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三百八十五話 真に邪悪な神が放つ一手

 アルダ勢力との決戦が迫っている事を感じ取っている人々は、ヴァンダルー達ヴィダル魔帝国や、ファゾン公爵領と領地が接しているビルギット公爵領やハートナー公爵領以外にもいた。

「やっぱり戦争が近いのかな。マイケル……いや、マイルズさん、最近めっきり見かけなくなっちゃって」

「ああ、ヴァンダルーストリートも静かなもんさ」


 それはアルクレム公爵領の交易都市の一つ、モークシーの街だった。アルクレム公爵領はファゾン公爵領と離れているため、アルクレム五騎士を始めとした精鋭を千人ほど派遣し、後は食料や医薬品等の物資を送っただけで、徴兵なども行われていない。


 しかし、飢狼警備の長である『接吻』のマイルズや、ヴァンダルーに次ぐ新たな屋台王……『屋台玉子』の看板娘が街を留守にしているし、魔法少女のステージを開く頻度も下がっている。

「まったく、戦争なんて早く終わらせて帰ってきて欲しいものだ」

 以前ダルシアを利用するため手を出そうとした事のあるエドモンドは、そう言いながら新しく建てた自分の店を見上げた。


「でないと、ヴィダル魔帝国に支店を出す話が中々進まないじゃないか。それに、彼らのタコ焼きが食べられないのはきつい」

 実は、この頃既に戦争が始まっていたのだが、そこまではエドモンド達モークシーの街の住人も気が付かなかった。




 そして、同時刻ファゾン公爵領でも戦争……彼らの言う聖戦が始まっていた。

「こんな戦争、すぐに終わってしまえばいいのに」

 エドモンドと同じ独り言を呟いたのは、『五色の刃』に保護されていたダンピールの少女、セレンだ。


 彼女はファゾン公爵領にレンブラント達『轟く剣戟』に護衛されて戻ってから、一度もハインツ達と再会していない。一度、バーンガイア大陸外の島を行き来する船を経由して手紙でやり取りしたぐらいだ。

 そして、彼女自身はファゾン公爵領のアルダ神殿で聖女として崇められている。


 ダンピールに生まれついたセレンはこれまでも普通の子供とは異なる環境で生活してきたが……今はその中で最も変わった環境だと彼女は感じていた。

 深窓の令嬢のような扱いは受けた事がある。しかし、何かする度に拝まれる生活はした経験がなかった。


 約一月前、聖戦の開始を告げる神託があった後から、何度か大勢の前で事前に渡された紙に書いてあった通りに話したり、ただ微笑んで手を振ったり、色々したけれど、それを見た人達は泣きながら手を合わせてくるのだ。

 安全な場所で衣食住に不自由しない暮らしをさせてもらっているありがたさは、両親が生きていた頃は人里離れた場所で暮らしていたから理解できる。


 だが、困惑は拭えないでいた。


 それはこの『聖戦』に対してもだった。

 セレンには、ヴィダル魔帝国……ヴァンダルーと戦う必要があるとは思えなかったのだ。


(エドガーお兄ちゃんを殺したのは悪い魔王のグドゥラニスだし、ハインツお兄ちゃんもエドガーお兄ちゃんを助ける事はできなかっただろうって、手紙に書いてあった。

 それに、あの子はエドガーお兄ちゃんを返してくれた)


 セレンのヴァンダルーに対する感情は、今は複雑なものになっている。


(それだけじゃなくて、私達に何もしなかった)

 オルバウムからファゾン公爵領へ戻る際、ヴァンダルーは殺そうと思えばセレン達を殺すことができた。多分、事故に見せかけて、その上証拠を一つも残さず始末する事もできただろう。しかし、彼は本当に一切手出しをしなかった。


 その時、直接会ったヴァンダルーから感じたのは、拒絶だった。敵意でも悪意でもなく、自分達から近づくつもりはないから、あなた達も近づかないで欲しい。そんな態度だった。

 だから、セレン達がヴァンダルーに近づかなければ良いだけではないかと、彼女はこの『聖戦』に対しても思っている。


(お兄ちゃんの手紙には、ヴァンダルーは魔王グドゥラニスの魂を宿しているから、いつかグドゥラニスに乗っ取られるかもしれない。だから倒さないといけないって書いてあったけれど……)

 それは本当だろうか?

