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四度目は嫌な死属性魔術師  作者: デンスケ
第七章 南部進出編
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百三十八話 幻のゾゾガンテ大森林決戦

「母上、待ってほしい。拙者は、やはり御子殿について行きたい」

 一度は纏まりかけた問題だったが、何とそれにギザニアが異を唱えた。


「確かに拙者は御子殿の性別について勘違いしたが、『ついて行きたい』と思ったのは事実だ。それは今も変わらない。

 それに命を救われた恩がある。御子殿が勇者ザッカートを継ぐための試練に挑むなら、参じない訳にはいかない」


 そう述べる娘に、ドナネリス女王は「気持ちは分からんでもない」と頷く。

「約百年前より続く、勇者ザッカートの後継、再来を定めるための試練。今まで幾人もの英雄豪傑が挑みながらも退けられてきた難関。大半の者は生還するが、死者が出ていない訳では無い。

 それに恩人が挑むとあらば、参じたいと思うのが道理と言うもの」


「……道理、なのか? まあ、恩人が死ぬ可能性があるのならそのまま見過ごす事は出来ないのは分かるが」

 バスディアは首を傾げるが、ドナネリス女王だけでは無くバコタ魔術師長や他のアラクネやエンプーサも納得しているらしい。


「バスディア殿、これが武士道というものでござる」

 ミューゼがそうバスディアに教える。やはりザナルパドナに伝わった武士道は、地球の武士道とは異なるようだ。恐らく、ロマンや義理人情に関する事が強調されているのだろう。


「……騎士道みたいなものか?」

 勿論そんな違いをバスディアが気づくはずがない。彼女は武士道を騎士道と似たようなものと解釈したらしい。

「儂は『ザッカートの試練』に関する境界山脈内部と外部での扱いと情報の違いの方が気に成るのじゃが……今は聞ける雰囲気では無いの」


 境界山脈外では『ザッカートの試練』は、挑んだ者が『五色の刃』以外殆ど生還していない危険極まりないダンジョン。そして攻略した者は、堕ちた勇者ザッカートを倒した勇者ベルウッドと同じ力を持つ者とされ、ベルウッドの後継者に成れると噂されている。


 しかし境界山脈内部では『ザッカートの試練』は、難易度は高いものの、挑んだ者は殆ど生還できる。そして攻略した者は勇者ベルウッドでは無く、ザッカートの後継者、又は再来と認められる。


 まるで正反対だ。

 攻略者がベルウッドとザッカートどちらの後継者に成るのかは、元々噂の類であろうから境界山脈の内外で異なっていても不思議では無い。しかし、挑戦者の生存率の違いは噂が異なるだけでは説明が出来ない。


 単純に境界山脈外の挑戦者が弱く、内の挑戦者が強いからだとは考えられない。

 『ザッカートの試練』は境界山脈外でも有名なダンジョンだ。だから自分の実力を顧みない無謀な者も挑戦するが、それ以外の挑戦者は最低でもB級、殆どはA級冒険者かそれに相当する実力者だ。


 それ程の実力に成れば、境界山脈内部の英雄豪傑と比べても遜色は無い筈。


(挑戦者の種族の違いに原因があるのかの? ザナルパドナを参考に考えても、境界山脈内部でヴィダの新種族では無い人種やドワーフ、エルフがそれ程強くなるとは思えん。

 坊やが挑戦すると言った以上、その辺りも詳しく聞いておきたいのじゃが……それには時間がかかりそうじゃしな)


 ドナネリス女王やバコタが今まで『ザッカートの試練』について話さなかったのは、黙っていたからでは無く話すまでも無くザディリス達が知っていると思ったからだ。

 彼女達は境界山脈によって外部から隔離されていて、『ザッカートの試練』に内外で違いがある事自体知らないのだから。


 知らないので、単に「何故違うのか?」と質問するだけでは誰も求める答えを言う事が出来ない。


「とりあえず、これが落ち着いてからじゃな」

 そう決めて事態を見守るザディリス。


「気持ちは分かる。分かるが、お前が御子殿と一緒に居てはややこしいままじゃしなぁ……いや、御子殿がお前を気に入っていれば問題無いのかの? その辺り、どうなのじゃ?」

