三百四十五話 もうちょっと謎の教師
投稿が遅れてすみません。
《【魔力常時回復】、【従群超強化】、【魔糸精製】、【生命力増強】、【能力値増強:君臨】、【統血】、【錬神術】、【手術】、【具現化】、【群隊】、【将群】、【操糸術】、【装影群術】、【整霊】、【精神侵食】、【迷宮創造】スキルのレベルが上がりました!》
《【全能力値強化】が【全能力値増強】スキルに覚醒しました!》
六道聖を探している間も、ヴァンダルーは冒険者学校に通っていた。それを苦々しく感じている人物は当然おり、その人物は、自分の感情を率直に言葉にしてぶつける事にした。
「今すぐ卒業するつもりはないのか?」
「正気ですか、メオリリス校長?」
「……君に正気を疑われるとは思わなかった」
メオリリスがため息交じりにそう言うと、ヴァンダルーの動きが数秒止まった。しかし、数秒後に再び動き出した。
「尊敬する校長先生に対して失礼だとは思いますが――」
「いや、信頼とかそういう意味で疑われると思わなかった訳じゃない。それに、実際はそれほど尊敬していないだろう?」
「いえ、尊敬はしていますよ」
自分という異分子とパウヴィナを受け入れる度量、問題がない訳ではないが優秀な講師を揃える手腕と人望、整ったカリキュラム、それに貴族に対する対応。
ヴァンダルーはそれらを総合して校長であるメオリリスに、一定の尊敬を向けていた。自分に彼女のような統率能力、そして組織運営のノウハウや政治力があれば大神殿建設反対運動も、そして世論の前に惨敗した巨大像建設反対運動でも一定の成果を得る事ができるのではないか。そう思うほどだ。
「しかし、俺が卒業するにはまだ単位が足りません。必要な単位を揃えられるのは、早くても今年の九月のはずです」
だが、それとこれとは別だ。冒険者学校は単位制で、必要な単位を揃えなければ卒業する事はできない。それはこの英雄予備校も例外ではない。
「いや、それはそうなんだが……非常時だ。私が手を回せば――」
「校長先生、それは良くありません。制度や手続きは重要です」
「……君に制度や手続きの重要性を説かれるとも思わなかった」
「校長先生、俺は制度や手続きを蔑ろにしてはいません。利用したり、穴を突いたりしますが、それも制度や手続き、ルールがあるからこそできる事です」
ヴァンダルーはテイマーギルドや冒険者ギルド、そしてこの英雄予備校のルール、オルバウム選王国のいくつかの法律を利用して我を通してきた。しかし、ルールや法そのものが存在しなければ利用する事もできない。利用できなければ、逆に「ルールや法律で禁止されていないから、認められているから」という理由でアイゼンやシルキーの存在を街の人々に認めさせる事も不可能になる。
無法の社会というのは、法律と秩序が存在する社会より便利な訳ではないのだ。
「そういう訳で、意味もなく悪しき前例を作る事はありません」
「いや、しかし、六道聖という存在が【魔王の欠片】を使って何か企んでいるのだろう? 私も暴走した【魔王の欠片】と戦い封印した経験はあるが、六道聖が集めさせた欠片の数は十を超えるそうじゃないか。
これが非常時ではなく何なんだ?」
「たしかに非常時と言えば非常時ですが、そこまでしなくても対処できる非常時です」
「やはり非常時じゃないか。なら、私としては学校の事を気にせず対処してほしいのだが……何なら休学でも構わないが?」
「大丈夫です。俺が学校に通い続けていても、通っていなくても、対処は何も変わりません」
「そうは言うが――」
「メオリリス、諦めろ。こいつは卒業するつもりはないそうだ」
校長室にいる三人目の人物、『真なる』ランドルフが同じことの繰り返しになっていた会話に口を挟む。それをきっかけにメオリリスは諦めをつけたらしい。
「……はぁ、ダメで元々のつもりだったが、やはりダメか」
「卒業するつもりなら、自分から言っているだろうからな。だが、本当に大丈夫なのか?」
