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四度目は嫌な死属性魔術師  作者: デンスケ
第十三章 選王領&オリジン編
382/515

三百九話 新たなる導士の目覚めと、迫る圧倒的な戦い

ロドコルテのシーンが以前投稿した閑話44と被っていたので、修正しました。

 ザディリスは深く、深く思い悩んでいた。

「何が正解なのかは、はっきりしている。最適の答えは、最初から出ているのじゃ……出ているのじゃが……」

 ジョブチェンジ部屋から出た彼女は、小さな肩を落として深く溜め息を吐いた。


 ザディリスが今現在就いているジョブは、ヴァンダルー達が推測している通り、既に百レベルに達していた。だが、ジョブチェンジ可能なジョブが一つしか表示されず、そのジョブに就きたくないが故にジョブチェンジを先延ばしにていた。

 何とか、他のジョブに就く方法は無いかと、悩みながら。


 神頼みは意味が無いのは、分かっている。

 ステータスを司る神々は、この世界のあまねく全ての存在に、魔物やアンデッドにまでステータスの恩恵を与えると同時に、この世界の全ての存在からの祈りは、全く受け付けない。

 そんな存在である。


 だから自力で解決しようと、【無属性魔術】を中心に使ってスキルのレベルを上げようとしたり、これまでは習得しようという発想すら無かった【精霊魔術】に関してこっそり学んでみたり、いっそ武術でも覚えようかと武器を振り回してランク3ぐらいの魔物を追いかけ回してみたり……。


 そうした数日の努力は実らず、ジョブチェンジ可能なジョブは相変わらず一つだけしか表示されなかった。

「これ以上は、時間をかけてスキルのレベルを上げるか、新しいスキルを獲得しなければ、意味が無いからのぅ。儂ならよっぽど苦手な分野でなければ、数か月もあれば確実にスキルのレベルを上げ、もしくは新しく獲得する事が出来るじゃろうが……儂の我儘でそこまでするのは気が引ける」


 ヴァンダルーと出会ってから、ザディリスは幾度もランクアップを繰り返し、幾つものジョブに就いてきた。そのため積み重なったスキル補正は、並大抵のものではない。

 魔術なら、【精霊魔術】のような専門性の高いスキルでも、一カ月程の時間をかければ手に入られるだろう。さすがに、既に上位スキルに覚醒している【光姫魔術】スキル等のレベルを上げるには、苦労するだろうが。


 だからこそ、ザディリスはこれ以上他のジョブに就く事を諦めずにいる事を躊躇った。何故なら、明らかにジョブチェンジをして、努力をした方がスキルのレベルは上がり易いからだ。

 それに、勇者ベルウッドを『蒼炎剣』のハインツが復活させたらしいという凶報がもたらされてから、ヴァンダルーはレベリングに熱心になり、他の仲間も真面目に強くなろうとしている。


 それなのに、自分だけ我儘をし続ける事が許されるのだろうか?

「あのジョブは、当たれば能力値の上昇率は高く、しかも確実に新しいスキルを獲得する事が出来る。そして、条件に合う味方を強化する事も可能……実害のあるスキルを獲得するとか、このジョブ以降のジョブチェンジに実害のある影響が出る事はないじゃろう」


