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四度目は嫌な死属性魔術師  作者: デンスケ
第一章 ミルグ盾国編
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五話 自分が強くなれないなら周りが強くなればいいじゃない的発想

『特訓だ』


 ヴァンダルーは手駒のアンデッドを洞窟の前に整列させて、そう念じた。




 ロドコルテの呪いによって、レベルアップやジョブチェンジをして自力で強くなる事が出来ないと思ったヴァンダルーは、『自分が強くなれないなら、( しもべ)を強くすれば良いじゃないか』と考え方を変えて手駒を強くする事にした。


 強いアンデッドを従えていれば、これから出来る事の幅が広がると考えたからだ。


『町に連れて行くのは厳しいかもしれないけど、母さんが言うには魔物を従えるテイマーや従魔術師、召喚術師といったジョブに就いている冒険者も居るらしいし、何とかなるだろう』


 将来的には魔物に安定して勝てる程度の戦闘力が欲しいが、今は自分を背負って生きていた時と同じくらいの素早さで走れるようになれば、この森から離れて旅に出るには十分だ。


『それに、今のままだと魔物どころか野生の狼や熊にも負けるからな。このまえ、ゴブリンに骨ゴブリンが殴り壊されたし』


 作ったばかりのアンデッド達は、とても弱かった。ランク1相当のアンデッドばかりだから当然だが、では最初から強い魔物を作れば良いじゃないかと思うが、ランク2以上の強いアンデッドの作り方をヴァンダルーは知らなかった。

 死属性魔術を初めて習得した前世では、自分以外をアンデッド化させた経験が殆ど無かったからだ。


『あの施設の研究者が、俺に手駒を集めさせる隙を与えるはずがない。とっくに体も魔術も自由が利かなくなっていた。それが無ければ連中がしていた不死身の兵士研究とか、色々分かったのに。

 結局その研究は失敗したらしいけど』


 頭を切り替えて、まずは現在ある戦力の確認。

 虫等の情報収集用のアンデッドを除いて、戦闘が出来そうな物を整列させる。

 骨猿、骨狼、骨人、骨熊、骨鳥、見込みがありそうなのはこんなところだろうか。他にも骨猪や骨兎、骨ゴブリン等々いるが、骨が足りなかったり大きく欠けていたりして、全ての骨が大きな傷も無く揃っているのはこの五体だけなのだ。


『さて、じゃあ早速特訓を……特訓って、何をさせればいいんだ?』


 はたと、骨猿達に何をさせれば良いのか全く分からない事に気が付いたヴァンダルーは、愕然とした。




 強くなるための特訓と言えば、素人でもある程度は思いつくだろう。

 走り込みをして持久力を、筋力トレーニングで筋力を向上させる。

 格闘技や武術の型を習得する、実戦形式の組手を行う、等々だ。


 しかし、ヴァンダルーの前に並ぶアンデッド達に効果的な、経験値を稼ぐ事が出来るトレーニングとは何だろうか?


 走り込み――意味が無い。心臓も肺も無いのに、そもそも疲れ知らずのアンデッドが持久力の向上を目指して何になる。

 筋力トレーニング――やはり意味が無いだろう。そもそも筋肉が無い骨だけの身体で腕立て伏せや腹筋運動をして、何が鍛えられるというのか。

 格闘技や武術の型を習得――そもそもヴァンダルーが知らないので、教える事が出来ない。

 実践形式の組手――アンデッド達の知能が低すぎて、戦えというとどちらかがバラバラになるまで戦うので、ただの潰し合いになってしまう。


 そもそもヴァンダルー自身、戦闘訓練の類を受けた経験が無い。地球では平均程度には運動は出来た方だと思うが、中学や高校での体育の授業で柔道を習った程度で、とても実戦で使えるものではない。オリジンでは、言うに及ばずだ。


『……オルビー達の霊に――いや、無理か』


 あいつらが知っているのは、弓の技術だ。そしてアンデッド達には、まだ弓を使う知能が無い。これでは教える意味が無い。


『とりあえず、ステータスを改めて確認してみよう』


 以前ダルシアがヴァンダルーのステータスを確認できたらと嘆いていたが、ヴァンダルーはアンデッド達のステータスを確認する事が出来た。

 親子でも不可能な事が可能だったのは、恐らくアンデッド達がヴァンダルーに従属しているからだろう。ダルシアも魔物を従属させる従魔術師やテイマーといった種類のジョブやスキルに付いて詳しくは知らなかったので、確証はないが。


 アンデッド達のステータスは、以下の通りである。


・名前:(骨猿 骨狼 骨熊 骨人 骨鳥)

