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四度目は嫌な死属性魔術師  作者: デンスケ
第七章 南部進出編
163/515

百三十一話 蜘蛛さんは言った、「くっ、殺せ!」

「な、何だこいつは!? ヴィダに与する神を信仰する奴らがテイムした魔物か!?」

「どちらが善か悪かはさて置いて、どちらを倒すべきかは分かりました」

 動揺してそう口走るノーブルオークに、ヴァンダルーはとりあえず倒すべき相手はやはりノーブルオークとその配下のオークだと理解した。


 レビア王女達を隠して手の内を晒さずに、しかし一人だと皆を心配させてしまうので巨大な百足の魔物であるピートを生やして来た事で、相手の動揺を誘う事が出来たようだ。

「ギシャァ!」

 因みに、ヴァンダルーはただピートの腹にくっついている訳では無い。正確には、【装蟲術】で自分の背中からピートの全身を生やしているのである。


「こ、殺せブギ!」

 オーク語(?)が混じった命令を手下のオーク達に出すノーブルオークだが、オーク達もピートの姿に動揺している。それにこの場に居るのは急いで掻き集めた者達だ。精鋭と呼ばれる基準からは、練度も忠誠心も数段劣る。

 見るからに強そうなピート相手に腰が引けるのも無理は無い。武器を構えて半円形の陣形でピートを囲むが、躊躇わずに斬りかかる者はいなかった。


 しかしピートは躊躇わずに突っ込んだ。

「ギシャアアアア!」

「ブゲギィ!?」

 四本もの脚を失って動けないだろうギザニアとオーク達との間を、黒光りする甲殻で覆われた身体で分断し、弓を持っているオークを角から放った雷撃で撃つ。


 肉の焦げる旨そうな匂いに涎を垂らすピート。しかし、仲間が攻撃された事で逆にオーク達の闘争本能に火がついたようだ。

 次々に雄叫びを上げ重量級の武器を振り上げ、ピートに襲い掛かった。


 しかし、ピートの甲殻の防御力は素の状態でも全身甲冑を纏った騎士を上回る。しかも今は【鎧術】スキルの武技、【岩体】を発動しているので、オーク達の拙い【斧術】や【棍術】では傷一つつかない。

 それどころか、角から流れる電撃で感電する始末だ。


「ブギッギィ!」

 しかし、ノーブルオークは真紅の液体がピートから迸るのを見て歓声を上げた。

『ブルルルル!!』

 だがそれはピートが流した血では無く、ヴァンダルーから出たディープブラッドスライムにランクアップしたキュールである。


『ブグルルル!』

「ギシャァ……」

 感電したらしいキュールはピートに抗議しながら、手近なオークに襲い掛かる。


「ブギィッ!」

 絶叫を上げながらキュールに生きたまま溶かされ喰われていくオークを見て、手下共では幾ら数で勝っていても相手に成らないと気がついたノーブルオークは、愛用の大剣を携えて戦線に加わった。


 流石は上位種というだけあって、その身のこなしは手下のオークとは比べ物にならない。

「ブゴォォォ!」

 キュールが触手状に伸ばした身体を回避し、ピートに向かって【三段突き】よりも上位の【剣術】の武技、【百烈突き】を放つ。


 まるで削岩機で岩を削るような音が響き、ノーブルオークが放った突きの殆どが甲殻に浅い傷をつけるだけで弾かれる。しかし、幾つかの刺突は甲殻の隙間に潜り込みピートの肉に食い込む事に成功した。

