七十四話 快調に空を飛び、町で色々食べた
エレオノーラは、この小さなダンピールがビルカイン達原種吸血鬼よりも恐ろしい存在だと確信した自分は正しかったと、度々思う。
今夜もそうだったが、同時にこの世界で最も恐ろしい主人の方針に「何故?」と疑問を感じる。
あのゴブリンの干し首型通信機等を売り込むだけで、巨万の富と男爵位くらいなら軽く手に入るだろうに、何故冒険者になって手柄を上げて貴族に成ると言う過程や手段に執着するのかと。
通信機以外にも宝石や、魔石であっても【ゴーレム錬成】で形を変えたり融合させたりして、小粒の宝石を一国の国王の王冠に輝くような大粒の宝石に出来る技術を示せば、やはり名誉貴族位くらい軽く手に入るのではないだろうか。
魔石の場合は魔力の相性の問題で同種同ランクの魔物の魔石しか融合させられないが、それでもこれまで研磨しか出来なかった物を大きくする事が出来るのだから。
そう思うのだが、「俺を奴隷か何かにして魔力だけ搾り取ろうとする権力者の姿しか見えません」と言って否定するのだった。確かに、権力者が全員善人だとはエレオノーラも思わない。それどころか、九割以上陰謀家か悪人だと思っている。
だが、同時に想像を絶するバカは一割以下ではないだろうかとも思っている。
(想像を絶するバカでない限り、ヴァンダルー様を敵に回したら破滅する事が想像できると思うけど……)
ふわりと、巨大な黒い翼が羽ばたく。彼の主人から生えた翼が。
「飛び心地はかいちょーかいちょー。皆、乗り心地はどうですかー?」
『こっちも快調だぜ! 風は強いが夏の暑い夜には丁度良いぜ!』
「キング凄いぞ! 地面で野営している人間が蟻みたいだ!」
はしゃいだ声を上げるズランやブラガ達ブラックゴブリンの様子を横目に、エレオノーラは曖昧な笑みを浮かべた。
「ヴァンダルー様……乗り心地は良いのだけど……何で移動手段の為だけにここまで変異……いいえ、進化してしまうの?」
「ん? 霊体の翼を生やしただけで、変異も進化もしていませんよ」
そう黒い巨大な三対の翼と胴体だけの鳥の首から生えている、怪鳥のように見えるヴァンダルーは、答えた。
第七開拓村に戻り、急いで町に向かう神官を見送り、夜までカシム達に稽古を付ける等して時間を潰し、何でも屋に一泊したヴァンダルーは、その部屋でエレオノーラ達に明日町に向かう事を告げた。
因みに、何でも屋の部屋は藁の粗末な二段ベッドが八人分あるだけだった。元々宿屋としての収入は期待していないので、二段ベッドも主人自ら作った物らしい。カシム達に加えてヴァンダルーが泊まっても、何の不利益も無い。
これでお化け扱いをチャラにしたのだから、あの主人も中々のやり手である。
それは兎も角、エレオノーラ達と合流したヴァンダルーは早速アイディアを実行に移した。
【霊体化】の術と【霊体】スキル、【実体化】スキルを活用し、翼を生やす試みを。
考えてみれば、今はクノッヘンと化している骨鳥は骨だけの翼に霊体で羽を作り、それで飛行していた。
更に考えれば、ヴァンダルーは今まで【霊体化】で手足や頭部を増やしたり、触手状にして枝分かれさせたりしてきた。
なら、翼くらい普通に生やせるのではないだろうか? そして飛べるのではないだろうか?