「確かに御子殿がギザニア殿を気に入っていれば、親愛の首飾りに関して誤解があったとしても、そのままでも問題無いですな」

 もしかしてワンチャンあるか? そんな様子のドナネリス女王にバコタもなるほどと納得する。


「いや、流石にそれは厚かましくは無いだろうか。それに、聞けば御子殿には既に何人も妃候補がいるそうだ。バスディアもその一人だ」

 ヴァンダルーには付いて行きたいが、故意では無いとはいえ騙した形に成るので、それを利用するのは気が引ける。それに、バスディア達にも悪い。そう訴えるギザニア。


「その通りだが、気にしなくて良いぞ。別にヴァンを独占するとか、そう言う話では無いのだろう? 元々ギザニア達は夫をシェアすると聞いたし、問題無い」

「何人も居るなら、そこにギザニアちゃんが入ってもきっと大丈夫よ! ダーリンも妾以外にも妃を娶る予定だし、ギザニアちゃん可愛いから!」


 そしてそんな事気にするなと言うバスディアと、シスコンだが妹は誰にも渡さないと言う方向には行かないらしいクーネリア姫。

「普通は、何人いても気にする事ではないでござろうか?」

 本来ならミューゼの言う通りなのだが、実はギザニアがそうなるのではないかという予感をバスディアだけでは無く、ザディリスやエレオノーラも抱いていた。だから実際にそうなっても、皆「やっぱり」と思うだけだろう。


 そしてヴァンダルーがその事に関して何を考えているのか、ザディリスもよく解らない。

(坊やはその辺り来る者拒まずで来たからの~。何も感じていない訳では無いようじゃが)

 そう考えるが、同時にこうも思う。


「まあ、ヴィガロよりは少ないから問題ではないか」

 バスディアの父親ヴィガロが経験した人数は、ザディリスを抜いても十や二十ではない。ヴァンダルーがグールの出生率問題を解決してからは少なくなったが、それでも昔と比べればだ。

 だから問題にはならないだろうと、ザディリスは思っていた。……ヴィガロの場合は地球やオリジンでは結婚ではなく、事実婚に当たるので微妙に事情が異なる筈なのだが。


「ギザニアよ、問題はお主が坊やをどう思っているかじゃ。どうせ坊やへの恩返しを終えたら、結婚も含めて身の振り方を考えるつもりだったのじゃろう?

 その相手が坊やに成るかもしれんというだけじゃ。坊やの意思を確認するにしても、まずそれについてどう思うのかが先じゃ」


「拙者がどう思っているのか……」

 ザディリスに問われたギザニアは瞼を閉じて考える。だが元々彼女はヴァンダルーに対して好感を持っていた。妙な魅力以外にも、初めて自分を美しいと言ってくれた異性……そう、異性という事に成る。

 ギザニアは肉体的に頑健な大型種の中でも、姉であるクーネリア姫の役に立とうと、何時か真の【武士】に至ろうと鍛錬を重ねてきた。


 そのため、多くが生産系ジョブに就くザナルパドナの男性陣とは殆ど関わって来なかった。例外は父親ぐらいだ。

 将来は、同じ塔に住むクーネリア姫以外の姉妹や民達が夫と認めた男の中から、子供を作る相手を選ぶのだろうと漠然と考えていた。


 彼等に魅力が無いわけでは無い。気の良い者達だが、しかし……。

(彼等と御子殿を比べると、やはり御子殿の方が好ましい)

 自分よりずっと強いから、寧ろギザニアがヴァンダルーに追いつけるよう努力しなければいけないが、鍛錬でも一緒に居られる。そう、本当に一緒に居られる。【蟲使い】のヴァンダルーは、【装蟲術】スキルでギザニアを体内に装備できるのだから。


 しかし、今まで同性だと思っていた少年を、将来異性として見る事が出来るだろうか?


