十一章キャラクター紹介下
●タッカード・アルクレム 60歳 人種 男性
腹心の部下の内二名がヴァンダルー狂徒と化し、更に一名は擬態人間である事が明らかになり、領内では連続猟奇殺人鬼に跳梁され、散々な目に遭ったタッカード、六十代になって初めて迎える春。(彼の誕生日は十月なので)
お蔭で彼の髪は急速に抜け落ち、胃は荒れると散々な目に遭った。しかし、今章最大の被害者とは言えない。
『崩山の騎士』ゴルディとその一族が擬態人間であるのは、ヴァンダルーが公爵領に訪れなくても変わらない。更に、数百年後に彼らの創造主である『共食いの邪神』ゼーゾレギンが、自らの野望を叶えるべく動き出す事も。
ゴルディ達の正体をあぶり出し、ゼーゾレギンが滅ぼされた事で、アルクレム公爵領は数百年後に起こり得た破滅を防ぐ事が出来たのである。
そして魔王と手を結ぶことになったが、その恩恵(Vクリーム)によって荒廃が進んでいた彼の頭部に、遅い春の芽吹きが到来する事となった。
気がかりだったユリアーナとは不干渉の約束を取り交わし、領内の方針をアルダ融和派からヴィダ原理主義へと転向させる事を決意する。
十二あるオルバウム選王国の公爵の中で、初めにヴァンダルーと手を組む事になった。
●ブラバティーユ 65歳 人種 男性
髪も髭も総白髪だが、タッカードと違い禿げる様子のない、元気な老騎士。若い時から熱血漢だったが、歳を取ってから更に疑り深くなり、陰謀論を度々口にするようになった。
ただ独自の情報網を持っている訳ではなく、本人の推理力や洞察力が優れている訳でもないので、彼の推理が正しかった事は殆どない。
主君であるタッカードも彼が口にする陰謀論には困らされているが、六十を超えてなお彼が『アルクレム五騎士』の一人、『轟炎の騎士』で在り続けているのは、そのA級冒険者相当の武力とタッカードに対する忠誠心故である。
ゴルディには「歴代の『五騎士』と比べて平均」と評されたが、裏を返せば平均的な実力を今も保っていると言う事でもある。
得意とするのは剣術で、戦闘では二つ名の通り、剣に魔術の炎を付与して戦う。
信仰的には『法命神』アルダだが、それはタッカードに倣っての事なので、主君である彼がヴィダ派に転向した以上、彼もそれに倣うだろう。
アルクレム公爵領の前身であるアルクレム王国の時代から続く、歴史ある伯爵家出身で、家の運営は息子に任せている。
●セルジオ 27歳 人種 男性
『アルクレム五騎士』の中では最も若い、『遠雷の騎士』。普段は丁寧な、しかし皮肉っぽい口調で話すが、緊急時や戦闘の最中は荒っぽい口調になる。
騎士団の中で若くして頭角を現し、二十代で『アルクレム五騎士』に入るが、大先輩のブラバティーユを爺呼ばわりし、最年長のバルディリアをメイド見習いの少女と間違えナンパする等、騎士としてあるまじき問題児である。
しかし、忠誠心に偽りはなく公爵領の為に命を捨てる覚悟は常にある。また、『アルクレム五騎士』を今まで何人も輩出してきた事に誇りを持つ家柄出身で、その事に誇りを感じている。故に、五騎士の中では最も最近一族同士で婚姻を交わしたゴルディに仲間意識を持っていたが……。
ブラバティーユと同じく武術と魔術を組み合わせて使う事を好むが、最も得意なのは遠隔からの風属性魔術による電撃。その射程距離は弓よりも長く、そのため彼は『遠雷の騎士』と呼ばれる。
実家は法衣子爵家で、一応彼が当主という事になっている。ちなみに独身。
●ラルメイア 31歳 人種 男性