なので、やってみた。
背中の一部を【霊体化】して、【霊体】スキルで形をイメージ通りに変えつつ、大きく引き伸ばしてく。そして所々を【実体化】スキルで実体にして、強度を補う。
そしてヴァンダルーは巨大な翼を手に入れた。
翼の長さはそれぞれジャンボジェットの翼と同じくらいで、胴体部の広さはエレオノーラ達が全員乗っても余裕がある。
そうでありながら霊体だからか、翼の形状にフクロウの物を参考にしたからか、【死属性魔術】の【気配消し】の効果が出ているのか、羽ばたきの音はほとんどしない。
それが弓矢のまず届かない高度を、競走馬が全力疾走する程度の速さで飛んでいるのだ。夜空に目立たない黒い色だからと言って、地上の人間が気付いたら恐怖で失神するのではないだろうか。
「ヴァンダルー様、貴方は伝説を通り越して神話でも作るつもりなの?」
「そんな大げさなものじゃないですよ。欠点多いですし」
「確かに空間属性の【瞬間移動】よりは、移動手段としては劣っているわ。それでも――」
「いや、これくらいクノッヘンでも出来ますよ。少なくとも、この場に居る皆を一度に乗せて飛べますし」
「そ、それはそうだけど……」
「それにほら、人間では俺しか出来ないと言う意味だと、将来俺の人生が配達屋稼業で磨り減らされる未来しか見えませんし」
実際人間ではヴァンダルーしか出来ない事なので、「他人が出来る様にしろ」と言われても出来ない。
「それに欠点も多いんですよ、これ。空を飛ぶのに【並列思考】の幾つかと、【高速思考】スキルを使いますし、魔力の消費も大きい。後、小回りが利かないので空中戦は出来ません」
元々移動手段として試しただけなので、こんなものだろう。ヴァンダルーとしてはそんな評価だった。
「でも、【飛行】を使うよりずっと燃費が良いので使えない訳じゃありませんが。あ、そろそろ町が近いので降りますね」
こうして普通なら三日かかる第七開拓村から町までの距離を一晩で、ヴァンダルー達は移動したのだった。
当然、先に出ていたアルダ神官を装うフロトは途中で追い越されている。
因みに、その頃カナタは奪った馬車でヴァンダルー達が向かった町とは違う、公爵領都を挟んで北の街に向かっていた。翌朝、【ターゲットレーダー】で測った自分からヴァンダルーまでの距離が一晩で大きく変わっている事に彼は驚く事になる。
《【霊体】スキルのレベルが上がりました!》
ニアーキの町。
開拓事業が始まる前まで百年以上ハートナー公爵領南端の町だった都市で、現在は最南端の町に戻っている。人口は約一万人。領主はニアーキ子爵。この町は彼の領都でもある。
その市場を、布で作った粗末な眼帯をした白髪の少年が人混みに混じって歩いていた。
無感動に見える視線で周囲を眺め、ふと目に留まった店に近づいて行く。
「リンゴを」
果物を並べた店の中年女性は、「一つ一バウムだよ」と言いながら指を一本立てて見せる。
少年はやや不慣れな様子で布袋の中身を探ると、銀貨を出して渡した。
受け取った女は銀貨をまじまじと見ると鼻を鳴らした。
「偽物だね。アンタみたいなガキが、銀貨なんて持ってるもんか。とっとと失せな、難民だか孤児だか知らないけどね」
吐き捨てるように言いながらも、女は受け取った銀貨を懐に仕舞った。少年に返すつもりは無いらしい。
「何見てんだいっ、さっさと失せな! 警備兵を呼ばれたいのかい!?」
そう女が怒鳴ると、他の店の者や行きかう人々が少年の方を見るが、どの視線にも同情は含まれていない。苛立ちや侮蔑、嫌悪が浮かんでいる。
その視線を受けても少年は表情を動かさず、静かにその場を去った。身を自然に翻して、消えて行った。
「ふんっ、薄気味悪いガキだね」
そう言いながらも五十バウム銀貨を手に入れた女は、口元を釣り上げていた。店からリンゴが一つ減っていた事に気がつかず。
