神は可能性を好まない
神を殺す為に神殿に向かう悠希。
だか、神に立ち向かったのは、彼だけでは無かった。
荘厳な造りの扉が独りでに開き、訪問者を歓迎する。
奥には不釣り合いに大きな玉座に座る少年が、クスクスと笑っていた。
「フフッ、可能性があったとは言え、まさか君が最初に訪れるとわね。」
扉を潜り現れた、その体を覆い隠す程の大盾を持った男は鋭い眼力を放ち少年を威嚇する。だが、少年の笑みは少しも揺らがない。
「そんなに睨まないでよ、約束通り願い事は叶えてやるからさ。」
「いらん、俺が叶えたいものなど無い。俺はただ、俺が見捨ててしまった彼女が再び笑っていられるように、貴様を殺すだけだっ、神っ!」
そう言って大盾を構える男に、神はやれやれといった顔で黄金に輝く長剣を構える。
「神に歯向かうなんて、人間は愚かだね。いいよ、かかってきなよ、大柄 次鉄···いや、テツ君かな。」
神対人間の闘いが、ここに始まった。
「いい加減諦めなよ」
「うるっ、せぇ!」
大振りで向かって来る盾を軽やかに受け流す、かれこれもう3時間はこんなやり取りを続けている。
神は少しつまらなそうな表情で剣をクルクルと舞わす。
「多分だけど、僕を倒すのは君じゃないよ。少なくとも君では。」
テツは震える腕を無視しながら盾を振るう、だが神にはかすりもしない。
もうテツは限界だ。
「あーあ、君と遊ぶのも飽きて来たよ。」
神は大きな欠伸をしながら言う。
テツは完全に遊ばれていた、テツもそれが分かっていた。だが、テツは諦めない。
これ以上逃げてしまったら、見捨ててしまった彼女に、死んでしまった先輩に、顔向け出来ない。
俺はもう、誰かを捨てて生きたくは無いんだ。
テツは力を振り絞って大盾を握りしめ、神に向かって構える。
「···まだだ、まだ終わっちゃいない、俺はまだ、やれるんだあぁぁぁぁっ!!!」
その瞬間、テツの身体は輝き、全身に力が溢れてくる。
「こっ、これは···」
「チッ、不完全体だからこそ持つ無限の可能性、まさかここで開くとわね。」
手に持っていた盾が突如変化し、一本の槍へと変わる。
見たことの無い槍、だがこれが、今まで一緒に戦ってくれた盾であることは何故だか分かる。
槍自身から、声が、心が伝わって来る。
神殺し『ゲイ·ボルガ』
「···今まで···ありがとう···」
俺は、俺を認めてくれたゲイ·ボルガに、感謝する。
これが俺の、最後の一撃。
俺自身の全てを懸けて、放つ。
「『スタータズト·スピア』あぁぁぁぁぁっ!!」
空を駆けるあの流れ星のように、俺とゲイ·ボルガは一つになった。
「うおぉぉぉぉぉっ!!!」
「さようなら」
そして、圧倒的な何かに、斬られた。
「···ぐはっ···がっ···」
···足の感覚が無い、足は頭の上に見えているのに。
ああ、何故だか眠くて堪らない。あれ···あれは、先輩···ねこ、先輩···俺、頑張りました···よ···。
すみません、出したかっただけです。倒しかっただけです。