 瞼を開いたギザニアは、顔を上げ口を開いた。

「……ほ、保留ではダメか、な?」

 そして視線を逸らしながらそう言ったのだった。


「む、むう、そこでヘタレるか、我が娘よ」

「ギザニアちゃんらしい……そう言えばミューゼはどうするの?」

「某でござるか? 是非も無く御子殿の傍に置いていただければと思っているでござるよ」


 話を振られたミューゼは、ギザニアとは対照的にあっさりとしていた。

「御子殿は分身に隠れ身に、それに将来大蛙に変身できるようになるかもしれない、ニンジャに最も近い方! その傍に居られれば、某の修行もはかどると言うものでござる。

 それに某も、もう七十でござるからな。百の大台に乗る前に子供を作るつもりだったので、丁度良いでござる。御子殿は最初無表情で付き合い難く見えたのでござるが、気性の良い方の様でござるし。

 もっとも、御子殿が某を気に入って頂ければの話でござるが」


「ミューゼ殿、そ、そんな風に割り切って良いのか?」

「ギザニア殿、某ぐらいがザナルパドナのスタンダードでござる。クーネリア姫とブダリオン皇子の様な関係は、寧ろ例外でござるぞ」

 何せ、夫達を同じ塔に住む女性達で共有する多夫多妻制だ。当然自分が望む男を自由に婿入りさせられる訳でない。自分以外の女達が選んだ男達の中から、子供を作る相手を選ばなければならない事も多いのだ。


「そうだったのか!?」

「ギザニアちゃん、ダーリンと妾は特別なのよ。妾達の出会いは――」

「それは兎も角、早めにヴァンの意思を確認しておいた方が良いな。答えは分っている気がするが」

「そうじゃな。答えは大体予想できるがの」


「……今更ながら、若干不安を覚えて来たのじゃが?」

「女王、とりあえずは婚約と言う事で様子を見ましょう」




 その後、既にブダリオン皇子の反応からギザニアを含めて皆から性別を勘違いされていた事を知ったヴァンダルーは、何時もより死んだ目で「親愛の首飾り」についての正確な情報を聞いたが、バスディア達の想像通り「二人がそれで良いのなら、今後ともよろしくお願いします」と答えたのだった。




「怯むなっ! 相手はたった三人だ!」

「数で押せっ! 魔術師は術を絶やすな!」

「ぐああああっ! 無理だっ、幾ら囲んでも相手に成らない!」


 ブギータスが他の戦場から兵を引き、ザナルパドナ攻略とブダリオン抹殺に戦力を集中させるか否かを決め兼ねていた頃、グールの国は存亡の危機に立たされていた。


 グールの国は、国全体がD級ダンジョン『ゾゾガンテ大森林』の内部に在る。

 このダンジョンは出生率の低いグール達の為に、彼等の種族の後見となった『闇の森の邪神』ゾゾガンテが創り出した、二十階層全てが森の形をしたダンジョンだ。


 ダンジョン内部で生活する事により、魔境で暮らすよりも更に肉体や生殖能力が活性化したグール達は、十万年が経った今でも国と呼べる規模を維持していた。

 それでもザナルパドナのE級ダンジョン『殻要らずの原っぱ』とは違い危険なため、民を養う余裕はない。

 だから国民はほぼグールだけで、人口も五千人程だ。


 ザナルパドナ周辺では、最も人口が少ない国である。

 しかしダンジョンで日々の糧を得られ、更に外でも生き残れるように戦士達が己を鍛え終えてから地上に出て狩を行う、小さくとも豊かな国だった。


 その平和を破ったのがブギータス配下の中で、最も優れた槍の使い手である『牙槍の猪』のブディルード率いる軍勢だった。


 ランク9のノーブルオークハイジェネラルであるブディルードは、自身がかつて討伐した魔物、プロミネンスマンモスの牙から作った魔槍を振るう武人。個人の武威だけではなく、部下を巧みに動かす優秀な指揮官としても知られる男だった。