一方少年、ヴァンダルーは人目の無い路地でリンゴを一口齧っていた。盗んだとは思わない、五十倍の金をあの女は受け取ったのだから。
「この町は荒んでいる」
一応小汚い格好はしていないつもりなのだが、目立たない様にとダンピールである事を隠すために巻いている布が、難民か親の無い孤児と言う印象を彼に付与しているらしい。
尖った耳が髪で隠れているから、一層そう見えるのかもしれない。いや、見られてもハーフエルフの孤児だと思われるだけかもしれないが。
それとショックだったのは、難民が想像以上に町の人間から嫌われているらしい事だ。どうやら、町の人々は日々の不満を難民のせいだと思っているらしい。
実際、サウロン公爵領の難民が来てから経済は悪くなり、税金は厳しくなり、ついでに治安も悪化した。後日雇いの仕事の競争率も上がり、町に元々いた貧困層と仕事を争うようになっている。
ヴァンダルーも難民を無条件に擁護するつもりはなく、治安の悪化や仕事の競合はハートナー公爵領で元々暮らしていた人間にとっては迷惑な話だろうと思う。
しかし、経済が悪くなり税金が厳しくなったのは、オルバウム選王国が戦争に負けてサウロン領を占領されたから、前線になってしまったハートナー公爵領が軍備増強に力を入れているからだ。
それに不満を覚えるなら責めるべきは難民では無く、戦争に負けた為政者であり、攻めてきたアミッド帝国だ。
そうでなければ道理が通らない。
『最近の若いモンは、すぐに弱い奴を苛める』
『クソッタレっ、あの果物屋の女っ、俺が呪い殺してやる! だから魔力をくれよぉぉぉ』
『最近の領主様はとにかく変でね、あれは昨日の事だったわ……あら? 十年前の事だったかしらねぇ?』
『合言葉は、エールとモバ豆の炒め物だ。品切れだと言われるが、それでももう一度同じ注文を繰り返せ。すると闇夜の牙の人間に会える』
『ヒヒヒ、良い夢が見たいなら西の『花色の脚』がお勧めだぜぇ、あそこには良い娼婦が揃ってるからよぉ』
「そーですか」
この町やハートナー公爵領について教えて欲しいと頼んだ途端、わいわいと話しだす霊達の言葉を聞きながら、地球なら人権団体とメディアが暴れ回りそうな難民差別についてヴァンダルーは考える。同じ国の人間同士で、何故ここまで差別意識が生まれるのかと。地球やオリジンでもあった問題ではあるが――。
「ああ、そうか。町の人達にとって……ハートナー公爵領の人間にとって、サウロン公爵領の難民は、同じ国の人じゃないのか」
街道を利用して旅をするのも危険なこの世界では、産まれた村や町で一生を終える人達の方が多い。彼らにとっての社会は自分が産まれた村であり、町なのだ。そして外から来るものは等しく『余所者』、外国人に等しい。
それに元々オルバウム選王国は、小国が集まって出来た国だ。各公爵領は、建国以前はそのまま国だったのだ。
そのため、政治に関わる人間にとっても自国民とは自分が属する公爵領の人間で、他の公爵領の人間は外国人なのだ。
ハートナー公爵領人にとって、サウロン公爵領人は、同じ国の人間では無い。
「この分では、開拓村は将来も大変だ」
しゃりっと二口目を齧るリンゴも、地味にヴァンダルーに衝撃を与えている。
一言で言うと、残念な味なのだ。
味はリンゴなのだが、地球のスーパーには並ばない程度の味だ。甘くないし酸っぱいし、歯触りもいまいち。
コボルの実と比べれば断然落ちる。
ただ、それはこのリンゴが劣っている訳ではない。コボルの実が優れ過ぎているのだ。
ヴァンダルーが記憶している地球の、日本のリンゴの味。品種改良を繰り返し、リンゴ農家が丹精込めて育てたリンゴと同程度の味を、コボルの実は誰に世話もされずに果肉に込めるのだ。
そう考えると、リンゴと同じ味がするコボルの実が一つ十アミッド、選王国では十バウムで売れる理由が分かったヴァンダルーだった。
