表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
485/515

三百八十六話 世界を脅かす正義対世界を守る新魔王軍

 それぞれの戦場や都市の上空に現れた、一目で尋常な存在ではないと分かる禍々しい姿の存在。

 それにアミッド神聖国やファゾン公爵領、そしてオルバウム選王国の軍は大きく動揺した。

「あれはなんだ!? 魔王の手先か!?」

「アルダが仕える亜神を援軍に送ってくださったのか!? いや、それにしてはいくらなんでも禍々しすぎる!」


 彼らはこの戦いに神が直接降臨して介入してくるとは、想像もしていなかったのだ。オルバウム選王国の軍もそれは同じであり、各公爵達はヴァンダルーから「アルダ勢力の神々が何かしてくるかもしれない」と警告はされていたが、末端の兵士達にまでは情報を行きわたらせていなかった。


 士気が下がる事や、アルダが極端な手段に出る事を「神罰」と解釈して正義はファゾン公爵領やアミッド神聖国にあるのではないかと考える者が出る事を警戒したからだ。


 そして、ヴァンダルーにとってもここまでの事態は予想外だった。

 アルダがグドゥラニスの魂の欠片を何らかの形で利用するのは想定していたが、それは一つか二つの戦場で英雄候補に寄生させて戦力にするとか、もっと狭い範囲に集中させる作戦での使用だった。


 まさか、世界中に……それも魔王軍残党やヴィダ派の亜神や神にまで寄生させ、ばら撒くとは想定外だった。アルダは世界を滅ぼしたいのかとすら思った。

 放った神々に寄生させたグドゥラニスの魂の欠片を、ヴァンダルーが吸収せずに放置したらいずれ合流し、ダークアバロン以上の欠片を持つグドゥラニスとして復活してしまうのだから。


 もちろん、その過程でアミッド神聖国やファゾン公爵領だけではなく、オルバウム選王国やガルトランド、魔大陸なども甚大な被害を受けるので放置するのは論外だ。

 そもそもヴァンダルー自身、この世界に生きる住人の一人なので世界が滅ぶのは困る。


 だが、ヴァンダルーにとってアルダのこの一手はかなり厄介だが、致命的とまでは言えない。何故なら、各地にグドゥラニスの魂の欠片を埋め込まれた存在が現れても、十分戦える戦力が配置されているからである。

 もちろん、魂の欠片を吸収できるのはヴァンダルーだけなので、タロスヘイムの王城からは動かなければならない。


 そしてヴァンダルーが最初に向かったのは……ガルトランドの上空にある魔王の大陸だった。




『あああああああ! あ……勇者?』

「初めまして、『再生の女神』リュゼマゼラ」


 何故ここに来たのかと言うと、ドーラネーザ達が居なくなって戦力に最も不安が残る場所だから。そして何より、ここへアルダが降臨させたのがヴィダの従属神の一柱、リュゼマゼラだからだ。


 リュゼマゼラは『生命と愛の女神』ヴィダに古くから仕える従属神で、傷や病からの回復だけではなく、乾期で荒れた土地が雨季で潤い緑が戻る事や、紅葉で散った木々の葉が春にまた戻るような、毎年繰り返す現象も司っている。


 そして、十万年前にアルダがヴィダ派を襲撃した際に封印されてしまった女神だ。ヴァンダルーの魂を構成するザッカート達生産系勇者の魂の欠片に一瞬反応したが……。


『ち、ちががが、違う! グドゥラニス!』

 ヴァンダルーをグドゥラニスと誤認したのか、直ぐに殺意を瞳に漲らせるリュゼマゼラ。おそらく、彼女に寄生しているグドゥラニスの魂の欠片が、彼が喰らった欠片を感知したのだろう。


「むう、グドゥラニス呼ばわりとはなかなかショックですね」

 ヴァンダルーは背中から生やした羽を操り、リュゼマゼラが放った魔術を回避する。魔術は魔王の大陸の地表に生えた葉の代わりに炎を枝に付ける火炎樹に当たり、一瞬で枯死させた。


 どうやら、生命力を暴走させて死に至らしめる魔術のようだ。炎や電撃、氷を出すよりも迂遠で、魔力の効率も悪い。それはリュゼマゼラが元々戦闘向きの神格の神ではないからだ。

