第八話
倒れた黒い塊を見つめるーーー死んでいるのだろうか?そう気になった奏志は機体を前進させて塊の側につく。念のため、と言って彼は二、三発銃弾を浴びせた。ミチッミチッと音を立てて弾丸は虚しく塊に呑み込まれていった。
「殺りましたよ、コイツ」
「そうですね」ふぅ…と小さく溜め息をつくと彼女は市街地に戻るべく、マップを奏志に見せた。
「それじゃ、戻ろうか」
「はい、そうですね」奏志は思った、まだ俺はこの女の子の名前を聞いていないーーー
「そうだ!君のなまeーーー」ドカン!近くの大岩が崩れて中からシュルシュルと気味の悪い触手が空を切って飛んでくるのが見える。
「まだいるのかよ!」楽しい自己紹介の時間を邪魔された奏志は怒りに任せて引き金を引く、弾丸に当たった触手が地面に落ちる。正面に向き直り、アサルトライフルに装着されたグレネードを放つ、円筒は夕日に照らされてチカチカと光ると塊の頭上で爆発した。辺りに舞い上がる土煙ーーー
どうせまた突進してくるだろう、そう踏んだ彼はさっき折れてボロボロになったシールドの残骸を奴に向けつつ回避運動に入る。しかし、彼の予想に反して奴は突進して来なかった。
なぜだーーー土煙を引き裂いて大量の触手が伸びてくる、予想以上にそのスピードは速く回避が間に合わなかったーーー