五十七話 蝕王は戴冠し、聖者は神託を受ける
ヴァンダルーがタロスヘイムの王に成る事を了承した一週間後、盛大に戴冠式が行われた。
「王に成りますって一言言うだけじゃだめですか? その後の宴会はちゃんと用意しますから」
「御子、こう言った儀式的な事は一見無駄に思えても意識を切り替え、自覚すると言う意味があるのです」
そういう訳で、ちゃんと儀式的な事も行う事に成り、準備に色々かかったのだ。
まず王冠と玉座だが「とりあえずこれで間に合わせましょう」とヴァンダルーがオリハルコンでひょひょいと作った。ドラゴンゴーレムの破片が材料なので黒鉄色だが、これだけで売れば城の一つや二つ軽く買える価値があるらしい。
タレアが是非と作りたがったが、今は武具を作るのを優先して貰った。どうせこのオリハルコンの王様グッズもすぐ盾や鎧の材料にするので、戦争に勝った後改めて作ってもらう事にした。
後は皆に戴冠式の日にちを告知して、ご馳走の準備をした。これが一週間の大半だった気がする。
「王様自ら料理……クッキングって名乗りましょうか?」
『坊ちゃん、それがステータスに表示されたらどうするのですか』
ダジャレはウケなかった。
後は着飾って(とは言っても、綺麗な毛皮等で作った服なので見た目はやはり蛮族チック)王城前の広場に作った会場に整列。
『おいおいっ! なんで俺が武官の、それも先頭に立たなきゃならないんだ!? 俺は自由な冒険者だぜ!』
「ぼ、坊や、儂はまだ修行中の身でな、宮廷魔術師が立つ位置に居るには相応しくないと思うのじゃが……」
『坊ちゃん! 私はただの馬番兼御者です! 文官様の位置など畏れ多くてとてもとてもっ!』
「……何で俺が決心したのに皆が決心してないんですか。往生際の悪い。
特にサム、馬車が乗れる会場を俺が作ったのは何故だと思っているんですか」
儀式には意味があるそうなので、空いている武官やら文官やら宮廷魔術師の位置には皆を容赦なく配置した。まあ、それを言うなら広場中貴賓席の様なものだが。
「では、これより戴冠式を行います」
式の進行は、ヌアザが行う。本来ならヴィダ神殿の神殿長が行うのが通例なのだが、現在ヴィダ神殿に居るのは元神官戦士見習いの彼だけなので、必然的に彼が神殿長代理という事になった。
ヌアザも神殿長役をやる事にかなり難色を示したが、「じゃあ、代わりの人を指名してください」とヴァンダルーが言うと、誰も指名できない事に気が付いて観念してくれた。
「この日を迎えられた事に女神ヴィダと我等が父祖タロスに感謝を。この場におられない先王陛下、レビア第一王女殿下、ザンディア第二王女殿下も喜んでくださるでしょう」
そしてこのタロスヘイムの歴史を短くまとめた物をヌアザは話し、その歴史を継ぎタロスヘイムに更なる繁栄を約束するとヴァンダルーが宣言し、王冠を頂いて太陽王の称号を受け継ぎ戴冠式は完了。
後はお祭り騒ぎになるのだが――。
「しかし、我々は新しい歴史を今日から歩むのです。
御子よ、初代【蝕王】の称号と共にタロスヘイムの王権を受け取り、納める事をお誓いください」
ヴァンダルーが受け取るのは、太陽王の称号では無い。今のタロスヘイムを考えると、その称号は不似合いだからだ。
今のタロスヘイムは、昼よりも夜の方が活気に満ちている。住人は月明かりで十分物が見えるグールに、闇夜が昼間同様に見えるアンデッドや新種達だ。
例外はセメタリービーとイモータルエントぐらい。
なので称号は【蝕王】となった。【闇夜王】としないのはあまりにイメージが悪いのと、将来的にタロスヘイムから避難した巨人種やその子孫にも来てもらいたいからだ。ヴァンダルーも名誉貴族に成る等、社会的な地位を固めたら交易など色々してみたい。