「それは兎も角、今夜は魔術師ギルドに忍び込んで、古い霊を探してみよう。魔術師ギルドにはいわくのある品、俗に言う呪われた物品があるらしい。多分、昔の悪霊や怨霊も一人ぐらい居るはず」
ああ、また独り言が多くなった。やはり単独行動はするもんじゃない。
そう思いながらヴァンダルーは残念なリンゴを齧りながら歩いて行った。途中、彼が銀貨を出していたのを見ていたゴロツキが絡んできたが、彼らもレビア王女達の事は知らなかった。だが、その血はリンゴよりは美味かった。
ニアーキの町にある小さな魔術師ギルド支部の書庫には、『呪われた禁書』と恐れられる魔術書が納められていた。
何でも中には禁断の知識が書かれていて、読んだ者はそれだけで力を得られるが正気を失い別人のように残忍な人格になってしまうと伝わる、呪われた品だ。
一説には本には禁断の知識ではなく、力を奪われた邪悪な神の一柱が封印されており本を開いた者の精神に潜り込み洗脳して、封印を解こうとするらしい。
そしてその説は九割方正しかった。
『ヒヒッ、また愚か者が儂を開いたようだ』
力を奪われた【魔書の悪神】ブブルドゥーラは、愉悦に胸を躍らせた。かつて勇者ファーマウン・ゴルドに倒され力を失い、自ら本に姿を変えて逃れてきた彼は、力を取り戻すために『読者』を求めていた。
自分を開き、読む『読者』の精神に憑りつき、操り、蛭の様にその力を吸う事でブブルドゥーラは力を取り戻してきた。
『やっと五割まで回復したのじゃ。今宵、この愚か者の肉体を乗っ取り、憑代にして完全復活の足掛かりとしようぞ』
ばさりと、ページが開かれる。その瞬間を逃さずに、ブブルドゥーラは『読者』の精神に飛び込んだ。
『さぁ、操ってやろうぞ、今までの愚かな獲物同様になぁ!』
節足動物と軟体動物を醜悪に混ぜたようなブブルドゥーラの精神体が、『読者』の精神の中で触手を伸ばす。
『読者』は抵抗する事も出来ず、ブブルドゥーラが一方的に精神を凌辱するだけ。今まではそうだったから、今回もそうだと悪神は思い込んでいた。
『むぅ? どう言う事じゃ、届かんじゃと?』
だが触手を伸ばしても、伸ばしても、彼が弄りたい記憶や人格に行きつかない。焦ったブブルドゥーラは、限界まで触手を伸ばしたが、それでも幾本かの先端がやっと何かに触れる有様だった。
そして触れた何かも、彼を深く困惑させた。
『なんじゃこれは? どうしてこうなっている? 馬鹿な、何故こんな構造をしておる? この読者は本当にこの世界の人間なのか?』
幾百、幾千の人間の精神を侵してきたブブルドゥーラは、ある意味では精神の専門家だ。その彼の知識と経験にも、こんな精神の人間は存在しなかった。
出鱈目なのだ。
あるべき場所にあるべきものが無く、代わりにあるはずの無い物が全く別の形をして置かれている。
人体に例えるなら、脳が在るべき場所に肝臓の形をした小腸が詰まっているという、訳が解らない事になっている。
まるでガラクタで無理矢理城を作った様な、そんな異様さだ。
だがそれに思い至った時ブブルドゥーラの意識に、恐ろしい推測が過ぎった。
『そうじゃ、聞いた事がある、魔王様が砕いた四人の勇者の魂の破片を、どこぞの神が無理矢理一つの魂に纏めたと。
その魂が何らかの原因で再び壊れたとしたら……ヒッ!?』
言葉の途中でブブルドゥーラは気がついてしまった。彼の頭上に、深い切れ目が走っている事を。そしてその切れ目が、動いている事に、
『ヒ、ヒヒヒ、ヒヒヒヒイィィィっ!』
切れ目が僅かに開き、そこから見えたのは巨大な眼球だった。
濁った泥のような巨大な瞳に、ブブルドゥーラの姿が映っていた。
【■■■……】
金属の欠片を擦り合わせたような音が、背後から響く。
咄嗟に振り返ると、そこにも深い亀裂が刻まれていた。そして、隙間からブブルドゥーラの触手よりも太く悍ましい舌が伸びて来る。