『アルクレム五騎士』の一人、『慧眼の騎士』。しかし、本人は式典以外では鎧ではなく斥候職のような身軽な格好を好み、武器も剣ではなく携帯性の高い短剣等を愛用する。
それが表す通り、元々アルクレム公爵家に仕える諜報組織出身の異色の五騎士。
発動した時対象が発揮している能力値や、スキルも見る事が出来る【測量の魔眼】での情報収集が主な任務である。……一目見るだけで対象のステータスが全て見える【鑑定の魔眼】の下位互換のような魔眼だが、その【鑑定の魔眼】の持ち主は滅多に現れない(人類全体で同じ時代に二人いたら多く、三人いたら異常とされる)ので、重宝されていた。
『アルクレム屋台五芒星』の一人、『たっぷりサンドイッチ』のサンディを本人に悟られる事なく策の駒として動かし、ヴァンダルーと五芒星を穏やかに衝突させ、大人な決闘を繰り広げさせる等、巧みな策を展開した。
しかし、ヴァンダルーを魔眼で見た事で、【深淵】スキルの餌食となり、その異貌の魂に触れた事で精神に異常を来たし、立派なヴァンダルー狂徒へと変貌を遂げてしまった。
外見的な変化は、皮膚の痛みや老け込みは回復したが、髪が白くなったまま戻らなかった。更に、ヴァンダルーの事を語る時に瞳孔が開く。また、導きによって身体能力が上昇しつつあるようだ。
だが、アルクレム公爵家に忠誠を捧げている事に変わりはない。信仰する対象が、ヴァンダルーになっただけで。
その『測量の魔眼』でヴァンダルーのステータスや、ダルシアやカチア、ギザニアやプリベル、ミューゼ等のスリーサイズや体重等、ヴィダル魔帝国の最重要機密情報に触れてしまったが、ヴァンダルーから口止めされるだけで許された。
秘密を知りながらもそれを秘め続ける事を許されたラルメイアは、大きな優越感を覚え、その信仰心を新たにしたと言う。
孤児出身で、彼だけが五騎士の中で貴族ではない。戦闘力も、ギリギリB級冒険者相当と言った程度だったが、導きの効果で身体能力が上がっているため、やや向上している。
●バルディリア 78歳 ドワーフ 女性
『アルクレム五騎士』の一人、『千刃の騎士』。五騎士の中で最年長で、騎士としてももっとも経験を積んでいる。
二つ名の由来は斧術に限らず様々な武術系スキルを修めている事と、連続で攻撃を繰り出す武技を得意としている事。その攻撃力はブラバティーユを上回る。
ただドワーフであるため背が低く、更に童顔であるため鎧を着ていないと、メイド見習いの少女に間違われる事が度々ある。
若い頃は彼女も自分の容姿にコンプレックスを持っていたが、もう七十代なので気にする時期はとっくに過ぎた。
今では新人騎士や兵士にメイド見習いと間違えられても、「はっはっはっは、今日の訓練にはちゃんと顔を出すのだぞ」と怒らず、ちょっと訓練を厳しくするだけで大目に見てくれる。
セルジオが新人騎士だった時、「へい、そこのお嬢さん。俺と一緒にお茶でもしない? 仕事なんてサボっちゃってさ」とナンパされた時は、「お茶と言わず何日でも付き合おう」と快諾し、彼に七日間の厳しい訓練を課した。
しかし、普通の新人が一日で音を上げる訓練に耐えきった彼を「見所がある」と評価し、公爵へ推薦状を書いて彼が活躍できるよう後押しをこっそり行っている。
形式上、女性騎士だけだったユリアーナが率いていた一隊は彼女の部下と言う位置づけになっている。しかし、五騎士の自分が微妙な立場のユリアーナに近づく事は、良くない結果を産むだろうと考えて敢えて距離をとっていた。