 考えれば考える程、他に候補が無いのなら就く事を躊躇う理由が見つからないジョブだ。ザディリスも、ある一点さえ無ければ、喜んでジョブチェンジしただろう。

 それぐらいこの世界では稀有で、特別視されているジョブなのだ。


「……いや、やはり坊やかカナコに相談してからにするべきじゃな!」

 だが、この時もザディリスは自力で踏ん切りをつける事が出来ず、そう先延ばしにする口実を口にすると、ジョブチェンジ部屋の前から立ち去ろうとした。


「それは奇遇ですね。では、早速相談に乗りましょう」

「ヴァンもこう言っていますし、胸の内も腹の中身も全部打ち明けちゃいましょう!」

 しかし、ザディリスが身を翻した先には、ヴァンダルーと笑顔のカナコが並んで立っていた。


「い、いつからそこに!?」

「ええっと、『いや、やはり坊やかカナコに相談してから』の時ですね。接近を察知され、逃げられる事がないように足音を【消音】しました」

「音も無くすーって動くものだから、すぐ横で見ていなければお化けかと思うところでした」


 前日にザディリスは悩みを聞き出そうとしたカナコから逃げているため、同じ轍は踏まないように工夫したようだ。

 はっとしたザディリスが振り返ると、廊下の反対側にはヴィガロとバスディアが並んでおり、退路を塞いでいた。


「は、挟まれた!?」

「ザディリス、諦めろ。この包囲から逃げる事は出来ないぞ!」

「ヴィガロ、促すのは降伏ではなく悩みの告白だぞ。だが、一人で悩んでいても問題は解決しないのは、母さん自身も分かっているのだろう?」


「ぬぅ……仕方あるまい。出来れば儂の悩みを悟られぬように、さりげなく相談を持ちかけたかったのじゃが」

「「「「それは無理(だ)」」」」

 声を揃えて否定されたザディリスは、再度呻いてから悩みを打ち明けた。


「実は……今就いているジョブが百レベルになったのじゃが、ジョブチェンジ可能なジョブが一つしか出ないのじゃ」

「なるほど。トゥループリンセスとか、魔法極姫とか、そういった名称のジョブしか出なかったと?」

「カナコ、幾ら母さんでもそこまでではないと思うが……特に、トゥループリンセスって、つまり普通の姫の事だろう?」


「いや、カナコの推測はそれほど外れておらん。実は、そのジョブは、【姫導士】というジョブでな……」

「姫……導士!?」

 ザディリスが告白したジョブの名称に、その場にいた全員が驚いた。ヴァンダルーの背後の空間に潜んでいたグファドガーンでさえ、驚きのあまり姿を現してしまう程の衝撃だった。


「本当に、姫導士なのか? 冗談や見間違い、夢でもなんでもなく?」

「何と言えばいいのか……本当に呪いなんじゃないかってぐらい、姫が極まってますね」

「導士か! 凄いぞ、ザディリス!」

 驚愕と困惑の混じった顔つきのバスディアとカナコに、導士になれる事を賞賛するヴィガロ。


「すぐ、皆に伝えよう! ヴァンダルー、カナコに続いて三人目の導士誕生を、祝ってくれるぞ!」

「ええいっ、そうなるから悩んでいたというのに!」

 ザディリスは、予想通りの反応を見せるヴィガロに対して頭を抱えて叫んだ。


 実際、導士系ジョブに就く者が出るのはめでたい事だ。英雄が一人だけではなく、導士とその仲間や近しい者達と複数の英雄が誕生するのだから。

 国内に存在する魔境やダンジョンと共存するしかないこの世界では、英雄の存在価値が高いのだ。


 だが、ザディリスは姫導士として有名になりたくないし、歴史に名を刻みたくないので、祝わないで欲しいのだ。

「誰にも言わず、こっそりジョブチェンジする事も考えたのじゃが……【姫導士】ジョブが導士の名に違わぬジョブなら、儂以外にも影響が大きい。じゃから、絶対にばれると思ったのじゃ」


「たしかにそうですね。これまでも、姫や魔法少女のジョブが出た人は何人もいましたが、導士になれば倍増してもおかしくありませんし」

「今まではヴィダル魔帝国の者だけでしたが、導士になればアルクレム公爵領でレッスンを受けている者達からも、姫や魔法少女が出てもおかしくないかと」


 ヴァンダルーとグファドガーンがそう言うと、ザディリスは「やはりか」と肩を落とした。

「しかし、何故【姫導士】なんてふざけたジョブが出たのじゃろうか? 導士については少し聞いたが、あれには独自の思想やら文化やらが必要なのじゃろう? なのに、何故姫……?」