だから光でも闇でも無いという事で、日蝕にちなんで【蝕王】としたのだ。
「我はタロスヘイムと共に在る」
まあ、実際には出たり戻ったりを繰り返すけど。そう思いつつ決まった言葉を言って、オリハルコンの王冠を頂く。
「ここに【蝕王】ヴァンダルーの即位が成りました」
そうヌアザが言い終わった瞬間、割れんばかりの大歓声が響き渡った。
『うおおおおおおお! うおおおおおおおお!』
「キングっ! キングっ! キングっ!」
広場には拳や武器を突き上げ、歓声とヴァンダルーを称える声を響かせるアンデッドやグール達。
空には地球での鳩の代わりに、空を舞うボーンキマイラとプテラノドンゾンビ、セメタリービーの群。
彼らはこの戴冠式が、ミルグ盾国の遠征軍を迎え撃つためのものだという事を既に知らされている。このタロスヘイムを一度滅ぼしたミルグ盾国の軍が、またやってくる。それを知って彼らは戦意を滾らせた。
巨人種アンデッドは「親の恨みを子に及ぼさない」という倫理観をアンデッドに成った今でも保っている。
しかし、それは当然今の世代が自分達に及ぼそうとしている害を甘受する事にはならない。今の世代がまたタロスヘイムを滅ぼそうというのなら、遠慮無く叩き潰すまでだ。
『ううっ、あの小さかったヴァンダルーが……今も小さいけど立派に成って』
ダルシアが嬉し涙を零す程喜んでいるのでヴァンダルーも嬉しいが、今も小さいは余計だと思う。
「ここからヴァン様の覇王伝説が始まりますのねっ」
タレア、始まりません。そんな伝説。
(さて、後はご馳走を食べて皆で騒いで今日は終わり。対遠征軍防衛線の方針と、それまでにやる事を説明するのは明日と)
のんびりしているように思えるかもしれないが、今はまだ夏の終わり。遠征軍が来るのは早くても春だ。
しかも、既に遠征軍がトンネルを抜けたら通るだろう場所には、一定間隔で監視用アンデッドとゴーレムを配置している。
軍が近づけばすぐわかる。例え少数の密偵が放たれたとしても、同じだ。城壁はそのまま監視用のゴーレムになるし、それを超えても町の建物はゴーレムだらけ。
空にはセメタリービーが飛んでいるので、更に警戒網は厚くなっている。
(うん、万全)
《【蝕王】の二つ名を手に入れました!》
(……この二つ名を手に入れる事以外は)
神託の御子が二つ名に成らないから大丈夫だと思ったが、大丈夫では無かったようだ
(まあ、二つ名にはもうグールキングがあるし、王様っぽいのが二つに成っただけだから大丈夫だろう)
そう思いながら皆を見ていると、ふと気が付いた事があった。
(あっ、俺達に共通するものと言うか、要素と言うか、そう言うのがあったじゃないか。これが使えるかは分からないけど、試す価値はあるな)
でも、流石にこの場で試す事ではないので、その日は皆と船盛の刺身やニードルウルフの味噌鍋、恐竜ステーキ、コボルの実の蜂蜜漬けにフルーツ寒天等のご馳走を食べて過ごした。
ボーマック・ゴルダンは鎧を脱ぎ、僧服を纏った姿で自身が率いる神官戦士達からの意見を聞いていた。その姿はまるで好々爺の様で、ヴァンダルーのみならず彼の戦いぶりしか知らない者は目を疑うだろう。
「では、お前達は今回のミルグ盾国遠征には参加するべきではないと考えるのだな?」
「はい、高司祭様。何度考えても、我々の力はもっと他の事に使うべきだと思うのです」
まだ少年と言って差し支えない若い神官戦士の一人が緊張した様子で、だがしっかりと意見を口にした。
「我々神官戦士は、兵士でも冒険者でもありません。国の都合に従うべきではないのでは」
「魔物との戦いに臆したつもりはありません。ですが、遠征に従軍する意味があるのでしょうか?」