・ランク:1

・種族:リビングボーン

・レベル:0


・パッシブスキル

闇視


・アクティブスキル

無し




『弱い……弱すぎる』


 アンデッド達は、材料に成った骨の種類に関わらず全て同じ種族で、ステータスの内容は同じだった。


 リビングボーン。それは死後骨だけに成ったのに動き出した死体である。それ以外に特徴は無い。

 動き出してはいるが、所詮骨なので動きは鈍く力も平均的な成人男性よりもずっと弱い。敏捷性はゆっくりと動く事しか出来ず、走る事は出来ない。また、骨の主が生前持っていた能力やスキルを使う事も出来ない。

 骨だけに硬いが、関節部分を攻撃すると意外と簡単に倒せる事が多い。

 知能も本能も殆ど無く、見習い冒険者の練習相手として最適である。

 つまり、戦力として当てにできないアンデッドなのだ。


『そのこいつらをどうやって強くすれば良いんだ? 創ってから二か月たつのに、レベルは0のままだ。だから、これまではリビングボーンにとって経験値になるような事をしてこなかったという事だ。

 じゃあ、何が経験値になるんだ?』


 剣士は実戦と剣の訓練で、農夫は農作業で、武器職人は武器の製造で経験値を稼ぐ。だったらアンデッドは何で経験値を稼ぐ? 魔物はどうやって経験値を稼ぐ?


『人間を殺すとかかな?』


 思いついたのは、魔物らしく人間を害する事だが……もし正解だったとしてもこれは実行しがたい。

 エブベジアの人間を幾ら殺してもヴァンダルーの心は痛まないだろうが、人を殺して冒険者ギルドから討伐依頼を出されたら、またあの地下生活に逆戻りして隠れなければ殺されてしまうからだ。


 アンデッドだけを囮にして、逃げ延びる事は出来るかもしれない。しかし、骨猿のような大きな動物の全身の骨は、簡単には見つからない。際限なく使い潰して良い駒ではないのだ。


『じゃあ、兎や野鼠のような生き物を殺してみようか』


 今まではヴァンダルーが母乳の代わりに新鮮な生き血を必要としていたため、アンデッド達は野兎等の獲物が罠にかかっても、生け捕りにしていた。それをヴァンダルーが牙で噛み、血を吸っていたのだ。

 だから、もしかしたらアンデッド達が自分の手で殺せば経験値を稼ぐ事が出来るかもしれない。




 次の日、アンデッド達はゴブリンを一匹生け捕りにする事に成功した。

 ゴルダン高司祭一行に随分数を減らされたはずだが、絶滅はしていなかったようだ。流石冒険者ギルドが討伐依頼を常設させるだけはある。


「ぎぃぃっ、ギャゲェー!」


 ただの威嚇なのか、それともゴブリン語で罵り声を上げているのか分からないが、ゴブリンがアンデッド達に押さえつけられたまま、耳障りな叫び声をあげる。


『これがゴブリンか……』


 それを見つめるヴァンダルーは、無表情なまま感動していた。流石ファンタジー世界だと。

 ゴブリン。数々のファンタジー作品で代表的な雑魚モンスターとして扱われる存在は、ラムダでも例外ではないらしい。


 魔物が数多く生息する魔境以外の普通の森や草原でも生息する、下級の魔物。暗緑色の肌の身体は大人の胸ほどしか無く、耳はエルフのように長いが顔は比べ物に成らないぐらい醜い。

 力は人間と同じか若干下回る程度で、特に敏捷という訳でも無い。知能は三歳児程度で、武装は木の枝を振り回し、獣の皮を身体に巻きつけていれば上等な方。

 ランクは1でリビングボーン単体よりは強いが、一匹なら農夫に鍬で殴り倒される程度の雑魚。ただし、複数の上位種が存在するため注意が必要。

 そして、ゴブリンが最も恐れられるのはその繁殖力と適応能力である。

 ゴブリンは一度の繁殖で最低でも三匹、多い時で八匹もの子供を産み、生まれた子供は半年で大人になる。そして増えたゴブリンは灼熱の砂漠から極寒の永久凍土まで幅広く適応しながら広がって行くのだ。


『後、ファンタジー物によくある人間の女を攫う設定もあるらしい。オーク程じゃないらしいけど』


 ダルシアから聞いた知識を反芻するが、目の前のゴブリンはそういう事はしていないだろうと思った。単純に、それが出来るほどの戦力が無いという意味で。


『とりあえず……みんなで止めを刺して』


 感動の時間も終わったので、早速アンデッド達が経験値を手に入れられるかどうか試す事にする。


「ぎぎゃぁぁぁぁっ!」


 悲鳴を上げるゴブリンの頭部を骨猿と骨人が殴る蹴る、骨熊と骨狼が噛んで引っ掻き、骨鳥が突っつく。惨たらしい方法だが、リビングボーン単体ではゴブリンに一撃で致命傷を与えられないので仕方がない。

