四百三話 振り下ろされる法の杭と、喰らわれていた魔王
投稿が遅れて申し訳ありません。
「二人を何処へ【転移】させた？」
【転移門】の向こうへジェニファーとダイアナが姿を消しても、ハインツは二人が生きている事を確信しているのか、落ち着いていた。
「これから消滅する貴様が知る必要はない」
『グファドガーン』
「ファゾン公爵領だ」
ヴァンダルーは遠距離攻撃を繰り返して纏めたジェニファーとダイアナを、【粘液】で纏めてグファドガーンに開いてもらった【転移門】で境界山脈の内側から遠く離れたファゾン公爵領のどこかに押し出して放逐したのである。
強い方が我を通す。そう宣言した通りに、生きたまま。
放逐するまでの過程で、「もし死んでも別にいいか」と本気で攻撃していていたが。
「そうか」
「二人は……無事なのね。そこまでするとは思わなかったけど」
レビア王女達が【憑依】しているヴァンダルーの肉体から間合いを取って話すハインツとデライザに対して、ヴァンダルーは時間稼ぎも兼ねて会話に応じた。
『少なくとも【転移】したその瞬間までは。その後は、俺の知った事ではありません』
ジェニファーとダイアナを殺さず戦場から遠ざけたのは、情けからではない。単に、ヴァンダルーにとって殺す理由より生かしておく理由の方が多かったからだ。
殺す理由は『五色の刃』の戦力を削ぐ、敵を減らす、個人的な嫌悪が挙げられる。だが、戦力を削ぐのなら今やった様に【転移門】から放逐するだけで済む。
敵を減らすというのは、最も弱い理由だ。ジェニファーとダイアナが厄介だったのは、『五色の刃』の一員で、高いチームワークでベルウッドが憑いているハインツとデライザと連携し、それぞれの力を高め合っていたからだ。
ジェニファーとダイアナ個人なら、ヴァンダルーにとっては殊更恐れる必要はない存在だ。後で二人がハインツの仇を取ろうとするなら、その時に改めて殺せばいい。
それに二人程度の敵は、この世界にいくらでもいる。そして、これから百年後、二百年後、いくらでも現れる。
二人はＳ級冒険者という、百年の間にそうそう現れない傑物だ。しかし、人類全体で考えれば百年の間に何人かは現れる程度の存在だ。
その気になった神が加護や試練を与えて、英霊を憑かせれば更に短期間で作れるのは、英雄候補達を見れば明らかだ。もしアルダが聖戦を起こすのがもっと遅ければ、彼らは御使いではなく英霊や神の分霊を降臨させる程に成長していただろう。……少なくとも、アルダ勢力の神々はそのつもりだったはずだ。
百年後や二百年後の事は予想しかできないが、国家であるヴィダル魔帝国と仲の悪い国や思想的に反感を持つ者や不利益を被った者が敵対する事はあり得る。
そして個人的な嫌悪は……嫌いだからという理由だけで人を殺していたら、ただの殺人鬼なので論外だ。もっとも、あの二人を殺すのはむしろ親切になるだろうが。
一方、生かしておく理由は……二人の魂を喰らったところで何も得られないから。再び敵対してくる場合は反ヴァンダルーの旗頭になって、他の敵対者を集めて分かり易くしてくれるかもしれないから。逆に、敗戦で損害を被ったファゾン公爵領の民の怒りの矛先になるかもしれないから。
そんなところである。
「そうか……バーンガイア大陸の、それもセレンの近くに【転移】させてくれた事に礼を言うべきかな？」
『不要です。当人達にとっては、魂を滅ぼされるより辛い事をしてやったつもりですから』
決死の覚悟で挑んだ相手に生かされた屈辱、死ぬ時は一緒だと覚悟した仲間が戦っているのに何もできない無力感、そしてこの先も生きていかなければならない絶望感。
もし自分がその立場だったら、正気ではいられないだろうとヴァンダルーは思う。グファドガーンも、「自分が理解できる最大限の絶望」として【転移門】を開いたのである。
