冒険者ギルド解説
冒険者ギルドとは今は堕ちた戦神ザンタークに選ばれた勇者ファーマウン・ゴルドが、アルダとヴィダの戦いの後発足し、没後分裂していたギルドが統合した結果生まれた組織である。
それまで個人単位で行われていた魔境やダンジョンでの狩猟採集を助け、採集物を社会に役立てる事を目指した組織で、ファーマウンは存命の間に錬金術を用いてギルド登録証、通称ギルドカードを発明し、現在のギルドの基礎を作ったとされる。
そしてファーマウンの没後、冒険者ギルドの前身は人類の復興と共に増えて行ったが、都市毎国毎にハンターギルド、勇者ギルド、フロンティアギルド、ブレイバーギルド、アドベンチャラーギルド等名称と組織が異なっていた。だが、今では異なる大陸でも冒険者ギルドで名称と組織が統一されている。
基本的に冒険者ギルドは国家とは関係無い組織だが、他のギルド同様完全に自由では無く影響を受けている。
税金を納めるのもその一つで、各冒険者ギルドでは冒険者に渡す報酬から予め税金分の金額を差し引いて渡している。この税金の比率は国毎に異なるが、大体一割前後だ。
他にダンピールを初めとしたヴィダの新種族を魔物とするか否か、冒険者に行う援助、ギルド内の規定等国毎に違いがある。
・冒険者登録
冒険者登録は資格のある職員が、専用のマジックアイテムを使って行う。
登録資格は二つ。まず、人間である事。これは人種、エルフやドワーフ、ヴィダの新種族等を含める広い意味で人間であると言う意味。ただし国毎にその意味が異なる場合がある。例を挙げると、アミッド帝国ではダンピールは魔物扱いであるため冒険者登録をする事は出来ない。
もう一つは、既定の年齢に達している事。アミッド帝国とその属国では十五歳以上、オルバウム選王国では公爵領毎に異なるが概ね十歳から、十歳未満でも幾つかの公爵領では読み書き算術のテストを行い、十歳と同等以上の学力と判断能力があると認められれば、登録可能となる。
他にも犯罪者では無い、奴隷では無い等の条件があるが、これは常識であるため態々受付で説明される事は無い。
登録にはギルド職員に本名、年齢、種族等を記入した書類を渡し、マジックアイテムに血を一滴垂らす。すると職員に登録希望者のステータスが表示される。この時、書類の内容に虚偽があれば登録を却下される場合がある。また、登録希望者が賞金首であるかどうかも確認される。
問題が無ければギルドの登録証、通称ギルドカードが発行されその瞬間から冒険者ギルドの組合員、冒険者となる。
・冒険者カード
冒険者の身分証である。特殊な金属のような物で出来ており、形状は地球で言う名刺程度の大きさで、表には登録者の名前と現在の等級が印字されている。
裏は通常は白紙で、登録者が望んだ時のみ登録者の能力値やスキルを表示する事が出来る。
初発行時は無料だが、紛失や損傷などによる再発行は有料である。
・冒険者の規約
活動している地域の法律を犯さない事。
冒険者同士、可能なら助け合う事。
受けた依頼が達成できなかった場合は、違約金を支払う事。
この三つの厳守が求められる。違反した場合は程度に応じて罰金、等級の降格、除名、最悪の場合首に賞金を懸け、捕縛若しくは抹殺を依頼する場合もある。その場合は既に国からも犯罪者として追われる事になっているだろう。
・冒険者の身分
冒険者は基本的に何があっても自己責任の自由業である。ただその身分は国毎に異なる。
これはその国がどれ程冒険者に魔物対策や治安を任せているかが異なるためで、過去には自前の軍隊で魔物の討伐と街道の治安を維持した軍事大国も存在し、その国では冒険者はヤクザ者の様な扱いを受けていたと記録に残っている。
バーンガイア大陸では、帝国側でも選王国側でもそこまで手は足りておらず、非常時の戦力であり魔物から守ってくれる存在であると認知されているため、人々から頼りにされる事が多い。特に上級の冒険者は尊敬を集めている。