 そしてゴブリンは十数秒で動かなくなった。それから骨猿達のステータスを確認すると――



・名前:(骨猿 骨狼 骨熊 骨人 骨鳥)

・ランク:1

・種族:リビングボーン

・レベル:2


・パッシブスキル

闇視

・アクティブスキル

無し



 レベルが0から2に上がっていた。

『おお、レベルアップした。これでアンデッドは生き物を殺せば経験値を稼ぐことが出来るとはっきりした訳だ』


 死属性魔術で創ったアンデッドでもレベルアップする事がはっきりして、ヴァンダルーはほっとすると同時に高揚した。

 これならアミッド帝国とアルダ神の影響力が及ばない場所で、冒険者として生きていく目途が立つと。とてもいい気分だ。


『ん? 若干良い気分すぎるような気が……ステータス』


 気になったので、今度は自分のステータスを確認する。




・名前:ヴァンダルー

・種族:ダンピール(ダークエルフ)

・年齢:八か月

・二つ名:無し

・ジョブ:無し

・レベル:3(UP!)

・ジョブ履歴:無し

・能力値

生命力:24

魔力 :100,001,203

力  :29

敏捷 :4

体力 :31

知力 :29


・パッシブスキル

怪力:1Lv

高速治癒:2Lv

死属性魔術:3Lv

状態異常耐性:3Lv

魔術耐性:1Lv

闇視

精神汚染:10Lv

死属性魅了:1Lv


・アクティブスキル

吸血:2Lv

限界突破:2Lv

ゴーレム練成:2Lv


・呪い

 前世経験値持越し不能

 既存ジョブ不能

 経験値自力取得不能




 驚くべき変化が起きていた。


『レベルが0から3に上がった!? 呪いは残っているのに、一体なんで?』


 このラムダに生まれ出でて八か月余り。今までは何をしてもレベルが上がらなかった。死属性魔術の修行をしても、野兎を吸い殺しても、オルビー達を同じように殺してもだ。

 ステータスをもう一度確認しても、見間違いでは無い。しかし、相変わらず経験値自力取得不能の呪いは消えた訳では無いようだ。

 では何故と考え込んだヴァンダルーは、ふと思った。


『もしかして、骨猿達が経験値を稼ぐとその一部が俺の物になるのか?』


 地球では仲間にしたモンスターや主人公の分身が経験値を手に入れると、その一部が主人公に加算されるというシステムのゲームが存在していたらしい。

 それと同じ事が起きたのではないだろうか?


『呪いの効果は、あくまでも自力で経験値を稼ぐ事が出来ないだけで、僕にしたアンデッドに稼がせるのは有効なのか。……仮にも神の呪いにしては大きな穴だな』


 死属性魔術を使うヴァンダルーを絶望させ自害を促すための呪いなのに、アンデッドを使えば経験点を得られる事を見逃す。思わず何かの罠じゃないかと疑う程の、大きな抜け道だ。考えなくてもヴァンダルーがアンデッドを作る事なんて、すぐ予想できただろうに。

 しかし、ロドコルテの事を考えるとただの間抜けのように思えてきた。


『そういえば、あいつのやっている事は基本的に投げっぱなしだったな。力や機会を俺達……俺以外に与えて、後は細かい指示もフォローも何も無し。

 だったら、これくらい気がつかなくても無理は無いか』


 恐らく、ロドコルテはヴァンダルーや雨宮寛人達を凄く上から眺めているのだ。貴族と平民とか、そう言った次元では無い。シミュレーションゲームをプレイするプレイヤーと、画面の中のゲームキャラクター。それぐらいの差がある。


 だからヴァンダルーにしたような仕打ちをしても「悪い事をしたな」で済ませて、その上復讐を諦めさせるために絶望して自害させようと促すなんて、惨い真似を平気な顔で出来る。

 だからロドコルテはヴァンダルーの事を深く考えない。彼にとってヴァンダルーは、百と一居るキャラクターの中の一体でしかないからだ。


『だからこんな呪いになるのか。この分なら、ジョブの方も何とかなるかもしれないな』


 喜びと安堵を覚えるヴァンダルーだったが、思い返すとまたロドコルテに対する怒りが湧き起こる。

 そして絶対自害なんてしないと、何度目かの誓いを新たにするのだった。


 因みに、ゴブリンの死体はそのまま埋めた。ゴブリンの血は不味いし、剥ぎ取れる素材は無いし、討伐部位は冒険者でなければ買い取ってもらえないからだ。死体をアンデッドにする事は考えたが、育成する個体を増やすと手間が増えるので今回は見送った。




