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四度目は嫌な死属性魔術師  作者: デンスケ
第十四章 冒険者学校編
439/515

三百五十話 目覚める本能

 ヴァンダルーが魔力を収束させる時間を短縮して放った、速射式【界穿滅虚砲】。威力を犠牲にして発動までにかかる時間を短縮した攻撃を前に、標的となった六道とハインツは同じ行動をとった。

 六道は素早く魔力を練り、【界穿滅虚砲】を防ぐための魔術を展開するために。そして、ハインツも魔術を唱えた。


「【輝転】!」

 ただ、唱えていたのは防御ではなく移動速度を強化するための魔術だった。ヴァンダルーが次に自分ごと六道を攻撃しようとした時に備えて、ハインツはすぐ【輝転】を唱えられるように備えながら戦っていたのだ。


『くっ!? 【吸魔盾】!』

 それに慌てたのはヴァンダルーではなく六道だ。防御のための魔術は唱え終わっていたが、威力が数段下がっていても【界穿滅虚砲】を防ぎきる事は難しいからだ。


『うおおおおおおおおっ!』

 魔力を振り絞り、押し寄せてくる強大な黒い魔力の奔流を受け止め切ろうとする。だが、六道が張った魔力の盾は今にも貫かれそうだ。


(だが、これなら何とか致命傷は避けられる! 死ななければこの【魔王の欠片】で作られた肉体は、すぐに再生する事が可能だ! ……ん?)

 何とかなる。そう思った六道が見ている前で、片手で速射式【界穿滅虚砲】を放っているヴァンダルーに動きがあった。


「【界穿滅虚砲】」

 なんと、もう片方の手で新たに【界穿滅虚砲】を放ったのだ。だが、それは六道に向かってではない。ハインツ達もいない、あらぬ方向に向かってだ。

 

「な、何のつもりだ!?」

『っ!?』

 速射式【界穿滅虚砲】から逃れたハインツが仲間達と共に困惑した様子でヴァンダルーの行動を警戒するが、六道は彼が何をするつもりなのか理解し、全身に寒気が走った。


「【転移門】」

 あらぬ方向に向かって放たれた【界穿滅虚砲】の前方に、グファドガーンが【転移門】を開いた。そして、六道の背後に、その出口が現れる。


『【吸魔盾】! やはり同時に撃てたのかぁああああああああ!!』

 六道が背後に二つ目の防御魔術を展開した次の瞬間、【界穿滅虚砲】が激突した。


「片方を逃した分、捕まえた方の標的はこのまま確実に圧殺しましょう」

 ヴァンダルーが最初に速射式【界穿滅虚砲】を放ったのは、六道とハインツの動きを止めるためだった。本命は、二発目の十分に練った魔力を乗せた【界穿滅虚砲】。それをグファドガーンの【転移門】で軌道を変え、動きを止めた標的の背後から当てて、挟み撃ちにする。


 これなら一発なら耐えられる標的達も倒せる……最悪でも致命傷に近いダメージを与えられるはずだ。

 ハインツには逃げられたが、それは構わない。ハインツは六道を守るためにヴァンダルーを攻撃しないし、オルバウムの人々を攻撃しようとはしない。


 状況的に六道を倒した後、S級冒険者で名誉伯爵のハインツ達を殺すのは難しいので、いっそこの間に逃げ出しても構わないのだが――。

「やったかっ!?」

「いや、まだだ!」

 と言い合っている様子を見る限り、そのつもりはないようだ。彼等としては、六道が死ぬのを自身の目で見なければ退けないのだろう。


(六道を攻撃している間動けない俺を攻撃しないだけ、まだマシだと思うしかないか)

 だが、ヴァンダルーも同時に【界穿滅虚砲】を発動させるのは負担が大きい。五悪の杖を持ってきていなかったら、反動で腕が砕け散って肉片を地上に撒いていただろう。……そうなったとしても、地上の魔物を退治するための使い魔王が増えるだけだが。