 ダークアバロンという名前の悪い神様も、魔王グドゥラニスの魂を抑える事はできなかった。だから、ヴァンダルーも抑えられないかもしれない。


 でも、魔王グドゥラニスの魂の欠片は封印され、『法命神』アルダが守っているはずだ。少なくとも、セレンはそう聞いて育った。それが何故、復活した? それは、アルダでも封印を守れなかったという事ではないだろうか?

 ロドコルテという神がどうとかと神殿長は説明していたが、そのロドコルテという名前も聞いたことのない神は何処から現れたのだろうか?


 そんなアルダの告げる聖戦は、本当にする意味があるのだろうか?

「お兄ちゃん達、私の手紙、読んでくれたのかな?」

 セレンは、手紙に『聖戦も何もかも放っておいて、他の大陸や島に皆で移住して暮らそう』と書いていた。それは、彼女の中でアルダとアルダ神殿の神殿長たちに対する不信感と、ヴァンダルーに対するある確信が書かせたものだった。


 ハインツ達が聖戦を放棄してバーンガイア大陸から去って姿を消せば、ヴァンダルーは追ってこないような気がしたのだ。

 そして、セレンのその確信は完全ではないが正しかった。


 ハインツがベルウッドと離れた状態でバーンガイア大陸から……ヴァンダルーの勢力圏から遠く離れた地で隠棲した場合、彼は追うのを躊躇った。何故なら、彼の中の優先順位が変わるからだ。

 少なくとも、アルダ勢力が健在な間は、ベルウッドのいないハインツより、アルダ勢力の方が差し迫った危機であるため、その対処が優先される。


 そして、聖戦が終わった後はその後始末に忙殺されハインツを追うどころではなくなっているだろう。

 ヴァンダルーは復讐者ではあるが、人生の全てを復讐に投じはしない。彼にとって復讐は自己の幸福追求の手段である。そのため、復讐より優先すべきものがあればそちらを取るからだ。


 その後は状況によって変わるが……ハインツやデライザが大人しくしている限り、遠くから二人が死ぬまで百年でも千年でも監視し続けるだけに留めた可能性もある。

 ヴァンダルーにとって、聖戦の旗頭になるよりも面倒な可能性だ。セレンは無自覚に、ヴァンダルーが最も選んでほしくない選択肢をハインツ達に提示していたのである。


 だが、彼女にとっては不幸な事に、そしてヴァンダルーにとって幸運なことに、ハインツ達はその選択肢を選ばなかったようだが。




「正義は我にあり! 故に我々の前から退き、軍を解散されたし!」

「否! 我々にこそ道理は在り! 軍を退却し自領に帰還せよ!」

 その頃、ファゾン公爵領とハートナー公爵領の境目では、ファゾン公爵領軍とハートナー公爵領軍とそこに派遣された援軍の代表者が怒鳴り合っていた。


「……これ、聖戦?」

『……人間達は暢気が過ぎるのではないだろうか?』

「パウヴィナ様、ルヴェズさん、これが伝統なんですよ!」


 それぞれの公爵家の旗を掲げた偉そうな格好の騎士の大声は、何か特殊なスキルの持ち主なのか、態々マジックアイテムか魔術で拡声しているのか、両軍に響き渡っている。

 その様子をヴィダル魔帝国からの援軍として駆けつけたパウヴィナとルヴェズフォルは、食傷気味に眺めている。一緒にいるラピエサージュなど道草を食べているし、ヤマタは歌を歌い始めた。


 しかし、ラインハルト達は何故か瞳を輝かせてその様子を眺めていた。

「パウヴィナ様、あれはオルバウム選王国がまだ選王国になる前、小国の集まりだった頃から伝わる戦争の作法なのです!」


「ああしてお互いの主張を戦わせ、最後通牒をし合い、他の国に対して『我々は平和的な解決に尽力したが、仕方なく戦争に突入した』と表しているのよ」

「最後に行われたのは、確かもう百年前になるかな。その時は主張だけ繰り返して、その間に他の公爵家が仲裁に乗り出した事で、公爵家同士の戦争は回避されたはずだけど」


 口々に主張するラインハルト達。彼らによると、どうやら過去の歴史を再現したような一幕らしい。

 パウヴィナも歴史は大切だと思う。軽視するつもりはない。別々の小国の王族が、オルバウム選王国の公爵家となった事で、大規模な武力衝突がなくなった事で行われなくなった、戦争のルールなのだろう。