ランドルフに厳しい眼光を向けられたヴァンダルーは、「もちろんです」と頷いた。
「完全無欠……とはいきませんが、在学していてもいなくても、同じ水準の対処を行う事が出来ます。こうしている今も――」
言葉を途中で切って、ヴァンダルーはランドルフ達の見ている前で、小型の使い魔王を作って見せた。
「「っ!?」」
右手の甲が異様に膨張し、瘤になる。そのまま表面の皮膚が硬質な外骨格に変化し、複眼が内側から押し出されるようにして出現する。そして瘤の上部が裂けるとトンボに似た形状の羽が生えたかと思うと、そのまま飛び上がってヴァンダルーから分離した。
『このように俺の分身、使い魔のようなものが仲間と離れて行動しています』
「なので、俺が講義や実習を受けていても、変わりません」
使い魔王という名称を故意に黙ったまま話を進めるヴァンダルーに、メオリリスとランドルフは顔色を悪くしつつも納得した。
「なるほど、【遠隔操作】と【並列思考】スキルで、分離した体の一部を操っているのか」
「分かりますか?」
「ああ、似たような事ができる魔物を見た事がある。まさか、人間に同じことができるとは思わなかったが」
実際には、【群体操作】と【群体思考】スキルだが、ランドルフが口にしたスキルから覚醒したスキルなので、ヴァンダルーは訂正せずに話を進める事にした。……これは虚偽ではなく、円滑に会話を継続するためだと思いつつ。
「しかし、完全無欠とまではいわないのだな」
「俺も、死人や怪我人を一人も出さない、とは言えませんからね。後、建造物の被害も」
「誰もそこまで求めてはいない。お前の正体が何なのか知らないが、少なくともオルバウム選王国の治安や民に責任を負う立場じゃないのは確かだからな。
まあ、制度上はアルクレム公爵領の貴族の子弟ではあるが……」
「首謀者はテルカタニス宰相閣下だ。名誉伯爵の子弟に責任を負えと言うのは、いくら何でも無理筋だ」
ヴァンダルーとダルシアから、六道聖とその手足となって動いているテルカタニス宰相について話せる部分だけだが打ち明けられ、協力を求められたメオリリスとランドルフは、迷わず協力を約束した。
テルカタニス宰相の、【魔王の欠片】製の武具を採用したいという提案はメオリリスの耳にも届いていたし、二人はヴァンダルーがただ者ではない事を知っていた。さらにヴァンダルーは協力を要請する時アルクレム公爵とジャハン公爵の手紙を持っていた事で、疑う余地はなかった。
その時点で、メオリリスとランドルフはオルバウムが壊滅状態になる事を覚悟した。どんなに被害を小さく抑え込むことができたとしても、選王城は壊滅。周囲の重要施設や上級貴族街も被害は免れないだろうと思った。
それだけ、危険人物が大量の【魔王の欠片】を使った陰謀を企んでいるという言葉のインパクトは大きかった。
暴走しているのが、【魔王の欠片】一つならランドルフが動けば確実に対処できる。一つの欠片が別々の場所で一斉に暴走しても、オルバウムにはランドルフ以外にもメオリリスのようなA級冒険者以上の実力者が存在している。死傷者は多数出るだろうが、街全体がどうにかなるほどの被害は出ないだろう。
しかし、複数の【魔王の欠片】が融合した状態で暴れだしたらどうなるか……。二つや三つなら、ランドルフは暴走した欠片の宿主を倒し、封印した経験がある。だが、軽く十を超える数となると未知数だ。
下手な邪神悪神が復活するよりも強大な敵となりえると考えるべきだろう。
「メオリリス校長先生、ダンドリップ先生、改めて協力感謝します。数日中には六道がどこに潜伏しているのか、探し出すための準備が整うのでそこで何か起こるかもしれません。
その前には連絡しますので、よろしくお願いします」
ヴァンダルーはそう言うと、作ったばかりの使い魔王を懐に入れて……二人に見えないようにして吸収。やはり、慣れていない人の前で作るのは止めよう。そう思いながら、メオリリスの執務室から退室した。
「ランドルフ」