彼女が主君にも知らせず、ゴルディを一人で説得しようとしたのは、五騎士としての仲間意識と彼の妻子と一族に対しての思いやりからだった。……実際には、ゴルディ本人は勿論、その妻子と一族も全員が擬態人間だったのだが。
そんな彼女もヴァンダルーに導かれ、ダルシアに命を救われ、立派なヴァンダルー狂徒に。ダルシアに対しても尊敬の眼差しを向けている。
伯爵家出身だが、当主ではなく三女。現在は兄が家督を継いでいる。同じドワーフ貴族のレッドゴーダ伯爵家に嫁ぎ、結婚しているが魔物との戦いで夫に先立たれ、現在は子供が一人前になるまで女伯爵をしている。未亡人。
●サンディ 35歳 人種 女性
『アルクレム屋台五芒星』の一人、『たっぷりサンドイッチ』の二つ名を持つ。
恰幅の良い中年女性で、悪い人間ではないが思い込みが激しい性格の持ち主。
彼女自身が語る昔話によると、昔は細身の美少女だったらしいが、当時一人でサンドイッチ屋台を営業していた旦那と結婚してから太ったらしい。
ラルメイアの策と知らずにヴァンダルーに決闘を挑み、善戦して最後はお互いの健闘を称えあって握手を交わしている。
『アルクレム屋台五芒星』には他に、『気紛れスープ』のシング、『灼熱飯』のパーパラス、『混沌を握る』ミッチェム、『甘々甘味スイーツ』のトムがいる。
●バシャス 『雨雲の女神』
五万年程前に神に至った、風属性の女神。フィトゥンのような戦場で活躍した英雄ではなく、天気予報や占いで人々に凶兆を警告し、多くの人々を救った事からナインロードに見出された。
しかし、不吉なものを警告する女神のはずが、後の信仰によって「不吉なものを司る女神」に歪められてしまった。
一応雨を司る豊穣と農耕の女神でもあるのだが、多くの信者からは大雨による水害や、嵐を連想し、祟り神のような扱いを受けているようだ。
アーサーや彼の才能は、加護を与える前から知っていた。彼自身が加護を望んでおらず、また加護を与えても彼の環境を変える事には役立たない(村人達から余計に畏れられるだけだろうと予想した)ため、特に応える事はなかった。
しかし『法命神』アルダから英雄を育てるようにと号令がかかり、幾人かの候補を見たが、アーサーではなく他の者に加護を与える理由が思いつかなかったため、彼に加護を与えた。
その後彼女自身がヴァンダルーに導かれ、アーサーもミリアムと出会って村を出て、状況が一変。
自分と同じくアルダに疑問を持っていたゼルゼリアとハムルを誘い、ヴィダ派への転向を企て、成功する。
●ゼルゼリア 闇夜の女神
闇夜を司る女神だが、別に邪神悪神の類ではなく、真っ当な光属性の女神である。(ラムダでは、闇を光が無い状態を表すとし、光属性の側面の一つとして認識されている)
神像や宗教画では影のある美女として描かれ、月明かりや星の輝きのない闇夜でも人々を見守るのが役目。しかし、娼婦や安眠の守護女神とされる事も多い。また、人々を試す為に純粋な旅人や僧を誘惑する役として昔話に使われる事も多い。
そのためか、後世では悪女のようなイメージがついてしまった。プラスのイメージの側面を、彼女よりも歴史の古い『眠りの女神』ミルが既に抑えていたと言う理由もあり、信仰する信者の数も少ない。
今ではゼルゼリアを主に祭る神殿は殆ど無く、アルダの従属神の一柱としてレリーフが神殿の壁に飾られるぐらいである。
彼女本人はそれを「人々が私に求めた役割と、その結果」として、世界の維持管理を粛々とこなしていたが、アルダから「英雄を育てよ」と号令がかかり、大困惑。
