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星霜の彼方へ  作者: 新藤康誠
第一章~すぐそこにある「邂逅」~
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第五話

 依然として街には様々な音が響いていた。奏志は何が起きているのかを確かめるため、再び情報端末の画面に目を落とす。どこを見ても有事の警報が発令されていること、国連軍がもう既に市街地で交戦に入っていることからシェルターから出るなということが書かれている。しかし、今回のあの化け物の正体については何も分かっていないようだ。AF程のサイズで体長は二十メートル弱だったことだけは書かれている。なんにも分からないじゃないか…深い溜め息をついて画面から顔をあげると彼女はこちらを見ていて、

 「二度も助けて頂いてありがとうございます」と、声をかけてきて彼は驚いた。

 「大したことした訳じゃないよ」奏志は微笑みながらこたえた。

 「私、今日このコロニーに越してきたばっかりなんです。ここのこと全然分からなくて…一人だったら今頃死んじゃってたかも…」

 「ハハハ、そうかな?それにしても今日引っ越してきたばかりでこんなことに会うなんて災難だったね」引っ越してきたばかり…ね、道理で俺が帰るような時間帯にワンピースにワインレッドのカーディガン、なんて格好で歩いてた訳だ…納得した。

 「ジュワァ、ゴポゴポ」格納庫の天井がドロドロと溶け落ちてきた。

 まさか…上を見上げると例の黒い塊が彼らを覗き込んでいた。

 黒い塊は目のない頭をキョロキョロとさせてばぁ~ばぁ~と不快な声をあげながら手のように見える部分を狂ったように振り回している。

 なんてこった…奴はこちらに気づいている、この状況で出来ることなんて少ない、彼女の手を取って格納庫の奥へと走り出した。奴は今天井に大穴を開けた、しかし目測だが、奴は穴から首を入れても俺らを襲えるほど近くまで来ることは出来ない。彼らが走り出すと同時に黒い塊は大穴から首を抜くと彼らの走っていくすぐ後ろから天井を溶かし始めた。どうやらその程度の知能はあるらしい、厄介な化け物だ。奏志は思った。しかも…かなり往生際が悪い、というかひとつの獲物に執着するタイプのようだ。

 「往生際の悪い男はモテねーって、そういう風に相場が決まってんだよ!」叫んでもどうなるものでもないと知りながらも彼は全力で叫んでいた。追い詰められ、格納庫の端が見えたとき、彼等の視界にもう一つ見えたものがあった。膝立ちのまま止まった姿勢を保っている一機のAF、おあつらえ向きにコックピットにタラップがかかっている。コイツはついてるーーー

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