二百六話 串焼き屋台を開く魔王を訪ねる飢狼
基本的に、人種に亜種はいないとされている。しかし、実際には同じ人種でも産まれた場所によって外見や体質が微妙に異なっていた。
北で生まれた者の肌は雪のように白く、逆に南では色素が濃く褐色から黒に近い肌を持つ。そしてどちらでも無い地域では、黄色い肌を持つ人種が多い。他にも筋肉組織や内臓に僅かながら違いがある。そんな時代もあったらしい。
一説には神代の時代、『炎と破壊の戦神』ザンタークや『大地と匠の母神』ボティンらと南に住んでいた人種の子孫が肌の色が濃い者達。『水と知識の女神』ペリアと、『風と芸術の神』シザリオンと共に北に住んでいた人種の子孫が肌の白い者達。そして残りの神々と住んでいた人種の子孫が黄色い肌の者達だとされていた。
「しかし魔王グドゥラニスとの戦いの後、数少ない生き残りは一か所に集められた。それから現在のように増えた過程で、人種の混血が進んだそうだ。その過程で特徴が平均化され、ステータスに差が出る程では無くなっていった。
結果、人種には亜種はいないと言うのが定説になっている。……なっていたと言うべきかね」
「なるほど、異世界には異世界の歴史があるわけだな」
落ち着いた様子で解説するルチリアーノに、ダグは顔を強張らせながらそう感想を言った。
「それで……何であんたはストリップしてポーズを決めてるんだ? 答え次第でぶん殴るぞ」
そして針金のように細く、しかし引き締まった身体で謎のポージングを決めているルチリアーノに、拳を握りながらそう尋ねた。
「ストリップ? まだ上半身しか脱いでいないだろうに。後、殴るのなら念動力では無く拳の方で頼むよ。念動力の方だと、私は最悪死んでしまうからね」
「種族が変わった影響で身体にも変化が起きてないか調べているのね。ステータスで確認できない骨格とか、筋肉のつきかたとか、内臓の位置と数とか」
「正解。メリッサ君は察しが良くて助かる」
冥系人種となった事を含めてステータス上の変化は既に記録したルチリアーノは、ステータスで表示されない変化が起きていないかと自分の身体を観察する事で確認していたのだ。触診だけではなく、魔術も使って自分の身体の様子を調べている。
ルチリアーノも種族が変わった事に動揺はしているようだが……それは興奮と知的好奇心による物のようだ。
「【状態異常耐性】を含む幾つかのスキルを獲得したが、それが冥系人種の種族的特徴なのか、私の素質によるものなのか調べたい。しかし、今すぐ冷静に質問に答える事は君達には難しいだろう? だから、とりあえず自分自身を調べているのだよ!」
ルチリアーノよりも大きく動揺し喜びのあまり泣き出す者までいる様子の元奴隷の少女達を強引に調べようとしない分、周囲に配慮しているのだろう。彼の基準では。
「その冷静に質問に答える事が難しい女子供の前で、上半身裸で怪しげなポーズを決めて何言ってんだ」
しかしダグの言う通り、ルチリアーノの基準の配慮は他人にとっては意味が無い場合も多いのだった。
だがメリッサはそれよりも気になる事があるらしい。
「上半身までなら大丈夫でしょ。グールや巨人種の男の中にはそんな恰好の人もいるし。
それより調べた結果ダグ達はどうなったの? 日光に弱くなったとか、銀で肌が焼けたりするなら困るのよ」
「流石にすぐには分からんよ。一先ず、骨格や内臓の位置と数は変化していないと言う事だけだな。日光については地上に出ないと分からないが……銀については大丈夫だろう。シルバーのペンダントをしている君に抱き止められても、ダグ君の皮膚が焼けるような事は無かったようだしね」
それを指摘されたメリッサは半眼になり、ダグは思わず頬を紅くする。
「……自分も倒れ込んでいる最中だったのに、よく見てるわね」
「うむ、これでも研究者の端くれなのでね。
ドワーフや獣人種は冥系人種以外の種族になったようだが――」
「あたし、狼系獣人種から、魔狼系冥獣人種になりました! 【獣化】ってスキルも覚えました!」
「私達ドワーフはドヴェルグって種族になったよー! 人によって色が黒くなったり、青白くなったり、色々だよ!」
多少耳や尻尾の毛が増えている元獣人種の少女に、自己申告通り肌の色が変化している元ドワーフの少女の報告に頷いて、ルチリアーノは後ろを振り返った。
「まあ、彼女達の種族がどんな特性を持つ種族なのかも含めて、調べてから改めて報告しよう。それで良いかね、師匠?」
『構いませんよ。とりあえず、変異して能力値が下がったり、体調が悪くなったりした人はいないようですし。報告書はメリッサがモークシーの町に戻る時に受け取ります。