無論、冒険者個人の日ごろの行いによる部分が最も大きい。
政治的には爵位を持っていない限り一般人であるが、B級以上の冒険者は個人であっても無視できない力を持ち、財力も下手な貴族を上回るため、等級や業績によって差はあるが政治的な発言力があるとみなされる。
そのため、等級が上がれば上がるほど政治と無縁で居られなくなるのが現実である。
ただミルグ盾国では例外的に大規模な軍事活動に冒険者を雇わない慣習がある。これは戦争に冒険者を大勢動員した事で、国内の魔物の間引きが疎かになりダンジョンや魔境から魔物が溢れる大暴走が起こったと言う苦い教訓があるため。
しかし、やはり慣習に過ぎない為少人数での参加等、例外は多々ある。
・冒険者の能力値
ジョブには戦闘系スキルの獲得や能力値の上昇率に補正が係る戦闘系と、生産系スキルに補正がかかるが能力値の上昇率は低い生産系がある。
二つの差は最初大した事は無いが、ジョブチェンジを重ねるごとに差は大きくなり、最終的には同じ種族とは思えない程の差になる。
・例 人種の場合
人種の場合、ジョブチェンジする前の成人(十五歳程)の能力値は、生命力30、それ以外の魔力を含めた能力値は10を幾つか超える程度だと「人並み」と評される。
平均的なD級冒険者の前衛職の場合生命力は500、力や体力、敏捷が100~150 知力が50~60 魔力が100前後になる。
ランクが上の冒険者程能力値やスキル等の情報は秘匿しているが、一流の使い手とされるB級冒険者は、生命力か魔力が10000、それ以外の能力値は1000。各能力値の内どれか、若しくは二つほどが以上の数字に至っている。
D級とB級で大きな差が出ているが、これは見習い系ジョブや【戦士】等の汎用ジョブよりも、【魔剣使い】や【斧士】等の専門職の方が能力値の上昇率が高い事、更にそれらのジョブに就ける者は元から高い素質を持っている事が関係している。
・講習と訓練
冒険者ギルドでは様々な講習や訓練を受ける事が出来る。引退した冒険者が教官と成り、【剣術】や【弓術】、【槍術】等の戦闘系スキルの習得、薬草などの採集物に関する知識、魔物毎の討伐部位や解体方法のレクチャー、魔術師ギルドから招いた講師による魔術の講習、中には読み書き計算等、内容は多岐に渡る。
これらの講習や訓練は、希望すれば常に受けられる訳ではない。冒険者学校の生徒が最優先であるため、通常の冒険者は受付で受講を希望し、手続きをする事。
講習や訓練を集中的に受ける事を望む場合は、冒険者学校へ入学した方が効率的である。ただし、バーンガイア大陸ではアミッド帝国とその属国には冒険者学校制度は存在しない。
・冒険者学校
バーンガイア大陸ではオルバウム選王国のみだが、未成年の冒険者に冒険者学校への受講を義務付けている。
百年前に制度が変更され、未成年の登録希望者は略式登録後、入学手続きと入学金の支払い(少額だが、払えない場合は後払いが可能)後、G級冒険者と同等の立場の学生と成る。
入学資格は学校ごとに異なるが、冒険者登録同様人間であれば入学できる。ただし公爵領によっては、特定の種族の入学を認めないなどの規約が存在する。
学校は単位制で、在学期間は一年から三年。必要な単位を取るか、教官三名以上に実力有と認められれば卒業が可能。ただ、多くの学生は二年までに卒業する事が多い。
大体の未成年者は、最初のパーティーをこの冒険者学校の同期同士で組む。
尚、希望すれば未成年でなくても入学可能。ただ、既にD級以上の実力を持っている元騎士等の希望者の入学はあまり歓迎されない。(生徒が講師より強いため)
・冒険者の等級
冒険者は実力や実績によって、下はG級から上はS級までの八つの等級で分けられる。