 導士ジョブが現れるには、今までにない独自の思想を持ち、その思想や思想に基づく文化を広める事が必要とされる。かつての勇者達やヴァンダルー、そしてカナコが導士に目覚めたのは、彼等が異世界から来た存在であるから。この世界にとっては、新しい思想や文化の持ち主であり、それをこの世界の人々に訴え、広めようとしたからだ。


 しかし、ザディリスは純然たるこの『ラムダ』世界の存在である。

 もちろん、この世界の住人でも独自の思想を持つに至り、導士ジョブに就いた者は歴史上何人もいる。しかし、ザディリスには独自の思想やそれを広めた覚えはなかった。


「やはり、儂が何か勘違いしているのじゃろうか? それとも、ステータスの神々の手違いかもしれん。坊やが今まで就いたジョブを顧みると、ふざけているのかもしれぬが」

「それは、やや否定し難いですが……ザディリスに【姫導士】が現れた事は、俺は不思議には思いませんよ。もちろん、真剣に」


 神まで疑い始めたザディリスに、ヴァンダルーはそう言って驚かせた。

「それは本気か、坊や?」

「はい。まず、ザディリスは魔法少女や姫と名のつくジョブ、種族について広める事に関しては、カナコより熱心です。カナコは広い意味で歌やダンス、アイドルというジャンル……文化を広める事に熱心ですが、魔法少女や姫を広める事に関してはザディリス程ではありません」


「たしかに……変身装具を広めるのはあたしよりザディリスの方が熱心ですよね。色んな人の装具を作るようにヴァンに働きかけるのに協力してくれますし。そう言えば、装具の玩具を作るようヴァンに提案したのもザディリスでしたね」


「あと、魔法少女についてモークシーの町の子供達に質問を受けた時は、毎回丁寧に説明していたな。実際に振り付きで変身したり、魔術を使って見せたり」

「あっ、それにあたしはその場にいなかったんですけど、『魔法ではない、魔術だ! お前達は魔術少女だ!』って因縁を付けに来た魔術師ギルドの人に論争を挑んで、ファンに変えちゃった事があるみたいですよ!」

 ヴァンダルーの説明に思い当たる事があるのか、カナコとバスディアが代わる代わる話し始めた。


「我はモークシーについて行かなかったので知らなかったが……二人の話を聞くと、『姫』や『魔法少女』がどんなものか、ザディリスが最も積極的かつ熱心に広めようとしているのが分かるな」

「なっ!? 待て、ヴィガロ! それは誤解じゃ!」

 ヴィガロまで重々しく頷いたのを見て、このまま姫導士になるのもおかしくないと、皆に納得されてはたまらないとザディリスは慌てて否定し始めた。


「たしかに、カナコとバスディアが言った事は全て事実じゃ! 儂にも、覚えがある!

 だが、それは全て儂が『魔法少女』である事が定着せぬように、そして『姫』とジョブや種族につく状態から脱却するためじゃ! そのような不純な動機で、導士と認められるはずがない!」

 拳を握ってそう力説するザディリス。


「いえ、認められるんじゃないですかね」

「認められると思いますよ」

 しかし、導士ジョブ経験コンビはそう答えた。


「ステータスを司る神々が、どういう基準でジョブを発現させるのかは分かりません。『時と術の魔神』リクレントに訊いても、『本人の資質による』としか分からないそうですし。

 でも、そこまで動機を重視しているとは思えません。重視していたら、自己の幸福実現やそのための復讐が動機の俺が導士になる事もなかったでしょう」


「あたしだって、自分がやりたいからやっているだけですからね。そしたら、思いの外戦闘でも役立つジョブが出て、スキルを獲得や覚醒しただけで。

 なので、『何故、導士ジョブが出たのか』は思い悩まなくていいと思いますよ」


「むぅ……そういうものか。しかし、それなら【姫導士】になった後、姫と名のつくジョブしか出てこないとか、プリンセス以外の種族にランクアップ出来ないとか、そうした事にはならないのじゃろうか?」