後、カナコ達と一緒にいるクノッヘンや、骨人の様子も見てもらえますか。……二人には【魔王の骨】を組み込んでいるので、何か変化しているかもしれませんし』
こちらも死属性魔術でいろいろ調べていた疑似本体型使い魔王が、そう答える。
『でも、とりあえず服を着なさい。後、下は皆の前では絶対脱がないように』
一方モークシーの町の商業ギルドでは、ヴァンダルーが疑似本体型使い魔王を通じて見た光景をダルシアに伝えていた。
「皆が望みどおりに変異して、それで無事なら良かったわ。
人種やドワーフだけじゃなくて、獣人種まで変化したのは意外だったけど、これで私がエルフをカオスエルフに変化させれば、世界中ヴィダの新種族になるわね」
そう言って、ダルシアは微笑んだ。
「冥系人種等は、俺の血を飲んだ事と【付与片士】のジョブ効果で変異したので、ヴィダの新種族とは言えないかも知れませんよ」
「そうかもしれないわね。でもこれからは人種やドワーフの転生者さんが私達に合流したい時は、導かれるのを待たなくても変異して貰えば済むようになったわね」
「……それはそれで、転生者達の精神的なハードルが高そうですけどね」
「それとヴァンダルー、私、遂に例の加護が全部表示されるようになったのよ! 予想通り、【ヴァンダルーの加護】だったの!」
それまでステータスでも文字が伏せられていた、例の加護。それが完全に明らかになった事をダルシアは喜び、ヴァンダルーを、赤ん坊に「高い高い」をするように持ち上げる。
何を話しているのかは【消音】の魔術で聞こえなくなっていても、ダルシアの大きな動きに商業ギルドの受付嬢や職員がギョッとするが、彼女は気にしていないようだ。
ヴァンダルーもあまり気にしてない。元々、ダークエルフとダンピールの母子と言う事で目立っている。それに奇行の十や二十加わっても誤差でしかないと言う認識のようだ。
「むぅ、遂に全て明らかに……これで否定できなくなってしまいました」
明らかになった真実……それまで表示されていた文字等から、とっくの昔に彼女を含めたヴァンダルーの仲間全員が、彼の加護だろうと気がついていた。
ただ、ヴァンダルー本人がそれを認めたがらないでいた。
「きっと【付与片士】に就いたのがきっかけね。もう巨大石像建立を止める事は出来ないかも」
その理由の一つが、タロスヘイムのヴィダ神殿の実質的な最高責任者ヌアザによる、巨大ヴァンダルー石像建立計画を止める為である。
加護を他者に与えるような神に等しい存在ならば、神像に等しい大きさの石像を神殿に建立しても構わないはず。そんな事を彼は日々訴えているのである。
「……別に意識してあげている訳じゃないのですけどねー。勿論、母さん達の力になれるのなら喜ばしい事ですけど」
「ヴァンダルーさん、手続きが終わりました。カウンターまでお越しください」
「あ、はーい」
受付嬢の呼び出しに従ってダルシアに持ち上げられたままカウンターに向かうと、受付嬢は憂いを漂わせた顔でヴァンダルーを待っていた。
そして金属製のカードを一枚差し出す。
「こちらが商業ギルドの仮登録証となっています。損傷や紛失の場合、再発行するには料金がかかるので気を付けてください」
「おぉ……分かりました」
「やったわね、ヴァンダルー!」
生まれて初めてのギルドの登録者カードを受け取って、ヴァンダルーは小さく感嘆の声を漏らした。
仮登録証は通常のギルドカードと材質は同じだが、名前と種族しか書かれておらずステータスを表示する機能も無い。しかし、晴れて審査に合格した時この仮登録証に再び加工が施され、正式なギルドカードになるのである。
そして仮登録証でも、身分証としての効果は正式なギルドカード同様の効果がある。
「後……すみませんが、屋台を出す場所は東四番通りの『七色の霧』亭と『宵の杯』の間にある路地に決まりました」
目線を下げ、受付嬢が謝罪しながら屋台を開いて良い場所を教えた。だがそれは、ヴァンダルーには聞き覚えのある場所だった。
「東四番通り、ですか?」
小さな感動をすぐわきに退け、ヴァンダルーが確認の意味を込めて聞き返すと、受付嬢は同情的な眼差しを彼では無くダルシアに向けて頷いた。
「はい、東四番通りです。申し訳ありませんが、そこ以外の場所で屋台を開いた事が分かった場合、ペナルティが課せられてしまいます。
変更は通常は受け付けていません。……ギルドマスターは出張中で今月の半ばから再来月の頭まで留守にしています。ヨゼフさん以外のサブギルドマスターは、直訴しても……」
