二百六十九話 事実は捏造され、真実は闇に葬られる
今章の名称を「アルクレム公爵領編二」に修正しました。
《【魔王】、【冥王魔術】スキルを取り戻しました!》
《【魔王】、【死属性魔術】スキルが、【魔王】、【冥王魔術】にそれぞれ統合されました!》
《【魔王の筋肉】、【汗腺】、【結晶】、【刺胞】が【魔王の肉体】に統合されました!》
《【自己再生:共食い】、【能力値増強:共食い】スキルを獲得しました!》
《力が5,000、体力が10,000、生命力が100,000上がりました!》
《【剛力】、【超速再生】、【冥王魔術】、【魔力常時回復】、【糸精製】、【魔砲発動時攻撃力強化】、【限界超越】、【虚王魔術】、【魔術精密制御】、【魂格滅闘術】、【同時多発動】、【操糸術】、【神霊魔術】、【魔王砲術】、【鎧術】、【盾術】、【杖術】、【神喰らい】、【魔王】、【深淵】、【魂喰らい】、【群体思考】スキルのレベルが上がりました!》
《【魔王】スキルのレベルが更に上がりました!》
《【無手時攻撃力強化】が【無手時攻撃力増強】に、【異貌魂魄】が【異貌多重魂魄】に、覚醒しました!》
《【魂纏時能力値強化】スキルを獲得しました!》
長い脳内アナウンスを聞き終わったヴァンダルーは、複雑な心境のまま、視線をピクリとも動かない、ゼーゾレギンの寄り代へ向けた。
奪われたスキルは二つとも取り戻し、欠片は四つ手に入った。更に、ゼーゾレギンと恐らくフォルザジバルの魂を喰らった結果、能力値が上がり、字面が悪いが【自己再生:共食い】と、【能力値増強:共食い】というスキルを獲得した。
(俺の場合の共食いって、まさかダンピール? 使う機会が激しく限られそう。一応、テーネシアのアジトから回収したダンピールのアンデッドの身体は、保存してあるけれど)
共食いとは、同じ種族の個体を食う事を言う。その場合、ダンピールであるヴァンダルーは、対象がかなり限られてしまう。
(そもそも、使いたくない――いや、そう言えば、これも『共』ですね)
『ええ、『共』ですよ。一口いきますか?』
ヴァンダルーが視線を向けたのは、自身の【魔王の欠片】と魔力で創りだした砲台型使い魔王だった。
「では、ちょっとだけ」
三体いる砲台型使い魔王の内一体の、殻を少し抉り取って口に運ぶ。当然、自分自身の味しかしないのだが……その途端、僅かだが力が湧いてでたような気がした。
「使い魔王でも、スキルは発動するようですね」
『では、修繕をお願いします』
「はいはい」
自分自身と言葉を交わして、一口食べた砲台型使い魔王に新しいパーツを与えて修繕する。これで使い魔王でも【共食い】は効果を発揮すると分かったので、これからは使い魔王がいれば、好きな時に使う事が出来る。
後は、【異貌魂魄】が【異貌多重魂魄】に覚醒したのが、スキルに起きた変化では大きいだろう。
(しかし、異貌で多重……俺の魂はどうなっているのでしょう?)