 それもあって、アルダはヴァンダルーの拠点があるらしいという不確かな情報しかない魔王の大陸に、彼女を放ったのだろう。


 魔王グドゥラニスの魂の欠片を寄生させ、魔力を増やすことができたとしても、肉体の欠片のように角や牙等の新たな強い攻撃手段を与える事はできない。

 その代わり、グドゥラニスに乗っ取られるまでは属性魔術も使えるようだが。


『死ねぇっ! グドゥラニス! ザッカートの、勇者たちの仇! アルダの前に貴様を殺してやる!』

「……精神攻撃の方が辛いので、さっさと助けましょう」

 そう言うヴァンダルーの背中から、大量の血飛沫があがった。そして飛散した【魔王の血】は【吸盤】の付いた【触手】に変化していく。


 それは長く、太く、巨大になっていった。

『うわああああああっ! グドゥラニスめ!』

 血の涙を流しながら魔術を放つリュゼマゼラの前に、赤黒い無数の触手を持つ巨大で奇怪な魔王が姿を現した。


 より分かりやすく言うと、無数の脚を持った巨大タコの頭があるべき部分に、ヴァンダルーが生えている。そんな感じである。


 ヴァンダルーが最初にここへ現れたのは、このリュゼマゼラを助けるためだ。

 それは別に他のヴィダ派の神々よりも彼女の存在が貴重という訳でもなければ、個人的な思い入れがあるわけではない。


 リュゼマゼラは亜神とは違い肉体を持たない神で、いま彼女は封印を解いたアルダと魂に寄生したグドゥラニスの魂の欠片のせいで、強制的に降臨している状態にあるからだ。

 こうしている今もリュゼマゼラは力を消費し続けており、時間をかければグドゥラニスの魂の欠片を取り除く事ができたとしても、神としての存在を保つ事が不可能なほど消耗してしまう。


 他のヴィダ派の神々は肉体を持つ亜神や、元魔王軍。神でも、とりあえず封印して消滅までの時間を稼ぐ事ができる者が飛ばされた先にいる、という状況だった。

 そのため、リュゼマゼラ、そしてガルトランドが最も危険だったのだ。


「ほーら、グドゥラニスですよー。地上を破滅と厄災で覆い、生きとし生ける存在の絶望と怨嗟をしゃぶりつくしてしまいますよー」

 グドゥラニス本人が聞けばあまりのお粗末さに憤死しかねない物真似をしながら、ヴァンダルーがリュゼマゼラを挑発する。


『グドゥラニス……グドゥラニス! グドゥラニスゥゥゥ!』

 だが、魂の欠片に寄生されているせいで正気を失いつつあるからか、彼女にヴァンダルーの物真似が通用してしまった。

 リュゼマゼラは血涙を流しながら魔術を乱打するが、ヴァンダルーはそれを【吸魔の結界弾】で迎撃し、一度は故意に当たって見せた。


 しかし、【魔王の触手】が一本腐り落ちただけで、すぐに新しい触手が生えてくる。それを見たリュゼマゼラは狂乱しつつも魔術は効果が薄いと理解したのか、杖を振り上げて殴りかかってきた。