ギルドではその等級によって受けられる依頼を定めており、組合員は自分の等級より一つ上の依頼まで受ける事が出来る。
・G級冒険者
冒険者として登録したばかりの組合員に与えられる等級。冒険者としてのスタートラインにして、準備期間。
受けられる依頼は基本的に町や村の中での依頼のみで、まず戦闘は発生しない。ギルドの施設内の清掃や、日雇い労働等。
得られる報酬は格安で、そもそも依頼自体が毎日あると言う訳ではない。そのためこの等級の冒険者の暮らしは木賃宿に泊まり粗末な食事を取るのがやっと。
代わりに各ギルドが新人向けに行う講習や訓練をタダ同然で受ける事が出来る。
本来G級は食うに困って冒険者になった貧民や農民にとっての訓練期間であり、そのためこの等級に留まる冒険者はまず存在しないし、そもそも考慮されない。彼らは僅かな生活費を稼ぎながら、ギルドの講習や訓練を受けてスキルを獲得し、薬草等に関する知識を得て、昇級を目指す。極稀に昇級では無くギルドの職員に転職できる場合があるが、それは例外である。
ただし、猟師や農民が罠にかかったゴブリンやホーンラビット等弱い魔物の討伐証明部位を換金するため冒険者登録する場合があり、その場合は昇級せずG級に留まる事が多い。
この等級の冒険者は、兵士や傭兵から転職した等の例外以外は実力と言う程大したものを持たない。
・F級冒険者
数回G級の依頼を受けてある程度の社会性とやる気があると判断された場合や、講習を受けて合格した場合昇格できる。また実力がある場合は最初からF級に抜擢される場合が多い(未成年者は除く)。
ただ受けられる依頼は魔境では無い普通の野外での薬草や茸、山菜などの採集、若しくは野兎や山鳩の猟、川や湖などで魚や貝の漁等。
依頼の過程でゴブリン等と戦闘に成る可能性はあるが、討伐依頼等は受けられない。また、魔境に入る事も推奨されない。
例外は先輩冒険者の下働き。荷物持ちや素材の剥ぎ取り等を行いながら冒険者の基礎を学び、報酬として先輩冒険者が使い古した装備品のお下がりを受け取るのが昔からの伝統である。
F級の冒険者の暮らしは、G級よりマシだがとても豊かとはいえない。そのためF級に留まる冒険者の多くは、実際には他に本業があり、副業で冒険者をしている場合が多い。
農閑期に野兎やリスを狩りながらゴブリンを退治する農夫や、漁場を守るためにサハギンと戦う漁師等が該当する。
また国によっては兵士が副業を持つ事を許可しており、休日に野外で狩猟や薬草の採集を行い、冒険者ギルドで換金する事もある。その場合の生活は若干豊かなものになる。
F級冒険者の実力は、まだジョブチェンジを経験していない一般人から、見習い系のジョブに就いている者まで。戦闘に適したスキルは無いか、持っていても1レベルが精々。
・E級冒険者
F級の依頼を暫く受け続けていれば、E級への昇格が審査される。
E級冒険者は最低でも戦闘に使える武術、若しくは魔術スキルを習得している事が昇級の条件となる。
ただし、実戦で通用する水準で魔術を操れる魔術師は最初からこの等級に抜擢される事が多い。
世間一般で想像される冒険者らしい冒険者は、このE級から始まる。
小さな村だとE級冒険者が一番の腕利きなのが普通で、この等級を越える現役冒険者が常にいる事はまず無い。
受けられる依頼の幅がこの等級から一気に広がる。魔物の討伐から隊商の護衛、薬草の採集などもあるがF級以下の依頼と比べて危険な場所に生息している場合が多いものになる。
魔境に入る必要がある依頼も多いが、あまり奥に行こうとすると面倒見の良い先輩に引き止められる事が多い。
E級冒険者の暮らしは都市部で暮らす平均的な一般人と同じ水準である事が多い。ただ余裕がある訳では無く、安い武具で武装を整え、もう少し稼げればなと思いながら生活する事になる。
