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四度目は嫌な死属性魔術師  作者: デンスケ
第十一章 アルクレム公爵領編二
320/515

二百六十話 改めて知る真実と心の友

《【高速飛行】スキルを獲得しました!》




 魔術やマジックアイテムを使わなければ飛行する事が出来ない種族は、【高速飛行】スキルを習得する事が出来ない。

 つまり竜人やハーピィー等翼を持つ種族か、吸血鬼のように飛ぶことが出来る種族以外は習得できないスキルなのである。


 そのスキルをヴァンダルーは【魔王の欠片】と使い魔王によって、獲得した。それだけ、推定ランク11程のフライングクラーケンとの戦いは激しかった。

 ボークスや骨人、ミハエルなどランクではヴァンダルー側が上だが、フライングクラーケン達は数が多い上に【物理耐性】スキルを持ち、素の状態の生命力も高い。


 しかし、ダルシアやボークスが接近戦を挑み、骨人やミハエルが中距離から、そしてプリベルやジーナが後衛から援護する事で順当に倒していった。


 その戦いが終わり、残りのフライングクラーケンが逃げ散った後。

 闇をそのまま練る事が出来たら、こうなるのではないか。そんなねっとりとした物質を使って、ヴァンダルーはクワトロ号の甲板で、ちゃちゃっとパスタを作っていた。


 【高速飛行】スキルを手に入れたとか、A級ダンジョンならボスとして出現した場合大惨事を引き起こしていただろう強敵の群れを倒して手に入れた経験値で、【死霊魔術師】のレベルが100に到達したとか、そう言った事よりも、確かめなければならない事があるのだ。


『もうすっかり朝ですけど、潜水しなくていいんですかい?』

 今までは人目を避けるため、クワトロ号は空を飛ぶのは夜だけで、昼は海面から見えない水深二百メートル以下の深海を航海していた。


「人目はもう無いでしょうから、今日はいいでしょう。深海でまたクラーケンと遭遇しても面倒ですし。目的地が近づいたら、また潜ってもらう事になりますが」

『夜に船影を見なくなって、何日も経つからな。この辺りには、俺達以外には誰も居ないんじゃないか?』

「普通の船がもし迷い込んでも、あのフライングクラーケンの群れに沈められてしまってこの辺りには辿りつけないだろうから、大丈夫だと思うわ」


『では、そう言う事で。お前達、今日から暫くは空中と海上のみの航行となる! 甲板での作業を続けろ!』


『墨袋は破かないよう、丁寧に扱え! 手先の器用さに自信のない奴は、触手の処理に回れ!』

 オーナーであるヴァンダルーとボークスやダルシアの意見に従い、『死海四船長』達が船員アンデッドに指示を飛ばして、小ぶりなフライングクラーケンの解体作業を続ける。


 クワトロ号には、ヴァンダルー達が原種吸血鬼ビルカインの拠点で発見したアイテムボックス。無限に物品を収納する事が可能で内部は時間の流れが止まっているので長期保存が可能と言う、下手なオリハルコン製の武具よりもずっと希少で高価なマジックアイテムがある。なので、今急いでクラーケンを解体する必要はない。


 ないのだが、ヴァンダルーがクラーケンの墨や、食材としての味が気になるので一匹だけ処理する事にしたのだ。……各部位を少しずつ切り取る方法もあるが、どうせそのうちするのだから、ついでに作業に慣れておきたいと言う建前もある。