『ぐあっ!? く、アイドル崩れ如きがぁっ!』

 一方、六道は消滅の危機に全力で抵抗していた。そんな彼の体に、テルカタニス宰相の執務室から使い魔王が放つ怪光線が何度も撃ち込まれる。光線を放つために必要な【魔王の発光器官】が仕込まれた【魔王の眼球】を交換しているカナコに、六道は憎悪の眼差しを向ける。


『ぐうううううううううう! こ、このままでは……【魔王の右腕】、【左腕】!』

 しかし、すぐに視線を向ける余裕すらなくなった。六道は堪らず切り札の一つとして隠していた、【魔王の右腕】と【左腕】を発動させた。テルカタニスが集めた【魔王の欠片】の中に含まれていた【魔王の右親指】や【魔王の左手首】等がそれぞれ統合され、腕となったものだ。


 その腕力と硬度、そして対魔術防御力は尋常ではない。それを利用して【界穿滅虚砲】を抑え込もうとするのだが……黒い魔力の奔流に【魔王の右腕】と【左腕】が耐えられず裂け始める。

(馬鹿な! 【魔王の右腕】と【左腕】は私の計算によれば、オリハルコン製の武器による武技にも耐えられるはずだ! まさか、ヴァンダルーの魔術は魔王グドゥラニスをも超えたというのか!?

 ……いや、違う!)


 六道は損傷していく【魔王の腕】の再生をさらに魔力を注ぎ込んで促しながら、必死になって打開策を探す。

(違うっ! ヴァンダルーがグドゥラニスを超えたのではない! 私が、グドゥラニスの体本来の性能を引き出せていないのだ!)

 魔王グドゥラニスは、『龍皇神』マルドゥーク達を屠る程の力を持ち、勇者ベルウッドでも単身では勝負にならない程の力を誇っていた。


 たしかにヴァンダルーは強い。規格外と言うしかない。だが、単純な戦闘能力はグドゥラニスを超えるほどではない。もし超えているのなら、ハインツ達相手にこれほど苦戦するはずがない。

 では何故か。それは、六道が魔王グドゥラニス程強くないからだった。


(何故だ!? 魔王グドゥラニスの魂の欠片を持つこの私が、数か月間トレーニングを続けたこの私が、この肉体を使いこなしていないというのか!?

 肉体だけではない! 魔王グドゥラニスの魂の欠片もあるというのに! いったいどうすれば、私はグドゥラニスを超える……並ぶことができるのだ!?)


 このままでは肉体を砕かれ、魂を喰われて滅ぼされてしまう。恐怖と危機感に生存本能が悲鳴をあげ、理性が焼き切れそうになる。

『っ!』

 その瞬間、はっとした。そうだ、【理性で押さえつけているから力が発揮できていなかった】のだ。


(私の魂に埋め込まれたグドゥラニスの魂の欠片は、【本能】と【記憶】! 理性で押さえつけた状態で本来の力を発揮できるわけがない! 【ヴァンダルーに勝つには、本能を開放するしかない!】 【大丈夫だ、私ならその状態でも自我を保つことができる!】)


 そう考えた瞬間、六道の全身に力が漲った。

『うおおおおおおおおああああああああああ!!』

 そして消えかかっていた【吸魔盾】を瞬間的に復活させ、一瞬だけ前後の【界穿滅虚砲】を防ぎ、その僅かな時間で離脱した。


「雰囲気が変わりましたね」

 ヴァンダルーは魔術を止め、折れた腕の骨を【魔王の骨】で再生させてそう言った。

『ふふふ、分かるかね? 経験は人だけではなく、神も成長させてくれる。危機に晒されたことで、【私は】悟ったのだよ。【本能を活かしてこそ、この戦いに勝つことができる】のだと!』


 今まで以上に禍々しい、そこにいるだけで周囲の存在に対して恐怖を覚えさせ背筋を震わせるような気配を放ちながら、六道は笑っていた。

(考えてみれば当然の事だった。生存本能に狩猟本能、そして闘争本能……戦いに本能は必要だ。だというのに、何故【本能を理性で抑え込もうなんて】考えていたのか。【本能の囁きを聞いてこそ、【魔王の記憶】を自らの経験として使う事ができる】のだ!)