「ヒッ、ヒギャァァァァァァァ!」
舌は【魔書の悪神】ブブルドゥーラに巻きつくと、そのまま潰してしまった。
ブブルドゥーラは、あの聞き取れない音の意味が解っていた。あれは、「痒い」と言っていたのだ。
こうしてファーマウン・ゴルドが討ち漏らし、十万年もの間犠牲者の精神を啜りながら隠れ潜み、遂に復活しようとしていた悪神は、ある「読者」の首筋に止った羽虫を払う様な無造作な攻撃によって、滅ぼされてしまったのだった。
地面をゴーレム化させ【ゴーレム錬成】でトンネルを掘り、地下から魔術師ギルドに侵入したヴァンダルーは、霊を探して内部を探索。結果、何体かの霊を見つけたが残念な事に古すぎて消滅寸前だったり、生前から魔術の事にしか興味が無かったり、狂っていて支離滅裂な事しか話さなかったりと、第一王女のレビアの事は分からなかった。
(町の霊も何も知らなかったし、普通に生きている人に聞いた方が良かったか? でもこの町の人間じゃ素直に教えてくれるか疑わしい)
そう嘆きながら、それとは別にダルシアの復活のために禁術の知識が無いか書庫を探っていると、魔術師の霊から書庫に一冊だけ禁書があると教えられた。
何でも、読む者に力を与える代わりに破滅の運命をもたらす邪悪な書らしい。
興味を持ったヴァンダルーは、その禁書に施されていた封印を死属性魔術で解き手に持ってみた。
「……確かに禍々しい気配は感じるけれど、そう大した事無いような?」
結果、魔力は感じるけれど【危険感知:死】には微弱な反応しかない、取るに足らない古い書物の様に思えた。
角が金属で補強されているので、それが危険なのかなと思う程危機感を覚えない禁書だ。
これは期待できないかもしれないと思いつつ禁書を開くと、紙面を埋めていたのは幾何学模様に似た、文字には見えない物だった。
「うーん、読めない。これでは力は手に入らないのでは……ん?」
そう思っていると、ふと痒みの様な感覚を覚えて、不快だなと思った。
《魔力が五千万上昇しました!》
《【精神汚染】スキルが、【異形精神】スキルに変化しました!》
《【身体伸縮(舌)】スキルと【精神侵食】スキルを獲得しました!》
《【怪力】、【高速治癒】、【魔術耐性】、【魂砕き】、【神殺し】、【身体伸縮(舌)】、【異形精神】スキルのレベルが上がりました!》
すると何故か魔力が上がってスキルを獲得したり、スキルのレベルが上がったりした。
「えぇ?」
驚きながらステータスを確認してみると、確かに脳内アナウンスの言う通りになっていた。
・名前:ヴァンダルー
・種族:ダンピール(ダークエルフ)
・年齢:7歳
・二つ名:【グールキング】 【蝕王】 【忌み名】
・ジョブ:毒手使い
・レベル:20
・ジョブ履歴:死属性魔術師、ゴーレム錬成士、アンデッドテイマー、魂滅士
・能力値
生命力:184
魔力 :378,120,344(50,000,000UP!)
力 :128
敏捷 :130
体力 :119
知力 :761
・パッシブスキル
怪力:3Lv(UP!)
高速治癒:5Lv(UP!)
死属性魔術:6Lv
状態異常耐性:7Lv
魔術耐性:3Lv(UP!)
闇視
死属性魅了:6Lv
詠唱破棄:4Lv
眷属強化:8Lv
魔力自動回復:4Lv
従属強化:4Lv
毒分泌(爪牙舌):3Lv(UP!)
敏捷強化:1Lv
身体伸縮(舌):3Lv(NEW!)
・アクティブスキル
吸血:7Lv(UP!)
限界突破:5Lv
ゴーレム錬成:6Lv
無属性魔術:5Lv
魔術制御:4Lv
霊体:7Lv(UP!)
大工:4Lv
土木:3Lv
料理:4Lv
錬金術:4Lv
格闘術:5Lv(UP!)
魂砕き:6Lv(UP!)
同時発動:5Lv
遠隔操作:6Lv
手術:3Lv(UP!)