「それはさすがに答えかねますけど、多分、【姫導士】が原因でそういう事にはならないと思いますよ」

 ヴァンダルーの、暗に「【姫導士】になってもならなくても変わらないのでは?」という言葉に、思わず半眼になるザディリス。


「そうじゃ、忘れておったが坊やは儂に協力はしてくれても、微妙に同志ではなかったのじゃったな」

「可愛いし、ジョブや種族として優れているので良いのではないかと、以前から思っていますね。勿論、ザディリスの意思は尊重しますし、応援もしますが」

「うわ、一番理解から遠いタイプじゃ。主張や意見をぶつけ合う事もないから、微妙なすれ違いがそのままになる感じじゃ」


「まあまあ、ヴァンの意見はさておいて……【姫導士】になった後、心配が現実になったら、ヴァンに解決して貰えば良いじゃないですか」

「解決って、俺もジョブを司る神々には接触できませんよ」


 もし接触できるのなら、ステータスのジョブ履歴の欄に並ぶ字面の悪いジョブをどうにかしてもらって……いないかもしれない。実際に就いてみると、有用なジョブばかりだったので。


「そうじゃぞ。坊やに解決できたら、とっくにしてくれているはずじゃ」

「いいえ、そうではなくて……単に、お嫁に貰われれば良いじゃないですか」

「っ!?」

 カナコの爆弾発言に驚くヴァンダルーとザディリス。しかし、バスディアとヴィガロには、十分理解できる意見だったらしい。


「たしかに、既婚の姫は姫ではなく妃や皇后だな。立場的にクイーンやエンプレスなら、誰もステータスでどうなっているかまで気にはしないだろう」

「それに、本当に種族名やジョブがクイーンやエンプレスに変わる可能性もあるな。

 いいんじゃないか、母さん。ヴァンも今なら大丈夫だろうし」


「待ってください、バスディア。将来的にそういう事になるだろう事は理解していますが、何故今?」

「私達が会ったばかりの頃、『十年後まで待て』と言ったのはヴァンじゃないか。そろそろ十年後だぞ」

「……ああ、身に覚えがあるので否定できない。でも、十年後ではなく約十年じゃありませんでしたか?」

「約十年なら、今でも大丈夫と言う事だろう?」


「十年前の俺よ、何故成人するまで待ってと言わなかったのか……」

 実際に自分が言った覚えがあるヴァンダルーは、バスディアに指摘されて思わず遠くを見つめた。

「なるほど、その手があったか」

 しかも、驚愕から立ち直ったザディリスもカナコの提案に乗り気である。


「そう言えば、ザディリスは良いとしてお前とバスディアはいいのか?」

「構いませんよ。ヴァンの国は一夫多妻制に寛容ですし、順番で立場が大きく変わるって事もないでしょうから。何番目でも玉の輿は玉の輿です」

「私も、順番にはこだわらないぞ。まだジャダルも成人していないし」


 そして、提案したカナコ本人とバスディアも邪魔をする気はサラサラなかった。元々そうだったバスディアはともかく、カナコがこれ程あけすけに言うのは初めてなので、ヴァンダルーは首を傾げた。

「気持ちは嬉しいですが、『地球』や『オリジン』の文化では、一夫多妻制は問題があるのでは? 無理はいけませんよ」


「玉の輿呼ばわりは気にしないんですね。ご心配なく、郷に入っては郷に従えです。

 それに一国の支配者で、富豪で、何処にでも飛んで移動して自分で組み上がってくれるコンサート会場の主人で、変身装具も創れる、芸能活動を応援してくれる。ここまで好条件がそろった男は、未来永劫ヴァンだけです。

 ダルシアさんとなら嫁姑問題も穏やかに済むでしょうし、国家行事的なお堅い役目は他の人に頼めるでしょうから、絶対逃しません。どんな手を使っても、貰ってもらいます」


 なお、今カナコが口にした事には、若干の誤魔化しが含まれている。何故なら、ヴァンダルーからの援助は彼と婚姻関係で結ばれなくても得られるからだ。

 実際、今までもカナコはヴァンダルーから援助を受けている。たしかに、ヴァンダルーもカナコの活動の結果、利益を受けている。しかし、カナコは代価を前払いしてもいないし、利益を確約している訳でもなかった。勿論、恋人でもなく、身体で払っている訳でもない。