「分かっている。ヴァンダルーが作って見せた使い魔、あれは【魔王の欠片】でできたものだ」
ランドルフは、ヴァンダルーが作った使い魔王が【魔王の欠片】でできている事を見抜いていた。通常の使い魔……魔術師が魔力や触媒などを用いて作る疑似生命体や、通常の生物に五感を共有し指示に従うよう細工するなどした存在とは、使い魔王の存在感は違いすぎた。
「だが、あれは今まで俺達が見てきた暴走している【欠片】とは全く違う。暴走している【魔王の欠片】は、例えるなら迷子のガキだ。パニックに陥って親……他の【欠片】を探して叫んで暴れまわる。
それに対してヴァンダルーが見せた【魔王の欠片】は、暴走していなかった。落ち着いていて、何も探していない」
ランドルフは、今まで見た暴走状態にあった【魔王の欠片】とヴァンダルーが作った使い魔王を比べて、そう感想を述べた。
「もっとも、私見だから根拠はないが。もしかしたら、俺が知らない【魔王の装具】でも使っているのかもしれん」
「いや、ランドルフ、そうではない。私が聞きたいのは、ヴァンダルーにいつ自分がダンドリップではなく、『真なる』ランドルフだと打ち明けるつもりなのか、という事なのだが?」
「…………」
メオリリスの問いに、ダンドリップに変装したままのランドルフは視線を彼女からすっと逸らした。そう、先ほどまでこの部屋にいたヴァンダルーやその仲間たちは、彼の事をまだ「ダンドリップ先生」だと思い込んでいるのだ。
「……俺は、生徒達が自力で俺の変装を見抜く時を待っているだけだ。俺から名乗り出ては、生徒達のためにならない」
「ランドルフ、名乗り出ない理由を後付けで言うのは見苦しいぞ」
出まかせを即座に否定されたランドルフはしばし押し黙った。
「……別に正体を黙ったままでも、支障はないだろう。タッカード・アルクレム公爵やハドロス・ジャハン公爵が、俺の事をヴァンダルーに言わないのも、必要がないからに違いない」
ヴァンダルーと非公式な同盟関係にある両公爵は、ランドルフと面識がある。特に、アルクレム公爵とは約一年前に会っているので、『ダンドリップ先生』の顔を見ればその正体に気がつくはずだ。
「いやいや、支障や必要性の有無はともかく、公爵達は単に知らないか、自分からお前の事を言うのを避けているだけだろう。お前に配慮して」
しかし、ランドルフの言い分には無理があった。両公爵は、たしかにランドルフの顔や彼と連絡をつける方法も知っている。
しかし、ランドルフが今何処にいるのか知っているか分からない。英雄予備校で働いている臨時講師のダンドリップの名前も顔も知らなければ、ランドルフと同一人物だと見抜く以前の問題だ。
もちろん、調べようと思えば調べられるだろう。ヴァンダルーについて調べていたジャハン公爵なら、気がついているかもしれない。
だが、気がついていたとしても、公爵達はランドルフ自身が自分の事を吹聴されるのを嫌う事を知っているため、ヴァンダルーに対してはっきりと教えていない可能性がある。
「いや、俺に配慮していたとしても、必要があると思えば言うだろう。オルバウムの存続に関わる事態だぞ」
「そこまでは知らん。本人に聞け。だが、仄めかしてはいるのかもしれないぞ。ヴァンダルーに、『通っている学校の先生にも頼ってみたらどうか。たとえば、担任のダンドリップ先生とか』と言ったかもしれない」
「だったら、気がついてもいいと思うが。……もしかして、あれは気がついていて俺から名乗るのを待っているのか?」
「そんな素振りはまったく感じなかったが……本当に気がついていないのだとしても、自分から言うべきだろう。
長年神殿と関わらないようにしてきたお前としては、複雑だろうが」
ランドルフは冒険者を引退しているため秘密主義だが、それ以上に無神論者……神や神殿に関わるべきではないと考えている男だ。彼は神に祈らないし、神の教義に従わない。それは『法命神』アルダだろうと、エルフの母であるペリアだろうと、そしてヴィダだろうと同じだ。