神官戦士とは魔王が魔物を創り出すよりもずっと前に、人里離れた場所にある神殿の神官が危険な野獣を狩るために武装したのが始まりとされている。
そして現代においては神殿と信者を守るため、そして辺境に住む人々に教えを説くために武力を持った聖職者の事をいう。
そんな神官戦士達にとって、来年の春に行われるミルグ盾国の境界山脈遠征は血が滾るようなものではなかった。
二百年前のタロスヘイム遠征同様、教養がある彼らにとっては政治的な動機があからさまである事。
境界山脈の向こうには守るべき人々が居ない事。
この二つが彼らに遠征の参加を拒ませている。
「我々法命神アルダの信徒にとって、魔物との戦いは推奨される事。特に神官戦士にとっては、義務と同じです。魔物が跋扈しヴィダの残党が潜む境界山脈で遠征軍と共に戦う事は、意義のある事だと分っています。しかし、直接魔物の脅威にさらされている人々を守る事を優先すべきではないでしょうか?」
軍と共に危険な未踏の地で戦うよりも、今も魔物の脅威に晒されている辺境の村を守り、今までのように社会に潜む吸血鬼、そして誘惑に負けた吸血鬼のシンパ等を狩りだす事を優先すべきではないかという意見だ。
遠征が成功した場合アルダ神殿が得られる利益や名声よりも、使命感や教義の正当性の順守を選ぶ青臭い考えとも言える。
「確かに、お前達の言う事も尤もだ」
しかし、ゴルダンも世俗の名誉名声や利益よりも青臭い理想を選ぶ人物だった。そうでなければ枢機卿への推挙を断って、この歳まで第一線で神官戦士を続けはしない。
「高司祭が望んでいるあのダンピールの討伐に異を唱える訳ではないのですが――」
「いや、構わん。あれは儂の私情に過ぎん。気遣いは無用じゃ」
今までの長い人生で、ゴルダンはターゲットを討ち漏らした事は無い。どれ程巧妙に隠れ潜んでいても吸血鬼やラミアを見つけ出して討伐し、ダンピールもその親も複数塵に還している。一度の例外を除いて。
その例外もまたダンピールだった。その名をヴァンダルーと言い、母親の魔女こそ灰にして浄化したが生後半年ほどだったのに逃げ延び、三歳になるかならないかの頃には霊媒師のジョブに就き数百匹のグールの上に君臨していた、規格外中の規格外。
そのヴァンダルーは手勢のグールを引き連れ、境界山脈を何らかの方法で越えて逃げてしまった。それを防げなかった事をゴルダンは悔いていた。
(何らかの方法で山脈を越えたという事は、またその方法で山脈を越え手勢を引きつれ襲撃してくる事もあり得るという事じゃ)
境界山脈によって隔てられたバーンガイア大陸南部。そこにはヴィダの新種族達が巣食い、強大な力を持つ原種吸血鬼の生き残りまで存在すると伝えられている。
数百匹のグールだけなら町一つの危機だが、あのダンピールを放置すれば一国……いや、この大陸全体の存亡にかかわるかもしれない。そんな予感がした。
(あのダンピールが手下を更に増やしたとすれば、儂らが越える事が出来ない山脈を自由に往来できる魔物の軍勢を組織し、山脈沿いの地域は西も東も滅ぼされてしまうかもしれん)
だからこそ、今回のトンネル発見によって可能に成った境界山脈遠征に参加しないかと打診があった時は、これはアルダ神が与えた機会に違いないと年甲斐も無く胸を躍らせた。
しかし、遠征の目的は二百年前の遠征で失われた国宝の奪還と、タロスヘイムの浄化だという。
当然だ、ヴァンダルーを危険視しているのはあくまでもゴルダン個人であって、ミルグ盾国やアミッド帝国の上層部には、当時のパルパペック軍務卿以外禄に情報すら伝わっていないはずなのだから。
冷静になって考えてみれば、境界山脈を越えても大陸南部は広い。その中からヴァンダルーを発見できる望みは薄いだろう。出来たとしたら、それは奴が遠征軍を待ち受けていた場合だけだ。