『深海の悪魔、クラーケンもこうなっちまったらただの獲物だぜ!』

『ヒャッハー! ボスの手下になれてラッキーだぜぇ! こうして自分の仇討が出来るんだからよぉ!』

 船員アンデッド達の何割かの本音は、生前自分達の船が沈んだ原因になったクラーケンに対する仕返しがしたかったからのようだ。


 それをクラーケンによる襲撃以外の理由で死んだ船員達が、生温かいまなざしで見守ったり、『あまりはしゃぐなよ』と肩を叩いて諌めたりしている。


『お~、船影は見えないけど遠くでクラーケンが飛んでるよ』

「大きな鳥の魔物を狙っているみたいだね。もしかしたら、クワトロ号を狙ったのも獲物と間違えたからかも」

 周囲を警戒しながらも、どこかほのぼのとした様子で話すジーナとプリベル。二人の鼻腔を、食欲を刺激する香りがくすぐる。


「イカスミ……もとい、フライングクラーケンスミのパスタが出来ましたよー」

 そして朝食兼試食用のパスタが出来上がった。スミに含まれる毒だけを【消毒】の魔術で消し、滑らかなソースに仕上げた一品である。


 見た目は真っ黒でとても美味しそうには見えないが、既にダンジョンで手に入るイカの魔物から取れるイカスミを使った料理を知っている面々は、特に抵抗感なく皿を受け取って行く。


『人間の国じゃあ、漁師か冒険者か酔狂な金持ちぐらいしか食えないし、食わない墨料理。まさか、それを死んでから……しかも、クラーケンのスミを使った料理を食べられるとは。アンデッドになって良かった!』

『人魚国だと名物料理に使われているし、魔大陸でも普通に食べられているみたいだけどね』


「やっぱり鮮度や環境で食文化も変わりますね。それはともかく、冷めないうちにどうぞ」

「そうね、いただきます!」


 フライングクラーケンの墨は、毒さえ消せば旨味を大量に含んだ素晴らしい食材だった。それを活かして作ったソースは舌触りも滑らかで、濃厚な味わいでパスタによく絡む。

『うめぇ! 相変わらず坊主の作る飯はうめぇ! それともフライングクラーケンのスミを使ってるからか!?』

『いや、違う。同じ重さの純金よりも高価と謳われる、クラーケンの墨で作るソース。私は生前一度だけ味わったが、その時よりも美味く感じる。その料理はパスタではなく、スープだったが』


 ラムダではクラーケンの墨は貴重な錬金術の素材なのだが、生前A級冒険者でS級昇格も確実視されていたミハエルは口にした事があったようだ。

 王侯貴族はその富と権勢を周囲に誇示するため、高価で珍しい食材を使ったご馳走をパーティーなどで振る舞う事が多い。そうした催しに参加した経験があるのだろう。


「鮮度が良いからでしょうか? これは狩りたてのスミを使いましたし……ミハエルが食べたのは普通のクラーケンのスミでしょうから、こちらの方が素材としても上等なのかもしれません」

『いえ、あの時味わったスミには強い苦みがありました。恐らく、毒を解毒するために行った処理が原因でしょう。

 このパスタにはそれがない。陛下の【消毒】が毒を完全に消し、それ以外には何の影響も残さなかったから、その分味が良くなったのかと』


 ミハエルの推測にヴァンダルー達は、なるほど、と頷いた。

『ただ、錬金術の素材としての価値にはスミの毒も含まれているから、食材にしない分のスミは【消毒】しない方がいいと思うよ』

『まあ、解体した一匹分の墨袋で、大樽十個分の墨が採れましたし、当分はこれで十分ですな。

 それで主よ、確認ですがクラーケンのスミは食材としてどうです?』


「十分すぎる程通用します。『地球』のイカスミよりも美味しい……のかもしれません」

 ヴァンダルーは『地球』や『オリジン』でイカスミを口にした経験はなかった。以前ズルワーンに連れられて、魂のみの状態で『地球』に戻った時も、特別興味があった訳ではないので殊更調べようとは思わなかった。


 しかし、以前見たテレビ番組で、イカのスミは天敵に自分だと誤認させるために使うため、水中ですぐに広がらないようねっとりしている。それに対してタコはスミを煙幕として使うため、サラサラしていて水中にすぐ広まってしまうと、解説していたと記憶していた。


 そのため食材として使うには、タコよりイカのスミが優れているのだとも。

 しかし、そのヴァンダルーの認識に『死海四船長』の一人、元海賊船の船長だった男が異を唱えた。


『イカスミよりもって、タコのスミと比べてはどうなんです?』

「タコのスミですか?」

『ええ、俺は生きていた頃、クラーケン程じゃないがデカいタコを仕留めましてね、そのスミで料理を作らせたら、美味いのなんのって。イカのスミよりも美味くて、驚いたもんでさぁ。……まあ、このパスタ程じゃなかったですがね』