 彼が率いるノーブルオークやハイゴブリン、ハイコボルトで構成された数百の精鋭を前にグール達は善戦するも、下層階への撤退を繰り返していた。


「ぬおおおおっ! 何としても止めろっ! これ以上好きにやらせるな!」

「長を守るのだ! 戦士達よっ、意地を見せろ!」

「女達を渡してなるものか!」


 スキルのレベルや種類が足らずに中々ランクアップできない境界山脈外のグールとは違い、ジョブチェンジが可能な『ゾゾガンテの大森林』のグール達は熟練の戦士と成れば安定してランク5までランクアップする事が出来る。

 また優れた鍛冶技術は無いが、ダンジョンで見つかる宝箱からアイテムを回収し、それで武装していた。


 そのため数は少なくても精強な戦士達によって守られていた。たとえランク6のノーブルオーク相手でも、ジョブとランクの両方を持つグール達は、一対一なら五分の勝負が出来る。そのグール五千人に対して、ブディルードが率いるのは、たった数百匹。決してグール達に不利な戦いに成る筈が無かった。


 だが、ブディルードとその軍勢は何らかの力によって強化されていた。それは【指揮】や【連携】スキルの効果よりも、はっきりと分かるレベルだった。


 そしてグール達はダンジョン内で生活しているため、ザナルパドナに在るような堅牢な城壁を築く事が出来なかった。家ぐらいなら問題無いのだが、魔物が入って来られず簡単に壊せない城壁の類は、【迷宮建築】スキルを持っているヴァンダルーくらいしか、築く事が出来ないのだった。


 それもあって、森の形をしていてもダンジョンという限定された空間での戦いは、ブディルード率いる少数精鋭の軍に有利だった。

 しかもブディルードは以前発生したあるダンジョンの暴走を軍を率いて鎮めた経験が、境界山脈内でも珍しい大集団を指揮して大勢の敵と戦って勝った経験を持つ男だった。


 そんな敵を相手に撤退を重ね、十階層まで追い詰められたグール達は決戦を覚悟した。


「ぎゃああああっ!」

「ブディルード……お前ほどの武人が何故……いや、もう聞くまい。反逆者ではあるが、お前は帝国を支え続けた戦士。今まで良く仕えてくれた。休むが良い」

「も、もうダメだっ! とても堪えられん!」

「……ブダリオン皇子、ブディルードの霊は貴方の後ろですよ」


 しかし決戦の前に、ブディルードの軍をヴァンダルー達が背後から襲撃したのだ。

 ブブーリンの霊からグールの国が侵攻を受けている事を聞きだし、途中に配置されていた監視部隊等を瞬殺しながら侵攻したヴァンダルー達は、『ゾゾガンテ大森林』の入り口から入りそのまま立ち塞がる敵を、ブディルードの軍を上回る少数精鋭で蹴散らしながら突き進んだのである。


 足を踏み入れた階層の構造を一瞬で理解でき、更にダンジョン内の内装を変化させる事が出来る【迷宮建築】スキルを持つヴァンダルーによって、ブディルードの軍は分断され本来の力を発揮できない状態に追い詰められた。

 更にボークスやヴィガロ、ザディリスにバスディア、骨人、そして腕と目を取り戻したブダリオン皇子によって蹴散らされたのだった。


 ブディルード達は全員がヴァンダルー達にとっては未知のスキル効果によって強化されていたが、ボークス達も【導き:魔道】によって強化されている。そして強化の効果は、ボークス達の方が大きかった。