『行くぞっ! まずは……貴様だ!』

 その本能の囁きに従った六道が矛先を向けたのはヴァンダルーでも、ハインツ達『五色の刃』でもない。城から怪光線を放つ目障りな使い魔王とカナコだ。


『くらえっ、【炎獄弾】!』

 手に【皮脂腺】から分泌した皮脂を凝縮し、それに火をつけて炎の玉にしてカナコ達に向かって放った。ヴァンダルーの【炎獄死】を模倣した死属性魔術だ。

 執務室にまだいるかもしれないテルカタニス宰相を巻き添えにする可能性も考慮せず、カナコと使い魔王を抹殺しようとする。


 ヴァンダルーはその【炎獄弾】を無視して、六道に対して【死弾】や【虚弾】で攻撃を繰り返す。

「っ!? 仲間を助けないのか!?」

 ハインツが驚愕した次の瞬間、【炎獄弾】は選王城のテルカタニス宰相の執務室に命中。赤黒い炎をまき散らして爆発する。


「城がっ!」

 しかし、煙の中から脳の上半分が欠けた使い魔王と、その節足に捕まれたカナコが現れて空を飛行してヴァンダルーの横につける。


「お帰りなさい、テルカタニスは生きていますか?」

「生きてますよ。ついさっきジェーンが回収してましたから、今は安全なところにいるはずですよ。でも、おかげで脳蟲君がただの蟲君になっちゃいましたけど」


 そう、何事もなかったかのように会話を交わす二人に六道は【死弾】を腕で薙ぎ払いながら声をかけた。

『ほう、ずいぶんと大事にされているようじゃないか。いや、良いようにされていると言うべきか? 活動を援助する見返りに肉体や精神を変異させられ、利用されている。

 村上を裏切ってもヴァンダルーの手駒にしかなれない。君は所詮、誰かに使われる事しかできない器なのだよ、カナコ君』


「それよりヴァン、ちょっとパフォーマンスが足りないんじゃないですか? せっかくヴィダ信仰やヴィダの新種族やアンデッドの有用性をアピールする絶好の機会なのに。

 ところで、あの腕が妙に肥大した全身鼻男が何か言ってますよ」


 嘲りの言葉を無視され、しかも【魔王の鼻】を両手足や胸部に背中で発動しているのを全身鼻男と評された六道の顔が、分かりやすく苛立ちに歪む。

『キサマアアアアアアア!』

 そして、そのまま激高して右腕全体を【魔王の鼻】、象の鼻のように変形させ、そこから前よりも威力が数段上がった病毒空気砲をカナコに向かって放つ。


「ひぇっ! なんか汚い!」

 そう悲鳴をあげるカナコに届く前に、グファドガーンは【転移門】を開いて病毒空気砲を六道に返そうとした。

「……む」

 しかし、病毒空気砲が【転移門】をくぐろうとした瞬間、【転移門】の魔力が掻き消されて消えてしまった。


『では、役目も終わったので俺が行きましょう』

 そして、カナコをヴァンダルーに渡した使い魔王が病毒空気砲に突進して受け止め、そのまま諸共砕け散った。


「ああ、脳蟲君!」

「いや、あれも俺ですからね」

「でも、まだ袋の中に交換用の眼球がたくさん余ってるんですよ!?」

「それは有効活用しましょう。グファドガーン、【転移門】が消えたのは?」

「おそらく――」


 ヴァンダルー達がそう話している間にも、六道は再び象の鼻と化した腕から病毒空気砲を放とうと、鼻を膨らませた。しかし、ハインツ達が隙ありと見て取ったのか、それとも選王城を攻撃して破壊した事で危機感が増したのか、六道へ再び攻撃を仕掛けた。


「【御使い降臨】! 皆は英霊を降ろせ!」

『邪魔をするな! 似非勇者共め!』

 そうしてできた時間に、グファドガーンは推測を述べた。


「【吸魔の結界】や奴が開発した【吸魔盾】と同じ性質の魔術を、鼻息に仕掛けていると考えられます。……私の魔術を触れただけで消すには、相当な魔力が必要なはずですが……申し訳ありません」

「いえ、謝る事はありません。先ほどから、六道の気配が大きく変わりました。あれを見ていると……食欲が刺激されて堪りません」


 憎い、悍ましい、苛立つ、喉が渇く、臓腑が震える、牙が疼く、あれが欲シイ!