(あのダンピールは、狡猾で用心深い。勝てないと思えば迷わず逃げるはず。逆に遭遇したとしたら、それは奴が勝てると思った時だけだ)
ゴルダンはそう考えた上で、今回の遠征軍に加わってもヴァンダルーは現れないと確信していた。
あれから僅か二年。その程度の年月で遠征に加わるような何千もの精鋭兵に勝てる戦力を集める事は出来まい。堅牢な城塞都市……例えばタロスヘイムにでも立てこもれば可能性もあるが、あの都市の城壁は二百年前の戦争で大きな穴が空いている。今頃崩れているだろう。
だから、遠征に参加しても意味は無い。
「よし、お前達の気持ちは良く分かった。遠征の話は儂から断っておこう」
こうしてゴルダンは遠征軍参加を断ろうとしたのだったが、その日の夜、彼が眠る前にアルダに祈りを捧げていると今まで数度受けた事がある神託が下った。
【再び魔王の影あり。探しだし、滅ぼすべし】
「これは……おおっ、我が主アルダよ! 儂に行けと、境界山脈を越えあのダンピールを討ち果たせと言うのですね!」
遠征軍に参加する事を断ろうと決めたその夜に神託が下った事を、ゴルダンは偶然では無く必然だと解釈した。
そして、魔王の影をヴァンダルーと結びつけた。
その短絡的で、そもそも神託にヴァンダルーのヴァの字も入っていないという大穴が空いている推理が正しいとは、神託を下したアルダにも思い及ばぬことだった。
戦争に使うための病毒を作る事に成功した!
「空気や粘膜、血液で感染し、その後五秒で発病。主な症状に激しい吐き気に頭痛、眩暈、発熱腹痛関節痛が在るだけで、死ぬまで何日もかかり、そこまで至る割合も多分一割以下だろうけど、まあこんなものでしょう」
うごえ゛え゛っ、 ごふー、ごふぅぅ……。
地面に横たわって白目を剥き、舌を垂らしている唾液や胃液や鼻水で地面に染みを作っているダブルヘッドティラノを前に、ヴァンダルーはとりあえず頷いた。
『……坊ちゃん、それは十分難病だと思うわ』
『こんな病気がミルグ盾国やアミッド帝国で流行したら、国家機能が麻痺しちゃいますよ』
「でしょうね。でも、生命属性の魔術師や御偉いアルダの神官様が居るから大丈夫ですよ」
『病気を治す魔術はそれなりの難易度ですし、病気の種類によってかける魔術が異なるのでそう上手くは行かないかと』
「時々【病気耐性】とか病気と毒の両方に抵抗できる【病毒耐性】ってスキルを持っている人もいるけど、少ないしね」
サムとカチアがいうには、伝染病の対策はアミッド帝国やミルグ盾国でもそれほど高度な物ではないらしい。
経験的にアルコールや熱湯に漬ける事で行う消毒方法は知っているが、この世界には抗生物質は存在しない。代わりに在るのがポーションや回復魔術、耐性スキルだがこれも病気に限ってはかなり不完全だ。
まず病気用のポーションは在っても高価で、しかも万病に効く訳じゃない。解毒用のポーションを飲んで、身体に溜まった毒素を中和して症状を軽くし、その間に治す方が一般的だ。
次に病気用の回復魔術は遅々として進んでいない。例えば生命力を上昇させて風邪を治せたとしても、同じ術を癌患者にかけたら体中癌細胞が転移して瞬く間に死んでしまう事もあり得るからだ。
これは生理学や解剖学が進み、身体の仕組みや病原菌についての知識が発見され技術革新を興さなければ無理だろう。
耐性スキルにしても、病気用の物を取得している冒険者や騎士は少ない。多くの場合魔物が持っているのは病気では無く毒だし、暗殺者や野盗の類が使うのも毒だ。だから【毒耐性】はそれなりに多いが、【病気耐性】は少ないらしい。
耐性スキルが身に付くほど頻繁に病気にかかる虚弱体質は、普通冒険者になろうとしない。