自分の数少ない信者の殆どは娼婦等、いわゆる夜の女性が多数。英雄志望の冒険者や騎士ならともかく、戦いに縁もゆかりもない人を魔王との戦いに駆り出す訳にはいかない。そう考え、故意に加護を与える信者を選ばなかった。
他の神から注目されなかったので彼女の動きは気がつかれず。そのまま暫く経ってから同じ日陰者の神仲間として交流があったバシャスに声をかけられ、ヴィダ側への転向を決意し、カリニアに加護を与える。
●ハムル 影の神
元々はアルダによって創られた、自我無き御使い。誕生してから経験を積み、自我に目覚め、神に昇華という経歴を持つ。そのため、誕生してからの時間自体はバシャスやフィトゥンよりもずっと長い。
性別が定義されていない無性の神格で、教義もあまりはっきりとはしていない。影を司っているというよりも、影を司る神という役割のための存在と評すべきかもしれない。
当然ハムルを主に祭る神殿は殆どなく、他の神の神殿に小さなレリーフが建立されているぐらい。
そのため信者の数も少なく、アルダが「英雄を育てよ」と号令をかけても、ゼルゼリアと同じ理由で英雄候補を選ぶのを躊躇っていた。……アルダの号令が「我々が選んだ英雄候補に、加護を与えよ」だったら、応じていただろうが。
そしてバシャスに声をかけられ、ヴィダ派への転向を決めボルゾフォイに加護を与える。
●ボルガドン 山の神
十一柱の大神がラムダ世界を創造した後、『大地と匠の母神』ボティンの手によって大地の精霊から神に昇華した存在。そのため、一応男神とされているが厳密に言えば自然神であり、性別等は存在しない。
神代の時代は山その物や、山で見つかった奇妙な形の岩等がご神体として祭られており、擬人化はされていなかった。宗教画に描かれるときのみ、顔が影になって隠れている逞しい男性の姿で描かれていた。
勇者達と共にグドゥラニス率いる魔王軍と戦ったが、重傷を負ってしまう。
同時期に『共食いの邪神』ゼーゾレギンと『強奪の悪神』フォルザジバルが、山々の上空で仲間割れを始めた。勇者の一人であるファーマウン・ゴルドが二柱の邪悪な神が争っている隙を突いて斬りつけ、重傷を負わせた。
それを見たボルガドンは、「この傷ではこれ以上戦えない。ならばいっそ」と自分ごと邪悪な神を封印する事を選び、突撃。山々を崩し、地中深くゼーゾレギンとフォルザジバルを封印する事に成功した……かに見えたが、逆にゼーゾレギンに吸収同化されてしまった。
意識が途切れた次の瞬間にはヴァンダルーの口の中で、神なのに何も出来ず囚われの姫君のように助けられ、更に十万年以上もの間ゼーゾレギンに名を奪われていた事で、自信を喪失している。
ゼーゾレギンによってアルダ勢力の一員として名を使われたが、彼自身はアルダ勢力でもヴィダ派でもない。アルダとヴィダが袂を別ち、争い始めたのは彼がゼーゾレギンに吸収同化された後であるためだ。
ただボルガドンの価値観は、ザッカートと同じく生産系勇者であるヒルウィロウを選んだボティンに近く、助けてくれたヴァンダルーにも恩義を感じているため、とりあえずヴィダ派についている。
この判断は、ヴァンダルーがアルクレムの街を守りながらゼーゾレギンと戦った事を、ボルガドンが重視した結果でもある。
ヴァンダルー達の情報操作によって、自分が悪神を再封印した事になっているが、それによって人々の感謝の祈りを受け取るのを、やや後ろめたく感じている。
●ランドルフ ?歳 エルフ 男性
ヴァンダルーがどんな人物か自分の目で確かめるため、モークシーの町に変装して潜入中。青い髪のエルフの吟遊詩人、ルドルフを名乗る。