 そんな欲望を、先ほどから急に覚えるようになった。


「何故でしょう?」

『多分、さっき奴が言っていた本能云々が関係あるに違いないッス!』

 ガタガタと震えている五悪の杖から、フィディルグが怯え切った声を出した。


「たしかに、あの時から奴の気配がグドゥラニスにより近づいたように感じます。おそらく、奴に埋め込まれたグドゥラニスの魂の一部が、本能だったのでしょう」

「むう……より危険な状態になっていますね」

「追い詰められた事で新たな力に目覚めるのはお約束ですけど、なんであっちなんでしょうねー」


 口々にそう言うヴァンダルー達が様子を見ている間も、六道はハインツ達と戦い続けていた。ハインツがまだ力を温存するためにベルウッドを降ろしていないとはいえ、御使いは降ろしている。さらに仲間は全員【英霊降臨】を使用した状態なので、【魔王の本能】を全開にした状態とはいえ簡単に蹴散らす事はできなかった。


 ヴァンダルーも、六道が放つ病毒空気砲を【消毒】するのに地味に忙しい。


『くっ、魔物共! 何をしている、【それでも人間の仇敵か! 我に従い戦えっ! 殺せ! 壊せ!】』

 そして苛立ちのまま、非常にシンプルな命令を叫んだ。少し前までなら、何の意味もない叫び声に過ぎなかった。だが今の六道は魔王グドゥラニスの、この世界で魔物を最初に創り出した創造者の気配を発している。


『【そして我が元に参じろ!】』

 本能を刺激された魔物達の咆哮が響き渡り、魔物達の動きがより活発になった。




 その頃上級貴族街では人々はシルキー・ザッカート・マンションに強制救助されるか、自主避難するか、サムに救助されるか、そしてアルクレム公爵家の別邸の地下に避難していた。

『偶然お使いに来ていた私達が魔物を倒している今の内に、避難してくださーい!』

『今は政治を忘れて、生き延びる事を考えてくださいねー! サウロン公爵家の人でも構いませんよー!』


 次々に魔物を屠っているリタとサリアに、アルクレム公爵家に仕える騎士団長は苦笑いを浮かべた。

「気持ちは分かるが、本当にサウロン公爵家の方が来たらどうするつもりだ?」

 エリザベスとその母親のアメリア関連の因縁がもっとも大きな理由だが、元々ヴァンダルー達はサウロン公爵家といい関係とは言い難い。なので、その事を確認すると、リタとサリアはあっさりと答えた。


『ああ、大丈夫です。大使をしているヴィーダルって人は、家臣や使用人の人達も含めて父さんが拉致……保護しましたから』

『サウロン公爵家の人でも構わないというのは、物の例えです』

 どうやら、既にサウロン公爵家はヴァンダルー達に大きな借りを作ってしまったようだ。この事は、後々利用される事になるだろう。何故なら、彼女達は「今は」政治的な事を忘れて、としか言っていないからだ。


「まあ、彼らに同情している余裕はないか。我々もあの方の援護をしなくては」

 騎士団長が部下を率いて援護に向かう先では、一人の若き騎士が戦っていた。彼は刃が炎に包まれた魔剣を振るい、リタとサリアほどではないが魔物相手に善戦して人々の避難を助けていた。