『うわあああああああ!』

 その杖に込められた力は凄まじく、叩きつければ丘を叩き潰し、岩山を砕いただろう。


「よっと」

 しかし、動きがあまりにも拙かった。元々戦闘に関する神格を持たないリュゼマゼラに、杖術の心得なんてあるはずもない。

 ヴァンダルーは彼女が振り降ろした杖を触手を絡ませて受け止め、そのまま腕や脚にも触手を絡めていく。


 リュゼマゼラが抜け出さないよう吸盤で吸い付き、更に【粘液腺】で粘性の高い粘液を、そして触手の先端から糸を出す。

『うぐうううっ! 私を嬲るつもりか!? そんな事ではこの世界の神々の意思を挫く事はできないぞ!』

 そして、魔王の大陸に触手や粘液や糸で縛られた、血涙を流す美女(約百メートル)という異様な、もしくは滑稽な光景が現れた。


 魔王の大陸にある穴から見上げているガルトランドの住人が、この光景をどんな気持ちで眺めているのか知りたくない。ヴァンダルーは心からそう思った。

「動きを止めるためとはいえ、女神相手に何をしているのでしょう、俺は」

 これも全てアルダのせいだ。ハインツは迅速に魂を砕くけれど、アルダはボコボコにしてから迅速に滅ぼさない程度に魂を砕こう。そんな事を考えながらも、手は休めない。


「早く済ませましょう、彼女と俺のために」

『そうだっ、いっそ一思いに殺、あああああああーっ!?』

 ヴァンダルーは【幽体離脱】の魔術と、【怪異術】と【整霊】、さらに【魂魄侵食】スキルを発動しながら、リュゼマゼラの魂に干渉する。


「神と言えど、魂の構造自体は人と同じはず。なら後は異物を見つけ出し、周りに影響を与えないように……」

『あああーっ! いやぁぁぁ!!』

「食えばいい」


 リュゼマゼラの魂に植え付けられていた、グドゥラニスの魂の欠片を噛み砕く。ダークアバロンと違い彼女がまだ乗っ取られていなかったせいか、見つけるのも喰らうのも簡単だった。

「ふむ……喰らったのは【グドゥラニスの哀しみ】だったようですね。血の涙を流していたのはだからか」


 リュゼマゼラにアルダが寄生させたのは、【哀しみ】の欠片だった。やはり、グドゥラニスの魂の欠片の中でも、比較的小物と見なされていた欠片だったのだろう。実際、寄生されたリュゼマゼラは完全に乗っ取られてはいなかったにしても、格段に強化された様子はなかった。


 心に溢れる哀しみを怒りに変えて荒れ狂っていたのか、狂乱の仕方はひどかったが。

 あのまま放置していたら、十万年前の段階ではヴィダ派と見なされていなかったガルトランドの守護神達に襲い掛かっていただろう。

 そうなればガルトランドの守護神達も降臨して応戦しなければならなくなり、お互いに力を大きく消費していたはずだ。


『あ……私はいったい……? アルダに封印されたのでは……? それが、何故こんな辱めを……?』

「これは医療行為です」

 早くも正気を取り戻したらしいリュゼマゼラを、ヴァンダルーは慌てて解放した。


『汝はいったい? ザッカート達の懐かしい気配と、グドゥラニスと似ているようで全く似ていないような、妙な気配を感じる……』

 そう呟くリュゼマゼラを放置して、ヴァンダルーは巨大タコの下半身のような部分から分離し、そのまま何処かへ移動したのか、消えてしまった。


『それよりも一度疑似神域に行った方が良いかと。そこで休んでいてください。事情は、後で他の神に聞けばわかります。それと、この大陸の地下にある国を守っているのは、魔王軍残党からヴィダ派に転向した神々なので争わないでください』

 そして、残された大タコの下半身部分が使い魔王と化して、残されたリュゼマゼラに説明を行う。


『ひぃ!? そっちが本体なのか!?』

『いえ、分身です。すみませんが、非常事態なので本体は他の場所に移動しました』




《【怪異術】、【整霊】スキルのレベルが上がりました!》

《【魔王の哀しみ】を獲得しました!》




 その頃、オルバウム上空では激戦が繰り広げられていた。

『あははははっ! ひっーひひひひひ! 滑稽っ! 実に無様!』

 歪んだ巻貝のような姿の邪悪な神が、『迷宮の邪神』グファドガーンと魔術で争っていた。


 互いの間の空間は歪み、裂け、閉じる。高度な空間属性魔術の応酬だ。

「楽しそうだな、『魔城の悪神』ギュピャレスラ。貴様はもっと陰鬱で無口な存在だと思っていたが」

『そういうお前はずいぶんと縮んだな! どうした!? それも偉大なるザッカート様とやらの指図か!?』


 巻貝の姿をした邪悪な神の正体は、『魔城の悪神』ギュピャレスラ。この『ラムダ』世界にダンジョンが作られるようになった原因の一柱であり、魔王と勇者の戦いの当時はグファドガーンよりも上位の神だった存在だ。

