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倫理観ぶっとび同士仲良くしようよ!わーい(棒)

首が搔き切られた。が、血が出なければ全く痛みもない。あなや。

ひらりと影が小生の心臓を刺す。痛みはない。瞬きをした。

影はすぐに小生から離れた。


「異界人は魔法に不慣れと聞いていたんだが。」


小生はベッドから半身を起こし、そう吐き捨てた彼の姿を認めた。

暗がりでよくは分からないが、鋭い目つきをした男だった。


「魔法など使っておらぬぞ。」

「は?幻覚じゃなきゃ何だってんだよ」

「幻覚ではないがさてはて、何故生きているのであろうな?小生にも分からん」


小生はベッドから足を降ろす。毛足の長いカーペットに模様が描かれた。小生が質量を持っている確かな証拠である。


「それ以上妙な行動を取ったら殺す。」

「殺せないであろうに」


彼は威嚇するかのように切っ先をこちらに向けたまま、ふと、視線を彷徨わせた。

今まで小生から目を離さなかったのに、どうしたのだろうか。


「お前…この国の言葉が喋れるのか」

「む?こちらの世の者とは普通に会話を行っていたのだが?」


と、口に出してから気付く。てっきり末端だが神としての力が機能しているからだと思っていたのだが、そうか。他の召喚されたヒトの子らとも喋っていたなぁ、彼女たちは。

小生も動揺していたらしい。


「そりゃお前らと応対するやつだけが魔法使ってんだよ…」


眉を僅かに潜める彼に、小生は一つ柏手を打った。


「察するに、そちは小生を殺すように命じられたが殺せずに難儀しているとみえる」

「…まぁ、そうだが」

「小生の死体を偽装する手段などはないのか?」

「あることにはある」

「ではそれをここに設置し、小生を攫って証拠隠滅、というのは如何だろうか」

「いや、何でさらっと俺の任務の手伝い申し出てんだよ」

「何、そのような依頼をするお上がきな臭いと思ったまでよ。」

「なるほどな…まぁ俺は金さえ貰えれば構わんが」


そう言って部屋を出ていき、少ししてから現れた暗殺者は、小脇に小生と似た背格好で肌の色が近い女の死体を抱えていた。

どさりとベッドに置いた死体を、彼は恐らく魔力を使って強制的に様々な部位を変質させていった。

大したものだ。職人の技術というのはどんな分野でも見ていて惚れ惚れする。


「お前、顔色一つ変えないとかこっち側の人間かよ、そりゃしくじる訳だ。上に調査不足だって文句言ってやる」

「私はここで死ぬのだから任務は無事達成、どう苦言を呈すのだ?」

「その通りだな、…はぁ」



顔面が今の小生と似たような作りに変わっていくのに感心していれば、彼はやがて手を止めた。


「まぁこれくらいでいいか。…お前、服寄越せ」

「別に服は無くても問題なかろ」

「俺を性犯罪者にする気か」

「今更罪の一つや2つ増えたところでグチグチ言うでない」

「問題だわクソ」

「というかこれは小生の一部である故、恐らく消えてしまうと思われるのだ。」

「は?まぁいい、試せばわかることか」


と、男はナイフを振り上げ、布を裂こうとした。

一般的な九十九神である小生は回避できるはずもない。だが、概念としての振り袖はそのままそこにある。


「ああ、そういう幻覚なワケね、素直にできねぇって言えよクソ」


口調の荒い男である。


「まぁいい、服は珍しいから持ち帰ったことにするか。」


彼はそう言うと、立ち上がった。


「行くか、それでお前の本体は何処に?」


「だから幻の類いではないと言うておろう」


彼は深くため息をつくと、小生をじぃと見詰めた。


「な、なんじゃ。」


美術品としての価値はあると思っておるが、本体ではなくこの身を見詰められると少しこそばゆい。

彼はそして部屋を見回すと、むんずとベッドの下にあった小生を取り出した。


「これか。って何だこりゃ?棍か?」

「ちがわい!」

「ここで流れが止まっている…というか、ここから出ている?これを媒体にして幻覚を産み出しているのか…?いや、会話の早さからしてそれは可笑しいが、ゴーレムではない…」


彼は小生を無視して、ぶつぶつと思考を巡らせていた。


「なぁお主、小生の秘密など些事ではないか。それよりもここから早く去ぬべきなのではないのか?」


「興味深いなお前、毒を飲んだらどうなるんだ。」

「小生の言葉を無視しておいて自らは質問するとはどういう根性を…九十九神に人の子の毒など効かぬわ。」


「は?年月を経て神と成った…なんだって?」


なるほど、そういう風に聞こえているのだな。


「小生は神の末席を汚しておるのだ。」


「は?…まぁいい、確かに早く此処を去るべきだ。」

「なんじゃ、聞こえておったのか。」

「因みに気配殺したりとか無理だよな?」

「一般九十九神にそのようなことを求めるでない!」

「神なのにできねぇのかよ。」


意義を唱えれば、吐き出す様にそう言われた。


「神と一口に言っても色々あるのだ。兎角、箏含めかどわかすつもりで運んでくれると有り難い」


ここで再び小生の中に吸収することを考えたが、小生の予想が正しければその状態だと殺されるかもしれぬな…。


「まぁ、それくらいなら問題はない。とりあえず俺の隠れ家の一つに連れていく」


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