『おい、だったら『地球』のタコのスミより美味いのではないのか?』

『それもそうか』

 同僚からそう言われ、元海賊船の船長はカタカタと骨を鳴らして笑うと、食事を再開しようとした。


「イカよりタコのスミの方が美味しいとは、初耳です」

「そうなの? じゃあ、『地球』とこの世界のイカやタコは、スミの美味しさに違いがあるのかもしれないわね」

「母さんの言う通り、世界が違うからかもしれないけれど……俺も『地球』のイカスミ料理を口にした経験はないし、以前『地球』に魂だけの状態で行った時は、イカやタコのスミに関しては興味がなかったので聞きませんでしたからね。

 俺が知らないだけだった可能性もあります」


 後日、レギオンやカナコ達にイカやタコのスミについて尋ねてみると、元アイドルで『オリジン』ではグルメ番組に出た事もあるカナコが覚えていた。

 『オリジン』の場合、イカとタコ、それぞれのスミは、タコスミの方が含まれる旨味成分が多く美味であると。ただ、タコスミは取れる量が少ないため、イカスミに比べると高価になるため、一般にはイカスミの方が流通しているらしい。


 『地球』でどうなのかは、カナコ達にとって既に三十年以上昔の事なので覚えていないそうだが、多分同じだろう。

どうやら、ヴァンダルーの記憶違いだったらしい。【完全記録術】スキルを獲得した彼だが、獲得する前の記憶は完全とはいかないのだった。


「へー、ボクも知らなかったよ」

『その下半身なのに、知らないの!?』

 思わず呟いたプリベルに、ザンディアが驚きの声をあげる。


「スキュラに自分達の墨を食べる文化はないよ! 君達だって、自分の流した汗を集めて料理に使う事はないでしょ?」

 どうやらスキュラ達にとって、自身が分泌するスミは人が流す汗や涙と似たような認識らしい。事実、スキュラにとっては体液の一つではある。


「なるほど。まあ、スミの事は後で調べるとして……それよりも変身装具の使い心地はどうでしたか? リオエンとタロスのアーティファクトは、完成品一号と二号なので、感想を聞かせてください」

 『暗海の邪神』ギュバルゾーの骨から削り出して作った杖に、対抗意識と嫉妬を燃やしたヴィダ派の神々の発案で、ヴァンダルーが製作する事になった変身装具のアーティファクト。


 それらはタレアにも手伝ってもらって製作を進めているが、中々進展していなかった。


「初めて変身して使い心地は良かったんだけど、なんだか微妙な違和感がある感じかな? リオエンの御使いか分霊と、ボクは相性が良くないのかも」

 プリベルは少し考えた後に、そう感想を述べた。彼女も装具に宿っている御使いと会話が出来る訳ではないが、お互いに「何故この組み合わせ?」と思っているのが、感覚で分かってしまいそれが違和感になっているようだ。


「なるほど。じゃあ、リオエンの御使いは他の器に入ってもらって、プリベルの装具には他の御使いに合うよう調整し直しましょう」

「へぇ、そう言う事が出来るんだ」


「出来るのです。具体的には変身した時の意匠を変えるとか、そう言う作業になります。凄いでしょう?」

「うんうん、すごいすごい」

『陛下君、私の方は違和感なかったよ! 上半身だけだったけど、【御使い降臨】を使っているような感覚だったよ』


 一方、ジーナとタロスの変身装具の相性は良かったようだ。

『下半身は陛下君が見ていてくれたしね』

「見ていただけで、何もしていませんが」

「むぅ。足の本数はボクの方が上だけど、流石に分離は出来ないからなぁ」


 奇妙な対抗意識を燃やすプリベルを応援するように、遠くでフライングクラーケンが飛びあがり、着水する音が響いたのだった。

 ちなみに、ジョブチェンジはクワトロ号の船室の一つを改装して作った部屋で行い、【弦術士】になった。新しく手に入れた【魔王の絹糸腺】をより活かせるようになるのではないかと、期待しての選択である。