「ギシャァァ!」

 痛みよりも怒りで咆哮を上げるピート。しかし、初めてダメージを与えられた事で「やれる!」と思ったのか、ノーブルオークは愛剣を引き、再び武技を放とうとした。


 だがその剣に木の枝のような物が絡みついていた。

「ブゴッ!?」

 それは【装植術】でヴァンダルーが腕から生やしたアイゼンの枝だった。細い見た目に関わらず強靭なそれは、ノーブルオークの大剣を掴んで放さない。


「ギシャァッ!」

 その隙を見逃さず、身体をくねらせたピートの角がノーブルオークを貫く。

「ブギャアアアアアアッ!」

 体内を貫通した角から更に電撃を流され、ノーブルオークが断末魔の絶叫を上げる。


 その巻き添えでやや感電しながら、ヴァンダルーは思った。こんなものかと。

(多分、このノーブルオークはブゴガンと同じくらいの強さだ。【鑑定】の結果も、ブゴガンと同じランク7のノーブルオークリーダーと出るし)

 【剣術】の腕は少し劣るかもしれないが、装備は大剣以外ブゴガンよりも良さそうだし、総合的には互角程度だろう。


 ミルグ盾国に存在した、ザディリス達グールの生まれ故郷であり、ヴァンダルーにとっても第二の故郷だった密林魔境。その中央で三百匹のオークの軍団に君臨していたノーブルオークブゴガン。


 それをピートが軽傷を負った程度で倒してしまえそうなのは、若干驚きを覚える。ブゴガンと戦った時は、思いつく限りの搦め手を使ってもダメで、結界も破られるのではないかと危機感を覚えさせられ、命懸けの作戦で重傷を負いながらも、やっと倒す事が出来た強敵である。


 それと同格の筈のノーブルオークが、香ばしい匂いをさせながら痙攣している。

 ヴァンダルー自身は殆ど何もしていないのに。


「俺達も強くなったということか」

 だが考えてみれば、これは当然の結果だった。ブゴガンとの戦いから六年以上経っている。その間ヴァンダルーはジョブに就き、【眷属強化】スキルは上位スキルの【導き:魔道】へと変化した。ピート、キュール、アイゼンの三名でブゴガンと同格のノーブルオークに勝てたことに、何の不思議も無い。


「ぶぎぃぃぃっ!」

「ホゴゲっ!」

「ぶぎゃあああああ!」


 そもそも、以前はノーブルオーク帝国で焼き肉食べ放題を企んでいたではないか。

(やはり、人生で初めて戦いで重傷を負わされた敵ですからねー。俺の中で大きな存在だったという事ですか)

 自分の動揺をそう分析して納得するヴァンダルー。因みに、その間ノーブルオークの手下のオーク達は指揮官がやられたのを見て逃げ出そうとしたが、ピートが横薙ぎに振った下半身に跳ね飛ばされたり、アイゼンが伸ばした枝に巻きつかれて首を圧し折られたり、キュールに包み込まれたりして倒されていった。


 ただでさえ練度で劣るのに連携まで欠いては、ただの大きいだけのザコなので仕方ないだろう。


 その光景を見守るしかないギザニアは、安堵と諦めが込められた息を吐き、笑みを浮かべた。

「これで、クーネリア姫の追っ手は全て倒れた。一先ずは安心だ。姫、ブダリオン皇子とどうかお幸せに……偉大なるヴィダよ、『甲殻と複眼の邪悪神』ザナルパドナよ、皆を守りたまえ」

 瞼を閉じてそう短く祈ると、巨大剣を地面に突き刺し、柄から手を離した。


 そして全てのオークが動かなくなり、ヴァンダルーが自己分析を終え、ピートがギザニアに向き直った。

 その腹にくっついたヴァンダルーと、ギザニアの視線があう。

「大丈夫、では無さそうですね。とりあえず傷の手当てを――」

「偶然とはいえ、助勢に感謝する。大百足殿。これも拙者の守護神、ザナルパドナの思し召しか」


 声を遮られたヴァンダルーは、ギザニアが述べる感謝の言葉を「礼儀正しい人だな」と好印象を抱きつつ、「でも致命傷じゃなくても重傷なのだから早く治療させて欲しい」と思った。