 それなのに援助するぐらいにヴァンダルーは身内と見なした者に甘く、既に自分は彼に身内と見なされている。それをカナコは気がついている。

 それなのに関係を望むのは……つまり、そういう事である。


「情熱的なプロポーズをありがとうございます。しかし、返事はハインツやベルウッドをどうにかするまで待ってください」

 勿論、ヴァンダルーはカナコの心の内にまだ気がついていない。


「もちろん構いませんよ。あたしとしても、今後の人生に関わる重要な問題ですからね」

「ああ、儂も別に今すぐという訳ではないぞ。【姫導士】になった後のジョブや種族が、姫やらプリンセスとつくものばかりだったら、という話じゃ。

 では、悩みも解決したし、ジョブチェンジをしてこようかの」


 そうしてザディリスは晴れやかな気分でジョブチェンジ部屋に入り、ヴィダル魔帝国に三人目の導士が誕生したのだった。




 その頃、輪廻転生を司る神、ロドコルテの神域では、そのロドコルテが腕を組んで唸っていた。

『やはり、ペリアはヴィダ派についたか。それは予想通りだったが、封印されていたはずのボティンまでも……』


 ロドコルテとしては、『水と知識の女神』ペリアがヴィダ派についたのは、「悪い予感が当たった」という程度の出来事だった。

 ペリアは魔王グドゥラニスから受けたダメージを癒すため、眠りについているということになっていた。しかし、同じ理由で眠っていたはずのリクレントとズルワーンは、既に目覚めていた。


 受けたダメージの大きさが違うだけかもしれないが、もしかしたらペリアは目覚めているのではないか。だとしたら、目覚めているのに眠っていると偽っている理由は……アルダではなくヴィダを選んだからではないか?


『知っていたのなら、忠告してやればよかったんじゃないか?』

 そう御使いとなった転生者、亜乱が言うが、そんな事ができるはずがない。まず、この予想はロドコルテにとっても、根拠の無いものだったからだ。そしてロドコルテとアルダの間には、信頼関係が存在しない。


 信用できない奴が、自分が信頼する存在について、「そいつはお前を裏切るぞ」と忠告する。その結果どうなるかは、ロドコルテでも想像することができた。

『問題はボティンまでヴィダ派についたことだ。これで、アルダは大神の中で孤立し、ヴァンダルー達は増えた大神から加護を得ることができる。』


 今の状態でも十分強大なヴァンダルー達は更に強くなり、アルダ勢力の神を奉じる人間達は加護を得る機会を失った。それに、エルフやドワーフの信者達がこの先どうなるかも怪しい。


『だが、ベルウッドも復活している。アルダによると、まるで廃人のようだったとの事だが、奴の頭の中身はどうでもいい。問題は、戦力になるかどうかだ』

『いや、それは考慮しないと駄目なんじゃないか? 廃人のような状態なんだろ?』


『構わん。それは、ベルウッドの保護者がどうにかするだろう』

 ロドコルテは、アルダが転生者を信用していないように、『ラムダ』の人間を信用していない。彼にとってベルウッドは、アルダが信者を獲得して力をキープするための客寄せパンダのようなものだ。


『それよりも、問題は導士に目覚めたカナコ・ツチヤだ。彼女とヴァンダルーをなんとしても抹殺しなければならないが……どうしたものか……」

『どうしようもないだろ。それとも、アサギに神託でもだすか? 『カナコを殺せ!』って』

『高い確率で失敗するだろうね。成功しても、実行するとは思えないし……そもそも、アサギ達の戦力では不可能だ』


 亜乱と硬弥の軽口を無視して、ロドコルテは押し黙ったまま思考を巡らせた。

(落ち着け。やる事は何も変わらない。ヴァンダルーを、アルダと協力して抹殺する。導士となったカナコ・ツチヤもその過程で抹殺する事が可能なはず。もし取り逃がしても、後ろ盾であるヴァンダルーを失えば、大した事は出来ないだろう。