《【糸精製】、【操糸術】のレベルが上がりました!》




 使者から告げられたアルクレム公爵との非公式なお茶会を明日に控えたヴァンダルー一行は、のんびりとアルクレム観光を楽しんでいる……ように他者には見えただろう。

 実際、奴隷商人が軒を連ねる一画をうろついたり、昨夜決闘した『アルクレム屋台五芒星』の店で買い食いをしたり、ヴィダ神殿を訪ねたり、行楽を楽しんでいる面もあった。


「この町の奴隷は活き活きしていて、俺に誘われるような者は居ないようですね。少なくとも、表通りでは」

 ただ、行楽以外の意味もあったが。

 奴隷に堕ち、人生に絶望している者はヴァンダルーの姿を見ただけで誘引され、導かれる場合が多々ある。そうした者はいないかと奴隷商の店をざっと見て回ったのだが、そうした者はいなかった。


「皆、目をギラギラさせて自分を売り込んでいたな。……逆に、拙者達から露骨に目を逸らす奴隷も少なくなかったように思うが。

 あの違いは何なのだろう?」


 奴隷制度が存在しない境界山脈内部の国々出身のギザニアが、奴隷達の態度の違いに首を傾げる。それに答えたのはカチアだった。

「多分、借金奴隷と普通の奴隷……その中でも高級奴隷の違いだと思う。借金奴隷は、働いて借金を返せば自由の身になれるから、一刻も早く買われたがる奴隷が多いのよ」


 借金奴隷は、一般的な奴隷のイメージと異なり、主人もそれなりの扱いをしなければならないし、命を奪えば殺人の罪で捕まってしまう。

 だが借金を返さないといつまでも自由に成れず、あまりに売れないと鉱山等過酷な肉体労働をさせなければならず、危険の割に稼ぎも悪い現場に送られてしまう。


 そのため、いち早く売れようと、彼らはヴァンダルー達に必死でアピールしていたのだろう。

「凄かったよねー、肉体労働なら任せてくださいって。誘引するどころか、ヴァン君が誘引されかけるし」

「プリベル、あんないい肉体を見せられては、仕方ありませんよ」


 ムッチムチではなく、ムッキムキのマッチョ達がポーズを決めながら、「買ってくれ!」とアピールしているのを見る度に、フラフラと近寄ろうとするヴァンダルーを、プリベルの触腕やギザニアの節足が掴んで止めていたのだった。


『借金を返したら解放しなければならない上に、導けるか分からない奴隷を買うのはデメリットしかありませんと、何度申しても聞いていただけないとは……!』

『仕方ありません。陛下は筋肉に弱いのですもの』


『……分からん。それほど欲しいのならば、購入後洗脳して吸血鬼にしてしまえば良いだろうに。そうすれば、導きも確実に成功するし、万が一失敗してもヴァンダルー様の庇護下から離れる事は不可能になる筈だ。

 だと言うのに、何故聞いていただけないのか』


 姿を消したままのチプラスが嘆き、レビア王女が諦め、ダロークが自分の凄まじく物騒な提案の何処に問題があるのかと、悩んでいる。


「なるほど。それは分かったのでござるが、目を逸らした方の後宮奴隷とは……ヴァン殿と某達を見て、需要は無いと思ったのでござるかな?」

「……多分勘違いしているわね。後宮じゃなくて、高級。高価な奴隷って意味よ。大きな商会を経営する商人や、貴族、成功した冒険者向けの奴隷よ」


 見目が良いだけではなく、話術に長けていたり、歌や踊りが得意だったり、大金を払ってでも欲しいと思わせるような才能や特技を持ち、訓練を受けている奴隷である。

「ある騎士は、武功への褒賞として与えられた高級奴隷を妻として娶った。と言う話もあるそうです。

 俺達が高級奴隷を買うような身分と経済力の持ち主には、見えなかったのでしょう」


「なるほど。あの者達と違って導けなかったのも、道理でござるな」

 ミューゼがぼかして言った「あの者達」とは、ヴァンダルーが犯罪組織を乗っ取った際に助けたり、ブラガ達が『顔剥ぎ魔』として活躍している最中に保護したりした、奴隷や囚われていた者達の事だ。