結婚して家庭を持ち引退後も安定した生活を過ごしたいと考えるには苦しく、結婚は昇級してから考えようと思う者が大多数。
E級冒険者の実力は、見習い系ジョブに就いている者から、【戦士】や【盗賊】等にジョブチェンジしている者まで。スキルは最低でも1レベル。D級への昇級を狙う者は、3レベルに達している事が多い。
平均的なE級は、ランク2までの魔物一匹を一人で倒せるのが目安である。
また、この等級から冒険者ギルドに預金と借金の申し込みを行う事が出来る。ただ、借りられる金額は少ない。
・D級冒険者
この等級から昇級に試験が存在する。E級からD級への試験はギルド職員による面接と、人間を討伐対象にした依頼を達成できるかの実地テストになる。
D級から山賊や海賊、賞金首等の人間の討伐や捕縛を目的にした依頼があるため、D級以上の冒険者には人を殺せる事、殺せても倫理観を失わない事が求められる為。
そのため精神的な問題でD級へ上がれず冒険者稼業を諦める者も、少数存在する。俗に言うD級の壁である。
ただしその壁さえ乗り越えられれば、大抵の冒険者志望者はこのD級まで上がる事が出来る。
口の悪い者に、「並の才能しか持たない凡人が人並みの努力を怠らなかったら辿りつける溜まり場」と揶揄されるのがD級である。
ただし近くに小規模な魔境や攻略が簡単なダンジョンしかない小さな町では、D級冒険者がギルド1の腕利きである場合が珍しくなく、村規模になると居ない場合も多い。
受けられる依頼は、E級の依頼に危険度と報酬額を増したものになる。また、冒険者ギルドではこの等級から一人前と見なされる。
この等級の冒険者の生活は、平均的な農家よりも良いが都市部で店を出している商人よりは下と言う下層の上から中流層の下程度になる。
宿屋を家代わりに寝泊まりし、武装をケチればもっと余裕が持てるが命をかける仕事である以上そんな事は出来ないと迷う日々。また、大怪我や四肢を失う等の危険に備えて冒険者がギルドに預金するため、収入以上に質素な生活をする者が少なくない。
結婚も出来なくはないが、都市部で暮らし続けるなら余裕のある結婚生活とは言えず、引退後は再就職する事が前提になる。
夫婦ともに仕事がある場合は、配偶者の収入による。
そのため、ギルドの職員や商人の専属護衛等の再就職先があれば、自分の限界を悟ったD級冒険者が殺到する事が多い。
この等級の冒険者の実力は、【戦士】や【魔術師】等のジョブでも50レベルを超える者から、【剣士】や【○属性魔術師】等本業ジョブにジョブチェンジした者までが多い。
スキルは3レベルから4レベルに至っている場合が多い。
D級冒険者は、最低でもランク3の魔物を一人で倒し、ベテランはランク4の魔物を倒せて当たり前と言われる。
・C級冒険者
この等級に昇級するには、簡単な礼儀作法のテストと筆記試験に合格する事が必要。
また、C級に昇級できる実力が付くまでに大抵の人間はレベルが極端に上がり難くなる「成長の壁」を一回は経験しているため、それを乗り越える事が必要になる。
そのためC級冒険者は一般的にも頼りにされ、故郷の村に帰れば「凱旋」と見なされる。また、この辺りから貴族や大商人からのスカウトがかかり始める。
仕事でも貴族や大商人からの指名依頼が混じり始め、中には囲い込みを目的としたものがあるため自由な身分で居続けるためには注意が必要。
C級冒険者の暮らしは、豊かな中流層という水準の者が多い。ただ、準騎士爵位や騎士爵位、領地の無い法衣男爵までの貴族の普段の暮らしも実質同じ程度なので、十分豊かと言える。
多くの者が拠点となる家を所有しており、魔導コンロ等の生活用マジックアイテムを導入して豊かな生活を過ごしている。
武装も黒曜鉄等の魔導金属や高ランクの魔物の素材を使用した武具や、中級以上のマジックアイテムで充実させている事が多い。
