三百八十三話 始まりは冬の前に
《【超力】、【魔力常時超回復】、【従群極強化】、【神毒分泌:牙爪舌】、【無手時攻撃力増大】、【身体超強化(髪爪舌牙)】、【魔糸精製】、【魔力回復速度超上昇】、【生命力増大】、【能力値増強:君臨】、【能力値増強:被信仰】、【能力値強化:ヴィダル魔帝国】、【自己再生:共食い】、【能力値増強:共食い】、【殺業回復】、【自己強化:殺業】、【杖装備時魔術力増強】、【能力値強化:導く】、【統血】、【滅轟】、【ゴーレム創世】、【虚界神魔術】、【魔術精密制御】、【錬神術】、【群隊】、【将群】、【死糸操術】、【冥叫喚】、【真魔王砲術】、【装魔界術】、【欠片限界超越】、【鞭術】、【杖術】、【高速飛行】、【楽器演奏】、【舞踏】、【筋術】、【魔闘術】、【迷宮支配】スキルのレベルが上がりました!》
《【魂纏時能力値増強】が【魂纏時能力値増大】に、【全能力値増強】が【全能力値増大】に覚醒しました!》
使い魔王によるボークス達の特訓は、ヴァンダルーにも大きな効果を発揮した。使い魔王はヴァンダルーの分身であるため、彼らの経験はヴァンダルーの経験としてステータスに反映されるからだ。
魔物にはない高いレベルのスキルを持つ相手との戦いは、ヴァンダルーにも有効だったのだ。
そして何より、経験値も入った。
使い魔王はヴァンダルーの分身なので、最初はボークス達のスキルはともかくジョブのレベルは上がらないと考えていた。使い魔王を倒したとしても、それはヴァンダルーの分身……一部を破壊しただけで、何も殺していないからだ。
しかし、実際に使い魔王をボークス達が倒すと経験値を獲得する事が出来たのだ。
その事をヴァンダルー達がルチリアーノに相談すると、彼は「私にも詳しい事は分からないが、その事実だけで論文をいくつか書けるかもしれない」と言った。
彼が言うには、今までこの世界では経験値について複数の説があった。
倒した存在のエネルギー的なものの一部を吸収しているという説。
神々が人の行いを採点していてその評価を経験値として受け取っているのだという説。
経験値とは外部的な要因ではなく内部的な要因……その者の行動によって魂が鍛えられ、それで発生したエネルギーを人々は経験値と呼んでいるという説。
他にも諸説あるが、有力なのはこの三つだ。そして、多くの学者や賢者は一番目の説を有力視してきた。非戦闘系ジョブの経験値は、素材や材料にも微量なエネルギーが宿っていて、それを吸収しているからだと解釈されていた。
そして、学者や賢者以外は経験値に関して深く気にしなかった。空気の成分が何なのか知らなくても呼吸はできるし、心臓と血管の構造を知らなくても鼓動は勝手に刻まれるのと同じで、知らなくてもレベルは上がるからだ。
ヴァンダルーも同様に、深く考えた事はなかった。そして、それは今も変わっていない。
今までの学説では説明できない事態なのは分かるが、それで何か不利益を被るわけでもないのでそのままにしている。
「それはさておき、ジョブチェンジです」
ヴァンダルーは水晶に触れた。
《選択可能ジョブ 【創造主】 【タルタロス】 【荒御魂】 【冥群砲士】 【冥獣使い】 【虚影士】 【バロール】 【アポリオン】 【デモゴルゴン】 【魂喰士】 【神喰者】 【ネルガル】 【羅刹王】 【シャイターン】 【蚩尤】 【ウロボロス】 【ルドラ】 【血統者】 【魔電士】 【ジャガーノート】 【狂筋術士】 【アポピス】 【アザトース】 【饕餮】 【虚界神魔術師】 【神霊理士】 》
実は既に【堕武者】と【蟲忍】のジョブはレベル百に達しており、今は【蝕呪士】のレベルが百に到達したためにジョブチェンジに来たのだった。
【堕武者】は全ての武術系スキルに補正がかかるジョブだった。武芸百般に秀でてこそ武士という言葉通りのジョブだった。……毒に関してもスキル補正があったのが、「堕」が付いている理由だろうか。
【蟲忍】は、蟲を眷属として扱いやすくなる斥候系のジョブだった。……残念ながら、ヴァンダルーは斥候の技術を伸ばしていなかったので、スキル補正は微妙だったが。
そして【蝕呪士】は、手足や舌、鼻や触手や血液で触れた対象を呪い、種や菌を植え付ける事が出来るジョブだった。