結果、とんでもない事態が街から二週間ほど離れたアルクレムの都で起こったが、彼が知ったのは全てが終わった後だった。
『顔剥ぎ魔』に関しては知っていたが、被害に遭っているのが犯罪者ばかりだし、別に依頼された事ではないので放置した。
●ゴルディ ?歳 擬態人間
『崩山の騎士』の名を持つ『アルクレム五騎士』の一人。オルバウム選王国やアミッド帝国が建国されるずっと前から存在する、『荒野の聖地』でボルガドンを祭りながらフォルザジバルの封印を守る一族出身。
伯爵位を与えられて『荒野の聖地』とその周辺を領地という扱いで預かっているが、貴族らしい事は行わず、騎士兼聖職者として、アルクレム公爵領を守っている。
それは表向きの顔で、実際にはゼーゾレギンが創りだした魔物、擬態人間の一人。
擬態人間は人間(人種、エルフ、ドワーフ)に擬態する事が可能。ただし、アラクネやラミアや、スキュラのように人型から外れる大きな部位を持つヴィダの新種族には擬態する事は出来ない。
また、人間と同じようにジョブに就く事が出来るがその分ランクが低い状態で固定されてしまう。
人間に擬態する事に特化した魔物である。
しかしゼーゾレギンがフォルザジバルを吸収同化した事で、スキル強奪の能力を種族単位で手に入れた。
スキルは魂に刻まれるため本来なら奪う事は出来ないが、擬態人間は対象の肉体を一定の体積以上捕食する事で、魂のスキルが刻まれた部分だけを薄皮を剥ぐようにして奪い、自分の魂に移植する事で奪う事を可能にした。
どんなスキルでも奪う事が出来る強力な能力だが、そのために必要な条件はかなり厳しい。対象は肉体に魂が宿っている状態、つまり生きていなければならない。更に、人間大の生物からスキルを奪うためには四肢の内一本を半ば以上喰らわなければならない。
更に、奪うスキルはある程度指定できるが、擬態人間達は相手のステータスを見られる訳ではない。なので、「最もレベルの高い武術系スキル」や、「最も頻繁に使用している魔術系スキル」と大雑把に指定して強奪する事になる。
そのため、基本的に格上の相手に強奪を試みても、不意を突かなければまず失敗する。
そうした魔物であり、アルクレムを守っていたのもゼーゾレギンと自分達の正体を隠しながら、人間達にボルガドンと偽ったゼーゾレギンを信仰させるため。
歴代の『崩山の騎士』は全てゴルディと同じ擬態人間であり、彼の妻子も役割を演じている擬態人間であり、『荒野の聖地』は擬態人間の巣である。
一族に外部の人間が嫁入りや婿入り、出家等で加わる場合も、折を見て殺し擬態人間と入れ替わる事で秘密を守って来た。
ゼーゾレギンの命によって、相棒役の擬態人間と共に『顔剥ぎ魔』の犯行を模倣してアルクレムに社会不安を蔓延させ、『法命神』アルダへの人々の信頼を揺るがし、ヴァンダルーから、彼を【魔王】たらしめているスキルと、彼だけが使える属性魔術スキルを奪う事を試み、成功した。
したが、躊躇いなくヴァンダルーが自分を殺そうとするなど、計算外の事態が続き、それでも自分の一部を分裂させて【魔王】をゼーゾレギンに届ける事に成功した。
だが、その後ダルシア達に敗北している。
ゼーゾレギンを滅ぼした後ヴァンダルーとタッカードによって行われた情報操作によって、表向きには別邸を襲撃してきた顔剥ぎ魔と交戦。その後、顕現した悪神とボルガドンとの戦いで亡くなった事になっている。亡骸は回収する事が出来ず、彼の折れた宝剣が棺桶に納められた……という事になった。
後日、葬儀が行われる予定である。