 戦争にルールがあるのは不思議な気もするが、世界には人類以外にも危険な魔物が存在する。戦争であまりに多くの人が死んで戦力が低下すると、魔物を退治する事ができなくなり、魔物が増え、人類が生活できる領域が減少する。すると、戦争に勝った側も結果的に損をする事になる。

 それを避けるために死ぬ人間の数を抑える工夫なのだろう。それぐらいはパウヴィナも分かる。


「でも、今それをする意味があるのかな?」

 分からないのは、今の状況でそれをする意味の有無である。小競り合いどころか、ファゾン公爵領VSそれ以外の公爵領全ての全面戦争だというのに。

「あ……それは……無いですね」

 ラインハルトも、それはフォローする事ができなかった。


「強いてあげれば、ああして怒鳴り合っている間にアミッド神聖国側での戦いに決着がついて、こっちで戦争が始まる前に終わるかもしれない事かと」

 だが、そこでフォローしたのはアルクレム公爵領から援軍として派遣された『千刃の騎士』バルディリアだった。


「それに聖戦だ、神からの神託だ、加護だと騒いでも、戦争の経験までは手に入らないでしょうから……ファゾン公爵領の将軍も昔の慣習に倣うしかなかったのかと。それを受けたハートナー公爵領軍も、無視する事ができず応じた結果今に至るのかと」

 そして、前世ではアルクレム公爵の末妹で騎士団長だったユリアーナがそう続けた。


 彼女はミノタウロスハーフに疑似転生して表向きヴァンダルーの従魔になったため、アルクレム公爵家ではなくパウヴィナ同様ヴィダル魔帝国からの援軍という事になっている。

『ひひーん』

 その愛馬は、ヴァンダルーの分身である使い魔王である。少なくとも、外見は馬っぽい。大きさは二メートルを超える長身のユリアーナとその妹達に合わせた巨体だが。


「ヴァン、他の場所はどんな様子?」

『ビルギット公爵領方面はここと同じですね。サウロン公爵領では、敵の気配はありませんが警戒態勢を維持したまま様子を見ています。境界山脈内部のタロスヘイムや他の国々も同様。