戦闘で敵に継続的にダメージを与えたり、広範囲の畑に種をまいたり、キノコの栽培に役立つジョブである。
「では、次のジョブは……【ネルガル】を選択」
ネルガルはメソポタミア神話の冥府の神で、同時に太陽神でもあるという変わった存在だ。もっとも、太陽神として象徴するのは恵みや温もりではなく、日照りや枯死だが。
タロスヘイムを首都にする『蝕帝』であるヴァンダルーにとって、相応しいジョブと言えるだろう。
《【超力】、【冥界神魔術】、【魔力常時超回復】、【魔力回復速度超上昇】、【生命力増大】、【能力値増強:君臨】、【能力値増強:被信仰】 【杖術】スキルのレベルが上がりました!》
《【自己強化:殺業】が【自己超強化:殺業】に、【殺業回復】が【殺業超回復】に覚醒しました!》
・名前:ヴァンダルー・アーク・ヒルウィロウ・ソルダ・ザッカート
・種族:ダンピール(母:女神)
・年齢:13歳
・二つ名:【グールエンペラー】 【蝕帝】 【開拓地の守護者】 【ヴィダの御子】 【鱗帝】 【触帝】 【勇者】 【大魔王】 【鬼帝】 【試練の攻略者】 【侵犯者】 【黒血帝】 【龍帝】 【屋台王】 【天才テイマー】 【歓楽街の真の支配者】 【変身装具の守護聖人】 【女神の解放者】 【巨人帝】 【救世主】 【魔王殺し】 【自称人間】
・ジョブ: ネルガル
・レベル:0
・ジョブ履歴:死属性魔術師 ゴーレム錬成士 アンデッドテイマー 魂滅士 毒手使い 蟲使い 樹術士 魔導士 大敵 ゾンビメイカー ゴーレム創成師 屍鬼官 魔王使い 冥導士 迷宮創造者 創導士 冥医 病魔 魔砲士 霊闘士 付与片士 夢導士 魔王 デミウルゴス 鞭舌禍 神敵 死霊魔術師 弦術士 大魔王 怨狂士 滅導士 冥王魔術師 ペイルライダー 混導士 神導士 神滅者 虚王魔術師 神霊魔術師 ダンジョンマスター クリフォト デーモンルーラー 整霊師 魔杖創造者 匠:変身装具 冥界神魔術師 冥魔王 万魔殿 魂格闘士 ヴァンダルー 真魔王 陰導士 転導士 霊導士 導主 堕武者 蟲忍 蝕呪士
・能力値
・生命力:1,471,586+(882,951) (555,977UP!)
・魔力 :108,904,589,156+(108,904,589,156) (3,056,175,838UP!)
・力 :899,870+(224,967) (310,411UP!)
・敏捷 :771,890+(192,972) (295,058UP!)
・体力 :826,265+(206,566) (275,815UP!)
・知力 :985,618+(246,404) (327,936UP!)
・パッシブスキル
超力:8Lv(UP!)
超速再生:10Lv
冥界神魔術:10Lv(UP!)
状態異常無効
魔術耐性:10Lv
闇視
阿頼耶識誘引
無詠唱
導き:阿頼耶識
魔力常時超回復:8Lv(UP!)
従群極強化:7Lv(UP!)
神毒分泌:牙爪舌:5Lv(UP!)
身体無限伸縮:舌
無手時攻撃力増大:大(UP!)
身体超強化(髪爪舌牙):8Lv(UP!)
魔糸精製:9Lv(UP!)
魔力増大:10Lv
魔力回復速度超上昇:7Lv(UP!)
魔砲発動時攻撃力増大:小
生命力増大:6Lv(UP!)
能力値増強:君臨:9Lv(UP!)
能力値増強:被信仰:8Lv(UP!)
能力値強化:ヴィダル魔帝国:8Lv(UP!)
自己再生:共食い:10Lv(UP!)
能力値増強:共食い:10Lv(UP!)
魂纏時能力値増大:小(魂纏時能力値増強から覚醒!)
殺業超回復:1Lv(UP&殺業回復から覚醒!)
自己超強化:殺業:1Lv(UP&自己強化:殺業から覚醒!)
杖装備時魔術力増強:極大(UP!)
全能力値増大:小(全能力値増強から覚醒!)
能力値強化:導く:2Lv(UP!)
・アクティブスキル
統血:10Lv(UP!)
滅轟:4Lv(UP!)
ゴーレム創世:6Lv(UP!)
虚界神魔術:5Lv(UP!)
魔術精密制御:9Lv(UP!)
神霊理:3Lv
錬神術:6Lv(UP!)
魂装滅魔神術:2Lv
同時多発動:10Lv
怪異術:4Lv
具現化:9Lv
群隊:10Lv(UP!)