『どうやら、その東四番通りと言うのは余程問題のある場所のようですな』
ゴーストのチプラスが姿を消したまま、ヴァンダルーとダルシアにしか聞こえない声で呟く。
『スラム街か、それとも衛兵が見回りに来ない治安の悪い地域か……あの小者がヴァンダルー様に袖にされて大人しく引き下がるのはおかしいと思っていましたが、早速嫌がらせを始めたようですな』
受付嬢の言葉からも、ヨゼフがサブギルドマスターの権限を使って法律に反しない範囲で嫌がらせに出た事は察せられる。
法律に反しない嫌がらせは、とても厄介なのだ。何せ衛兵に訴えても取り合ってくれないのだから。
『やられる側に回ると、厄介さが分かりますな。ヴァンダルー様、こうなったら奴を洗脳して傀儡にし、しかる後に口を封じてしまいましょう』
『いえ、それほどではありません。寧ろ、好都合です』
そう提案するチプラスにヴァンダルーは生者の耳には届かない念話で答えると、受付嬢に分かりましたと頷いてカウンターから離れた。
「その……気を付けてください。お母さんも……最近、『飢狼』のマイケルって男が現れて瞬く間にその辺りを纏め上げてしまっていて……危険な奴らしいですから」
「ええ、ありがとう。気を付けるわね」
どうやら、このギルドのサブマスターは人間性に難があるようだが、受付嬢は良い人らしい。単に、ヨゼフの日ごろの行いが余程悪いのかもしれないが。
「ヴァンダルー、それで東四番通りってどんなところなの?」
「……エレオノーラ達がいる犯罪組織のアジトがある、この町の歓楽街です。『七色の霧』亭と『宵の杯』の間と言うのはよくわかりませんけど」
だがそのヨゼフの嫌がらせは、ヴァンダルー達にとっては微妙に嫌がらせになっていなかった。
『五色の刃』のリーダー、ハインツは魂に傷を負った状態がどんなものなのか、身を以て経験していた。
(分からない。自分がどんな状態なのか……思い出せない事があるのが傷のせいなのか、元々忘れていただけなのか、その違いが分からない。
感情も……罪悪感も、悲しみも何も沸いてこない。これは私が敗北感に打ちひしがれているからか? それとも、魂の感情を司る部分が傷ついているせいなのか?)
『魂と精神は異なるのですよ、ハインツ』
ハインツに今の彼の状態を教えた『眠りの女神』ミルは、穏やかな口調で答えた。
『記憶や感情は、魂が肉体の内部に在る時のみ正常に働くものです。今の貴方は魂が肉体から離れている状態です。記憶や感情が不確かなのは、そのせいもあります』
記憶を維持するには肉体にある脳が必要で、感情も肉体に大きな影響を受ける。アンデッドが記憶に欠損をきたし、負の感情を暴走させる事が多いのはそのためだ。
(では、魂が傷ついている私は、どんな状態にあるのですか?)
『それは、残念ながら分かりません』
穏やかな、しかし頼りないミルの返答にハインツの思考が止まった。
『ハインツ、神にも分からない事はあるのです。今のあなた程魂が傷ついた場合、普通なら生きてはいられませんから』
オリハルコンに代表される魔導金属製の武具による一撃や、超一流の魔術師が唱えた大魔術なら、本来触れる事が出来ない魂に傷を与える事が可能だ。
しかし、そんな一撃を受けた者は肉体に致命傷を受けてすぐに死んでしまう。ハインツのように、生きたまま魂が肉体から離れていた状態で、魂だけを傷つけられた者は過去に存在しなかった。
『そうして命を終えた魂達は、そのまま輪廻の輪を潜ります。極少数、神に招かれ御使いや英霊、そして従属神へと至る者も存在しますが、その場合は傷を癒してから存在を昇華させるので、魂が傷ついた状態で生きている人間の状態がどんなものなのか、詳しくは分かっていないのです。
しかし、推測は可能です』
そしてミルは、その推測をハインツに伝えた。
能力値の低下、スキルの喪失及びレベルの低下。魂が傷ついた事により魔力が本来の上限まで回復しない。そして肉体に戻った時四肢や肉体が麻痺し、急に痛み出す事がある。
そしてやはり記憶や感情、感覚の喪失……。
『ですがハインツ、あなたの魂は我が神域で治療を受けています。眠りは人を癒すもの……この治療が終わり身体に戻った時、あなたが重い症状に悩まされる事は無いでしょう』
砕かれ消滅してしまった場合は不可能だが、傷がついた程度ならミルのような『癒し』に関する権能を持つ神なら治療が可能なのだ。
しかしハインツが心配しているのは自分の事では無かった。
(では、私の仲間達はどうなりましたか?)