だから、ヴィダ原理主義を掲げるヴァンダルーは本来なら距離を取りたい人物だ。
「別に神に祈っている連中を憎んでいる訳でも、嫌っているわけでもない。自分の祈る神の教義を守る事を他人に強制する輩は問題外だが、奴らがそうじゃないのは知っている。
ただ、後々面倒な事になると分かっているから、二の足を踏んでいるだけだ」
街の危機のためにランドルフが立ち上がったと人々に知られても、その場では何も起きないだろう。しかし、事態を収拾した後になれば、彼にとって面倒な事を言い始める者が出てくる。それも、選王国で権力や財力を持つ者からだ。
『真なる』ランドルフが、ヴィダ原理主義を掲げるヴァンダルー、つまりザッカート名誉伯爵家についた。そう言いながら政治的に動くのだ。
オルバウムという大都市の危機、そして選王国全体の危機になりかねない時に何を言っているのかと思うかもしれないが……ヴァンダルーが被害を小規模に抑えるほど、この予想は現実味を帯びてくる。
「政治の面倒さは私も知っている。しかし、秘密にしたままだと予想外のタイミングでばれて、どうしようもなくなるかもしれないぞ。前もって少人数にだけ明かしておき、正体を隠すのに協力を得られるようにするべきだろう」
「はぁ……たしかに、お前の言う通りだ。だが、ヴァンダルーに正体を明かす前に、筋を通したい。偽って教えを受けた事を、先生に詫びてくる」
「あー、あの、カナコ先生か。ジャハン公爵家やアルクレム公爵家、後テイマーギルドが劇場を造っており、その劇場のこけら落としで公演する予定の。
ランドルフ、もしかしてとは思うが、そのカナコ先生に惚れているのか?」
「そんな訳がないだろう。俺に娘がいるとしたら、カナコ先生はその娘より年下だぞ」
エルフであるランドルフとメオリリス、ダークエルフ(という事になっている)のカナコの年齢は外見からは分かり難い。しかし、エルフやダークエルフ同士だと何となく推測できる。
ランドルフの感覚では、カナコは遥か年下という認識で、尊敬はしているが異性としては認識できないのだった。……実際には祖父と孫でもおかしくない程年齢が離れているのだが。
「そうか。変な事を聞いたな」
「いや、自分でも入れ込んでいる自覚はある。誤解させてすまなかったな。では……次の講義があるから、失礼する」
そう言いながら退室するランドルフの背に、メオリリスは声をかけた。
「もしかすると、カナコというダークエルフは【導士】かもしれないな。なら、お前が入れ込むのも分かる気がする」
「音楽の導士か。もしそうなら、全力で力を貸すのもいいかもしれないな」
その頃、そのカナコ先生はテイマーギルドが所有する市街地の倉庫、その倉庫の地下に作られたという事になっている、『劇場』にいた。
「朝の内にだいたい作ったと言っていましたけど、本当にだいたいしか作ってないですねぇ」
広大だが何もなく、ガランとした空間にカナコの声が響く。
「まあ、だいたい作れるだけで充分すごいですけど。地面を一から掘って作るよりはだいぶ早くなりそうですし。でも、内装を整えないといけないので、こけら落としができるのは、ヴァンとパウヴィナちゃんが卒業する頃になりそうですね」
「本当に公演するつもりなのか?」
カナコの言葉に、テイマーギルドのマスター、オルロックは驚いて聞き返した。彼の従魔であるクリスタルエルダーベア……体からクリスタル状の結晶をはやした白熊も驚いたようにビクッとしている。
「劇場というのは、いざという時の避難所を作るための名目だと思っておったが……」
ランドルフ達のように、六道聖について教えられたオルロックは、六道聖が集めた【魔王の欠片】が暴走するなどして大規模な被害が出る場合に備えて、避難所を作る事に協力する事を約束した。
現時点でテルカタニス宰相が今後も六道と接触するかは謎だが、宰相に察知されるのは都合が悪い。だから避難所という本来の目的を隠すために、劇場を作ると発表したのだと思っていた。