 グドゥラニスとベルウッド達勇者軍の決戦の前に封印され、その封印はヴィダが、そしてヴィダから奪ったアルダが管理しているはずだった。


 そのギュピャレスラが復活した事を知ったグファドガーンは、自分が相手をするのが最も効率的だと判断した。

 何故なら、他の属性に対して空間属性は特殊性が高い。達人なら、空間を歪めて相手の攻撃をそのまま相手に返す事もできる。


 そしてグファドガーンは、達人を超えた空間属性魔術の使い手だ。小型の【転移門】を瞬間的に開いて、相手の攻撃をそのまま相手に返すことも難しくない。

 そして彼女は、ギュピャレスラも同じことができると推測した。故に、断腸の思いでヴァンダルーの背後から離れてここに居るのだ。


「そうだ、全ては偉大なるヴァンダルーの意思のままに」

 グファドガーンという神の人格を説明すると、この一言で足りてしまう。彼女はヴァンダルーを偉大な存在として信仰している。ヴァンダルーが白だと言えば白であるべきであり、黒だと言えば黒でなければならない。

 そのヴァンダルーがオルバウムを救うべきだというなら、オルバウムは救われなければならないのだ。


『あはははっ! 笑わせてくれる! 魔王軍の中ではカスだったとはいえ、グドゥラニス様の配下が勇者に心酔するなんて、おかし過ぎて気が狂いそうだ!』

 ギュピャレスラにとっては、そんなグファドガーンの在り方は信じられないものであるらしい。巻貝の無数の突起が蠢き、その先から笑い声が響く。


「そう笑う貴様は、グドゥラニスの魂の欠片に寄生され、偉大なるヴァンダルーに逆らうアルダの捨て駒として使われている。私には、貴様の方が滑稽に思えるが?」

『ヒハハハハ! 言ってくれる! あのグファドガーンが、我と舌戦を繰り広げるか!? よほど長い年月が過ぎたようだな!』


「そうだ。貴様は過去の遺物に過ぎない。偉大なるヴァンダルーの腹の足しとなって滅ぶがいい」

『くははは! 拒否する!』

 お互いに言い合うグファドガーンとギュピャレスラ。だが、魔術の応酬は激しさを増している。


 どこからか招いた電撃や炎が、お互いに開いた【転移門】を通って行ったり来たりを繰り返し、お互いを狙っている。


『あっははははっ! あのグファドガーンが我と互角! 偉大なるグドゥラニスの魂の欠片の贄となった我と! カカカカカ!』

「貴様に埋め込まれた欠片は、【喜び】か? それとも【狂気】か……とはいえ、私もグドゥラニスの魂の欠片を全て知っている訳ではないが」


『このままではキリがない!』

 そう叫ぶと、貝殻に新たな突起が現れ、その先端が扉のように開いた。

「ギャオオオオ!」

 そこから無数の魔物が現れた。なんと、ギュピャレスラの貝殻は生けるダンジョンだったのだ。無数の魔物を放ち、グファドガーンが守ろうとしている人間達の街を蹂躙させて、彼女の動揺を誘うつもりだったのだろう。