「思いの外、危険な物を作ってしまったかな? でも、半日で活動を停止するように作ったから大丈夫か」
もし流行しても、半日だけなら死者は出ないだろうし、この世界の人口密度なら町や村を超える事は無いだろう。予期せぬ事態が起こったら、魔力でゴリ押しして広範囲を【殺菌】してやればいいだけだ。
そうヴァンダルーが自己弁護していると、リタとサリアが覗きこんできた。
『それで坊ちゃん、そろそろ止めを刺しませんか?』
『それとも後半日待ちます?』
「いえ、そろそろ止めを刺しましょう、お願いします」
『はーい』
リタとサリアは白い臀部を左右に振りながらダブルヘッドティラノに近づくと、その二つの首にそれぞれハルバードとグレイブを振り下ろした。
そう、白い臀部だ。なんと、リタとサリアは【霊体】スキルのレベルを上昇させ、念願の食事が出来る、一見しただけでは生きている人と変わらないように見える姿を手に入れていた。
ヴァンダルー同様、その肌は健康的とは言い難い蠟を厚く塗った様な白だが、別に問題にはならないだろう。
姉のサリアは背中まで髪を伸ばした一見大人しそうな、リタは左右で纏めたツインテールの活発そうな美少女だ。
そして、二人とも鎧に合った体つきをしている。
以前は棒人間だったり性別不明の全身タイツだったりした彼女達の霊体だが、今はビキニやハイレグの胸部を余らせる事無く盛り上がり、その癖腰は細くくびれ、臀部は丸く実っている。ローライズだったりハイレグだったりするので、面積的には半分ぐらい出ているし。
(凄い目に毒なんだろうなー)
まだ体が子供なのでその辺りの感覚は精神的にしか分からないヴァンダルーだが……あと数年もすれば普通の子供なら初恋を経験してもおかしくない歳だ。それまでに二人にはマントを身に着けさせようと決めた。
因みに、二人が初めてあの姿になった時ははしゃいで大騒ぎに成った。
『見てください坊ちゃん! 余ってませんよっ、一ミリも余ってません! 余裕なんて全く無いくらい詰まってます! しかもお腹はこんなに細いです! 毎日私は美人でセクシーだって繰り返し唱えてて本当に良かったです!』
『うわぁぁぁぁっ! 凄く美味しいです坊ちゃん! マヨネーズもお味噌も何もかも! オークの生姜焼きも恐竜のフリットもフライングシャークの味噌煮も、お刺身もワサビ魚醤で食べると堪りません!』
リタは自分の肉体(霊体)を誇り喜び、サリアは今まで食べられなかった食べ物を次から次に夢中で口に運ぶ。
色々溜まっていたんだな、無理をさせ過ぎたかな、次リビングアーマーを作る事が在ったら早めに【霊体】スキルを覚えさせよう。
そう思いながらその日は二人に振り回された。……形容詞では無く、物理的に。
【霊体】は見た目だけでは無く、アンデッドなどが筋肉や骨の代わりに実体化させるものだ。そのため、サリアとリタの力は飛躍的に上昇していた。
因みに、ハイレグアーマーやビキニアーマーにありがちな、「そんな高い露出度で防御力は問題無いのか?」と言う問題も二人には引き続き無い。
いくら人間そっくりでも、【霊体】は【霊体】でしかない。頭を砕かれても胸や腹を貫かれ、剥き出しの太腿を切断されても、臓腑は勿論血の通った肉や骨は存在しない。まったく痛くない訳ではないが、あくまでも本体から実体化した余剰部分でしかないのだ。
そもそも危ないと思ったら実体化するのを止めて、元のがらんどうの鎧に戻れば良いのだし。
『坊ちゃん、愚かな私を笑ってやってください』
妙にすすけた様子のサムが、突然そんな事を言い出した。
『あの時、娘達を宿らせるのは本当にこれでいいのかと聞いた坊ちゃんの真意、今になってようやく分りました』