 戦いが始まっているのは、ミルグ盾国側とファゾン公爵領沖です』




 そのファゾン公爵領沖、バーンガイア大陸の南の海では、激戦が繰り広げられていた。

「矢を、攻撃魔術を放て! バリスタの弦を巻き上げろ! 攻撃の手を緩めるな!」

「魔術の効果の時間切れが迫った海中兵は、次の兵と交代! 傷の治療と魔術を早くかけなおせ!」

 ファゾン公爵領が誇る海軍は、今まで海賊や海の魔物相手に多くの戦果を挙げてきた。


 その海軍をヴィダル魔帝国に海からぶつけて生贄の羊にするような無謀すぎる作戦を実行するほど、ファゾン公爵は信仰に狂っていなかった。

 同時に、海軍を陸で運用する愚も犯さなかった。彼はヴィダル魔帝国が海から攻めてくる場合に備えて、ファゾン公爵領の沖を巡回させた。


 そこを襲撃されたのである。

『キュキュー!』

『キュオオオオン!』

 水平線の彼方から、宙を風のような速さで走ってきた二匹のクラーケンに。


 その正体は、【縮小化】スキルを解いたタマとギョクだった。二匹はなんと、ランク12のアビスクックラーケンにランクアップしていたのだ。

 これも二匹が屋台で高い【料理】スキルを、そして営業終了後に地道にレベリングをしながらヴァンダルーの一部を食べ続けた成果である。


「馬鹿なっ! なんでクラーケンが空中を走るんだ!?」

 【空中走行】スキルと【高速走行】スキルを獲得したためである。タマとギョクはその十二本の足を器用に使い、鳥よりも自由に空中を舞っていた。

 急停止、上下運動、瞬間的な方向転換だって自由自在だ。そのため、風属性魔術やマジックアイテムで飛行が可能な水兵や騎士も彼らについて行くことができないでいる。


「クソっ、当たらんっ!」

 そして、遠距離攻撃に対しても柔軟に対応していた。海軍の弓兵や魔術師達は船体が波で上下する事も計算に入れ、高い精度で射撃を行う事ができたが、彼らが弓や攻撃魔術を撃つ前にタマとギョクのどちらかが触腕を海面に叩きつけて大波を起こして船体を揺らすのだ。


 これもそれぞれの脚で別々の工程を同時に進める事で身に着けた、繊細な調理技術の賜物である。『屋台玉子』の二つ名は伊達ではない。


 おかげで海兵達はタマとギョクに中々攻撃を当てる事ができない。……当てたとしても、ランク12で【高速再生】スキルを高いレベルで持つ二匹にとっては、たいしたダメージではないだろうが。

 ファゾン公爵領海軍は、人間の軍の中では高い練度を誇っていた。一人一人の強さが騎士に匹敵する海兵に、C級冒険者に匹敵する騎士。彼等なら、海からの普通の脅威には難なく対応できただろう。


 しかし、ランク12という邪悪な神々や亜神一歩手前の存在の前では、怪物に翻弄される無力な雑兵でしかないのだ。ファゾン公爵領海軍は、鉄板の上に横たわる食材のように調理されていく。


 その上、彼らの相手はタマとギョクだけではなかった。

「行け、雪辱を果たすのだ!」

「浮かれたアルダ信者共の頭を、海水で冷やしてやれ!」

 水上の強大な脅威に気を取られていたファゾン公爵領海軍の船の下、海の底から武装した人魚や海に適応した魔物やそのアンデッドが襲い掛かってきたのだ。


「今こそ捲土重来の時! 一族の恨みを晴らすのだ!」

 そう、人魚達はファゾン公爵の依頼を受けた『五色の刃』達によって多くの同胞の命を奪われ、故郷からガルトランドへ移住した『紅南海の正悪神』マリスジャファーを奉じる人魚の一族だったのだ。


「やり過ぎるでないぞ、バスティアン。皆もだ!」

 虹色に輝くトライデント……型の変身装具を携えた長のドーラネーザが、人魚族の戦士達をそう律する。

「ですが、姫様!」

「奴らは死後、我々の仲間になるのだ。死体の原形ぐらいはとどめてやれ! 後で縫い合わせる者の苦労を厭え!」


「なるほど、そういう事でしたら了解いたしました!」

 ますます士気を高める人魚達。その会話が聞こえていれば、ファゾン公爵領海軍の士気は大きく低下していただろうが……。


「キュッキュー!」

 タマが振り回す触腕によって船が一隻砕かれて、もうそれどころではなかった。

 味方の救助やそれを援護するために無事な軍船が動こうとするが、変身装具を纏いトライデント型の杖を掲げたドーラネーザが魔術で海流を操り、ファゾン公爵領海軍の船を翻弄して連携を巧みに妨害しているため態勢を立て直す事もままならない。


 魔術師達が数の暴力でドーラネーザの魔術に対抗しようとするが、攻撃魔術を唱えようとすればタマとギョクに叩き潰されるため、思うようにいかない。

 軍船の各船長達の頭には、撤退ではなく降伏の二文字が過っていた。




 早くも趨勢が明らかになりつつあるアミッド神聖国軍とファゾン公爵領海軍の戦場の様子を、各地に配置した使い魔王の目を通して、ヴァンダルーはタロスヘイムの王城で見ていた。

 同時に、信者達の目を通じて『法命神』アルダも見ていた。


 アミッド神聖国の聖戦軍にヴィダに付いた大神達の信者の裏切り者が多数紛れ込むのは、避けられない事であり彼も予想していた。しかし、紛れ込んだ裏切り者を放置する事で、ヴァンダルー達は聖戦軍を遠距離から無差別に攻撃する事はできなくなると踏んでいた。