ちなみに、情報操作中はセイタンブラッドミミックスライムのキュールがゴルディの姿に擬態して、演じている。擬態人間が擬態されるという、皮肉な結果になった。
●ゼーゾレギン 共食いの邪神
魔王軍の一員で、人間に擬態する擬態人間を創りだした邪神。当時、魔王軍で創られる魔物は、知能や特殊能力ではなく、単純な力や耐久力が重視されており、擬態に特化した魔物を創る事が出来たゼーゾレギンはかなりの変わり者だった。
そのため手柄を揚げる事に成功したが、人間の数が急速に減ったため擬態人間が入り込む隙が無くなり、それを落ち目ととらえた『強奪の悪神』フォルザジバルの襲撃を受け、その隙にファーマウンに二柱共々斬りつけられ、ボルガドンの突撃を受ける。
しかしゼーゾレギンはフォルザジバルを吸収同化して力を回復させ、突っ込んできたボルガドンも吸収してしまった。その後、そのまま封印されたように偽り、自身はボルガドンに成りすまして十万年以上潜伏していた。
そのまま力が完全に回復したら、アルダ勢力やヴィダ派の神々や魔王軍残党の神々を次々に吸収同化し、ラムダ世界唯一の神となるつもりだった。
神と魔王の一人二役を演じ、人々を適度に繁栄させ、適度に苦しめて数を減らす。それを繰り返して永遠にラムダに君臨する事こそ、彼の野望であった。
だがヴァンダルーがアルクレム公爵領の街、モークシーに現れた事で計画の変更を迫られた。ヴァンダルーが、【魔王の欠片】や悪神が封印されている『荒野の聖地』に興味を持ち、侵入して来たら擬態人間達の正体がばれてしまい、それに祭られているボルガドンが偽物だと気がつかれるかもしれないからだ。
ヴァンダルーがゼーゾレギンにまでは気がつかなくても、アルダ達は確実に気がつく。そのため、嵐が何事もなく過ぎ去ってくれるのをただ祈るよりも、計画にヴァンダルーを巻き込み、計画を早める事にした。
ヴァンダルーから【魔王】スキルを奪い、【魔王の欠片】を完全に支配下に置き、【魔王】スキルと【冥王魔術】を失ったヴァンダルーを吸収同化して力を手に入れ、神々に戦いを挑む。
そのつもりだったのだが……ヴァンダルーが想定よりも弱体化しなかったため、逆に倒されてしまう。
最期は自身が手に入れた【魔王】スキルとヴァンダルーの魂の僅かな一部に肉体を乗っ取られ、ヴァンダルーに捕食されてしまった。
元々存在していた世界では、その名の通り共食いの習性が強い種族の頂点に君臨していた。その当時はさほど強力な神ではなく、擬態能力もその弱さ故に身に付けた生き残る術である。
●フォルザジバル 強奪の悪神
今章で最も不幸な存在かもしれない神。ゼーゾレギンに吸収同化され、そのままヴァンダルーに対する囮として使われ、魂を喰われて消滅した。
しかし、その後に行われた茶番劇ではゼーゾレギンの憑代型巨大ゴーレムが、「フォルザジバル」として人間社会に広められているので、ゼーゾレギンから姿を奪ったとも言えるかもしれない。
元々いた世界では、縄張りや巣を奪う生態を持つ種族の頂点として君臨していた。
神となった後も他者から奪う事を至上の快楽としており、人間達からこの世界を奪う侵略戦争に熱狂した魔王軍の将の一柱。
なので、もしボルガドンの突撃から逃れたのがゼーゾレギンではなくフォルザジバルだった場合、すぐに正体を現し、今度こそ封印されていただろう。
●ウルゲン・テルカタニス 65歳 人種 男性
オルバウム選王国の選王領、通称『中央』に君臨する宰相。実質的なオルバウム選王国の政治のトップは、選王ではなく彼であると見る者も多い。
ヴァンダルーの存在とその脅威について気がついている節があるが、正確には不明。