『……ジェニファーとダイアナは魂に傷を負っていません。あの魔王は二人の魂を傷つけようとしなかったようですから。
デライザも大丈夫です。あなたが負った傷よりも、彼女の傷は軽いから』
仲間の心配をするハインツに、ミルは彼女達の状態をざっと教えた。彼の魂から、安堵した様子が伝わってくる。
『ですが、エドガーの状態は悪く……予断を許さない状態です』
だが、エドガーの事を知るとハインツは激しく動揺した。
『彼の魂は砕ける寸前の状態で、本来であれば記憶も人格も摩耗しきった廃人となるのを止められない状態でした。とても私では癒す事は出来ません。
今、魂を司る神が彼の治療を行っていますが……廃人になる事を免れたとしても、以前と同じ彼では無くなっているかもしれません』
ミルは、ロドコルテの事をぼかしてエドガーの状態を説明した。普通なら傷病者に大きな精神的ショックを与えるのは良くないのだが、ハインツは魂の傷を癒した後、魔王……ヴァンダルーと戦わなければならない。
仲間の状態を伏せたままではおけないのだ。
(魔王……あのダンピールの少年、ヴァンダルーの憎悪は、私とデライザ、そしてエドガーにのみ向けられていた。いや、違う。彼は五対一の状況で、ダイアナとジェニファーを見逃す余裕と理性があった。そういう事か)
ハインツは胸に大きな穴を空けられたような、深い敗北感を覚えた。
あの時のハインツ達はヴァンダルーが魂を砕き、喰らう事が出来る事を知らなかったが、全力で戦った。しかしヴァンダルーはそれでも復讐の対象者を絞るだけの理性と、恐らく良心を残していた。それを確信したからだ。
『ハインツ、それは違います。かの魔王は確かに二人の魂を攻撃しませんでしたが、それは魔王にとって手加減には含まれなかったはずです』
(だとしてもミルよ、魂を攻撃する事は彼にとって手加減と同様に、負担では無かったはずです。それをしなかったと言う事は……やはり彼は復讐の対象を絞ったのでしょう)
ミルの言葉を否定したハインツは、思い出せるだけの記憶を辿ってヴァンダルーの事を思い出す。その戦い方は真面な人間には真似できるものでは無い。
しかし母親の仇では無い二人の魂には攻撃せず、偽物と分かっていても咄嗟に母親を庇ったのは事実だ。
(それに比べて私は……これでは、どちらが魔王なのか分かりません)
『ハインツ、それは違います。確かにかの者にも、彼なりの言い分や大義はあるでしょう。しかし、かの者の行いによって世界が乱れ、今後人類にとって大きな災厄となるのは――』
(その魔王を! 彼を魔王にしてしまったのは、この私だ! ……私が、彼の母親を売り渡したせいで……彼はあのような異形に、そして神を滅ぼすような恐ろしい存在になり果ててしまった)
ハインツはミルの言葉を遮って、そう叫んでいた。
過去にミルグ盾国の冒険者ギルドで依頼を受け、ダルシアを捕まえゴルダン高司祭に引き渡した事。ヴァンダルーと実際に戦うまでは、ハインツはその過去を仕方のない事だったと割り切り……割り切ったと己を偽っていた。
しかしヴァンダルーの幾らダンピールだとしても異様過ぎる姿と戦い方、そして十歳過ぎの少年である筈なのに自分達を圧倒する強さを目にし、そして今ミルから彼には魂を喰らうと言う魔王グドゥラニスを超える悍ましい力を持つに至っていた事を知り、更に敗北した事で、自己の正当化が維持できず破綻してしまった。
神々が魔王と呼ぶ存在が生まれるきっかけを、自分達が作ってしまった。それにより、ハインツはあの時ヴァンダルーに向かって言った言葉が、全て翻って自分に返って来た事を嫌でも自覚していた。
ミルグ盾国の遠征軍や、かつての仲間『緑風槍』のライリー、ハートナー公爵領やサウロン公爵領で起きた事件。それらに、自分も責任があるのだと。
しかし、それはハインツを含めて人が知り得る事から考えればの話だ。
『ハインツ……それは違います。もしあの時あなたが冒険者ギルドを経由したトーマス・パルパペック伯爵の依頼を受けなかったとしても、結局他の冒険者や聖ゴルダンの弟子達の誰かがあのダークエルフを捕まえ、彼女は処刑されていたはずです』
当時のダルシアは高く見積もってもD級冒険者の枠を超える力は無かった。ミルグ盾国のエブベジアの町周辺に潜伏していると知られた時点で、ハインツが依頼を受けても受けなくても捕まるのは避けられない事態だったのだ。
そして結局ヴァンダルーは復讐を志す事になる。変わるのは、対象が『五色の刃』でない事だけだ。
(それでも……もし私が彼女と赤子だったヴァンダルーを助けるために動いていれば――)