 攫われて無理矢理奴隷とされ、虐待や凌辱、過酷な労働を強いられていた奴隷達は、ヴァンダルーを直接目にしただけで……中にはゴブリン通信機越しの声を聞いただけで導かれた者もいた。

 そんな奴隷達も、今は【転移】によってタロスヘイムに運ばれ、身体と心を休めている。


「中々思ったようにはいかないな」

「俺を見ただけで影響を受ける人がいないのは、良い事ではあります。生を諦めている人がいないという事ですし」

 スラム街を虱潰しにして探せば、そうした者も何人かいるかもしれないが、そこまでする時間もない。


「それで、周囲の人たちはどんな様子ですか?」

『はっ! 昨夜よりも多くの密偵と思われる者達が、昨夜よりも遠巻きに潜んでいる模様! 始末しますか?』

「しません」

『昨日見逃したラルメイアが、何か話したんだ! どうする!? 生かしておきますか!?』

「しませ……します、します、生かします」


 ダロークとは逆に、「密偵達を生かしておきますか?」と尋ねたベールケルトの言葉に首を横に振りかけたヴァンダルーは、慌てて言い直した。

『ああああああっ! もう少しだったのにぃぃぃ!』

『同属性のゴーストを増やすのは、他の機会にして。ところで冒険者ギルドはもういいの? すぐ出てきちゃったけど』


「ええ、顔を出しただけですから。冒険者学校に関する話を聞く代わりに、冊子を貰えましたし」

 ヴァンダルー達が訊ねた冒険者ギルドでの対応は、非常に簡素で短かった。建物に入り、受付カウンターに辿りつく前にギルド職員がやって来て、複数の冊子や書類を差し出されたのだ。


 その中には、ヴァンダルーが聞きたかった冒険者学校に関して書かれた物もあった。内容は……端的に言うと、我々では扱いきれないので、オルバウム選王国の中心、選王領のギルドにある冒険者学校に行ってはどうかと言う提案と、推薦状であった。


 十中八九、ラルメイアが公爵にもたらした情報が原因だろう。……残りの一、ヴァンダルー達の普段の素行やこれまでの行いが原因である可能性も、否定できないが。

 ギルドが抱える上位の冒険者にヴィダの新種族を嫌う者が複数存在し、彼等とトラブルを起こす事を嫌ったとか。


「何にしても、アルクレム公爵が俺達の事をどう考えたのかに依るのでしょうが。少なくとも、抱え込みたいとは思っていないようですけど」

「寧ろ、適度な距離を保ちたいと言う感じでござるな。密偵達の数と距離も、某らに対する警戒心の表れでござろう」


「まあ、それはともかく……ふしゅるるるぅっ」

 ヴァンダルーは素早く自身の偽物を、吐き出した糸で編み上げる。それをギザニアが抱きかかえるようにして持つと、空間属性のゴースト達の【短距離転移】で、路地裏に一人移動して駆けて行く。


 密偵達はそれに気がつかず、ヴァンダルーそっくりな縫いぐるみを抱えたギザニア達を追いかけて行った。


 誰にも尾行されていない事を確認して、ヴァンダルーはブラガが仮のアジトとして使っていた裏路地にある廃屋に向かった。

 そして、待つ事暫し。見覚えのある大男が、三人の仲間を連れて廃屋に入って来た。


「改めてご挨拶を。私の名はアーサー。こちらは私の妹のカリニア、そして心友であるボルゾフォイとミリアムです」

「あ、あの……」

「こちらこそ。俺はヴァンダルー・ザッカート。アーサーさんにカリニアさん、そして二人の心友のボルゾフォイさんにミリアムさんですね? よろしくお願いします」

「あぁぁぁぁぁ……」


 昨日、屋台で交わした待ち合わせに指定した場所で、挨拶を交わす二人。何故かミリアムと言う少女が、助けを求めるように呻いているが、どうしたのだろうかとヴァンダルーは思った。