 だが、ここはヴァンダルーが実質的に牛耳っているオルバウムの上空。

『ザッカート街自警団の力を見せてやる! 敵は皆殺しだ!』

『孫に手を出そうとする連中は、根絶やしにしてやるよ!』

『殺しっ、喰らう!』

 ギュピャレスラの貝殻から出現した魔物を返り討ちにしてやろうと、疑似転生によってデーモンに転生した一般人で結成された自警団のメンバーが空に飛び上がってきたのだ。


「出遅れた! 皆、自警団にだけ街を守らせる訳にはいかないぞ!」

「おう! 元とは言え、一般人の背後に隠れてたんじゃ、冒険者の名が泣くってもんだ!」

 それに続いて、マジックアイテムや魔術で飛行を可能にしたヘンドリクセン達冒険者が加わる。

 さらに、向こうでは貴族街から屋敷が敷地の土地ごと空に浮かび上がってきた。


『馬鹿な!? 他の魔物ならまだしも、何故デーモンやアンデッドが人間と共に我に歯向かう!?』

「だから貴様は過去の遺物に過ぎないというのだ」


 魔王グドゥラニスが健在だった頃に封印されたギュピャレスラは、自分が戦っている勢力について何も知らなかった。




 一方、アミッド神聖国の聖戦軍とヴィダル魔帝国軍の戦場は混迷を深めていた。

『死ねっ! アルダを奉じる者どもめ!』

 細長い体をくねらせ、憎悪を込めた叫びと共に龍が雷撃の雨をアミッド神聖国軍に降らせる。


「うわああああっ!?」

「あれはサンダードラゴンか!?」

「馬鹿を言え、あれは龍だ! 真なる龍だ!」


『我が名は、『嵐雷龍神』ジグラット! 我が名を冥土の土産にして死に絶えよ、アルダを奉じる者どもめ! アルダは何処に隠れた!?』

 禍々しく瞳を輝かせた『嵐雷龍神』は、聖戦軍に向かって雷の雨を降らし、轟風を吹いてアミッド神聖国の聖戦軍に攻撃を加え続ける。


 ヴィダル魔帝国軍には、見向きもしない。

『うおおおっ! やりやがったな、この野郎! 三枚におろしてやろうか!?』

 正確には、ボークスを含めたアンデッドや、アンデッドの戦士が聖戦軍の騎士と切り結んでいるところに雷を落とす等はしている。しかし、グールやノーブルオークには一切攻撃しない。


「あれはヴィダ派の龍神か! ゾッド、見覚えは!?」

「あります! 雰囲気は違いますが、彼はジグラット。十万年前のヴィダとアルダの戦いで、私と共に前線を守っていた龍神です! 私が封印された後、彼も封印されたと聞いておりますが」


「そうか……そいつは厄介だな」

 シュナイダーが顔を顰めた理由は、すぐに明らかになった。


『アルダに選ばれた栄えある兵士達よ! 卑劣にも魔王ヴァンダルーが放った刺客が現れました! 奴は自分が吸収したグドゥラニスの欠片を、ヴィダ派の神々に埋め込んだのです!』

 エイリークと思われる少年の声が戦場に響き渡った。その内容は、アルダがやった事をそっくりそのままヴァンダルーがした事にするものだった。


 十万年前にアルダ勢力の手によって封印されたジグラットの名前や姿を知っている者は、現代の人間社会では少ない。

 そして、ここは彼らが魔王と呼ぶヴァンダルーが支配する国と自国を隔てる境界山脈の近くで、ジグラットは実際アルダ勢力の信者を……アルダやナインロード、そしてファーマウンの聖印が記されている鎧や盾を装備している兵士や騎士や冒険者を狙い撃ちにしている。


 ファーマウンの聖印まで敵の目印にしているのは、ジグラットは彼が五万年前にヴィダ派に転向した事を知らないからだ。彼の記憶は、十万年前で止まっているのだから。


 そして、聖戦軍の総指揮官の立場にいるエイリークがそう叫んでいるのだから、それが正しいに違いないと聖戦軍に残る将兵達の多くが、ジグラット達にグドゥラニスの欠片を埋め込んだのはヴァンダルーで彼らを捨て石にしようとしていると思い込んだ。


「まあ、俺がエイリークの立場でもそうするが……それに、別に大した問題じゃないしな」

 瓦解しかけた聖戦軍が、ジグラットの攻撃を受けながら軍としての体裁を維持している。それだけだ。

「それよりもこっちの方を封印する準備をしないとな」


 シュナイダーが視線を向けた先では、巨大な猪がブダリオン達の攻撃を受けて怒号をあげていた。

『貴様らっ! 我が作り出した魔物の子孫の分際で、この我に、創造主に逆らうのか!?』

 怒号をあげているのは、『猪の悪獣王』ボドド。元々は『猪の獣王』だったが、他の獣王を始めとした神々を裏切って魔王軍に加わり、オークの始祖となった存在だ。


「貴様を創造主と敬った事は、一度も無い!」

 そのボドドに雄々しく啖呵を切るのは、ノーブルオーク国の国王ブダリオン。

「我らの守護神は慈悲深き女神、『堕肥の悪神』ムブブジェンゲ! 貴様は我が種族にとって、忌むべき存在だ!」


 ボドドが人間を苦しめるようにとオークを創造した結果、オークは単性の魔物として生まれ、今まで多くの人間の女性を犯し、汚してきた。

 それは優れたオークから生まれ、種族として定着した上位種のノーブルオーク達でも変わらない。


 そんな彼らを『生命と愛の女神』ヴィダは受け入れ、ムブブジェンゲが人間を無理やり犯さなくても子孫を残せるように肉婦……肉で作った女性型のマネキンのような見た目の存在を創り出し、境界山脈内部のオーク達に授けてくれた。