 クワトロ号による空からの爆撃や、使い魔王による自爆攻撃や怪光線の射撃で、ペリアやボティン達の信者を巻き添えにする事を厭うはずだと。

 実際その通りだったが……アルダが予想していたより多くの裏切り者が出たために聖戦軍は劣勢に陥っている。


 まだエイリーク達が用意した切り札を温存している状態ではあるが、アルダの見立てでは切り札を切っても厳しいだろう。

『やはり、この手を打たなければハインツ達が境界山脈内部のヴァンダルーの居城、タロスヘイムへ潜入する隙を作る事もできないか』

 この時、アルダは思い違いをしていた。


 ヴァンダルーにとって、オルバウム選王国は最終的には切り捨てても構わない存在だとアルダは考えていたのだ。自らが支配するヴィダル魔帝国や、自身の身を危うくしてまで助ける事は無いだろうと。

 その誤解は、ヴァンダルーをグドゥラニスと同一視しすぎたために……彼を悪だと強く決めつけているから生じたものだ。


 ヴァンダルーは悪。悪だから自ら奉じる者を、最終的には切り捨てる。そうでなければ、ヴァンダルーは悪ではないという事になってしまう。

 ヴァンダルーは悪でなければならないのだから、最後には悪らしく振る舞わなければならない。


 かつて彼が創り上げた試練のダンジョンで、幻のダルシアをハインツの剣から庇った姿を見ていたのに。

 数か月前、復活したグドゥラニスと戦いながらオルバウムの人的被害を最小限に抑えたのも、ハインツではなくヴァンダルーである事を知っているのに。


 そして何より、現在進行形で自らを奉じる者を切り捨て顧みていないのは自分自身であるというのに。

 アルダは、理解していなかった。


『最終手段だ。ヴァンダルーを一旦は強化する事になるが……これも奴を倒すため』

 アルダはグドゥラニスの魂の欠片のうち幾つかを右手に、そして神々の封印を左手に取った。




 そして、ヴァンダルーは各地から同時に死の気配が生じたのを感じた。

「あれは……なんだ!?」

 同時に、各地で何かの拍子に空を見上げた者が、何かが天から降ってくるのを目撃した。それは最初黒い影にしか見えなかったが、次第に恐ろしい姿を現した。


『ブゴガアアアア!? ヒギィィィ!?』

『憎いっ! 憎いぞおおおおっ! おあああああ! アルダの走狗に死を! 滅びを! 我が身が鏃になったとしても、一矢報いてくれる!』


 ヴィダル魔帝国軍とアミッド神聖国の聖戦軍がぶつかり合う戦場に、捻じ曲がった角や牙を生やした禍々しく巨大な猪の咆哮と、嵐を纏った龍の呪詛が響き渡った。


『フォオオオオオオオ!』

 ファゾン公爵領海軍の上空に、巨大な唇と無数の触手だけで構成された球体の何かの悍ましい声が轟いた。


『アッハハッハッハッハ!? ヒハハハハハハ! アヒ~ッヒッヒヒヒ!』

 オルバウムの上空には、城よりも巨大で無数の突起が生えた歪な巻貝が現れ、思わず耳を押さえたくなるような気味の悪い馬鹿笑いを始めた。


『勇者達めっ! どこだ! 七人全員皆殺しにしてやる!』

『我が子らよっ! 早く……早く我を殺せぇ……! 抑えられないぃぃっ!』

 異形の姿でも分かる怒りと憎悪を浮かべた悪神がハートナー公爵領とファゾン公爵領の境界の上空に、自らを殺すよう嘆願する巨大な獅子は、ビルギット公爵領の上空に現れた。


 他にもジャハン公爵領、アルクレム公爵領、そしてサウロン公爵領、そして戦場になっていなかったはずの魔大陸やガルトランドの上空にも強大で禍々しい存在が現れた。

 それは、アルダによって封印が解かれると同時に、魔王グドゥラニスの魂の欠片を植え付けられた、魔王軍残党の邪悪な神と、十万年前の戦いで封印されたヴィダ派の神や亜神だった。