 しかし、心友であるはずのアーサー達が特に反応していないので、特に気にしないことにした。


「それで、俺に用があるという事ですが、どのようなご用件でしょうか?」

「はい。あなたにご足労を願ったのは他でもありません。我等三人に加護を賜った神からの神託によるものです。後は、神々が自ら話すと。

 後、昨日の串焼きとても美味しかったです」


「それは何よりです。それはともかく……神々が、ですか?」

 そう聞き返した時には、ヴァンダルーの意識は肉体から離れていた。切り離された訳ではなく、使い魔王のように肉体も動かす事が出来るから、ただ魂と肉体を離されたという感じだ。


 そして招かれた神域は、しとしとと雨が降る、暗い森。そしてヴァンダルーを待ち受けていたのは、俯いている黒い髪を長く伸ばした女神と、凹凸の大きい体つきをしているが何処か暗い雰囲気の女神、そして女神か男神か判別できない神の三柱だった。


『ようこそおいで下さいました。……我は、『雨雲の女神』バシャス。まずは、勝手に招いた事をお詫びします』

『我は、『闇夜の女神』ゼルゼリア。我々はフィトゥンと同じくアルダ派の若き神』

『『影の神』ハムル。属性も、我とゼルゼリアが光、バシャスが風。故に汝との接触には慎重を期さなければならなかった。ご理解いただきたい』


 アルダ派の神々だと聞いてヴァンダルーは反射的に緊張したが、すぐにそれを解いた。アーサー達が姿を現した時から今までずっと【危険感知:死】に反応が無く、更に三柱の神々から殺意や敵意を感じないからだ。

 寧ろ、友好的な……と言うか、グファドガーンが自分に向ける感情と似ているものを感じる。


『この度……我々のヴィダ派への転向を認め、橋渡しをお願いしたく、お招きしました』

 そして、バシャスの言葉は、タロスヘイムの建造物の屋根に描いた【精神侵食】スキルの効果を込めた絵が、神々にまで影響を与えていた事を知らなかったヴァンダルーにとって、驚愕に値するものだった。




《【冥魔創夢道誘引】、【導き:冥魔創夢道】のレベルが上がりました!》




――――――――――――――――――――――




・名前:ヴァンダルー・ザッカート

・種族:ダンピール(母:女神)

・年齢:11歳

・二つ名:【グールエンペラー】 【蝕帝】 【開拓地の守護者】 【ヴィダの御子】 【鱗帝】 【触帝】 【勇者】 【魔王】 【鬼帝】 【試練の攻略者】 【侵犯者】 【黒血帝】 【龍帝】 【屋台王】 【天才テイマー】 【歓楽街の真の支配者】 【変身装具の守護聖人】(NEW!)

・ジョブ:弦術士

・レベル:0

・ジョブ履歴:死属性魔術師、ゴーレム錬成士、アンデッドテイマー、魂滅士、毒手使い、蟲使い、樹術士、魔導士、大敵、ゾンビメイカー、ゴーレム創成師、屍鬼官、魔王使い、冥導士、迷宮創造者、創導士、冥医、病魔、魔砲士、霊闘士、付与片士、夢導士、魔王、デミウルゴス、鞭舌禍、神敵、死霊魔術師


・能力値

生命力:373,162 (5,514UP!)

魔力 :7,440,347,696+(6,696,312,926)  (合計474,552,696UP!)

力  :43,351 (535UP!)

敏捷 :39,536 (583UP!)

体力 :47,047 (694UP!)

知力 :56,398 (1,904UP!)




・パッシブスキル

剛力:4Lv

超速再生:1Lv

冥王魔術:7Lv

状態異常無効

魔術耐性:9Lv

闇視

冥魔創夢道誘引:9Lv(UP!)

詠唱破棄:9Lv

導き:冥魔創夢道:9Lv(UP!)