今のオルバウム選王国の体制を維持する事を是としており、そのためなら現在の体制下で不遇な立場にいる者達は切り捨てても構わないと考えている。
それにはアルダ融和派も本来なら歓迎できないが、ヴァンダルー達が掲げるヴィダ原理主義よりは遥かにマシと考えているようだ。
●ファザリック・ドルマド 52歳 人種 男性
小太りな体型とナマズのように細く長い髭が特徴的な、見た目は人が良さそうに見える人物。
軍人には見えないが軍務卿の役職についており、自身と部下の手に入れた情報しか信じない性格。ルデル・サウロン公爵の後見人でもあり、彼にレジスタンスを切り捨てるよう勧めたのも彼。
また、曾祖母の縁でランドルフとコンタクトを取る事が出来る。……彼自身はその祖母とあった記憶もないのだが。
他者を自分にとっての利用価値があるかないかで判断する傾向があり、合理主義……に見せかけた利己主義。
まだヴァンダルーの存在に気がついたばかりだが、何かあるに違いないと注目している模様。
ちなみに若い頃は騎士団を率いていた事もあり、当時の武術や指揮は一流だと謳われていた。しかし、そのやり方に問題があったらしく、たった一年で直接騎士や兵を指揮しない部署へ「栄転」させられた過去がある。
●ジョゼフ・スミス 33歳 人間 男
地球での名を墨田城。ムラカミの同僚教師だった。そして【ドルイド】のジョゼフ・スミスとして転生した人物。
能力を生かして植物の研究をするため大学に進もうとしたら、【ブレイバーズ】が結成され、彼も加わる事に。その後、凄惨な災害現場を見た事でトラウマを負い、テロリストとの戦いで精神にさらに大きな傷を負って危険な前線からはリタイヤする。(そのため、彼は『第八の導き』との最後の戦いの時、居なかった)
その後はカウンセリングを受けながら、非戦闘区域の復興作業や、農業支援を行っていた。
しかし、夢でヴァンダルーと遭遇し、魂の欠片を分け与えられた事で回復した。そして訪れた雨宮宅でバンダーと出会い、六道聖の正体を知る事になった。
●ケイティ・ハートナー 4歳 人種 女性
【ウルズ】のケイ・マッケンジーが転生した少女。記憶と人格が戻るまでは無邪気なお嬢様だったが、自分の人生が前世以上のハードモードである事に気がついてしまった。
ロドコルテからヴァンダルーを抹殺するよう依頼されているが、断ったためヴァンダルーと因縁のあるハートナー公爵家に転生させられた。
しかし、ロドコルテの思惑に乗らず、今生での家族の命を守りつつヴァンダルーと和解出来たらベストだと考えている。
今後、【ウルズ】で見るハートナー公爵家の過去によって、多大なショックとストレスを受ける事になるが、それに彼女が耐えられるかはまだ分からない。
●ランキング
・I
ベルモンド
アイゼン
クイン
レビア王女
・H
ダルシア
タレア
バスディア
ワルキューレ(レギオン)
ジーナ
クーネリア
ギザニア
・G
アイラ
イシス(レギオン)
イリス
ラピエサージュ
・F
エレオノーラ
サリア
マギサ
カリニア(NEW!)
ガオル
リタ
・E
ペリベール
ミューゼ
セリス
エレシュキガル(レギオン)
オルビア
・D
カチア
ビルデ
バルディリア(NEW)
イザナミ(レギオン)
・C
カナコ・ツチヤ
メリッサ・J・サオトメ
プリベル
ナターニャ
見沼瞳(レギオン)
・B
ベストラ
オニワカ
ザンディア
ザディリス
プルートー(レギオン)
ミリアム(NEW!)
・A
パウヴィナ(UP!)