「さあ、お嬢さん、今の内だ!」

「あ、ありがとうございます。名前を伺っても?」

「私はアルクレム公爵家に仕える騎士の一人にすぎません! さあ、行ってくだされ!」


 まだ少年の面影を残している若い騎士だというのに、年寄りぶった口調で話し経験を積んでいる事を思わせる剣捌き。

「まるで『アルクレム五騎士』の轟炎の騎士ブラバティーユ卿の生き写しだ!」

「隠し子と聞いていたが、どうやら私は彼を色眼鏡で見ていたようだ」

「行くぞっ! ブラバティーユジュニアを援護するのだ!」


 その名を、ブラバティーユジュニア。旧スキュラ奪還作戦で亡くなった『轟炎の騎士』ブラバティーユの隠し子……という事になっている、ブラバティーユ本人である。

「ぬおおおおおっ! かかってこい魔物共ぉぉぉ!」

 彼が叫んでいるのは、騎士団長たちの声を掻き消そうとしているからなのかもしれない。




 貴族街と商業区から離れた、街の広場ではジャハン公爵家が所有する宿屋で『烈山盾将』のルダリオが人々を地下の劇場に避難させていた。

「これは……オルバウムの復興には時間がかかりそうだな、ルダリオ」

「今から復興の心配とは、余裕ですね」


 そしてハドロスは避難誘導の陣頭指揮に立っていた。彼は魔物と戦えるほど強くはないが、護衛がいれば今の状況でも生き残る事ができる程度には強い。そして、公爵本人が避難誘導の先頭に立つ事で人々の避難をスムーズに進める事ができた。


 それでも無数の門の向こうから次々に現れる魔物によって、被害は広がりつつある。それまで魔物達は門から出た直後から、自己の判断で動いていた。周囲の状況確認や、別の門から現れた魔物と遭遇して戸惑って動きが止まるなどして、数秒から数十秒の隙があった。

 しかし、六道の命令によって魔物達は門から出た瞬間から周囲に存在する目につく物に対して無差別に攻撃するようになったのだ。


 人的被害はヴァンダルー達によって最低限に抑えられているが、建造物等街の被害は大きくなるばかりだ。

 石畳は踏み砕かれ、建造物は魔物の巨体に押しつぶされて倒壊し、流れ弾が当たって爆発炎上している。


「ジャハン公爵閣下! 避難所は安全ですか!?」

 その時、ある冒険者の一団がそう尋ねてきた。本来なら不敬罪一歩手前の質問だが、ハドロスは冒険者達と彼らが守っている少女の顔を一瞥すると、「もちろんだ!」と力強く答えた。


「我がジャハン公爵家の名と信仰にかけて、この避難所は安全だ!」

「……ありがとうございます、公爵閣下。マクシーム、セレンについていてくれ」

 冒険者の一団は、A級冒険者パーティー『轟く剣戟』。そして守っている少女は、ダンピールのセレンだった。


「レンブランおじさん……頑張って。ちゃんと帰ってきてね!」

「ああ、任せろ!」

 ここにたどり着くまでの間に魔力を使い切ってしまった仲間の魔術師にセレンを預けると、レンブラン達は魔物から人々を守るために再び戦いへ身を投じた。


「……よろしいので?」

「もし避難しに来たら受け入れるよう頼まれている。それに、A級冒険者である彼らは貴重な戦力だ。できれば、彼らをオルバウムに連れてきた『五色の刃』も、避難誘導や魔物退治の方に回ってほしかったが」

「それはご友人の意見ですか?」

「私の意見でもある」


 そう言い合う主従の視線の先では、レンブラン達が戦いに加わるところだった。


「『轟く剣戟』だ! 助太刀させてもらう!」

「【極挑発】! 助かるぜ、俺が惹きつけている間に倒してくれ!」

 避難所近くの門から出てきた魔物と戦っていたのは、六人組の冒険者だった。リーダーらしい盾職の青年に、剣士と盗賊、そして両手に盾を構えた変わった戦闘スタイルの女盾職に、逆に両手に剣を構えた女戦士、そして女剣士と、変わった構成だ。


 だが、その腕はレンブランの目から見てもたしかだった。盾職の青年はファイアジャイアントの蹴りを盾で受けきり、剣士と女剣士がその隙にファイアジャイアントの膝を裏から切断し、倒れたところで首を刎ねる。