魔力常時回復:1Lv

従群超強化:2Lv

猛毒分泌:牙爪舌:3Lv

敏捷強化:9Lv

身体伸縮(舌):10Lv

無手時攻撃力強化:極大

身体強化(髪爪舌牙):10Lv

糸精製:8Lv(UP!)

魔力増大:9Lv

魔力回復速度上昇:9Lv

魔砲発動時攻撃力強化:大

生命力増強:2Lv

能力値強化:君臨:5Lv(UP!)

能力値強化:被信仰:3Lv(UP!)

能力値強化:ヴィダル魔帝国:1Lv(NEW!)


・アクティブスキル

業血:10Lv

限界超越:7Lv

ゴーレム創成:6Lv

虚王魔術:5Lv

魔術精密制御:1Lv

料理:8Lv

錬金術:10Lv

魂格滅闘術:4Lv

同時多発動:3Lv

手術:8Lv

具現化:4Lv

連携:10Lv

超速思考:6Lv

指揮:10Lv

操糸術:7Lv(UP!)

投擲術:10Lv

叫喚:7Lv

神霊魔術:1Lv

魔王砲術:3Lv

鎧術:9Lv

盾術:9Lv

装影群術:7Lv

欠片限界突破:9Lv

整霊:1Lv

鞭術:3Lv

霊体変化:雷

杖術:1Lv

高速飛行:1Lv(NEW!)



・ユニークスキル

神喰らい:7Lv

異貌魂魄

精神侵食:9Lv

迷宮創造:4Lv

魔王:8Lv(UP!)

深淵:8Lv

神敵

魂喰らい:8Lv

ヴィダの加護

地球の神の加護

群体思考:6Lv

ザンタークの加護

群体操作:7Lv

魂魄体:4Lv

魔王の魔眼

オリジンの神の加護

リクレントの加護

ズルワーンの加護

完全記録術

魂魄限界突破:1Lv

変異誘発

魔王の肉体(魔王の卵管、魔王の絹糸腺が合流!)

亜神




・呪い

 前世経験値持越し不能

 既存ジョブ不能

 経験値自力取得不能




○ジョブ解説:死霊魔術師


精霊魔術師の死霊バージョン。死霊、ゴーストに魔力を渡し、魔術を行使して貰う事で、本来は呪文の詠唱の省略や、魔術の威力や精密さを向上させる事が出来る【死霊魔術】スキルに補正がかかるジョブ。

 しかし、ヴァンダルーの場合は魔力の桁が規格外であるため威力の向上ではなく、自身に適性の無い属性の魔術を使うためのスキルとジョブになっている。




○魔物解説:フライングクラーケン


 ランク11の魔物で、実は昔から存在する魔物。ある大陸の近海から遠洋の魔海に広く生息し、単体で生息するクラーケンと違い、群れで生活する社会性を持つ魔物。


 クラーケンと同じく巨体から繰り出す怪力や、毒を含んだ墨等の武器、更に最大の特徴として海面から空高く飛びあがり、遠くまで滑空する飛行能力を持っている。

 この飛行能力は空中の魔境、魔空に生息する大型の鳥の魔物やドラゴンを捕食する為に獲得したと思われる。


 今までフライングクラーケンが確認されていなかったのは、フライングクラーケンの姿形は普通のクラーケンとさほど違いがない(胴体の鰭が多少大きい)からと、普通の船を襲うのに空を飛ぶ必要がないため、見分けがつかないから。


 そして、フライングクラーケンが生息している海域に到達して、生きて人間社会に戻った者が今まで一人もいないからであろう。


 なお、毒を消した墨はクラーケンよりも美味で、高級食材としても需要がある。(ヴィダル魔帝国限定)

今回のタイトルを、「イア、イア、パスター」にするか少し悩みました(汗


5月31日に261話を投稿する予定です。

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― 新着の感想 ―
ベールケルトだいぶ賢くて好き。ほんとに狂犬か?
美味しい事は美味しいが、後日トイレでびっくりする事になるのがイカ墨パスタ
[気になる点] タレアってお嬢様口調じゃなかったでしたっけ?
感想一覧
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