並列思考:5Lv
実体化:4Lv
連携:3Lv
高速思考:3Lv
指揮:1Lv
農業:3Lv
服飾:2Lv
投擲術:3Lv
・ユニークスキル
神殺し:3Lv(UP!)
異形精神:2Lv(精神汚染から変化)
精神侵食:2Lv(NEW!)
・呪い
前世経験値持越し不能
既存ジョブ不能
経験値自力取得不能
「なるほど、確かに力が手に入ったけれど……?」
読むだけで魔力が五千万も手に入るのなら、普通の人から見れば確かに大した力だろう。一流の魔術師五千人分の魔力だ、溺れて我を失って破滅してもおかしくない。
【精神侵食】という固有スキルも、見るからに危険そうだ。
しかし、何故【魂砕き】や【神殺し】のレベルまで上がったのだろうか? 【精神汚染】スキルも、何故かユニークスキルの【異形精神】に変化したし。
「何よりこの【身体伸縮(舌)】って? 舌が伸びるのかな? ――あ、伸びた」
舌を口から伸ばしてみると、にゅ~っと伸びた。特に痛みも引き攣るような違和感も無く、手足を曲げ伸ばしするのと同じ自然さで、ヴァンダルーは舌を一メートルは無かったが、腕より長く伸ばせた。
しかも、自由自在に動かせる。
蛇のように撓らせる事も、カエルが虫を捕まえる時の様に素早く伸ばす事も出来る。ペンに巻きついて字を書く事だって出来るだろう。まるで手が一本増えたかのようだ。
「……【舌鋒】」
そして試しに舌で貫く【武技】を発動させてみると、普通に発動した。舌を飛ばしていた時よりも射程距離は短くなったが、これなら連射が効く。
【精神侵食】と【異形精神】がどんなスキルなのかは不明だが、確かに力は手に入った。破滅の運命はどうなるか不明だが。
「これまでこの禁書を読んだ人達って、皆舌が伸びる様になったのか? そのせいで変人扱いを受けて人間関係や仕事に失敗したとしたら、確かに破滅の運命かな?」
舌が一メートル伸びるとか、地球ならビックリ人間扱いだろうし、気味悪がる人も多いだろう。自分も気を付けようと思いながら、ヴァンダルーは禁書を本棚に戻した。
自分から胃袋の中に飛び込んだも同然の間抜けな悪神の魂を砕き、喰ったせいで悪神の魔力と、力の一部を手に入れた事にヴァンダルーが気付くのは、大分後の事だった。
ただ、禁書がただの紙の束と化している事にニアーキの魔術師ギルド支部が気付くよりは早かった。
・スキル解説
・【異形精神】
人間とは異なる精神構造をしている事を表すスキル。このスキルを持つ者は精神に効果を及ぼす魔術、特殊能力、薬品等が全て無効に成る。
ただ無感動に成る訳では無い。
この固有スキルを持つ存在は人間ではヴァンダルーのみであり、他には悪神や邪神等異世界から現れた存在の一部と、それに非常に近い存在のみ。
・【精神侵食】
対象の精神に影響を与え、人格や認識、記憶の改変を行う事が出来るスキル。使用には接触、会話、視線を合わせる等、何らかの方法でコミュニケーションを取る事が必要。
手紙を読ませる、記録した音声を聞かせる等の間接的な方法でも可能。
ブブルドゥーラの場合は、自分自身でもある禁書の頁を読む事が発動条件だった。
ヴァンダルーの場合、現在は生者に対しては精神や魂に直接入り込んで洗脳を行っていたブブルドゥーラ程このスキルの効果を引き出せない。
ただ死者に対しては絶大な効果を及ぼす。
・【身体伸縮】
身体の一部、若しくは全身を自由に伸ばし縮み出来るようになるスキル。伸びる距離はレベルによる。
レベル1で二倍、レベル2で四倍、レベル3で八倍と増えていく。
身体が伸び縮みする様になったとしても、ゴムの性質を帯びる訳ではない。
このスキルを持っている人間はまず存在しない。
ネット小説対象に参加しました。宜しければ応援よろしくお願いします。
2月7日に75話を、11日に76話を、12日に77話を投稿予定です。