この等級の冒険者の実力は、最低でも【剣士】や【斧士】等の専門職に至っており、そこから更にジョブチェンジしている者が大多数。
戦闘でメインに使うスキルの目安はC級成りたてで4。平均的な者で5から6レベル。
ランク5の魔物一体を一人で倒せる力を求められ、ベテランなら一人でランク6を、パーティーを組めばアースドラゴン等の竜種を含むランク7の魔物を討伐する事が求められる。
・B級冒険者
この等級になるには大きな手柄――単独で竜を狩る、危険なダンジョンを攻略する等を複数回挙げる必要がある。
試験も行われるが簡単な面談程度で、落ちる者はまず居ない。試験を受ける様に言われた段階で、昇級が確定しているようなものだからだ。
受けられる依頼は多岐に渡り、成功すれば高額の報酬を受け取る事が出来る。
また平民出身でもその立場は騎士や下手な貴族を上回る。大国でも人口数万人以上の大きな町にしかおらず、小国なら国一番の冒険者である事も珍しくない。
一般的にはB級は英雄であり、超人であると認識される。村の出身者にB級冒険者が出たら、村興しに利用されるくらい名誉であり、町では「式典に出てくれ」と頼まれ、面識の無い名士の子弟の結婚式の招待状を受け取る事が珍しくなくなる。
基本的にB級に昇格した瞬間、「気ままな」冒険者稼業は諦めるべきである。
B級冒険者の暮らしは、一般人が思い描く「成功した冒険者」の生活と成る。
ちょっとした邸宅を購入し、使用人を雇い、美人と結婚すると言うサクセスストーリーの実現が可能。また、冒険者の憧れであるギルドの美人受付嬢との結婚も珍しくない。また、貴族の令嬢との婚姻もあり得る。
引退した後も各種ギルドの職員や貴族家の武術指南役等再就職口に困る事は無く、そもそも既に働かなくても食っていける財産を持っているか、サイドビジネスで成功している者も少なくない。
その経済力は、村が幾つかある程度の小領の領主を遥かに上回る。
B級冒険者の実力は、見習いジョブも含めて5つ以上のジョブに就いている事が多い。
スキルは最低でも6レベル、並のB級で7レベル程。
また、この等級の冒険者の半数以上が二つ名を持っている。
B級冒険者は個人でランク7やランク8の、町一つ壊滅させられるような魔物を倒せる実力が求められる。パーティー単位なら、ランク9以上の災害指定を受ける魔物の討伐を依頼される事もある。
・A級冒険者
A級に昇級するために必要な目安は、その時々によって異なる。災害指定の魔物を個人で討伐する等、歴史に残る人物である事が条件と言えば条件。
国家的な英雄であり、緊急時の発言力は並の貴族を上回り、平時でも無視できない存在。小国に居れば王族から婚姻話が舞い込み、大国からヘッドハンティングを狙ったエージェントが派遣される。
一般的にはA級冒険者は、英雄伝承歌で歌われる英雄であると認識される。頼んでもいないのに石像や銅像が立ったり、歌が作られたり、劇が上演されたり、伝記本が出版される事があるので、先んじて自ら作成する芸術家を指名してお墨付きを与える等、対策をとる必要がある。
A級以上を対象にした依頼は基本的に指名依頼で、冒険者ギルドの壁に張られている依頼書には殆ど無い。
その報酬は高く、中には国家の命運を左右する内容の依頼も含まれるため守秘義務を伴う事が多い。
ただし中には令嬢や姫君との、護衛名目のお見合い等が含まれる。
A級冒険者に成った時点で、冒険者は国家権力に関わらない自由業であると言う建前は信じるべきではない。
A級冒険者の暮らしは、上流貴族並になる。便利なマジックアイテムが完備されている大きな屋敷に、複数の別荘を持ち、優れた使用人を何人も雇用して不自由する事に不自由する生活をおくる事が出来る。
複数の女性と婚姻する事が当たり前で、孤児院の運営等慈善事業に手を出す者も多い。