結果は変わっていたはずだ。そう主張しようとするハインツの心の声を、今度はミルが遮った。
『それは不可能だったでしょう』
当時のハインツは若くしてB級に至ったとはいえただの、本当にただの冒険者に過ぎない。もしダルシアとヴァンダルーを逃がす為に動いていれば、ゴルダン高司祭との戦いになり彼の方が破れていた可能性も十分考えられる。
それに自分達が生まれ育った国の法と神の教えに逆らって、今までの功績を全て投げ打ち犯罪者の汚名を背負う決断が出来たかどうか。ハインツも含めて当時のデライザやエドガー、そして今は亡きマルティーナにそれができたかのかは疑問だ。
少なくとも、ライリーの説得には失敗していただろう。
(それは……分かっています。私なら全てが可能だったと思い上がるつもりはありません。ですが、彼が恐ろしい魔王になってしまったきっかけを作った者として、私には責任がある。
それを否定する事は……誤魔化す事はもうできません)
オルバウム選王国では、ハインツ達がアミッド帝国から密入国までして活動する国を変えた理由が、「ダンピールの母親が火刑に処せられたのを見て、心変わりしたから」と広まっている。そのダンピールの母親を捕まえたのが、ハインツ自身である事を伏せたまま。
これはハインツ自身が意図したものでは無かったが……真実を公にするのに躊躇いがあったのは事実だ。
この真実はミルグ盾国では冒険者ギルドの記録にも残されている事なので、オルバウム選王国でも情報網を持つ者達とその周囲の者達は知っている程度の秘密だ。だが、ハインツにはそれに耐えられなくなりつつあった。
(そして、彼女は一体何者なのか……何者となったのですか? 一度は、魂が傷ついた事で記憶が混乱しているのかと思いました。しかし、何度思い浮かべてもはっきりと覚えている。
私とデライザに、『許さない』と言った彼女は……ダルシア。私達が捕まえ、そして処刑されたはずのヴァンダルーの母親だった)
ハインツはヴァンダルーとの戦いの直後、魂だけの状態になった彼の前に現れ、杖の一閃で彼とデライザを消し飛ばしたダルシアの事を覚えていた。
死者は生き返らない。その常識から最初は自分の記憶を疑い、次にヴァンダルーは自分の母親さえもアンデッドにしたのではないかと思ったが……。
(あの神々しい姿は……アンデッドとは思えない。まるで神そのものとなったような……もしや彼女はヴィダの御使い……いえ、従属神となったのではありませんか? その彼女が許さないと言うのなら……それはヴィダの意思でもある筈。
だとしたら、私は……)
しかしダルシアの姿からアンデッドでは無く、それどころか彼女はヴィダの御使いや従属神となったのではないかとハインツは推測していた。
だが、それならこれまでアルダ融和派として、ヴィダの新種族も人間と共存する事が出来ると考え活動してきたのは何だったのか。
ハインツの精神は、自責と自己否定に苦しんでいた。
それを察したミルは、ハインツにとって驚くべき真実の一端を明らかにする事で自責の念を解す事にした。
『ハインツ、あのダークエルフ、ダルシアはヴィダの御使いや従属神となったのではありません。彼女は生き返ったのです。
恐らく、ヴァンダルーによって』
(生き返った!? そんな……死者の蘇生は神々でも不可能なはずではなかったのですか!?)
絶大な力を持つ神々でも、死者を生者に戻す事は出来ない。死者を御使いや英霊、従属神として昇華させる事は出来るが、それは地上に戻って来られないと言う意味では、死と変わらない。
それが常識だった。
それはヴィダが死した勇者ザッカートを生き返す事が出来なかった事からも、明らかであるとされてきた。
『ええ、我々神には不可能です。我が主アルダにも、そして、ヴィダにも。ですが、勇者ザッカートの遺産とヴァンダルーの力が合わされば可能です』
『法命神』アルダは、ザッカートが創り出した『生命体の根源』について覚えていた。それを手に入れたヴァンダルーが、ダルシアを生き返したのだろうと言う事も推測していた。
『ですが、彼女はただ復活した訳ではありません。彼女は復活したヴィダの化身となったのです』
(ヴィダの!? ……たしかに、ダンジョンに入る前に噂でヴィダが復活したと囁かれているのを聞きましたが……彼女がその化身になるなんて)
ヴァンダルーが『ザッカートの試練』を攻略した直後にアルダのダンジョンに入ったハインツだったが、その頃には魔境に作った拠点を訪れる商人からそんな噂があると耳に挟んでいた。
(ですが……それはより深刻な事態なのでは?)