 故に、ボドドを奉じるノーブルオーク国民は一人たりとも存在しないのだ。


『貴様らぁっ!』

「せめてもの情け、アルダの手先に使われ続ける事がないよう、我々の手で安らかに眠れ!」

『ギャブギャバアアアアアア!?』


 このままではヴァンダルーが魂の欠片を回収に来る前に倒してしまいそうだと、シュナイダーは苦笑いを浮かべた。




―――――――――――――――――――――――




・名前:ブダリオン

・ランク:14

・種族:ノーブルオークアークアビスキング

・レベル:71

・年齢:19


・パッシブスキル

闇視

剛力:7Lv(UP!)

精力絶倫:5Lv(UP!)

眷属強化:10Lv(UP!)

剣装備時攻撃力増強:極大(剣装備時攻撃力強化から覚醒&UP!)

下位種族支配:10Lv(UP!)

自己強化:導き:8Lv(UP!)

魔術耐性:3Lv(UP!)

状態異常耐性:5Lv(UP!)

魔力増大:2Lv(UP!)

全能力値強化:中(NEW!)

物理耐性:3LV(NEW!)

能力値強化:君臨:4Lv(NEW!)

高速治癒:5Lv(NEW!)


・アクティブスキル

魔道牙剣術:4Lv(UP!)

鎧術:10Lv(UP!)

格闘術:6Lv

騎乗:5Lv(UP!)

無属性魔術:3Lv(UP!)

魔術制御:6Lv(UP!)

土属性魔術:6Lv(UP!)

生命属性魔術:10Lv(UP!)

錬金術:1Lv

指揮:10Lv(UP!)

連携:9Lv(UP!)

解体:3Lv(UP!)

分霊降臨:2Lv(UP!)

限界超越:6Lv(UP!)

魔剣限界超越:8Lv(UP!)

魔鎧限界突破:3Lv(UP!)

魔闘術:3Lv(NEW!)


・ユニークスキル

ムブブジェンゲの加護

ヴァンダルーの加護(NEW!)

ヴィダの加護(NEW!)




・名前:ボークス

・ランク:17

・種族:ノーライフミソロジーヒーロー

・レベル:1

・二つ名:【剣王】 【旧スキュラ自治区の死神】 【真なる巨人殺し】


・パッシブスキル

闇視

超力:4Lv(UP!)

物理耐性:10Lv

剣装備時攻撃力増大:極大(UP!)

非金属鎧装備時防御力増大:中(非金属鎧装備時防御力増強から覚醒!)

直感:7Lv

精神汚染:5Lv

自己超強化:導き:1Lv(自己強化:導きから覚醒!)

魔術耐性:4Lv(UP!)

能力値強化:亜神食:10Lv(UP!)

能力値強化:殺業:4Lv(UP!)

高速再生:1Lv(NEW!)


・アクティブスキル

真剣王術:2Lv(UP!)

格闘術:10Lv

弓術:8Lv

鎧王術:3Lv

限界超越:10Lv

解体:6Lv

指揮:4Lv(UP!)

連携:10Lv

教師:2Lv

魔剣限界超越:10Lv

魔鎧限界突破:7Lv

御使い降魔:5Lv

魔闘術:3Lv(NEW!)

遠隔操作:1Lv(NEW!)


・ユニークスキル

ヴァンダルーの加護

タロスの加護

ヴィダの加護

ファーマウンの加護



次の話は9月13日に投稿する予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
この教皇も邪悪決定、滅殺あるのみ
[一言] 俺の嘘は良い嘘。無罪。勝訴。 敵の嘘は悪い嘘なので杭をうちます。 えぇ…(困惑) これは邪神ですね。
[一言] そういえば今更ですがヴィダ様、加護の大盤振る舞いすぎませんか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