 女盾職は両手の盾を鈍器のように使って防御と攻撃を両立させて戦い、女戦士はなんと四刀使いで次々にミノタウロスの首を刎ね、斥候職の青年は魔術のように姿を消しては魔物の背後から急所を貫いている。


 レンブランが助太刀に入ってすぐに魔物達は倒されてしまった。

「助太刀は要らなかったかもな」

「いや、おかげで早く倒せた。その分、他の魔物を倒したり休憩を取ったりできるよ」


 そう言って青年は、懐から取り出したポーションを口に含んだ。そのポーションの色が赤黒く見え、レンブランは奇妙に思ったがそれよりも気になる事があった。

「名前を聞いておきたい。ファゾン公爵領から出て来たばかりで、俺達は君達の名前を知らないんだ」

 それは青年たちの名前を知らない事だった。自分達と互角以上の実力を持っている事は先の戦いから分かったが、そんな実力者の名前が耳に入らないのは不自然に思えたからだ。


「あー、実は俺達も今日オルバウムに来たばかりなんだ! 俺はカシム、あっちの剣士がフェスターで、斥候職がゼノ、そしてカチアさんとガオル、そしてゲルダさんだ」

「そうか。後、そのカチアとガオルは従魔なのか? 首輪はしているようだが……オルバウムのテイマーギルドの首輪じゃないようだが?」


「ああ、これからテイマーギルドに行くところだったんだ! それがこの騒ぎだから、ギルドで審査どころじゃないだろ!?」

「仕方ないよな、街中魔物だらけなんだから! でもきっと、ギルドも大目に見てくれるさ! そう思うだろ?」


 カシムとフェスターの言葉に不自然さを覚えたレンブランだったが、この状況では多少の違和感は些事だと納得して「そうだな」と頷いた。

「ところで、大丈夫か? 顔色が悪いように見えるが……」


「大丈夫、ちょっと疲れているだけさ。じゃあ、俺達は向こうの門から出てくる魔物を倒しに行くから、ここは任せていいか? そうか、ありがとう。じゃあ、お互い生きて会おうぜ」

 ゼノは強引に話を切りあげ、レンブラン達から離れる事にした。


 冥系人種に変異している事や、ゲルダがゾンビである事が知られるとややこしい事になり、ヴァンダルーから頼まれた助っ人としての働きができなくなってしまうからだ。


「しかし、『轟く剣戟』って言ったらB級冒険者パーティーだよな? それに腕利きって呼ばれるなんて、俺達も強くなったよな!」

「フェスター、『轟く剣戟』がB級だったのは何年も前の事だ。俺達が山脈の向こうにいる間に、A級になったんだ」


「やはり、私は無理だったのでは……」

「大丈夫、エンプーサの事は知られていないようだけど、誰も彼もそれどころじゃないようだから」

『カシム君達が冥系人種に変異したおかげで、ゾンビの私も誤魔化しやすいわね』


 そうして、実はまだ冒険者登録すらしていないカシム達は次の戦場へ向かったのだった。




――――――――――――――――――――




名前:カシム

種族:冥系人種(人種から変異!)

年齢:21

二つ名:【大魔王の仲間】(NEW!)

ジョブ:豪棍士

レベル:98

ジョブ履歴:見習い戦士 戦士 重戦士 守護戦士 超重戦士 盾士 棍士 大棍使い 守護聖戦士



・パッシブスキル

体力増強:10Lv(UP!)

生命力増強:10Lv(UP!)

暗視

痛覚耐性:7Lv(UP!)

状態異常耐性:5Lv(病毒耐性を統合!)

金属鎧装備時防御力増強:極大(UP!)

盾装備時防御力増強:大(盾装備時防御力強化から覚醒!)

気配感知:3Lv(UP!)

直感:1Lv(NEW!)

精力増強:2Lv(NEW!)

能力値強化:導き:5(NEW!)

筋力強化:3Lv(NEW!)

高速再生:2Lv(NEW!)


・アクティブスキル

農業:1Lv

棍術:10Lv(UP!)