 ペリアやボティン、ヴィダ派の神々についてはアルダに任せればいい)

 そして、そう算段をつけると、何とか自分を落ち着かせた。


 所詮、普通の……それも、戦闘よりも芸術活動に向いているだろう導士が一人、発生しただけだ。アルダからすれば、大きな差はないだろう。

 ロドコルテはそう考えていたが、カナコが『勇者』の二つ名を手に入れ、さらに導士が……それも、カナコの芸道ととても相性の良い導士が誕生した事に、まだ気がついていなかった。




 南に見える境界山脈の北端を遠くに眺めながら、『轟炎の騎士』ブラバティーユと『千刃の騎士』バルディリアは緊張を隠せなかった。

 彼等は、ルデル・サウロンが集めた旧スキュラ自治区奪還軍の一員となり、進軍している真最中だった。


 再編されかつての精強さを取り戻したサウロン公爵領の正規軍に、武人としても知られるルーカス・ハートナー公爵の精鋭軍、他にもファゾン公爵領やビルギット公爵領、それに中央から送られてきた戦力。腕利きの傭兵団に、A級やB級の冒険者達。


 数こそアミッド帝国を刺激しないよう抑えたが、それでも一万規模の大軍であり、その戦力は平均的な兵士百万人分に匹敵するだろう。


 そして、ブラバティーユとバルディリアはこれから戦う敵戦力も知らされていた。

 これから起こるのは、たったの三人と少々との戦闘である。そう、百万人相当の一万人対三人と少々の戦いなのだ。


「バルディリア、茶番劇が続くが……今回も、何としても成功しなければならん。そのためには……」

「無論、腕の一本や二本、惜しくはない」


 これから旧スキュラ自治区奪還軍の前に立ち塞がる、三人と少々の敵。

 まず、『旧スキュラ自治区の死神』ボークス。

 次に、恐らく世界最強のスケルトン、骨人。

 そして、『万骨殿』のクノッヘン。

 最後に、彼等のサポートをする使い魔王がほんの『少々』。なお、場合によっては本体も駆けつけてくるらしい。


 並の兵士では何億……いや、何兆人いても勝ち目の無い、三人と少々の大軍勢だ。


「……さあ、格好をつけて負けるぞ!」

 ブラバティーユは、バルディリアやアルクレム公爵領から共に派遣された部下達に、小声で号令をかけたのだった。




―――――――――――――――――――――――――――――――――




名前:ザディリス

年齢:301歳(若化済み)

二つ名:【魔法少女】 【魔杖の君】 【変身鬼姫】 【元祖魔法少女】

ランク:13

種族:グールフルムーンウィザードプリンセス

レベル:98

ジョブ:姫導士

ジョブレベル:0

ジョブ履歴:見習い魔術師 魔術師 光属性魔術師 風属性魔術師 賢者 大賢者 大魔術師 ウィザードプリンセス 魔法少女 魔杖装者 魔術姫 大魔術姫 魔月姫


パッシブスキル

闇視

痛覚耐性:5Lv

怪力:4Lv

麻痺毒分泌(爪):3Lv

魔力回復速度超上昇:4Lv

魔力増大:10Lv

魔力自動回復:9Lv

杖装備時魔術力増強:大

能力値強化:変身:8Lv

自己強化:導き:8Lv

魔術耐性:7Lv

能力値強化:月光:5Lv

導き:姫道:1Lv(NEW!)

姫道誘引:1Lv(NEW!)


アクティブスキル

光姫魔術:4Lv

風姫魔術:3Lv(UP!)

無属性魔術:10Lv(UP!)

魔術精密制御:2Lv

錬金術:7Lv

詠唱破棄:9Lv

同時発動:9Lv

限界突破:8Lv

家事:3Lv(UP!)