これまでも「人々の従魔に対する理解を深めるため、従魔に芸をさせる劇場や見世物小屋を運営してはどうか」という意見は度々出ていた。
だいたいは予算不足と文官達との折衝、そして「従魔は相棒だ。相棒を見世物にするなんてとんでもない!」という反対派の意見と、実際に建てた後運営を続けられるのか疑問視したオルロック自身の意見で立ち消えてきた。テイマー達の数は少なく、従魔に対する理解を深めるという目的を考えればただの犬や猿、鳥ではなく魔物の従魔を使う事が求められた。そして、テイマー達は個人単位の商売ならともかく、見世物小屋や劇場を運営できる程の知識とノウハウを持つ者がいなかったからだ。
だからオルロックも、本気で劇場を運営するつもりはなかった。
「もちろん公演しますよ。もったいないですし」
「正気か!? ここはダンジョンだぞ!?」
そう、ここはヴァンダルーが作り上げたダンジョンだ。【ゴーレム創成】で地面をくり抜いて作った地下施設ではなく、倉庫の一角に【迷宮創造】で入り口を作った迷宮なのである。
通常の工事を行って避難所を作るのでは、工期の問題でとても間に合わない。それに、避難しなければならない脅威は自然災害ではなく、六道聖だ。『オリジン』の時のように死の衝撃波を放ったら、どんなに堅牢な建造物でも防げない。
だが、ダンジョンならヴァンダルーがいれば約一時間で作れる。広さは必要だが、難易度は低く抑え、魔物の出現する場所と発生率を操作し、さらに人を襲わないよう命令して安全な階層を確保する事ができる。
しかも、外部で起きた事から遮断される。外で地形が変わるような大爆発が起きようが、山を割るような斬撃が乱舞しようが、体長百メートルの真なる巨人や龍が乱闘しようが、ビクともしない。
六道聖が【魔王の欠片】を何らかの方法で使いこなす等した場合は、ダンジョンにも何らかの影響を及ぼせるかもしれない。しかし、それでも地上のどこよりも安全だ。
そのため、ヴァンダルーは劇場型のダンジョンを創ったのである。
……事が終わった後も暴走しないよう管理し続ける必要はあるが、難易度はE級なので難しくはない。オルロックや他のギルド所属のテイマーの従魔を交代で配置すれば、十分間引くことができる。
もちろんばれたら問題視する輩は出てくるだろうが、オルロックはその場合ギルドマスターである自分が責任を取るという形で引退し、事を収められるようにしようと思っていた。
しかし、本当に劇場として運営する事になるとは考えていなかったのだ。
「もちろん、あたしは正気です。あ、でも法律的な諸々の条件を記した契約書はまだなので、交渉は可能ですよ」
「いや、そういった事を言いたいのではなくて……」
「そうですねぇ、たしかに出入口が一つしかないのが不便ですね。お客さんも、大道具や舞台装置も同じ出入口を使わないといけませんから。特に、裏口がないのが辛いですね」
「いやいや、機能的な問題点があると言いたいわけでもないのだが」
「ああ、安全性の事なら今更ですよ。問題があるなら、避難所として使えないじゃないですか」
「たしかにそれはそうだが、非常時に短期間だけ使うのと、劇場として使い続けるのとは違うじゃろう!? それに、長期間運営し続けたらダンジョンである事がばれてしまう!」
「安全性に関しては、こうして一緒に確認しているじゃないですか。ダンジョンである事がばれる事に関しては……そんなに気にしないでいいと思いますよ」
オルロックがダンジョンを避難所にするとヴァンダルーから聞かされた時……そもそもダンジョンを創る事ができるという事自体信じ難かったが……条件を出した。それが安全性の確認である。
そのため、彼はこうしてカナコと共に様子を見に来ているのだ。念のために、自身の従魔の中で現在もっとも戦闘に長けた、ランク6のクリスタルエルダーベアを連れて。
カナコに指摘されて冷静になり、その事を思い出したオルロックは「むっ、たしかに」と納得した。
「安全性については納得したが、ばれても気にしなくていいというのは?」