『それに……』
「お前らに、礼を言っている余裕はねぇぜえ！」
ヴァンダルーの言葉を続ける形で、彼の肉体に『憑依』しているキンバリー達が鉤爪を振るう。
「自分達の置かれた状況は分かっている！」
それに対して、ハインツは聖剣で稲光を纏った鉤爪を弾く。ダイアナとジェニファーがいなくなったという事は、その分戦力が失われたという事だ。
そして、決着がつく前に二人が復帰することはない。二人は生きているが、ファゾン公爵領から境界山脈の内側のここに戻ってくる術が無いからだ。
以前オルバウムで彼女達を逃がしたナインロードはデライザの盾に宿っている。彼女でも、遠く離れた場所にいる二人をこの場に召還するのは当然不可能だ。
空間属性魔術なら、原理上は二人をこの場に連れて来る事が可能だ。しかし、それは境界山脈内部のこことファゾン公爵領の両方を訪れた事がある、神と並ぶ程の空間属性魔術の使い手でなければ不可能だ。
もしくは、グファドガーンを大きく超える空間属性の神がいれば可能かもしれないが……もしアルダ勢力にそんな神がいるなら、ファゾン公爵領とアミッド神聖国の聖戦軍を【転移門】を開いて合流させているだろう。または、大々的な聖戦など起こさずに自力で結界をすり抜けて、『五色の刃』や『邪砕十五剣』、そして英雄候補達を前触れもなく境界山脈の内側に送り込んで来ただろう。
少なくとも、グドゥラニスの魂の欠片の封印を解いて魔王軍残党やヴィダ派の神に寄生させ、ヴァンダルーが戦力を配置していそうな場所に放すよりも、よほど効果的な手だ。
それをしないという事は、出来ないという事だろう。
それを分かっていてヴァンダルーはグファドガーンに開いてもらったファゾン公爵領に通じる【転移門】に、二人を押し込んだのだ。
ハインツもそれを察している。
「だが、それで私達が諦めると思うのか！？」
しかし、戦力が低下して勝ち目が限りなく薄くなった程度で諦めるぐらいなら、ハインツとデライザはここに居ない。元々勝率はゼロではないが、ゼロに限りなく近いと分かって加わった聖戦だ。
自身が信仰するアルダの意思に応えるという意味よりも、ヴァンダルーが吸収したはずのグドゥラニスに逆に乗っ取られる前に、彼を倒さなければならないという思いの方が強い。
そして、その危機感はヴァンダルーが聖剣に弱くなったことで強くなった。
一年後や十年後は、ハインツの危惧は現実にならないかもしれない。しかし、百年後や千年後はどうだろう。ヴァンダルーは果たして、ヴァンダルーのままだろうか？
百年後や千年後に災厄と化すかもしれないから、今倒す。それが完全に正しく、全ての人々から賛同を得られる考えだとはハインツも、そして彼と共に戦うデライザ達も思っていない。
対象がヴァンダルー以外ならハインツも百年後や千年後の人々に託すことを選び、今戦う事を選ばなかっただろう。
しかし、ヴァンダルーは今まで恐ろしい勢いで強くなってきた。この世界に生まれて十数年で、Ｓ級冒険者相当どころではなく、不完全とはいえ復活したグドゥラニスに勝つまでに至っている。
今後もヴァンダルーが今までと同様のペースで強くなるかは分からないが、百年後、千年後に彼を倒せる存在がこの世界に存在するのか疑わしい。
遠い未来、ヴァンダルーが魔王グドゥラニスと化した時に彼を倒せる存在がいないのなら、今ヴァンダルーを止めなければならないのだ。
「【邪悪封殺】！ 【極・一閃】！」
「っ！？」
そんな思いで迷いを断ち切り、ゴースト達が憑依しているヴァンダルーの本体の脳天から股間まで一刀両断にした。
「お前達は、ヴァンダルーの肉体を使いこなしていない！ 【流星連斬】！」
続けて連続で斬撃を放って滅多切りにしようとした。真っ二つにしたぐらいでは、ヴァンダルーの本体を倒すことはできないと察していたからだ。