高速思考:8Lv

杖術:5Lv

御使い降臨:5Lv

歌唱:5Lv

舞踏:5Lv


・ユニークスキル

ゾゾガンテの加護

ガレスの加護

ヴァンダルーの加護

ディアナの加護

ヴィダの加護(NEW!)




・名前:ヴィガロ

・ランク:13

・種族:グールアストラルタイラントハイロード

・年齢:176歳

・二つ名:【死斧王】(NEW!)、【屍食鬼大将軍】(NEW!)

・レベル:87

・ジョブ:冥鬼大斧豪

・ジョブレベル:98

ジョブ履歴:見習い戦士 戦士 斧士 斧豪 魔斧使い 大斧豪 狂戦士 鬼戦士 冥斧士 霊鬼士 盾士 冥鬼斧豪


パッシブスキル

闇視

剛力:8Lv(UP!)

痛覚耐性:10Lv(UP!)

麻痺毒分泌(爪):8Lv(UP!)

斧装備時能力値増大:小(斧装備時能力値強化から覚醒後、さらに覚醒!)

魔術耐性:6Lv(UP!)

精力絶倫:10Lv(UP!)

殺業回復:10Lv(UP!)

物理耐性:3Lv(UP!)

精神耐性:1Lv

自己強化:導き:5Lv(UP!)

眷属強化:3Lv(NEW!)


アクティブスキル

獅死斧術:6Lv(UP!)

格闘術:10Lv(UP!)

指揮:7Lv(UP!)

連携:10Lv(UP!)

伐採:6Lv(UP!)

解体:4Lv(UP!)

盾術:10Lv(UP!)

限界超越:5Lv(限界突破から覚醒!)

魔斧限界超越:4Lv(魔斧限界突破から覚醒!)

並列思考:7Lv(UP!)

霊体:7Lv(UP!)

実体化:8Lv(UP!)

高速思考:1Lv

御使い降魔:3Lv(NEW!)


ユニークスキル

ゾゾガンテの加護

ガレスの加護

ヴァンダルーの加護

ヴィダの加護(NEW!)






名前:バスディア

年齢:外見年齢27歳(36)

二つ名:【巨人断ち】(NEW!) 【変身斧人】(NEW!)

ランク:13

種族:グールアマゾネストゥルーナイトクイーン

レベル:69

ジョブ:魔法斧人

ジョブレベル:44

ジョブ履歴:見習い戦士 戦士 見習い魔術師 魔術師 魔戦士 風属性魔術師 魔斧士 鬼斧刃 鬼女王 変身鬼妃 マジカルエンプレス




パッシブスキル

闇視

剛力:6Lv(UP!)

痛覚耐性:7Lv

麻痺毒分泌(爪):7Lv(UP!)

魔術耐性:8Lv

直感:6Lv

斧装備時攻撃力増強:小(斧装備時攻撃力強化から覚醒!)

精神耐性:5Lv

魔力増大:4Lv(UP!)

能力値強化:導き:7Lv(UP!)

眷属強化:7Lv(UP!)

色香:5Lv(UP!)

能力値強化:月光:6Lv(UP!)


アクティブスキル

鬼妃斧刃術:2Lv(UP!)

盾術:10Lv(UP!)

弓術:9Lv(UP!)

投擲術:8Lv

忍び足:4Lv

連携:10Lv

無属性魔術:5Lv(UP!)

風属性魔術:9Lv(UP!)

水属性魔術:9Lv(UP!)

魔術制御:8Lv(UP!)

料理:3Lv

魔斧限界超越:1Lv(魔斧限界突破から覚醒!)

鎧術:8Lv(UP!)

魔闘術:7Lv(UP!)

解体:2Lv

指揮:3Lv

限界突破:8Lv(UP!)

格闘術:6Lv(UP!)

歌唱:3Lv(UP!)

舞踏:3Lv(UP!)

御使い降魔:3Lv(UP!)


ユニークスキル

ゾゾガンテの加護

ガレスの加護

ヴァンダルーの加護

ディアナの加護

ヴィダの加護(NEW!)

次話は3月14日に投稿する予定です。

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