――――――――――――――――――――――




名前:タマ ギョク

二つ名:【屋台玉子】

ランク:12

種族:アビスクックラーケン

レベル:38


・パッシブスキル

闇視

墨分泌:4Lv

乾燥耐性:4Lv

火属性耐性:4Lv

能力値強化:導き:6Lv

保護色

空中歩行

能力値強化:ヴァンダルー:5Lv

高速再生:7Lv

身体強化:触腕:10Lv


・アクティブスキル

高速水泳:7Lv

剛力:2Lv

料理:8Lv

発光:3Lv

縮小化:5Lv

恐怖のオーラ:8Lv

限界突破:5Lv

格闘術:7Lv

鞭術:7Lv

高速走行:5Lv

並列思考:3Lv


・ユニークスキル

ヴァンダルーの加護




●魔物解説:アビスクックラーケン ルチリアーノ著


 【料理】スキルを高いレベルで習得したクラーケンがランクアップする事ができる、クックラーケン。それが師匠の血肉を繰り返し摂取した事で、ディープクックラーケンからランクアップした種族。本来光の届かない、人類にとって未知の領域である深海に生息するクラーケン。しかも種族名にアビスとあるのに、余裕で日光を浴びながら調理した焼きそばやタコ焼き、スルメイカ等を屋台で販売している。


 体表の色を変えて背景に溶け込むことができる【保護色】スキルや、リトルクラーケンだった頃とほぼ同じ大きさにまで小さくなれる【縮小化】スキルを持つなど、搦手も得意なように思えるが、その本領はやはり圧倒的な質量による蹂躙である。


 海上を風のように走る姿や、水中から高速で浮上する帆船よりも巨大な姿、暗闇の中で白く発光する異形の姿は襲われた者達の精神を恐怖で凍てつかせることだろう。


 もっとも、普段はアルクレム公爵領のモークシーの街で屋台をしているのだが。【縮小化】して、屋台料理を調理している。街の人々にとってはちょっとしたアイドルで、『屋台王』の師匠の従魔である事から、『屋台玉子』と呼ばれて親しまれているらしい。


 もちろん、二つ名の由来はタマとギョクの玉のような胴体だ。




・名前:ヴィガロ

・ランク:14

・種族:グールアストラルタイラントエンペラー

・年齢:177歳

・二つ名:【死斧王】 【屍食鬼大将軍】

・レベル:60

・ジョブ: 死鬼将群

・ジョブレベル:98

ジョブ履歴:見習い戦士 戦士 斧士 斧豪 魔斧使い 大斧豪 狂戦士 鬼戦士 冥斧士 霊鬼士 盾士 冥鬼斧豪 冥鬼大斧豪 超大斧豪


パッシブスキル

闇視

超力:1Lv(剛力から覚醒!)

痛覚耐性:10Lv

麻痺毒分泌(爪):10L(UP!)

斧装備時能力値増大:極大(UP!)

魔術耐性:7Lv(UP!)

精力超絶倫:1Lv(精力絶倫から覚醒!)

殺業大回復:1Lv(殺業回復から覚醒!)

物理耐性:4Lv(UP!)

精神耐性:2Lv(UP!)

自己強化:導き:8Lv(UP!)

眷属強化:5Lv(UP!)


アクティブスキル

獅死斧術:8Lv(UP!)

獅死闘術:1Lv(格闘術から覚醒!)

指揮:8Lv(UP!)

連携:10Lv

伐採:6Lv

解体:5Lv(UP!)

霊盾術:1Lv(盾術から覚醒!)

限界超越:8Lv(UP!)

魔斧限界超越:7Lv(UP!)

並列思考:8Lv(UP!)

霊体:10Lv(UP!)

実体化:10Lv(UP!)

高速思考:1Lv

御使い降魔:5Lv(UP!)


ユニークスキル

ゾゾガンテの加護

ガレスの加護

ヴァンダルーの加護

ヴィダの加護

次の話は9月8日に投稿する予定です。

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― 新着の感想 ―
この狂い神、滅ぼすべし 完全に邪悪じゃないか
アルダ一柱で神という存在を貶めて汚してるのがスゲェよホント。 これでまだナインロードだのエイリークだのユペオンだのが控えてると思うと、アルダ勢って救いようがないわな(呆)
ヴィダ派の神かわいそう
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