第六話
奏志が見つけたのはAFー2A二五式だった。初期のAFなのに整備が行き届いていて綺麗だ…いや待て、そんなことはどうでもいい、生きるためにはコイツに乗って奴を殺すか、逃げるかしかない。
幸いなことに彼らのような宇宙に住む人々は大半が学業の一環としてAFの操縦法を学んでいた上、彼はバイトで作業機械のオペレーターをしていた。
もう時間がない…タラップを駆け上がると彼女に早く乗るように促す。
「乗って!」すぐそこまで来ている黒い塊と半ば相対しつつ、コックピットのサブシートに彼女を乗せると、自分もパイロットシートに乗り、OSを起動する。コックピットのハッチがズシリと重い音を立てて閉じる、全周囲モニターが作動し、外界の様子が映し出され、中央のディスプレイには計器類や武装等がところ狭しと並ぶ。
機体ロットはAF2ーA/H、重武装型で遠距離砲撃戦を得意とする機体だ。モニターには黒い塊がすぐ近くに映っている。
「火気管制はお願いします!それから、かなり揺れます!」彼女に声をかけると奏志はフットペダルを踏み込んだ。
各部の駆動系にエネルギーが伝達され、二五式は立て膝の姿勢から立ち上がった。背部に搭載された荷電粒子砲が格納庫の天井を擦りつつ、あたかもぼろ布のように引き裂き、彼の機体が大地に立った。
跳躍して格納庫の残骸から出ると、もう一度、今度は大きくペダルを踏み込むと機体に搭載されたタキオン粒子ドライブが唸りをあげ、各所のブースターがこれでもかと蒼い焔を吹き上げる、二人はシートに押し付けられた。やっぱり軍用機は
一度奴から距離を取り、彼は武装の確認を行う。右腕のアサルトライフル残り残弾八十、左腕シールド裏に、ライフルのカートリッジが二つ、肩部ユニットにはミサイルポッドが二、背部ユニットには荷電粒子砲が二門ある。これだけあればなんとかなるだろう…奏志は汗ばんだ手で操縦棹をきつく握り直したーーー