(元々複雑怪奇だったものが、更に複雑になっただけで、あまり違いは無いかもしれません)
(あまり深く気にしても、無駄だと思いますよ)
(それもそうですね)
脳内会議を短く切り上げ、気にしない事にした。……以前より自分との対話が簡単になった気がするが、これが【異貌多重魂魄】の効果かもしれない。
そして新たに獲得した【魂纏時能力値強化】スキルだが、これは【魂格滅闘術】を使用している時等、肉体に魂を纏わせている間、能力値が上がるスキルだろう。
能力値の上昇。これは悪神や邪神の魂を喰らった時には今までも上昇していたので、特に問題は無い。能力値が増えて悪い事は無いのだから。
最後に、手に入った欠片が四つ。しかも、その中の一つは筋肉である。脂肪でも、贅肉でもなく、マッチョな肉体に沢山詰まっている肉だ。
「今まで口にこそ出しませんでしたが、存在する事を願い、出会う事を祈って来た筋肉がこの手に」
そして、ヴァンダルーが憧れている肉である。
ヴァンダルーは筋肉に憧れている。力の象徴であると認識し、鍛え上げられた肉体に美を見出し、自分自身もそうなりたいと望んでいて、適度な筋力トレーニングは欠かさず行っている。
しかし、そうして肉体を鍛え、能力値の力を表す数値が四万を超え、【剛力】スキルが5レベルになった今でも、ヴァンダルーの肉体はマッチョになるどころか、全く太くならない。
腕は丸太のようと評するには程遠く、胸板は薄く、腹も割れる気配も無く、脚だって細い。今まではそれを生まれ持った体質や、この世界の物理法則のせいだと考えていた。
この世界には魔力が存在するためか、力の能力値の数値と、実際の筋肉量に大きな差がある。
ボークスやヴィガロ、ギザニア、そして最近出会ったアーサー等マッチョは実在している。しかし、見た目は筋肉が無いように見えるのに、鉄の棒を粘土のように簡単に曲げてしまう怪力の持ち主と言う人も冒険者や騎士には多い。
何が両者を分けているのかは不明だが、自分は後者なのだろうと認識していた。
そうである以上、自力でマッチョに至る事は半ば諦めていた。だからこそ、【魔王の筋肉】を望んだのだ。
「元々はグドゥラニスの……他人の筋肉に頼るのは微妙ですが、こうして取り込んでしまえば俺の筋肉です。なので、何の気兼ねもなく使いましょう」
この喜ばしい出来事に比べれば、【魔王】スキルが10レベルに達した事なんて、小さい事だ。
「おめでとうございます、ヴァンダルー」
『早速使ってみるの!? 【魂格滅闘術】を使っていると、見た目の変化が分からないけど』
今ヴァンダルーは魂を【具現化】し、全身甲冑のように纏っているので、【魔王の筋肉】を使っても外見上の変化があるかどうか確認し難い。
しかし、今【魂格滅闘術】を脱ぐ事は出来ない。
「今はゼーゾレギンが放った結晶が地面に落ちた時と、奴が倒れた時に上がった土煙、それに砲弾型使い魔王の爆発の煙で見えないと思いますが、都からこちらを窺っている人も多いでしょうから。万が一、と言う事もあり得ますし」
【魔王の欠片】を派手に使ったり、髑髏型の黒い炎を放ったりした直後だ。ゼーゾレギンと戦い、都を守りながら勝利したが、それでも顔が知られるのは拙い。
「なので、手短に、軽く試すだけにしましょう。【魔王の筋肉】、発動」
冷静に、しかし力を込めて【魔王の筋肉】を発動させるヴァンダルー。その瞬間全身の筋肉に力が漲った。
『……ヴァン君? どう?』
『やっぱり、魂の上からだと違いは分かりませんぜ』
オルビアとキンバリーに、ヴァンダルーは首を傾げて答えた。
「筋力が向上した感覚はありますが、見た目に大きな変化は無いようです。筋力が上がっただけで、腕が太くなったり、胸板が厚くなったり、腹筋が割れたりもしていません。
魔力が足りないのかな?」
【魔王の欠片】は、魔力を注ぎこめば形状は欠片ごとに異なるが、力を強く発揮する。【角】なら巨大な角が生え、【外骨格】ならより硬く。
【魔王の筋肉】に同じ事をすれば、筋肉が望み通りついてくれるかもしれない。
『それは……嫌な予感がするので、止めておいた方が良いような気が……』
影から顔を出したアイラがそう呟くが、誰の耳にも届かなかったようだ。
ヴァンダルーがまず腕から試そうと、右腕に魔力を込める。
すると、右腕が瞬間的に膨れ上がった。
『『『おおっ!』』』
そしてチプラス達が感嘆の声をあげた……直後に、何かが軋む鈍い音を響かせながら、ヴァンダルーの腕が弾けた。
『腕、爆発!?』
『……いや、そうじゃないよ。枝分かれしただけっぽい?』
影から顔を出して驚くラピエサージュに、オルビアがそう指摘する。彼女の言った通り、ヴァンダルーの腕は通常の形状をした一本から、触手のような形状をした数本が生えている特異な形状になっていた。
『陛下、これは?』
「どうやら、筋肉繊維が肥大しすぎて腕に納まりきらず、別れてしまったようですね」