超速思考:10Lv
将群:9Lv(UP!)
死糸操術:2Lv(UP!)
怨投術:4Lv
冥叫喚:2Lv(UP!)
神霊魔術:8Lv
真魔王砲術:2Lv(UP!)
装魔界術:5Lv(UP!)
欠片限界超越:8Lv(UP!)
整霊:7Lv(UP!)
鞭術:6Lv(UP!)
霊体変化:雷
杖術:7Lv(UP!)
高速飛行:5Lv(UP!)
楽器演奏:5Lv(UP!)
舞踏:4Lv(UP!)
筋術:8Lv(UP!)
魔闘術:6Lv(UP!)
・ユニークスキル
神喰らい:10Lv
異貌多重魂魄
魂魄侵食:3Lv
迷宮支配:3Lv(UP!)
大魔王
根源
神敵
魂喰らい:10Lv
ヴィダの加護
地球の神の加護
群魂
ザンタークの加護
群在
魂魄体:9Lv
魔王の魔眼
オリジンの神
リクレントの加護
ズルワーンの加護
完全記録術
魂魄限界突破:8Lv
変異誘発
真魔王
亜神
ボティンの加護
ペリアの加護
体内世界
導主
・呪い
前世経験値持越し不能
既存ジョブ不能
経験値自力取得不能
ステータスを確認したヴァンダルーは、ジョブチェンジ部屋から出て呟いた。
「さて、アルダ達はいつ動くつもりでしょうか?」
『アミッド帝国とオルバウム選王国の戦争なら、春から夏、もしくは秋から冬の始めですな』
荷台の中に、サムの声が響いたと思ったら、ヴァンダルーの左右からサリアとリタが出てきて話を引き継いだ。
『アミッド帝国とオルバウム選王国は建国以来戦争を繰り返してきましたが、両国が国境を接していたのはミルグ盾国とサウロン公爵領の大陸中央部の北部だけ。海戦も昔試みられたらしいですけど……』
『どちらの海軍も敵軍に遭遇する前に魔物にやられて、生き残った三分の一の船が逃げ帰るという結果になったそうです』
「海戦ですか……海に面した海国カラハッドとファゾン公爵領の間には、人魚国のある大陸南部の半島があるのに、よくやりましたね」
バーンガイア大陸の西部と東部を海で行き来するには、複雑な海流と岩礁だらけでしかもクラーケンなどの強力な魔物がうようよしている、大陸南部の海が障害となる。
大きく迂回すれば安全な航路もあるが、それは片道二カ月以上かかるため、この世界の造船技術と航海術ではとても戦争ができる状態を維持できない。兵士が全て歴戦の船乗りでもなければ、士気を保てないのだ。
そして、アミッド帝国もオルバウム選王国も海の敵は海賊か魔物だけなので、大規模な海軍を常設する理由がない。そのため、経験豊かな海兵は増えない。
それでも過去に海から軍を送り込もうとした者が両国にも存在したが……どちらも作戦失敗の責任を取って失脚している。
『その海戦以外だと、戦争ができる季節は限られます。春から夏は、大きな戦争になる事が多いですね。寒さが和らぎ、北部なので夏もそれほど暑くなく、糧食の備蓄も日照りでない限り十分貯められるはずですから』
『対して、秋から冬の始めは小競り合いか短期決戦になる事が多いそうです。ミルグ盾国とサウロン公爵領の国境線周辺は冬でも雪は深く積もりませんが、凄く冷えるので兵士が耐えられないのだとか』
耐性スキルやマジックアイテムが存在するこの世界でも、気候や季節の影響を免れる事はできない。
もちろん、寒さに耐えられる少数精鋭で敵国に攻め込む作戦が実行された事もあるが、それは迎え撃つ側の精鋭によって防がれる事が多い。
「なるほど……二人とも良く知っていますね」
『ルチリアーノさんから聞きました!』
『あと、チェザーレさんからも教えてもらいました!』
『『坊ちゃんと話すきっかけになると思って!』』
両サイドでポーズをとって言うサリアとリタ。地方を治める小さい貴族家に仕えるメイドだった彼女達は、生前は高度な教育を受けていなかった。なので、こうしてアンデッドになった後に学んだようだ。
「頑張りましたね、二人とも。でも、残念ながら今はもう参考にならないかもしれません」
『坊ちゃんが境界山脈の一部を動かし、ミルグ盾国とサウロン公爵領の国境を無くしてしまいましたからね』
ヴァンダルーとしては、エリザベスが治めるサウロン公爵領にアミッド神聖国を攻め込ませたくなかったので、当然の行動だったが、結果的に両国はもう陸で戦争をする事が難しくなった。