激盾術:1Lv(盾術から覚醒!)

極鎧術:1Lv(鎧術から覚醒!)

限界超越:3Lv(限界突破から覚醒!)

魔盾限界超越:2Lv(魔盾限界突破から覚醒!)

格闘術:3Lv(UP!)

連携:6Lv(NEW!)

魔鎧限界突破:9Lv(NEW!)

御使い降魔:5Lv(NEW!)

家事:1Lv(NEW!)


・ユニークスキル

ヴァンダルーの加護(NEW!)

ファーマウンの加護(NEW!)




名前:ゼノ

種族:冥系人種(人種から変異!)

年齢:21

二つ名:【大魔王の仲間】(NEW!)

ジョブ:死剣使い

レベル:94

ジョブ履歴:見習い盗賊 盗賊 暗殺者 探索者 短剣使い 暗闘士 追跡者 大盗賊 


・パッシブスキル

気配超感知:2Lv(気配感知から覚醒!)

直感:10Lv(UP!)

暗視

状態異常耐性:5LV(病毒耐性を統合!)

短剣装備時攻撃力増大:小(短剣装備時攻撃力強化から覚醒後さらに覚醒!)

非金属鎧装備時敏捷増強:中(NEW!)

能力値強化:導き:7Lv(NEW!)

筋力強化:1Lv(NEW!)

高速再生:1Lv(NEW!)


・アクティブスキル

短剣殺術:2Lv(短剣術から覚醒!)

弓術:6Lv(UP!)

罠:10Lv(UP!)

気絶:5Lv(忍び足から覚醒!)

解体:7Lv(UP!)

開錠:10Lv(UP!)

投擲術:7Lv(UP!)

鎧術:10Lv(UP!)

暗殺術:10Lv(UP!)

限界超越:3Lv(限界突破から覚醒!)

魔剣限界突破:5Lv(NEW!)

御使い降魔:2Lv(NEW!)


・ユニークスキル

ヴァンダルーの加護(NEW!)

ファーマウンの加護(NEW!)




名前:フェスター

種族:冥系人種(人種から変異!)

年齢:21

二つ名:【大魔王の仲間】(NEW!)

ジョブ:冥獄剣豪

レベル:3

ジョブ履歴:見習い戦士 戦士 剣士 魔剣使い 魔剣士 死剣士 獄剣士 剣豪 大剣豪 聖剣士



・パッシブスキル

筋力強化:5Lv(UP!)

暗視

剣装備時攻撃力増強:大(剣装備時攻撃力強化から覚醒!)

金属鎧装備時防御力強化:極大(UP!)

能力値強化:導き:5Lv(NEW!)

状態異常耐性:1Lv(NEW!)

高速再生:3Lv(NEW!)

殺業回復:1Lv(NEW!)

直感:1Lv(NEW!)


・アクティブスキル

漁業:1Lv

獄剣術:2Lv(剣術から覚醒!)

解体:5Lv(UP!)

鎧術:9Lv(UP!)

限界超越:1Lv(限界突破から覚醒!)

魔剣限界超越:4Lv(魔剣限界突破から覚醒!)

無属性魔術:2Lv

魔術制御:3Lv(UP!)

土属性魔術:4Lv(UP!)

連携:6Lv(NEW!)

家事:1Lv(NEW!)

御使い降魔:5Lv(NEW!)


・ユニークスキル

ヴァンダルーの加護(NEW!)

ファーマウンの加護(NEW!)


次話は12月19日に投稿する予定です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ゼノが【忍び足】覚醒させた【気絶】って紛らわしくないですか? 次にステータスを見る機会があったら「⁇?」ってなりそうな気がします
[良い点] ・ダークアバロン第二形態鼻は有っても華は無し ・誰の役にも立ってない事に気付かないハインツ達 ・ゾンビーナハーレムbyカシム? 今回は以上三点でお送りしております [気になる点] ハイン…
[一言] これはファンアートです。アーリーメリークリスマス! http://imgur.com/a/czaRTmo
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