『そうですね。既に我が信徒、ダイアナとジェニファーは知っていますが、あなた達『五色の刃』全員に『ヴィダの仇敵』の二つ名が付いています』
女神から仇敵として認識されている事に愕然とするハインツに、ミルはさらに続けた。
『ハインツ、あなたはこれから更に驚くべき真実を知らなければなりません。本来であれば人の身で知るには過ぎた知識ですが、魔王ヴァンダルーを止め世界を守る使命を背負うあなたは知らなければならないでしょう。
そもそもの始まりはヴァンダルーが、ヴァンダルーとなるずっと以前にさかのぼります。彼が、ザッカートやアーク、ソルダ、ヒルウィロウと呼ばれていた頃に』
商業ギルドから出たヴァンダルー達は、早速屋台の開店準備を整えた。
『陛下、そこまでしなくても良いのでないですか?』
『そうだよ、周りに全部合わせなくってもいいじゃん』
「二人の言う事も分かりますが、それなりに合わせないといけないのですよ」
そう、レビア王女とオルビアを宥めるヴァンダルーは、炭の包みを抱えていた。串焼きを焼くための燃料として使うのである。
『薪の方が安いのですが、あの屋台は構造上太い薪で火を起こすには向いていないので仕方ないでしょう』
『そう言う事じゃなくて……肉を焼くならレビア達火属性の死霊でも良いじゃないのさ! それなのに態々炭を買うなんて、レビアの気持ちをもっと考えてやってよ!』
『いいんですっ、オルビア。陛下が私じゃなくて炭火の方が良いと言うのでしたら、私は……っ!』
怒って抗議し続けるオルビアと、彼女を止めつつも辛そうに瞳を滲ませるレビア王女。それを受けて、ヴァンダルーは自分が浮気に走ったかのような気分になった。
自分はただ偽装工作をしているだけの筈なのだが。
「いや、実際に屋台で肉を焼く時はレビア王女にお願いしますよ」
『えっ? そうなんですか?』
「そうなのです。炭火って火加減が難しいですから。その点、レビア王女に頼めば自由自在ですし」
レビア王女は火属性の死霊である、セイタンプロメテウスゴーストである。彼女の炎は、鉄が溶ける超高温からぬるま湯程の温度まで自由自在に調整する事が出来る。
しかも、薪より割高な炭と違ってコストはヴァンダルーの魔力だけなのでただ同然である。
それなのに炭火を選ぶ程の拘りをヴァンダルーは持っていない。
『だったら、何で炭なんかを買ったんですか?』
「それは勿論カモフラージュです。炭や薪を買わないと、燃料費はどうしているのかと疑いの目を向けられかねませんし、商業ギルドに帳簿を誤魔化したと思われるかもしれませんから」
町で屋台を営んでいる者達の多くが、薪や炭を買って燃料にしている。中には魔力を燃料にして熱を発する魔導コンロなどのマジックアイテムを導入している屋台もあるが、それは少数派である。
魔導コンロは現代では下級とは言えマジックアイテムであるため、屋台稼業で買うのは勇気がいる。それに、魔導コンロの燃料である魔石も、薪や炭よりも高いのだ。
「だから炭をこうして購入しても、実際にはレビア王女に頼みたいと思っています」
『そ、そうだったんですか……! やだ、私ったらてっきり……そう言う事なら最初から言ってくださいよぅ♪』
途端に機嫌を直すレビア王女。ヴァンダルー達以外に見えない状態のまま、彼に抱擁するように纏わりつく。
『……料理って、水も使うよね?』
『……ふぅ、雷は何時使うんすかねぇ~』
『……まあ、私はアドバイザーですからな』
その姿にちょっと嫉妬する他のゴースト達。
「ヴァンダルー、炭を買う前にレビアさんに説明した方が良かったわね。次は頑張りましょう」
「はい、母さん。ところで不動産屋は?」
「それなら問題無かったわ。東四番通りの近くの空き家で今すぐ住めて、地下室がある一戸建ては一つだけだって」
ダルシアは商業ギルドに紹介して貰った不動産業者と会って、希望の物件があるか調べていたのだった。
「二階まであって、掃除さえすればすぐに住めそう。値段は、賃貸なら月500バウム。買い取りなら一万バウムですって」
「……妙に安いですね。歓楽街とスラム街が近いにしても、聞いていた相場の三分の一もありません」
『ふむ、前の住人が惨殺でもされましたかな? 若しくは、その不動産業者が早急に現金を必要とする状態なのか。
それとも、ダルシア様に下心があるとか……』
「チプラスさん、不動産屋さんは女の人だったから大丈夫よ。変な事は何も無いから。ただ引っ越した人は一年以内に病死するって言ういわく付きなだけよ」
『おお、そうでしたか、それは失礼を』
「じゃあ、早速買いに行きましょうか」
その日、歓楽街は概ねいつも通りだった。