ヴァンダルーはそう答えながら、黒い魂に包まれた筋肉触手を蠢かせている。どうにか腕を元の一本に戻そうと、そして普通に筋骨隆々とした腕にしようとしているようだが、筋肉触手は益々太く、そして長くなる一方で纏まる気配はない。
「【魔王の骨】や【皮膚】も強化しましたが、触手の中心に柔軟な骨が出来たり、表面がゴムのような皮膚に包まれたり……何故か触手が丈夫になる方向でしか強化されません。何故……?」
「魔王グドゥラニスは姿を様々に変える事が出来ましたが、その大半はこの世界の者達から見て異形としか思えないものでした。
そのせいでは?」
「……所詮は他人の筋肉という事ですか」
『上手くいかないものですね。しかし……情報操作をするのなら、そろそろ時間かと』
アイラがそう言ったからではないが、気がつくと煙が晴れかけていた。このままでは、アルクレムの人間がヴァンダルー達を発見するのも時間の問題だろう。
何せ体長約100mの、異形の巨人を目にした直後なのだ。明らかに都の存亡にかかわる大事件だ。事態を確認するために、竜騎士が派遣されてもおかしくない。
いや、もしかしたら今頃、ヴァンダルーと同時期に都に来て滞在しているテイマーギルドモークシー支部のマスター、バッヘムと相棒のグレートワイバーンに、協力要請が騎士団から出されているかもしれない。
親しい知人とそんな形で会うのは避けたいが、このまま【転移】でダルシア達がいる別邸に逃げては、大騒ぎになってしまう。
ゼーゾレギンが祭られていた擬態人間の巣窟、『荒野の聖地』はヴァンダルーの【神霊魔術】によって、『ただの荒野』と化している。神殿の痕跡は、僅かな瓦礫にしか――。
その時、不意に地面が揺れ、神殿が存在した辺りの地面が陥没し始めた。咄嗟に【飛行】で地面から離れたヴァンダルー達が見ている前で、『ただの荒野』は『深い大穴のある荒野』へと変貌していく。
「……神殿の地下に広い空間があったようですね。それが崩落したのでしょう」
真実を知っているアルクレム公爵達からすれば、忌むべき魔物の巣だったので跡形もなく崩れたのは、幸いかもしれない。
しかし、アルクレムで生活する多くの人々にとって『荒野の聖地』は、邪悪な神フォルザジバルを封印するボルガドンを信仰する神殿で、封印を守る『崩山の騎士』ゴルディの一族たちが暮らす場所だ。
この惨状を知れば、悪神フォルザジバルが復活して聖地を破壊し尽くしたのだと考え、中にはパニックに陥る者もいるだろう。
「俺も、別邸ではここまでの事態になるとは思いませんでした。まさか、ゼーゾレギンが巨大化するとは……」
『それはともかく、どうします? 公爵には事態の収束を手伝うと約束していたようですが』
「そうですね……砲弾型使い魔王に煙幕を張ってもらって、その間に別邸の公爵達と相談しましょうか」
グファドガーンの【転移門】で別邸と空間を繋げ、ダルシアや公爵達に事の顛末をかいつまんで説明し、急いで作戦を練る。
真実を闇に葬るための戦いは、こうして始まったのだった。
アルクレムで生活する人々は、その日伝説を……いや、神話を目にした。
爆炎と轟音に沈んだと思われた『強奪の悪神』フォルザジバル(ゼーゾレギン)は、暫く爆発が続いていたと思ったら、何事も無かったかのように再びその巨体を露わにした。
恐ろしげな咆哮をあげ、黒い炎や電撃を『荒野の聖地』周辺に撒き散らすその姿に、傭兵ギルドに所属する命知らずな荒くれ者でさえ震え上がった。
復活した悪神が、自身を縛っていた神を祭る神殿を破壊し尽くしている。そして次にその怒りを向けられるのは、この街だ。人々はそう思い、絶望した。
だがその時、大地から悪神より一回り大きな巨体が現れた。それは山がそのまま巨人に変化したような姿をしており、悪神に向かって輝く光線を放ち、攻撃を始めた。
あの巨人は何なのか? 驚き困惑する人々に、城に戻り将兵の指揮を執ったタッカード・アルクレム公爵の演説が答えを告げた。
「あの巨人こそは、『荒野の聖地』を守り続けてきた一族が命をかけて呼び起こした『山の神』、ボルガドンの化身である!」
その言葉の衝撃に、人々は悪神と戦っている巨体を再度見つめた。人々の中で正体不明の巨人は、自分達を守るため、我が身を省みず悪神と戦う、偉大な神の雄姿へと変わった。
「だがボルガドンは力を完全には取り戻していない! どの神像とも異なるあの姿がその証拠である! 今も悪神の攻撃を受ける度に消耗しているのだ!」
ボルガドンの化身らしい巨体は、光線を放ちながらその巨体で悪神を押さえているが、攻撃を受ける度に大きく崩れ、土砂が地面に落ちていく。
少しでもそれを防ごうと身体の表面に木々が生え、根を伸ばすがあまりうまくいっていないように見えた。
人々の顔が再び不安と恐怖に染まる。しかし、公爵は続けた。
「そのボルガドンの援護に、今から『崩山の騎士』ゴルディを先頭に、我が『アルクレム五騎士』の勇士達と、『勝利の聖母』ダルシア殿、そしてヴィダの英雄達が向かう!