 太陽が完全に沈んだ森の洞窟の前に、焚火が燃えていた。

 その焚火で燃える赤い炎を囲むのは、虚ろな眼窩に青白い炎を灯す五体のアンデッド。そして、炎に照らされてもゾッとする程の白さを保つ、まだ赤ん坊と言える大きさの幼児。


 そして幼児の横に寄り添うように現れたのが、美しいが体中に痣や傷を作っている姿のダークエルフの霊。

 旅人が通りかかったら恐怖のあまり一目散に逃げ出すだろう光景だ。

 そして、ダークエルフの霊がおもむろに口を開いた。


『~♪』


 それはたどたどしい歌だった。遥か昔、勇者達が誕生日を祝う時に歌ったとされる誕生歌で、今でもラムダ世界で誕生日を祝う時はこの歌が歌われている。


 カッカッカ、カシャカシャカシャ、コツコツコツ。


 骨だけのアンデッド達が、歌の代わりなのか歯や嘴をかみ合わせ、手拍子や足踏みで骨が擦れる音を立てる。


『一歳の誕生日おめでとう、ヴァンダルー!』


 霊の祝福に合わせて、幼児は大きく息を吸い、短い言葉と共に焚火に向かって吐き出した。


「奪熱」


 魔力の籠った息を吹きかけられた焚火は、熱を奪われてパッと消えた。辺りは暗闇に満たされるが、この場に集まった者達の心は太陽のように明るかった。


『一歳の誕生日、おめでとうヴァンダルー。母さん、とっても嬉しいわ』


「ありがとう、母さん」


 日本の初夏と比べると湿気はそれほどではない、ミルグ盾国の六月。ヴァンダルーは今日満一歳に成った。

 その誕生日を祝っている訳だが、地球やオリジンの一般家庭の誕生日パーティーと比べると貧相としか言いようがないのは、否定できない。


 誕生日ケーキもプレゼントも無し。ご馳走はタヌキの骨で出汁をとり、肉を細かく刻んで香草と一緒に煮て作ったスープモドキ。

そして、新鮮な狸の血。


 硬くて臭い狸の肉を無理矢理食べられるようにした物で、とても上等な食事とは言えない。ダンピールであるヴァンダルーにとっては、血だけが救いだと言える。


『ごめんね。母さんが生きていたら、ご馳走を作ってあげられたのに』


 だが、ヴァンダルーは嬉しかった。


「謝る事は無いよ、母さん。俺は、とても嬉しいから」


 地球、オリジンと生きたヴァンダルーだったが、誕生日を祝われる事は初めてだった。オリジンではモルモットの誕生日を祝う研究者なんて居なかった。奴らにとっては、データの年齢欄の数字を一つ増やす日ぐらいの意味しか無かったのだろう。


 地球では、伯父家族と暮らしていたが「お前は将来一人で生きて行かなければならないのだから、子供の内から誕生日だのクリスマスだの祝って甘やかしたら、ダメになる」と言われて、ケーキもプレゼントも無しだ。おめでとうの一言すら、言われた事が無い。伯父夫婦の子供には、ちゃんと祝っていたのに。

 だから、これが初めての誕生日パーティーなのだ。


『ヴァンダルー……』


「それに、今日は嬉しい事が沢山あった記念日だから」


 うるうると瞳を潤ませるダルシアに、ヴァンダルーは他にも記念すべきことが沢山あったと言う。


 まず、ちゃんと喋る事が出来るようになった。これは意外と重要な事で、言葉を話せるようになった事で、今までは出来なかった呪文の詠唱が出来るようになったのだ。

 今までは呪文の詠唱が出来なかったので、魔力を過剰に消費してゴリ押しで術を発動していたのだ。お蔭で、通常の数倍の魔力を消費し、更にそれで効果は通常の半分以下という割の合わなさだ。ヴァンダルーが莫大過ぎる魔力を持っていなければ、とてもやっていられなかっただろう。

 ただ、無詠唱で魔術を使い続けていた結果、喋れるようになった直後に【詠唱破棄】スキルを獲得したので結局呪文の詠唱はしなくて良くなったのだが。


 ダルシアも驚くほどのレアスキルだったが、タイミングの悪さにちょっと落ち込んだ。


 そして骨猿達が全員レベル100に到達し、ランク2にランクアップした。



・名前:(骨猿 骨狼 骨熊 骨鳥)