朝方はゴーストタウンの様だったのに、日が暮れるにつれて息を吹き返す人々も、通りで客を誘う男女も、それを物色する客も、そうした人々全ての胃袋を満たす屋台もだ。
勿論歓楽街にも食事を出す店はあるし、洒落たバーなどもある。だがそれらは総じて価格設定が高く、歓楽街で働く者達の多くや、遊びたいが懐に余裕がない客等が屋台の主な顧客層だった。
「オーク肉の串焼きだよ! お兄さん、遊ぶ前に精を付けていったらどうだい!?」
「肉に魚に野菜も揃ってる! 具沢山のサンドイッチは如何かねー!?」
歓楽街の入り口では、比較的高級な食材を使った屋台が盛んに呼び込みを行う。
「はいよ、肉団子のスープ三人前。器はいつも通り後で返しに来な」
「へい、サンドイッチお待ち」
入口から入った歓楽街の中では、働いている者達向けの安い値段設定の屋台がまばらに並んである。
そして歓楽街の中でも通りから外れ、スラム街と繋がる路地に少し入ったところにはスラムの住人も買いに来る不味いが激安の屋台が隠れるように存在していた。
売っているのは硬いパンならまだ上等な方で、謎の肉団子……冒険者ギルドからタダ同然で仕入れたゴブリンやコボルトの討伐証明部位である耳や、他の屋台で売れ残った肉等を刻んで混ぜた、ツミレのような物……を使ったスープ等もある。
肉団子は、誰かがそれに卵やパン粉などを混ぜて焼く事を思いついたら、そのままハンバーグになりそうではあるが。この世界でのハンバーグの由来は、スラムの屋台で売る肉団子のスープと言う事になるのかもしれない。
……ゴブリンやコボルトの耳が混じっている間は、一般には広まらないだろうけれど。
そうした屋台は売込みを行わず、スラム街からやって来る陰気な客とボソボソと小声でやり取りし、商売を行っていた。
「串焼きはいらんかねー」
そんな中、酒場兼娼館の『七色の霧』亭と踊り子のショーが見られる店『宵の杯』の間にある裏路地に出店した、ヴァンダルー達の屋台は目立っていた。声を出して売り込みをしている事以外にも、屋台自体が綺麗で、しかも『生命と愛の女神』ヴィダのシンボルであるハートマークが新たに描かれている。
この何処かほの暗い空気が蔓延している裏路地の雰囲気から、屋台全体が浮いているのだ。
「美味しいですよ~」
そしてヴァンダルーと一緒に声をかけているダルシアは、存在そのものが裏路地の雰囲気から浮いていた。表情と声が、あまりにも明るすぎて。
そのため、普段なら裏路地に迷い込んできた客から財布をスリ盗り、恐喝を行うようなチンピラも怪しんで屋台を遠巻きにしていた。
明らかに売れない状況を認めたチプラスは、怒りに顔を歪ませていた。
『……ヴァンダルー様、今からでもあのヨゼフを締め上げませんか?』
チプラスがそう怒るのも無理はない。この場所で営業する屋台の主な客はスラム街の住人で、歓楽街に遊びに来た客は間違ってもやって来ない。
そしてスラム街で生活する者達には、金銭的な余裕は無い。つまり、価格設定を極限まで安くしないと彼らには売れない。
しかしヴァンダルーが屋台で売る串焼きの為に肉屋から仕入れたのは、安いが普通の食肉……大量に採れるジャイアントラットやホーンラビット等、ランク1の魔物の肉である。当然だが、タダ同然のゴブリンやコボルトの耳等よりも、ずっと高価である。
『このままでは串焼きは売れず、三か月後には不合格の判断を下されてしまいますぞ! ギルドマスターや他のサブギルドマスターがいない以上、奴の首を締め上げてでもこの場所を変えさせなければなりません。
歓楽街なのはいいとしても、せめて表通りに出なければ!』
「まあまあ。俺としては心の準備が出来て丁度良いです。料理の経験はあっても、屋台は初めてですからね」
そう言いながらヴァンダルーは実に手際良く串焼きを焼き、その度に食欲を刺激する良い香りが広がる。
「チプラスさん、そんなに心配しなくても、とっても良い匂いだからその内お腹が空いた人が買いにやって来てくれるわ。確かに他の屋台より高めだけど」
スラム風肉団子のスープは一杯五バウム(受け取った器を返すと交換で三バウム戻って来るので、実質二バウム)で、他の屋台や店で余った肉や野菜クズを混ぜて焼いた物を硬い黒パンに挟んだスラム風サンドイッチは、一つ二バウム。どちらも量はそれなりで、大食いでなければ一つ食べれば十分食事になる。
しかしヴァンダルーの屋台の串焼きは、一本で五バウムである。バーベキューで使う大きさの串に丁度良い大きさの肉を四つから五つ刺して焼いているが、それだけで食事にするには物足りないかもしれない。
「タレだって手作りだもの。美味しさではきっと負けないわ」
ヴァンダルーは肉には拘らなかった。しかし、ダルシアが言ったように焼く前に肉を付けるタレには拘っていた。