彼らならば必ずや『山の神』を助け、邪悪な神を退けてくれる事だろう! 皆は我々の勝利を信じ、神々に……ボルガドンとヴィダに祈って欲しい! それが彼等を支える力となるだろう!」
タッカード・アルクレムの演説によって、人々は落ち着き、パニックに陥る事はなかった。
そして演説通り、『轟炎の騎士』ブラバティーユや『遠雷の騎士』セルジオ等『アルクレム五騎士』や、ダルシア達が出陣し、ボルガドンと共に悪神相手に激戦を繰り広げたのだった。
「ぷぶぐるるるる」
ただし、『崩山の騎士』ゴルディはセイタンブラッドミミックスライムのキュールが擬態したものだったが。
「皆が来たみたいですね。一人で人形遊びをしているようで、つまらなかったので助かります」
『パウヴィナ、は?』
ヴァンダルーは、ダルシア達が来た事に気がついてほっと安堵の溜め息を吐いた。彼を抱えて上空二百メートル程の高さを飛んでいるラピエサージュは、仲良しのパウヴィナの姿を探して目を凝らす。
「パウヴィナは、ユリアーナと一緒にモークシーのダンジョンに一旦退避していますから、ここには居ませんよ」
『う゛うぅ~……』
残念そうに唸るラピエサージュの腕の中で、「すぐに会えますよ」と慰めるヴァンダルー。
彼が上空二百メートルの空で何をやっているのかと言うと、悪神とボルガドンの操作である。
この百メートル程の悪神と、百メートル以上のボルガドンは、どちらもヴァンダルーが【ゴーレム創成】で作った巨大ゴーレム、偽物の人形だ。
ゼーゾレギンの方は、姿を物見の塔に詰めている兵士等に見られている事を想定して、【魔王の外骨格】で包み、【魔王の墨】で色を付けて、外見は本物そっくりに偽装した。
その分手を抜いたと言う訳ではないが、ボルガドンの方は土砂をそのまま巨大なゴーレムにした。……ボルガドンの神像をヴァンダルーが見た事がなかった事と、現存している物も抽象的な物ばかりだったので、どの神像を真似てゴーレムを作っても、後でボロが出そうだった。
「あなたが万全な状態なら、話は早かったのですが」
ヴァンダルーが呼びかけるのは、ゼーゾレギンの魂を喰らった時に、口の中に残っていた魂、ボルガドン本人である。
『面目次第もない。ああ、情けない……情けない……』
ボルガドンはぼんやりと光る球体という、分かり易い魂の形状のままゼーゾレギンに利用されていた自分を恥じ続けていた。
ボルガドンが眠りについたとされてから約十万年経っているが、実際にはゼーゾレギンに吸収同化され、信仰を横取りされていた為に、彼は殆ど回復していない。
眠りにつかなければならない程ではないが、実体化して戦う事は勿論、姿を現す事も出来ない。
『チプラスの、同類?』
ラピエサージュにそう勘違いされる程、神としての存在感が薄い状態である。
『いや、我は元々人ではなく、ボティン様が大地の力と自身の魔力で創った御使いから昇華した神。ただ光っているだけで、彼等の同類ではない。
あと真の姿も、人間からはかけ離れているので……現代の人々が見ても、我だと気がついてくれるか分からない』
「なるほど。『影の神』ハムルのように、この世界の神様でも人らしくない姿の神様もいるのですね。……でも、偽ボルガドンの方も、もっと丈夫に作るべきだったかもしれません」
そう話しながらも、二体のゴーレムはがっちり組み合って、力比べをしている……ように見せかけている。実際は、偽ボルガドンが崩れそうになったので、偽ゼーゾレギンで支えているのだ。
流石に約百メートル以上の巨大ゴーレムを、土砂で作るのは無理があったらしい。
『もう少し、根を張ろうかねェ。ヴァンも、手伝っておくれ』
アイゼンが根を張り巡らせて繋ぎ止めようとしているが、人型で動いているせいであまり上手くいっていないようだ。
「では糸で土砂を繋ぎ止めましょう。後、血はいりますか?」