 もしこれがダンジョンでは無く地上で、ブディルードが率いていたのが数百の少数精鋭では無く千を超える軍勢なら、敵を少々取り逃がしたかもしれない。


 しかしダンジョンの中が戦場だったため、一人も取り逃がす事無く全滅させる事が出来た。

 恐らくノーブルオーク帝国で今も悩んでいるだろうブギータスに情報が伝達するのを遅らせる事が出来たのは、幸運だった。


「ぶむ、そうだったか」

「【可視化】します? 話せるようにもなりますけど」

「いや、止めておこう。あの様子では余とは会話が成立しないだろう」

『そうでもなさそうですぞ。今は不自然なくらい落ち着いた様子ですな』


 ブディルードはブダリオン皇子に倒される寸前まで、獣じみた咆哮を上げながら戦い続けた。ブダリオン皇子によると冷静な歴戦の将軍らしいのだが、ヴァンダルーには血に飢えた狂戦士にしか見えなかった。

 だが、ブダリオン皇子の魔剣によって止めを刺されて死に、霊に成った途端理性を取り戻したらしい。


『醜態を晒し、申し訳ありません。ブギータス皇帝陛下……いえ、ブギータスの力の虜となった私は、魔物本来の力と引き換えに、理性を失っていたのです』

 生前は吠える様なオーク語で部下を指揮し、聞くに堪えない言葉でブダリオン皇子を罵り、バスディアやエレオノーラに下卑た嘲笑を浴びせかけた男の、死後の言動である。

 ……普通逆ではないだろうか? 死者の霊の方が生者よりも感情的なものだが。


 ヴァンダルーも戸惑いのあまり、ブディルードの魂を砕くのを中止したぐらいだ。


 尤も、死んだ途端正気に戻ったのはブディルードだけではない。彼の部下全員が生前は獣の様だったが、やはり死んだ途端理性を取り戻している。


『恐らくブギータスかラヴォヴィファードの何らかの力の影響下に在ったブディルード達は、死ぬ事によって解放され、主の影響下に入った事で本来の人格に戻ったのでは?』

「ブギータスがそのようなスキルを持っていたとは知らなかった。ラヴォヴィファードから授けられたのかもしれん。

 やはり、御子殿と同じ導きのスキルなのだろうか? だとしたらブディルード程の男が惑わされたのも頷ける」


 ブダリオン皇子は腕と目を移植する手術を受けた直後までは、ヴァンダルーの【導き:魔道】の影響下には無かった。しかし、今では影響下に入っている。

 どうやら、手術後の会話でヴァンダルーはブダリオン皇子に認められたらしい。


 そしてブダリオン皇子に続くように、彼の忠臣達も【導き:魔道】の影響下に入ったのだった。


「導きだとしたら、何でしょうね? 外道とか畜生道でしょうか」

「焼けたよう、お食べよう」

「マンモスの串焼きが出来たぞ、ヴァン」

「わーい、頂きますー」

 少し考えたヴァンダルーだったが、焼肉には勝てずに食欲を優先させる。


 ブディルードがテイムし乗騎として使っていたマンモスの肉を、アイゼンとバスディアが豪快に串焼きにして焼いた物である。

 何とザナルパドナやグールの国周辺の地上では、恐竜はいないがマンモスやサーベルタイガーが、正確にはそれらにそっくりな魔物が出現するのだ。


 マンモスはヴァンダルーがイメージするような全身が毛皮に覆われた巨大な象ではなく、アフリカゾウが大きくなったような姿だったが。

 レギオンの閻魔から、暖かい地域のマンモスは長い毛皮が無かったと聞かされた時は驚いていた。


 それは兎も角、恐竜肉に続いて贅沢な食材である。

 受け取った串焼きに齧りついたヴァンダルーは肉を噛み千切って咀嚼し、味わう。

『アイゼンの鉄林檎から作ったタレが効いていて、肉の臭みが押さえられ柔らかく成っていますね。焼き具合も丁度良くて、噛めば噛むほど旨味が口の中に溢れてとても美味しいです』