「この件がどう収束するかについてはまだ決まっていませんが、どんな形になってもテルカタニス宰相は失脚するからです。
宰相はアルダ神殿と太いパイプを持っていますから……」
「なるほど。宰相と同じ選王領の貴族達やアルダ神殿の発言力も落ち、代わりにヴィダ神殿の、そしていち早く事態に対応したアルクレム公爵やジャハン公爵の発言力が増す訳か」
そうなると、ダンジョンを町中に作りそれを利用した事を問題視する声を封殺するのはたやすいという事だ。
「今回の件は、引退する良いきっかけになると思ったのだが……しばらくは現役続行か」
真意はともかく表向きには、「劇場を開く!」と言った直後に健康上の問題もなくこけら落としも終わっていないのに引退するのは、無責任が過ぎるだろう。
「Vクリームって要ります?」
「あの毛生え薬か。儂はハゲではないが……また融通してもらおうかの」
その数日後、準備は整っていた。
城の、あらゆる隠し部屋や隠し通路まで書き込まれた見取り図の制作も終わり、十分な数の霊、使い魔王、そしてインプマウスも揃った。五悪の杖も持っている。
そして、関係者への連絡も終わっている。
《選択可能ジョブ 【堕武者】 【蟲忍】 【蝕呪士】 【創造主】 【タルタロス】 【荒御魂】 【冥群砲士】 【魂格闘士】 【冥獣使い】 【虚影士】 【バロール】 【アポリオン】 【デモゴルゴン】 【魂喰士】 【神喰者】 【ネルガル】 【羅刹王】 【シャイターン】 【蚩尤】 【ウロボロス】 【ルドラ】 【血統者】 【魔電士】 【陰導士】 【ジャガーノート】 【冥界神魔術師】 【狂筋術士】 【アポピス】 【アザトース】 【饕餮】 【導主】 【転導士】 【霊導士】 【虚界神魔術師】(NEW!) 【神霊理士】(NEW!) 【万魔殿】(NEW!) 【冥魔王】(NEW!)》
「【冥界神魔術師】を選択」
新しく出現した【冥魔王】ジョブから目をそらしながら、分かりやすく強くなれそうなジョブを選択。
《【冥界神魔術】、【魔糸精製】、【魔術精密制御】スキルのレベルが上がりました!》
・名前:ヴァンダルー・アーク・ヒルウィロウ・ソルダ・ザッカート
・種族:ダンピール(母:女神)
・年齢:13歳
・二つ名:【グールエンペラー】 【蝕帝】 【開拓地の守護者】 【ヴィダの御子】 【鱗帝】 【触帝】 【勇者】 【大魔王】 【鬼帝】 【試練の攻略者】 【侵犯者】 【黒血帝】 【龍帝】 【屋台王】 【天才テイマー】 【歓楽街の真の支配者】 【変身装具の守護聖人】 【女神の解放者】 【巨人帝】
・ジョブ: 冥界神魔術師
・レベル:3
・ジョブ履歴:死属性魔術師 ゴーレム錬成士 アンデッドテイマー 魂滅士 毒手使い 蟲使い 樹術士 魔導士 大敵 ゾンビメイカー ゴーレム創成師 屍鬼官 魔王使い 冥導士 迷宮創造者 創導士 冥医 病魔 魔砲士 霊闘士 付与片士 夢導士 魔王 デミウルゴス 鞭舌禍 神敵 死霊魔術師 弦術士 大魔王 怨狂士 滅導士 冥王魔術師 ペイルライダー 混導士 神導士 神滅者 虚王魔術師 神霊魔術師 ダンジョンマスター クリフォト デーモンルーラー 整霊師 魔杖創造者 匠:変身装具
・能力値
・生命力:928,349+(64,983) (13,382UP!)
・魔力 :16,165,047,521+(16,165,047,521) (269,236,276UP!)
・力 :90,341+(2,257) (6,104UP!)
・敏捷 :83,544+(2,088) (4,459UP!)
・体力 :95,696+(2,392) (6,554UP!)
・知力 :122,815+(3,070) (7,655UP!)
・パッシブスキル
超力:2Lv
超速再生:8Lv
冥界神魔術:6Lv(UP!)
状態異常無効
魔術耐性:10Lv
闇視
末那識誘引
詠唱破棄:10Lv
導き:末那識
魔力常時回復:10Lv(UP!)