『欲しいねぇ、頼むよ』
ヴァンダルーも精製した糸で偽ボルガドンの維持に協力し、更にアイゼンに血を飲ませる。彼女もすっかり吸血樹だ。
『メ~ラメラ~♪』
『普通の電撃の演技って、意外と難しいねぇ』
『行ったりぃ~っ! 来たりぃぃぃぃ!』
ちなみに、悪神が放つ黒い炎はレビア王女達火属性のゴースト、電撃はキンバリー達雷のゴーストが演出している。ボルガドンが放つ光線はベールケルト達光属性のゴーストである。
勿論攻撃しているのではなく、ただ黒く燃えたり光ったりしながら、両ゴーレムの間を行き来しているだけだ。
ちなみに、悪神の恐ろしげな咆哮はグファドガーンとヤマタの担当だ。空間を歪め、ヤマタの声を響かせ拡大させている。
『ヴァン君、アタシちょっと暇なんだけど~』
「氷は遠目には目立たないですからね。母さん達の攻撃が始まったら、悪神ゴーレムの血をアイラと作ってもらうので、もう少し待ってください」
攻撃を受けた悪神が血を流しているように、オルビアの【流体操作】スキルとアイラの水属性魔術で演出する予定なのだ。
「では、これからが茶番劇の本番です」
こうして始まった茶番劇によって、ダルシア達の激しい集中攻撃を悪神に加えている演技を行い、ヴァンダルーはゴーレムを操作して、しぶとく粘る悪神を演出した。
地元のB級冒険者や、テイマーギルドモークシー支部のギルドマスターバッヘムが真実を知らないまま、この茶番劇に加わった。しかし、悪神ゴーレムの表面を覆う【魔王の外骨格】が強固で、生半可な攻撃を通さないためと、何よりその巨体から尋常な存在ではないと信じ込み、悪神が偽物だとばれる事はなかった。
アルクレムの人々は『アルクレム五騎士』の奮闘、『勝利の聖母』ダルシアが御使いをその身に宿す女神の恩寵、ギザニアやミューゼ、プリベル達ヴィダの新種族の英雄とアーサー達英雄候補の活躍、そして満身創痍になりながら悪神を押さえ続けるボルガドンの姿を目にした。
そして戦いの結果、『崩山の騎士』ゴルディは名誉の戦死を遂げ、彼の一族がいた『荒野の聖地』も壊滅。しかし、ダルシア達の活躍で悪神は倒れボルガドンに再び封印された。アルクレム公爵領の平和は守られたのだ。
このように捏造され、真実は闇に葬られたのだった。擬態人間や『共食いの邪神』ゼーゾレギンが存在したと言う事実は、別邸に居た限られた者達以外知る事はない。
ゴルディの葬儀は、彼の遺体が回収できなかったため傷ついた彼の宝剣を遺体の代わりに葬る事になった。彼の妻子を含めた一族も、同様に遺品(という事にした品)を棺桶に入れて葬っている。
後日、公爵家に仕える宮廷魔術師や、魔術師ギルドの魔術師が荒野に残された黒い結晶や、戦場に残存する魔力を調べたが、茶番劇が疑われる事はなかった。
「恐ろしい程強大な魔力が、今もこの土地に残されている。こうしているだけで、寒気が止まらない。これほど冷たく、悍ましい魔力の主は邪悪な神々以外あり得ないでしょう」
それどころかこのように証言し、茶番劇の説得力を補強してくれた。
アミッド帝国のアルダ大神殿の新教皇、エイリークがアルクレム公爵領で起きた悪神復活の影には、魔王が糸を引いていたと発表し、オルバウム選王国でも他の公爵領の中には事実の捏造を疑う者もいた。
しかし、それらをアルクレムの人々が信じる事はなく、アルクレム公爵家と騎士達の威信は守られたのだった。
《【従群超強化】、【糸精製】、【ゴーレム創成】スキルのレベルが上がりました!》
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・名前:レビア
・ランク:13
・種族:セイタンプロミネンスゴースト
・レベル:22
・パッシブスキル
霊体:10Lv
精神汚染:5Lv
炎熱精密操作:2Lv(炎熱操作から覚醒!)
