その後ろに彼が現れる。

「大丈夫、か?」

心配も哀れみすらも思って無いであろう光の無い目で、彼は私を見つめていた。

遂に2話目投稿しました。身体ボロッボロです、ねむいです、今回はヒロインパートをお送りしました。次は遂にヒロインと主人公の2人で冒険するかもですね。とりあえずこれを読んでいただいた皆さん、おやすみなさい。

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