香草や果物を刻んで混ぜて作ったタレは、ヴァンダルーの【料理】スキルの高さとあいまって中々の出来だ。裏路地の屋台どころか、表通りの飲食店でも通用するだろう。
「【樹術士】で覚えた【装植術】の効果で俺自身に生やした香草や果物を使っているから、材料費を帳簿に書かずに済みますしね」
しかも、材料費はタダだった。
もし商業ギルドでタレについて聞かれたら、「自分で集めた草を独自の配合でブレンドして作りました」と言い張る予定である。
……実際タレには分かり易い香辛料は使っていないし、このモークシーの町の何処を調べてもヴァンダルーがタレの材料を購入した証拠や証言は出て来ないので、商業ギルドは彼の言葉を否定する事が出来ないだろう。
『むぅ……そうですな。締め上げた後が面倒かもしれませんし、そうおっしゃるなら……』
チプラスが唸り、だが暫く様子を見る事にしたのか頷きながら押し黙る。そのチプラスの向こうから、人相の悪い数人の男達を引き連れた、髪をオールバックにした野性的な顔つきの男がやって来るのが透けて見えた。
「新入りの屋台ってのはここかぁ? おいおい、誰に断って店を開いてんだよっ!?」
「この町はここに居る『飢狼』のマイケルの兄貴が仕切る事になったんだ! 商売がしたいなら、まず出すもの出してもらおうか!!」
チンピラ達は屋台を半円形に囲むようにして、そう脅しをかけて来る。どうやら彼らは、ヴァンダルーからいわゆるショバ代を徴収しに来たらしい。
巻き込まれるのは御免だと、元々遠撒きにしていたスラム街の人間が更に距離を取る。
「はあ。ちょっと待ってくださいね。今、手が離せないものですから」
しかし当然だが、その程度の威嚇ではヴァンダルーは怯えなかった。……チンピラ達では何をどうしてもヴァンダルーとダルシアを傷つける事は出来ないので、当然ではあるが。
「んだとこのガキ!?」
「生意気言いやがって……何ならショバ代の代わりにそっちの姉ちゃんを頂いても良いんだぜ?」
チンピラの一人が、「是非ともそうしたい!」と言う内なる欲望を抑えきれずにダルシアに好色な視線を向ける。
「まあ、どうしましょうかしら?」
その視線を受けたダルシアは、腕を組んだまま黙っているオールバックの男……『飢狼』のマイケルを見上げる。
視線を向けられたマイケルは、小さく口元を振わせて腕組みを解いて言った。
「お前ら、先に見回りに戻ってろ。俺はこのガキと話がある」
「えっ? そ、そんな、マイケルの兄貴ぃ」
「独り占めは無いですよ、こんな上玉」
「ウダウダ言う暇があったら、さっさと見回りに戻れ! 殴り殺されたいか!?」
先程のチンピラの威嚇とは比べ物にならない迫力の怒鳴り声に、チンピラ達は悲鳴を上げ、逃げるように通りに戻っていく。
裏路地に居た他の者達も震え上がり、屋台の経営者以外は逃げ出してしまった。
すっかり人気が無くなってしまった様子の裏路地に、ヴァンダルーは溜息をついた。
「他の屋台の人の営業妨害ですよ。マイルズ」
「あ、しまった……ごめんなさいね。ボスがあいつ等を惨殺しないようにってつい焦って、やりすぎちゃったわ」
モークシーの裏社会で姿を現してから一カ月と経たない間にボスまで成り上がった男、『飢狼』のマイケル……だと偽って潜入している深淵貴種吸血鬼マイルズは、いつもの口調に戻って頭を掻いた。
・名前:マイルズ・ルージュ
・年齢:数百歳
・二つ名:【接吻】(NEW!) 【飢狼】(NEW!)
・ランク:11
・種族:ヴァンパイアマーキス(深淵貴種吸血鬼侯爵)
・レベル:20
・ジョブ:闇夜闘士
・ジョブレベル:91
・ジョブ履歴:見習い盗賊、盗賊、魔術師、火属性魔術師、格闘士、魔闘士、爪牙戦士、暗殺者、暗闘士
・パッシブスキル
闇視
剛力:2Lv(怪力から覚醒!)
高速再生:9Lv
状態異常耐性:5Lv
精神汚染:1Lv
身体強化:爪牙:10Lv(UP!)
無手時攻撃力強化:極大(UP!)
気配感知:3Lv(UP!)
魔力増大:2Lv(UP!)
自己強化:導き:3Lv(NEW!)
・アクティブスキル
業血:3Lv(UP!)
高速飛行:9Lv(UP!)
限界超越:3Lv(UP!)
罠:4Lv
忍び足:6Lv
短剣術:4Lv(UP!)
格闘術:10Lv(UP!)
無属性魔術:1Lv
火属性魔術:6Lv
魔術制御:3Lv(UP!)
魔闘術:4Lv(UP!)
詠唱破棄:2Lv(UP!)
暗殺術:4Lv(UP!)
鎧術:1Lv(NEW!)
獣化:1Lv(NEW!)
・ユニークスキル
警鐘
■■■ダルーの加護(NEW!)
9月1日に207話を投稿する予定です。、