炎無効
具現化:1Lv(実体化から覚醒!)
魔力増強:10Lv(UP!)
自己超強化:従属:1Lv(自己強化:従属から覚醒!)
自己強化:魔王の血:10Lv(UP!)
自己強化:導き:7Lv(UP!)
能力値強化:創造主:9Lv(UP!)
・アクティブスキル
家事:5Lv
射出:10Lv
憑依:5Lv
忍び足:3Lv(UP!)
遠隔操作:10Lv(UP!)
格闘術:4Lv(UP!)
盾術:4Lv(UP!)
限界突破:7Lv(UP!)
恐怖のオーラ:10Lv(UP!)
火属性魔術:5Lv(UP!)
魔術制御:2Lv(NEW!)
歌唱:1Lv(NEW!)
舞踏:1Lv(NEW!)
・ユニークスキル
ヴァンダルーの加護
タロスの加護(NEW!)
・名前:オルビア
・ランク:12
・種族:ディープケイオスブロードゴースト
・レベル:80
・パッシブスキル
霊体:10Lv
精神汚染:6Lv
水属性無効
流体操作:5Lv(UP!)
実体化:10Lv(UP!)
魔力増強:8Lv(UP!)
土属性耐性:10Lv(UP!)
自己強化:従属:4Lv(UP!)
自己強化:魔王の血:8Lv(UP!)
自己強化:導き:5Lv(UP!)
能力値強化:創造主:6Lv(UP!)
・アクティブスキル
格闘術:5Lv(UP!)
漁:3Lv
家事:3Lv
舞踏:6Lv(UP!)
射出:10Lv(UP!)
遠隔操作:7Lv(UP!)
無属性魔術:2Lv(UP!)
水属性魔術:7Lv(UP!)
土属性魔術:5Lv(UP!)
魔術制御:5Lv(UP!)
歌唱:2Lv(NEW!)
鎧術:3Lv(NEW!)
憑依:1Lv(NEW!)
・ユニークスキル
メレベベイルの加護
ヴァンダルーの加護
・名前:キンバリー
・ランク:11
・種族:イビルシュバルツブリッツゴースト
・レベル:87
・パッシブスキル
霊体:10Lv(UP!)
精神汚染:3Lv
風属性無効
雷体操作:10Lv(UP!)
実体化:8Lv(UP!)
直感:4Lv(UP!)
魔力増大:6Lv(UP!)
自己強化:従属:7Lv(UP!)
自己強化:魔王の血:4Lv(UP!)
自己強化:導き:6Lv(UP!)
能力値強化:創造主:6Lv(UP!)
・アクティブスキル
忍び足:6Lv
罠:5Lv
射出:9Lv(UP!)
憑依:5Lv
遠隔操作:8Lv(UP!)
弓術:7Lv(UP!)
格闘術:3Lv(NEW!)
短剣術:5Lv(NEW!)
限界突破:4Lv(NEW!)
・ユニークスキル
ヴァンダルーの加護
ガレスの加護(NEW!)
コミックウォーカーとニコニコ静画で拙作のコミカライズが始まりました! もしよろしければ第一話をご覧ください。
また、書籍版第四巻が7月発売予定です。一二三書房公式ホームページの商品情報→発売予定のタイトルで、カバーイラストと試し読みが公開されました! 是非ご覧ください!
270話は7月10日に投稿する予定です。