 咀嚼するのに忙しいので【幽体離脱】をして感想を言うと、アイゼンとバスディアはハイタッチをして喜んでいた。


「ハンバーグや照り焼きにしても美味そうじゃな。ただ肉が全体的に硬めじゃから、ステーキには向かんかもしれん。ザナルパドナではどうやって食べているのじゃったかな?」

「肉質が硬いから拙者達はマンモスの肉は煮込料理に使う事が多い。拙者は生の方が好きだが」

「某もマンモスを狩った時は、つい生で食べてしまうでござるよ」

「……刺身にでもするかの」


 ザディリスがマンモス肉の活用法を考えギザニア達に質問するが、答えが想像以上にワイルドだった。


「ところでヴァンダルー様、止めなくて良いの? さっきからヴィガロが一方的に暴れているけど」

 エレオノーラが指差す先では、ヴィガロがグール国の戦士と魔術師相手に腕比べをしていた。


 ブディルードを倒した後、助けてくれた事を『ゾゾガンテ大森林』のグール達は感謝し、ヴァンダルーの『グールキング』や『ヴィダの御子』等の諸々の効果によって熱狂し、そのまま倒したブディルードの軍の肉を使って勝利を祝う宴に突入した。


「どうした!? もっと向かって来い! 武器を拾って立ち上がれ! そんな事では女子供を守れんぞ!」

「ブモォ~。俺、奥さん居るから別にモテなくて良いのに……」

「団長、甲斐性あるから後一人や二人はいけると思う」


 そして現地の女性陣にモテだしたヴィガロやゴーバ達オーカスに現地の男性陣が挑戦し、ヴィガロが快くそれを受け、何時の間にかヴィガロが大勢の『ゾゾガンテ大森林』の男性陣を一方的に薙ぎ払う展開が続いている。


 正確にはヴァンダルーもモテかけたのだが、バスディアとザディリスが横に居て、話を聞けば「まだヴァンは子供を作れる年齢ではない」との事だったので、代わりにヴィガロやゴーバがモテたのだ。


 因みに、この場に姿の無いボークスは「暇つぶしに攻略してくるぜ」と『ゾゾガンテ大森林』のソロ攻略に挑戦していた。多分、しばらくしたら難無くクリアして帰って来るだろう。


「まあ、大丈夫でしょう。ただ、腰を痛めないように言っておきましょうか。……それよりも、今度タロスヘイムに戻ったらカシムとゼノに声をかけないと」

「『グールキング』でもあるのだから当然かもしれないが御子殿、君の歳でそれを言うのはどうなのだろう?」

「歳……そう言えば、ブダリオン皇子って何歳ですか?」


「余か? 余は今年で十五に成る」

 身長三メートルのブダリオン皇子は、そう答えたのだった。

ノーブルオークは十歳で成人するので、十五歳でも若造という事は無いのだった。




・ジョブ解説:暗闘士


 【暗殺者】ジョブ経験者が就く事が出来るジョブ。【暗殺術】や【格闘術】や【短剣術】、【限界突破】、斥候職に必要なスキル全般に補正を得る事が出来る。


・スキル解説:暗殺術


 主に不意打ち時に行う攻撃の殺傷力に補正を受ける事が出来るスキル。また服や防具の中の暗器を隠し、使用する際も効果的に使用する事が出来る。




・魔物解説:ハイコボルト


 ハイゴブリン同様にコボルトの上位種として邪悪な神々によって創造された魔物。

 背丈は平均的な人種並で、一見すると直立した狼の様にも見える。

 素のランクは5で、武器を持っていなくても【格闘術】スキルで鉤爪と牙を操って戦う事が出来る為油断できない。


 仲間同士の連携が得意なのはコボルト譲り、更に人間並みに発達した知能を持つ。ただ仲間との絆が強く、ハイゴブリンやノーブルオークと違い群の中の下位種族も同じ群れの仲間と見なし、奴隷扱いはしない。


 通常のコボルトよりもずっと繁殖力が弱く、一度に一匹から二匹の子供が生まれ、五年から六年で大人に成る。

 ただハイコボルトが一匹でもいるとコボルトを従えて強固な戦闘集団を形成する。そのため、冒険者ギルドでは災害指定種とされている。

9月10日に139話を、14日に140話を、18日に141話を投稿する予定です。

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