（まずはこの本体を倒し、向かってくる使い魔王を全て倒す！ それしか私がヴァンダルーを倒す方法は無い！）
デライザもそのハインツの考えが分かっている為、ヴァンダルーの魂の攻撃を防いで時間を稼いでいる。しかし、そのハインツの目論見をヴァンダルー達が読んでいないはずがない。
「「退避っ！」」
なんと、頭から股間まで真っ二つにされたヴァンダルー本体が、それぞれ左右に分かれて逃げたのだ。
「っ！？」
まさかそんな方法で逃げられるとは思っていなかったハインツの斬撃は、虚空を滅多切りにするだけに終わった。
「よくもやってくれましたね！」
「かき氷にしてやる！」
そして右後方へ退いた右半身からは炎の、左後方へ退いた左半身からは冷気の塊をそれぞれ放ってくる。
『集合しますよー』
『そして融合です』
しかも、それと同時に使い魔王がそれぞれの切断面に集まって融合。赤黒く硬化した血の鎧を着た半身が再生し、それぞれ二人のヴァンダルーとなった。
「くっ！ 本体の生命力と再生力が予想より高いっ！」
再生する前に倒しきれなかったとハインツは惜しみながらも、聖剣で炎と冷気を薙ぎ払い、攻撃を続けようとする。元々、肉体を倒せばヴァンダルーを倒せる訳ではないと分かっている。使い魔王を倒しつくさなければならない以上、使い魔王を再生の為に消費させたので無駄ではない。
「そうはいきませんぜ！」
だが、三体目のヴァンダルーが電撃を放ちながら起き上がる。
「ぐうっ！？ 血液から全身を再生させたのか！？」
なんと、一刀両断にされた際に噴出した血の一部から、三体目のヴァンダルーが再生されていたのだ。
「久しぶりの肉の体だけど、動き易すぎて戸惑いますね」
「陛下君の体だからね。全く抵抗せずにあたし達を受け入れてくれているのよ」
「絶好調、って奴ですぜ」
ヴァンダルーの魂の無い肉体に【憑依】していたレビア王女、オルビア、キンバリーはそれぞれ切り分けられた肉体に分かれ、今は三体のヴァンダルーの肉体に一人ずつ【憑依】していた。
そして、飛び散った血の半分程が新たな使い魔王に変化する。
やはり一撃で全身を塵にでもしなければ使い魔王を倒しつくすことは無理か、そう思うハインツの横に、デライザがヴァンダルーに盾ごと吹き飛ばされてくる。
「デライザ！？」
「かすり傷よ！ 気にしないでっ」
「いや、交代だ。使い魔王の相手は君の方が効率がいい」
『それを俺が許すとでも？』
「【天覇煌剣波斬】！」
ヴァンダルーはハインツとデライザが相手を交換しようとすると、邪魔しようという挙動を見せた。それに対してハインツが斬撃を飛ばす武技を発動させて接近を防ごうとする。
しかし、ヴァンダルーは魂を纏わせる肉体を変えて、斬撃の回避と接近を同時に行おうと試みた。
「【極神盾波撃】！」
しかし、デライザが盾から衝撃波を放つ武技で二人の周りの使い魔王を叩き潰し、接近できなくなってしまった。
（なるほど、確かに使い魔王潰しにはハインツよりデライザの方が向いている）
（では、このまま予定通りに進めましょう、俺）
（任せてください、俺）
（まあ、このままハインツを殺せればそれはそれでいいのですが）
デライザと一対一で戦っている間に飛び散らせた血や肉片から変化させた使い魔王に、魂を移動して斬撃を回避し、ヴァンダルーはハインツに殴りかかる。
『お前は俺を殺せる気のようですが、それが可能だと本気で思っていますか？』
「事実、ここで数百体以上の使い魔王を倒したぞ！」
『それ以上の使い魔王が、現在進行形で増えていますが？』
激しい攻防の最中にヴァンダルーが指さした方向では、無数の黒い蟲……使い魔王が食事をしていた。
『……不味い』
『無心で食べるのです、そして増えるのです』