・ランク:2

・種族:ボーンアニマル

・レベル:0~7


・パッシブスキル

闇視

・アクティブスキル

無し



・名前:骨人

・ランク:2

・種族:スケルトン

・レベル:4


・パッシブスキル

闇視

・アクティブスキル

無し




 相変わらずスキルは闇視以外何も無いが、ランクアップの恩恵は大きかった。

 ボーンアニマルに成った骨猿達は、全体的に能力値が上がり生前と同程度にまで能力値が上がった。後、ヴァンダルーの命令に従うだけでは無く、獣並の知能を取り戻している。


 骨人だけはランクアップ先の種族がスケルトンだったが、これは材料が人骨なのだから当然だろう。人間並みの力に、人間並みの俊敏さを持つスケルトンは、冒険者から見ればまだ雑魚だがヴァンダルーにとって頼もしい戦力である。

 オルビー達から剥ぎ取って置いたレザーアーマーを着せ、短剣とウッドゴーレムを錬成して作った木の盾を装備させれば、立派な骸骨戦士の出来上がりだ。尚、弓矢は現在練習中である。


 ついでに、ヴァンダルーもレベルが100に到達した。しかし、ジョブ【無し】のレベル100なので、能力値もあまり上がらなかった。これで一応ジョブチェンジの条件を満たしたが、現状ジョブチェンジに必要な施設……各種ギルドや神殿に在る特別な部屋を使う事が出来ないため、意味が無い。


 そして戦力はある程度整ったが、エブベジアに復讐するにはまだ早いとヴァンダルーは思っていた。まだまだ力が足りない。復讐を実行して完了する事は、今でも出来る。でもその後エブベジアから逃げて、ミルグ盾国からダンピールが町中でも安全に暮らせる場所に辿り着くには心もとない。

 エブベジアに復讐して満足する訳にはいかないのだから、今は戦力と物資を充実させなければならない。


「だから、明日から山賊を狩ろうと思うんだ」


 山賊。モンスターでは無く、武装して徒党を組み、野外で強盗を働く犯罪者である。

 つまりは、人間だ。

 何故戦力と物資の充実を目指す事が、積極的に人間を殺す事になるのかというと合理的な理由があった。


「最近、野兎や狸を幾ら狩っても骨人達のレベルが上がらなくなったし、この森じゃゴブリンよりも強い魔物はいない。

 でも、エブベジアは他の村に繋がる街道の中心だから、山賊なら探せば幾つか居ると思う。山賊を殺せば骨猿達の経験値に成って、溜め込んだ物資も手に入る。

 一石二鳥だと思って」


 更にいえば山賊を殺しても、そして山賊が被害者から奪った盗品を懐に入れても、この世界では罰する法が無いのだ。地球やオリジンで犯罪者を殺せば、更に盗品の横領を行えば立派な犯罪者になる。しかし、ラムダでは山賊を一般人が殺しても罪に問われる事は無い、

 それどころか、良くやったと賞賛される事はあっても「人殺し」とか「人権を軽視している」とか非難される事も無い。

 盗品の横領も、それは山賊を討伐した者の正当な権利とされている。持ち主がどうしても取り戻したい場合は、討伐した者と個別に交渉するべきだという考え方なのだ。


『でも、山賊退治なんて危ないわ。冒険者でも、D級相当の仕事よ』


 ヴァンダルーを心配するダルシアに、ヴァンダルーは大丈夫だよと微笑む。


「ちゃんと奇襲するから大丈夫。それに、もう山賊の居場所に幾つか目星がついているから」


 そして次の日からヴァンダルーは、冒険者でもD級相当の仕事を一歳にして自主的に行うのだった。




・名前:ヴァンダルー

・種族:ダンピール(ダークエルフ)

・年齢:1歳

・二つ名:無し

・ジョブ:無し

・レベル:100(UP!)

・ジョブ履歴:無し

・能力値

生命力:34

魔力 :100,001,223

力  :32

敏捷 :7

体力 :33

知力 :45


・パッシブスキル

怪力:1Lv

高速治癒:2Lv

死属性魔術:3Lv

状態異常耐性:3Lv

魔術耐性:1Lv

闇視

精神汚染:10Lv

死属性魅了:2Lv(UP!)

詠唱破棄:1Lv(NEW!)


・アクティブスキル

吸血:3Lv(UP!)

限界突破:2Lv

ゴーレム錬成:2Lv


・呪い

 前世経験値持越し不能

 既存ジョブ不能

 経験値自力取得不能


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[良い点] 温かい誕生日 [一言] レベル100の無職
[一言] もう間接経験値の最凶コンボが確立しかけてる...!
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