サムの視線の先には、手甲や脚甲がある分下着よりは露出度は低いがそれでも男の目をこれでもかと惹くだろう二人の娘達。
因みに、グールの男に二人がナンパされた事は何故かないらしい。多分、ヴァンダルーの親衛隊だからだろう。
「まあ、俺もここまでとは思わなかったので。それに、マントを付けるとか布を巻くとか色々ありますよ」
しかし、あの鎧を替える事は出来ない。だってあれが二人の本体なのだから。
「ねぇ、もしかして私もああ言う格好した方が良いの?」
「カチアはそのままでいて下さい」
先日エレオノーラにも同じ事を聞かれたヴァンダルーは、カチアの質問にも同じ答えを返した。二人がああいう格好をすると、即座に防御力不足に成る。特にカチアにはエレオノーラのような再生力は無いのだから。
……それ以前にそんな調子で女性陣に高露出度な格好をさせていったら、【グールキング】【蝕王】に続いて【好色王】とか【色欲王】とか、良い効果が無い上に持っているだけで社会的に終わりそうな二つ名がステータスに表示されてしまいかねない。
「とりあえず、先に進みましょう。春までにレベリングしておきたいですし」
『はーい』
『坊ちゃん、私も少々レベルを上げたいのですが』
「あっ、レベル上がった! やっと戦士100レベル到達ー! ジョブチェンジできる~っ!」
《ヴァンダルーの【格闘術】、【吸血】スキルのレベルが上がりました!》
《【連携】スキルを獲得しました!》
・名前:サリア
・ランク:6
・種族:ハイマジックハイレグアーマー
・レベル:35
・パッシブスキル
特殊五感
身体能力強化:4Lv(UP!)
水属性耐性:3Lv(UP!)
物理攻撃耐性:3Lv(UP!)
・アクティブスキル
家事:2Lv
槍斧術:5Lv(UP!)
連携:3Lv(UP!)
弓術:3Lv(UP!)
霊体:4Lv(UP!)
遠隔操作:3Lv(NEW!)
鎧術:3Lv(NEW!)
・名前:リタ
・ランク:6
・種族:ハイマジックビキニアーマー
・レベル:36
・パッシブスキル
特殊五感
身体能力強化:4Lv(UP!)
火属性耐性:3Lv(UP!)
物理攻撃耐性:3Lv(UP!)
・アクティブスキル
家事:1Lv
薙刀術:5Lv(UP!)
連携:3Lv(UP!)
弓術:2Lv(UP!)
投擲術:1Lv(NEW!)
霊体:4Lv(UP!)
遠隔操作:3Lv(NEW!)
鎧術:3Lv(NEW!)
・二つ名解説 【蝕王】
獲得条件は、タロスヘイムの王に成りながらも【太陽王】では無く【蝕王】の二つ名を希望し、それをタロスヘイムの住人の九割以上に認められる事で獲得できる。
主な効果は【蝕王】の治める民は全て(人種やエルフ、ドワーフであっても)【眷属強化】の影響と効果を与える。
更に種族的に【暗視】を持たない民は【暗視】スキルを、【暗視】を持っている民は【闇視】スキルが習得可能になる。
更に日光や月光に弱い民は耐性スキルの習得が可能。
・名前:ボーマック・ゴルダン
・年齢:65
・二つ名:【吸血鬼ハンター】
・ジョブ:魔砕神聖戦士
・ジョブレベル:97
・ジョブ履歴:神官戦士見習い、神官戦士、司祭、神聖戦士
・パッシブスキル
感覚強化:3Lv
直感:5Lv
神聖強化:アルダ:10Lv
精神耐性:3Lv
・アクティブスキル
棍術:9Lv
鎧術:6Lv
盾術:7Lv
光属性魔術:6Lv
生命属性魔術:5Lv
無属性魔術:1Lv
魔術制御:4Lv
限界突破:6Lv
御使い降臨:1Lv
聖職者:5Lv
指揮:3Lv
連携:4Lv
・ユニークスキル
神託受領
・状態異常
熱狂:信仰
老化(予兆)
ネット小説大賞に応募しました。宜しければ応援お願いします。
次話は12月10日中に投稿する予定です。