神は優しさを好まない
悠希、誠、彩の最初で最後の対決!
優しさはどうするのか!?
月明かりに照らしだされ、現れたのは誠と彩だった。
「悠···希···?」
「何でよ···」
信じられないと言う顔でこちらを見る誠、彩も立ち上がり涙を流している。
「くふっふはははははははっ、まさかお前らがそこにいるとは思わなかったぜ」
優しさの親友にして、優しさと同程度の優しさを持った二人が、まさか強さまで兼ね備えていたとは。
道理で俺達が引かれる訳だ。あれは、俺達が昔捨てたものの完成形だ、引かれない訳がない。
「···どうしてあんたがそこに居んのよ、悠希っ!」
彩が目に見えて怒っていく。
そういえば本当に怒らせるのはこれが初めてだな。
「どうしてと言われてもなぁ、俺がここの頭だからとしか言いようがねえ」
手の甲で血を拭いながら、肩をくすめる。
怒らせた彩がどんな強さを持っているのか楽しみだぜ。
「悠希、君はそんなところにいる人間じゃない。君は誰よりも優しい人なはずだっ」
限りなく正解に近い、不正解だな。
俺が求めるのは強さただ一つ、それ以外のものは全てゴミだ!
「おらっ!」
勢いよく飛び上がり、誠に向けて全力の踵落としを放つ。
「ぐっ···」
俺が悠希だったことが分かったせいか、動きが鈍っている。
着地をしながら地面を蹴りあげる。衝撃が脚を軋ませるが、そんなことはこの戦いにとって些細な事だ。
体制の崩れた懐へ即座に潜り込む。
「貰ったぁぁぁっ!!」
鬼のような形相の彩が走ってくるが、固く握り締めた拳はもうすでにモーションに入っており、誰にも止められない。
完璧な形で決まった拳は体内にめり込み、身体ごと相手を吹き飛ばす。
「ぐあ"ぁっ!?」
彩によって、一瞬にして吹き飛ばされる悠希。その時悠希が見たのは、自分ではない意識が腕を動かし、顎に当たり誠を再起不能に陥れるはずの拳が、逸れていく瞬間だった。
全身が軋む、肋骨と鎖骨が折れている。
「糞が···糞がぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!俺の戦いにっ、手ぇ出すんじゃねぇぇぇぇっ!!!!」
誰にも止められないはずの強さの拳を逸らしたのは、自分自身である優しさだった。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
強さと優しさが身体の主導権を奪い合う。
「俺ノ獲物ダ!!」「これ以上貴方を許容できない」
別々に分かれていた意識が互いを潰し会う。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁぁぁぁ、オオオ俺ワワワ私ガガガガ······」
悠希の心は、もう二つでは要られなくなっていた。
もう少し続きそうです。