偽タロスヘイムには、建造物型のゴーレムの残骸しかない。使い魔王が食べているのは、そのゴーレムの残骸に含まれる有機物……木材だった。
植物を強靭な顎で噛み砕き、強力な内臓で消化吸収、そしてアメーバーのように分裂して増殖。そして増えた使い魔王は飛翔して戦場のそこかしこに潜む。
『俺はお前を『ここ』で殺します。ですが、それは今日じゃなくてもいい。明日でも、明後日でも、来月でも、来年でも構わない。
文字通り、草の根や地虫を喰って俺は戦い続ける事が出来る』
「なるほど、そうやって私の心を折ろうとするという事は、私の戦法は正しいという事だな！」
『……』
動揺した様子もないハインツに、全ヴァンダルーが舌打ちした。
実際、ハインツ達が行っている戦法は正しい。問題なのは、実行できるかどうかだけだ。そして、やられているヴァンダルーから見るとかなり不愉快だ。
（それもこれもグドゥラニスの魂を喰らい過ぎたせいですが）
戦いの余波が偽タロスヘイムの跡地に降り注いでいる。その影響で、実は結構な数の使い魔王が消滅しているのだ。
質より数で増産しているため魔力はほとんど使っていないのでダメージという意味では軽微だが、邪魔されているという意味では被害は大きい。
追い詰められている訳ではないが、不快なのだ。……別の場所で、周りの迷惑にならないよう廃材や雑草、水中のプランクトン、そして壊れた使い魔王の残骸を食べて増やし、後でグファドガーンに【転移門】でここまで運んでもらう予定だから、大丈夫だとしてもそれは変わらない。
（仕方ない、仕掛けはまだ終わっていませんが、別の切り札を幾つか切りましょう）
ヴァンダルーのこれまでの人生経験から、切り札は出来るだけ多く持ち、そして最後まで取っておいた方が勝つという方針を取ってきた。
今回もヴァンダルーは切り札を複数抱えている。アルダの予期せぬ凶行のせいで得た切り札もあるが……。
『っ！？ グファド！』
そこまで考えた時、ぞっとする寒気を覚えてヴァンダルーはグファドガーンへ警告を発した。それが隙になってハインツの聖剣に腕を切り飛ばされるが、気にしている場合ではないと背面の目から怪光線を放ち、触手を伸ばす。
「ぐっ！？ も、申し訳ありません……偉大なるヴァンダルーよ」
『お下がりくださいっ、アルダよ！ ぐああああっ！』
しかし、一歩遅かった。ヴァンダルーの背後の空間の狭間に潜んでいたはずのグファドガーンは、槍のような杭に貫かれ、ヴァンダルーが放った攻撃が当たったのはそれを為した存在ではなく『鏡像の神』ラーパンだった。
『ラーパン！ おのれ、ヴァンダルー！』
そして、杭を刺したのは髭を蓄えた威厳のある男性の姿の神、『法命神』アルダだった。
「アルダっ！？ 何故地上に！？」
ハインツもアルダが地上に降臨し、しかも接近していたことに気がついていなかったのか、驚きの声をあげる。
実は、アルダとラーパンは英霊達に紛れて地上に降臨し、谷を通って境界山脈の内側に侵入していたのだ。しかし、ラーパンが空間を歪めてその狭間に潜んでいたとしても、大神であるアルダがその気配を隠す事は難しいはずだ。
特に、アルダは自身の気配を隠す類の権能を一切持っていない。光属性と法の神として存在を知らしめる権能は持っているが。
『ラーパン、汝は神域で我らの帰りを待つがいい』
それを可能にした仕掛けは、アルダ自身の行動によって明らかになった。
ヴァンダルーが魂を砕く前に、アルダが新たに創りだした『法の杭』でラーパンを貫いたのだ。
『がはっ！ あ、後を頼みま……す……』
その瞬間、ラーパンの力が消え、ヴァンダルーの触手をすり抜けた。そして、アルダの周りに控えていた光る球体……御使いに運ばれ去っていく。
『なるほど。【法の杭】を刺して力を封じた状態でここまで来た訳ですか』
アルダが纏う白いローブの一部が赤く染まっていた。どうやら、アルダ自身は自分に刺した杭を引き抜く事が可能らしい。