その経済力は、庶民が思い描く貴族その物である。
A級冒険者の実力は、水準を計る事が難しい。ただ、昨今では七つ以上のジョブに就き、戦闘でメインに使うスキルが10レベル以上なのが、平均的とされる。
また、二つ名が当たり前のように複数付いていて、固有スキルを持っているか、神から加護を得ている場合も珍しくない。
小国なら魔境から外に出た時点で国家存亡の危機になるランク9以上の魔物の討伐を、個人で達成する事が出来て当たり前とされる。
・S級冒険者
昇級する条件自体が曖昧な存在。超人の中の超人であるA級冒険者の枠にすら収まらない力、伝説どころか神話に残りかねない業績を上げた存在に贈られる称号。
S級冒険者は個人で小国なら滅ぼせる戦闘力を持つため、基本的に何処かの紐が付く。
小国で活動していれば、その国を大国ですら侮れなくなり侵略戦争を仕掛ける策謀を自主的に中断する程の影響力がある。
S級冒険者限定の依頼と言うのは存在せず、基本的に指名依頼のみ。
その暮らしは記録に残っているだけで、魔境を個人で浄化して領地にしたり、悪政を敷く王を倒して王位を簒奪したりと、想像を絶するものばかり。
バーンガイア大陸でここ百年の間唯一S級に成った【迅雷】のシュナイダーを例に挙げると、数え切れない程の愛人を囲い、複数の慈善事業、中には使用人や奴隷の数だけで小さな村が出来るような屋敷と言った、バカげた生活をしている。
S級冒険者の実力は、A級冒険者を越えるものであるがはっきりした基準が無い。ただ上位スキルを所有している事は共通している。
また、大国を存亡の危機に陥れるほど強力な、それこそ龍や邪神等の神話に登場するような存在の討伐を依頼され、それを達成する事が求められる。
・おまけ
【緑風槍】のライリーはA級冒険者だが、これはトーマス・パルパペック伯爵から賄賂を受け取り、同時に弱みを握られているミルグ盾国のギルドマスターが不正に昇級させたもの。
A級への昇格条件は明確な基準が無い為、このような不正が行われる事が過去にもあった。
また、ライリーが冒険者ギルド等で評判が悪かったのは犯罪奴隷を、中でもゲニーをパーティーメンバーにしていた事が最も大きな原因である。
ゲニーはC級冒険者でありながら身内であるはずの冒険者に非道を働いたため奴隷に堕ちたのに、それを引きつれて冒険者ギルド内を闊歩するのだから、受付嬢だけでは無く他の冒険者からの評判が落ちて当たり前だった。
・おまけ2
ギルドの受付嬢との結婚は男性冒険者なら一度は憧れるゴールだが、全ての冒険者ギルドの受付嬢が若く綺麗で独身という訳では無く、当然ギルドの受付嬢を雇用する条件にもそんな規定は無い。
ただ成功した冒険者との結婚は、貴族の御曹司や白馬の王子様との恋愛よりはずっと現実味のある夢として認知されており、給料も良いので募集する度に多数の就職希望者が集まる人気の職業である。
冒険者ギルド側も、そうした受付嬢の人気を解っているため「条件にはありません」と言いながらも美人を採用する場合が多い。
・おまけ3
人口五千人程のタロスヘイムには当時【剣王】ボークス等、複数のA級冒険者が存在し、その下にもB級C級が山ほどいた。
これは本来異常な事だが、周りに幾つも魔境が存在し、更にダンジョンに潜らなければ国家運営に支障をきたす環境だったため、強者が異常なほど増えた結果である。
・おまけ4
ヴァンダルーの能力値の内生命力や力等が冒険者と比べて低いのは、年齢が低い為。第二次成長期前であるため、能力値の伸びが押さえられている。
これは成長と共に解決するものと思われる。
ネット小説大賞に参加しました。宜しければ応援よろしくお願いします。
1月15日に四章67話を、1月18日に閑話6 1月19日に68話を投稿予定です。