「まあ、アミッド帝国……神聖国にとっては大事でも、アルダにとっては大きな問題ではないでしょう。奴らにとっては、オルバウム選王国を征服しても俺を倒さなければ意味がない戦争ですから」
オルバウム選王国の十二の公爵領全てを征服しても、ヴィダル魔帝国が残っていては意味がない。そして、ヴィダル魔帝国を滅ぼすことができても、ヴァンダルーを討ち損ねればやはり意味がない。
逆に言えば、ヴァンダルーさえ討ち取れれば、アミッド神聖国が滅んでもアルダ勢力は勝利と見なすだろう。
たしかに、ヴァンダルーが一人生き残っていれば、国が滅びてもすぐにアンデッドの軍勢を、そして帝国を再建する事ができるから、彼を討ち取らなければならない。
『でも、万が一坊ちゃんだけ討ち取られたら……私達、憎悪のあまりに何をするか分からないと思うんですけど』
『坊ちゃんがやらない非戦闘員への虐殺なんかも、我を忘れてやっちゃうかもしれませんし』
『恥ずかしながら、私も自分を抑えられる自信がありませんな』
だが、ヴァンダルーだけ討ち取っても彼の仲間が健在である場合は、彼が健在なら止めていた無秩序な虐殺が行われるだけだ。
恨みでそこまで狂乱するのはアンデッドの仲間達だけだろうが……彼等ならサムが高速で亜空間を走り回りながらリタとサリアが砦や街をいくつか落とすだけで収まるだろう。しかし、ボークスやクノッヘン、クワトロ号が我を失い狂乱してしまったら、アミッド神聖国が荒野になるまでそう時間はかからないだろう。
ちなみに、この瞬間もヴァンダルーの背後にいるグファドガーンは、話題に加わらなかった。何故なら、ヴァンダルーが討ちとられた場合、自分はその前に倒れているはずだと確信しているからである。
「ですが、逆に俺にとってもアミッド神聖国との戦争はハインツ、そしてベルウッドを討ち取れるかどうかが鍵です。逆に言えば、ハインツとベルウッド以外の全てを皆殺しにできたとしても、勝利とは言えません」
ベルウッドを体に降ろせるハインツは、間違いなくアルダ勢力の最大戦力だ。他の英雄候補や、『邪砕十五剣』でさえも彼の露払いでしかないだろう。
そしてハインツを倒しても、彼が母の仇であり彼の抹殺が自己の幸福追求の必須条件であると定義しているヴァンダルーはとても喜ぶが……目覚めたベルウッドが健在である以上、また降りる人間を見つけて第二のハインツに仕立て上げる可能性がある。
「そうそう神を降ろせる人間は現れませんが、僅かな可能性があります。それに、消滅覚悟で単独で降臨して襲い掛かってくるかもしれませんし」
そういうヴァンダルーだが、彼はベルウッドが今どんな精神状態か知らない。知っていれば、消滅覚悟の特攻なんてできないだろうと判断しただろう。
「アルダ勢力は俺が攻め込んでくるのを警戒していると思いますが、俺はハインツが俺のすぐ行けない場所に攻め込んでくるのを警戒しています。
ですが、このままずるずると時間が過ぎるのは向こうも望まないはず」
既に季節は秋の半ばを過ぎつつあり、冬の始めが見えてきた。以前なら戦争が始まるのは来年の春だが、それまでは待てない。
「冬には攻め込みましょう。使い魔王を特攻させて捨て駒にして、ハインツ達を炙り出して討ち取り、滅ぼします。
もうチェザーレには話してありますけど」
『はっはっはっ! 今年の冬は一段と賑やかになりそうですな!』
『同僚ゲットのチャンスですね! 坊ちゃん、戦争が終わったらリビングビキニアーマーやリビングハイレグアーマーを増やしましょうよ!』
『リタ、それってランクアップした後霊体で男の姿になる人が続出して地獄絵図になる予感がするからやめない?』
「ちゃんと事前に面接をしましょうね」
ヴァンダルーが今年の冬には決戦を行うと決めた時、エイリークは既にアルダから神託を授かっていた。
「神より、聖戦を命じる神託がありました。皆さん、今より聖戦の始まりです!」
ある意味、ヴァンダルーの望み通り攻勢はアミッド神聖国から、守勢は自分達と言う構図で戦いは始まるようだ。
すみません、体調は大丈夫なのですが若干スランプ気味なのか筆の進みが大変遅くなってしまったので、8月29日までお休みを頂こうと思います。
誠に申し訳ありませんが、次の投稿は8月29日となります。