従群超強化:10Lv(UP!)
猛毒分泌:牙爪舌:9Lv
身体無限伸縮:舌
無手時攻撃力増強:大
身体超強化(髪爪舌牙):2Lv
魔糸精製:4Lv(UP!)
魔力増大:10Lv
魔力回復速度上昇:10Lv
魔砲発動時攻撃力増強:大
生命力増強:7Lv(UP!)
能力値増強:君臨:2Lv(UP!)
能力値強化:被信仰:10Lv
能力値強化:ヴィダル魔帝国:5Lv
自己再生:共食い:4Lv
能力値増強:共食い:4Lv
魂纏時能力値増強:小
殺業回復:7Lv
自己強化:殺業:7Lv
杖装備時魔術力強化:大
全能力値増強:小(全能力値強化から覚醒!)
・アクティブスキル
統血:6Lv(UP!)
限界超越:10Lv
ゴーレム創成:9Lv
虚界神魔術:1Lv
魔術精密制御:6Lv(UP!)
神霊理:1Lv
錬神術:4Lv(UP!)
魂格滅闘術:8Lv
同時多発動:8Lv
手術:10Lv(UP!)
具現化:7Lv(UP!)
群隊:5Lv(UP!)
超速思考:7Lv
将群:4Lv(UP!)
操糸術:10Lv(UP!)
怨投術:2Lv
叫喚:9Lv
神霊魔術:6Lv
魔王砲術:8Lv
装影群術:9Lv(UP!)
欠片限界超越:4Lv
整霊:4Lv(UP!)
鞭術:4Lv
霊体変化:雷
杖術:4Lv
高速飛行:3Lv
楽器演奏:4Lv
舞踏:2Lv
筋術:4Lv
魔闘術:3Lv
・ユニークスキル
神喰らい:10Lv
異貌多重魂魄
精神侵食:10Lv(UP!)
迷宮創造:8Lv(UP!)
大魔王
根源
神敵
魂喰らい:10Lv
ヴィダの加護
地球の神の加護
群体思考:9Lv
ザンタークの加護
群体操作:9Lv
魂魄体:5Lv
魔王の魔眼
オリジンの神
リクレントの加護
ズルワーンの加護
完全記録術
魂魄限界突破:5Lv
変異誘発
魔王の肉体
亜神
ボティンの加護
ペリアの加護
体内世界
・呪い
前世経験値持越し不能
既存ジョブ不能
経験値自力取得不能
そしてジョブチェンジも終わった。
アメリア達元精神治療院の患者達や、吸収した暗殺組織のメンバーの一部の治療で、【整霊師】ジョブがカンスト。そして次に選んだ【魔杖創造者】と【匠:変身装具】は、完成まで時間がかかっていた『月の巨人』ディアナや、エリザベスやマクト先輩達の変身装具を完成させたら、次々にカンストした。
「では、ジョブチェンジも終わった事ですし……六道捜索作戦を開始します」
集まった霊とインプマウスがジョブチェンジを終えて現れたヴァンダルーの号令を受け、群れを成して選王城内部へ飛び出した。
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〇ジョブ解説:整霊師
対象の霊体を整える(変形させる)ジョブ。自身の霊体で対象の霊体の形を変え、対象自身が操作できるようにすることができる。
無機物でできた義肢に霊体を宿して自身の一部のように操れるようになり、霊体のまま肉体から出して第三の腕や足のように使う事ができるようになる可能性が高い。
ヴァンダルー以外がこのジョブに就く事は難しいが、ヴァンダルーから上記の治療を受けた者が霊体の操作技術をさらに高め、他者に施術ができるようになればこのジョブに就く事ができるかもしれない。
〇ジョブ解説:魔杖創造者
魔杖、つまり変身装具を作り出す職人を表すジョブ。
〇ジョブ解説:匠:変身装具
変身装具を制作する技術が、匠の域にまで至っている事を現すジョブ。人の形から大きく逸脱した対象……例えば体長約百メートルの真なる巨人用変身装具も作る事ができる。
次話は11月24日に投稿する予定です。