「まさか、自らに【法の杭】を！？」
『何をしているハインツよ、ベルウッドよ！ 目障りな邪神は封じた！ 今こそ我らの力を結集してヴァンダルーを倒すのだ！』
驚愕した様子のハインツを叱責すると、アルダ自ら戦うつもりなのか新たな杭を出現させてそれを槍のように構える。
ハインツはその様子に何か言いたげな顔をしたが、そんな場合ではないと思い直してアルダの前に回って自らが信仰する神の前衛としてヴァンダルーに相対する。
『罪を犯した神を罰する為の神威を、戦いの為の道具にするとは……お前は自らを貶める事に関しては天才的な神ですね』
『黙れっ！ 世界の安寧と秩序を守る為には、手段を選んでいる場合ではないのだ！』
『秩序はともかく、安寧を脅かしているつもりはないのですが？ この戦いを仕掛けてきたのだって、お前らの方でしょうに』
ハインツ達を殺そうとしていること以外、ヴァンダルーは世界の安寧を脅かす様なことをした覚えはなかったのでそう言い返す。
戦争にしても、人間同士の戦争はこれまでの歴史上数えきれない程起きている。戦争を引き起こした事ぐらいなら、神々にとっては「世界の安寧を脅かした」事にはならないはずだ。
実際、この世界の戦争では多くても万単位の人間が死ぬだけで、人類全体が滅亡の危機に瀕するようなことは今までなかった。
しかし、アルダはヴァンダルーの反論を聞くつもりはないらしい。
『新たな魔王ヴァンダルー！ 貴様を葬る為には全てを賭けなければならない！ 故に、全てが正当化されるのだ！』
十万年以上前、グドゥラニスから世界を守る時にも発せられた言葉なのだろう。当時は確かに世界の存亡の危機である為、勝つためにはどんな手をも使わなければならなかったはずだ。
しかし、ヴァンダルーはグドゥラニスと違って世界を征服するつもりはなく、ハインツが危惧しているように彼が捕食し吸収したはずのグドゥラニスに乗っ取られる様なことがない限り、世界の存続を危うくしないという点だが。
もっとも、ヴァンダルーもいまさら問答を繰り広げたところで、アルダと相互理解が進んで和解に至るような奇跡が起きるとは思っていない。
これは殺し合いの最中に敵同士で行われる罵り合いだ。獣の吠え合いと大差ない事は分かっている。
では、何故こんな事をしていたのかというと……。
《【魔王の征服欲】、【神格：魔城神】を獲得しました！》
《【真魔王】に【魔王の征服欲】が、【亜神】に【神格：魔城神】が統合されました！》
『お弁当、ごちそうさまです、グファドガーン』
『いいえ。見苦しい姿をお見せしています』
ヴァンダルーの背後に結晶を組み合わせたような姿の巨大な蜘蛛のような邪神……『迷宮の邪神』グファドガーンの本体が現れる。
『な、なんだと！？』
「あれがグファドガーンの本体……会話をしていたのは、あれが来るまでの時間を稼ぐ為か！」
驚愕するアルダとハインツだが、実際には『魔城の悪神』を同化して不完全復活したグドゥラニスを封印した状態のグファドガーンの本体は、今杭に串刺しにされているグファドガーンの依り代がしばらく前から近くの空間の狭間に運び寄せていた。
後はタイミングを計って封印されているグドゥラニスを喰らい、彼女の本体を解放するだけだったが、それを切り札として取っておいたのである。
そして、丁度切ろうとしている時にアルダが現れた。そして、意味のない問答をしている間に彼女を解放した。それだけの事だ。
『我でありながら、偉大なるヴァンダルーの前で醜態を晒すとは何たることか。恥を知るがいい』
「くっ、返す言葉もない」
『それはともかく……仕切り直して続行としましょうか』
戦いは激しさを増すばかりだった。
すみません、次話は１２月２０日の投稿を目指そうと思います（礼）