バーバヤガー(レギオン)
グファドガーン(憑代)
・AA
シェイド(レギオン)
・AAA
ユリアーナ
計測不能&名誉顧問ヤマタ ティアマト
パウヴィナのランクアップと、ニューフェイスのミリアム、バルディリア、カリニアがそれぞれランクイン。
(ジェシーはまだランキングの存在を知らないため、またホリーは引き続き参加を辞退しているため、またバシャスとゼルゼリアは寄り代に宿っていないため、ランキングに含まれていない)
●タロスヘイム発展度
・魔大陸を含めた総人口 約七万三千人(タロスヘイム 約二万三千人 魔大陸 約五万人)
グール、アンデッド、ブラックゴブリン、アヌビス、オーカス、巨人種、人種、獣人種、ドワーフ、スキュラ、ハーフエルフ、エルフ、リザードマン、アーマーン、吸血鬼、スクーグクロー、レーシィー、ゲヘナビー、鬼竜人、魔竜人、ラミア、竜人、鬼人、ハーピィ、ケンタウロス、人魚、カオスエルフ ノーブルオーク、オーク、ハイコボルト、コボルト、ハイゴブリン、ゴブリン、魔人、アラクネ、エンプーサ 冥系人種、冥獣人種、ドヴェルグ、ミノタウロスハーフ
ゴーレムやカースウェポンは含まれていない。また、大陸西部のダークエルフ達の移住は始まったばかり。
●タロスヘイム施設
水銀鏡ゴーレム
探索者ギルド(交換所と配給所、ジョブチェンジ部屋)
ヴィダ神殿(従属神&ヴィダ派の神々、ズルワーンとリクレント、ザンターク、ファーマウンの神像有り)
公衆浴場
各種屋台
公営カジノ
イモータルエントの森(ガンテエント植樹済み スクーグクロー&レーシィー増殖中)
各種ゴーレム工場
モンスタープラント畑
木人訓練場(アルダ側の英雄アンデッド在住)
劇場
見る者の心に残る芸術的なペイント(空からでなければ全貌は見えない)
生命体の根源
移住希望者用集団住宅
人間社会からの移住者用寮
タロスヘイム城
ゲヘナビー城
ヴァンダルーの巨大神像(建設中)
B級ダンジョン×2(+1) C級ダンジョン×2 D級ダンジョン×3 E級ダンジョン×1
酒ヤシ栽培用ダンジョン×1
娯楽用ビーチダンジョン
漁業専用ダンジョン
デーモン軍仮住居用ダンジョン(ヴァンダルーの地下工房に併設)
●沼沢地リザードマン地区
カプリコーン農場
カプリコーン乳加工場
探索者ギルド支部
『五悪龍神』フィディルグとヴィダの祠
精神侵食ストーンサークル
D級ダンジョン×1 B級ダンジョン×1
●沼沢地スキュラ地区
田んぼ(魔ガモ農法採用中)
泥湯温泉
スキュラの英雄神メレベベイルとヴィダの祠
探索者ギルド支部
ヒュージカピバラ牧場
魔鴨の養殖場
精神侵食ストーンサークル
転移用極小ダンジョン
●サウロン解放戦線アジト(元スキュラ族自治区)
精神侵食ストーンサークル
自動アンデッド化魔術陣(侵入者リサイクル専用)
D級ダンジョン
転移用極小ダンジョン
闇夜騎士団本詰所
粗製アンデッド軍
●魔大陸
ザンタークの仮神域
街
温泉
ヴァンダルー巨大神像(建築中)
ダンジョン×無数
●仮設施設
クノッヘンコンサート場
サムのジョブチェンジ部屋
●冥魔創夢道の影響下にある境界山脈内部の国々(ヴァンダルーが直接訪問した国)
ノーブルオーク王国 人口約十万人
ザナルパドナ 人口約十万人
グール国 人口約五千人
ハイコボルト国 人口約一万六千人
ハイゴブリン国 人口約一万人
魔人国 人口約十万人(うち、魔人族約千人)
鬼人国 人口約一万人
竜人国 人口約五千人
ケンタウロス国 人口約一万五千人
ハーピィ国 人口約二万七千人
ラミア国 人口約二万人
ダークエルフ国 人口約一万人
『ヴィダの寝所』
人魚国 人口約四万人
●(非公式)同盟国
アルクレム公爵領
書籍版第四巻が発売しました! 書店で見かけた際は、手にとって頂けたら幸いです。
コミックウォーカーとニコニコ静画で拙作のコミカライズが始まり、二話目が投稿されました。 もしよろしければご覧ください。
約二週間程お休みを頂きまして、十二章は8月10日からの投稿になる予定です。