「いえいえ、人として当然の事をしたま――」

「せめてもの礼として、拙者を喰らい経験値にするといい。言葉が通じるか分からないが……さぁっ! 一思いに!」

 そしてギュッと目を瞑るギザニア。


「……えぇー?」

 何故ここで「くっ、殺せ!」されるのか分からないヴァンダルーは大いに困惑した。そして、ふと気がついた。

「もしかして、俺の事をピートの一部だと思っていませんか?」

 そう言いながらピートの腹部から離れて地面に立つと、目を開けたギザニアが唖然とした様子で言った。

「えっ? ち、違うの?」




「ダメだねぇ」

『ぶるるぅ!』

「ぎしゃぁ……」


 オークとの戦いの間、ピートが角から発した電撃の巻き添えで感電したキュールとアイゼンが、彼にお説教をしている。

 その近くでギザニアはヴァンダルーからの治療を受けていた。


「本当にすまない。てっきり、マンティコア等の魔物が人間の言葉に似た声で鳴くのと同じで、人を罠に誘うための疑似餌的な器官かと……」

 どうやら彼女は、ヴァンダルーを提灯アンコウの提灯の部分だと思い込んでいたらしい。


「いえいえ、俺も誤解させるような形で現れましたから気にしないでください」

 ヴァンダルーはそう思われても仕方ないと気分を切り替えている。【霊体化】し同化して自身の【高速治癒】スキルをギザニアに適用しつつ、ブラッドポーションも使って回復を図る。


『三本目の脚発見。後一本!』

『草の根を分けても探し出しますよー』

『見つけましたぜ、旦那ぁ!』

 そして【幽体離脱】後分裂した分身とキンバリーが切断されたギザニアの右側の脚を捜索&回収。それを【手術】スキルで接合する。伸ばした舌から薬を分泌して消毒し、糸の包帯で接合部分を包む。


「ところで、痛みは大丈夫ですか?」

「ああ、問題無いようだ。貴殿の魔術のお蔭で、少し痒いぐらいだよ。しかし断たれた脚が繋がるとは……どれくらいで動かせるようになる?」

 ヴァンダルーの吐いた糸で接合された右側の脚を嬉しそうに見るギザニア。彼女の脚に糸を巻きながらヴァンダルーは答えた。


「正確には分りません。アラクネの人を治すのは初めてなので……でも多分、動かすだけなら数時間から半日ぐらいでしょうか」

「十分だ。普通なら年に一回の脱皮を五回程待たなければ元の長さに生えそろわない」

 どうやらアラクネ族は年に一回脱皮して、その際脚が切断されていると徐々に生えて来るらしい。


「脚だけではない。あのままならもしこの場を生き延びて自力で国に帰る事が出来ても、拙者はこの腕を失っていただろう」

 酷く折られていたギザニアの左腕は完治しており、元通り動かせるようになっていた。人種の女性に似た上半身は脱皮しないため、二本の腕は八本の脚と違って喪ったら再び生えて来る事は無い。


 そして剣を振り戦うために必要な腕を失う事は、ギザニアにとって死に等しいものだった。

 勿論ヴァンダルーにとっても、彼女の腕が治ったのは喜ばしい事である。

「それは何よりです。貴女の腕のような美しい腕が無くなるのは、悲しいですから」

 ギザニアの腕は、巨大な剣を操るために逞しい筋肉がついていた。敵以外の筋肉は全て美しい。失われるのは、耐えがたい損失である。


「美しい、のか?」

「はい」

「そうか……母以外にそう言われた事が無いので分からないけど嬉しいよ」

 まんざらでは無さそうな様子の彼女に、ヴァンダルーは後でポーズを取ってもらおうと思った。


 それとヴァンダルーは、ギザニアは腕以外も美しいと思っている。

 確かに、タランチュラに似たモフモフしていそうな毛が生えた二トントラック程の大きさをした蜘蛛の下半身は、普通の人なら怖がるかもしれない。

 上半身も形は女性に似ているが、立ち上がれば頭頂は地面から三メートルを超える高さになる。それに合わせて大柄で、しかも明らかに鍛え抜かれた戦士の肉体だ。


 しかし、大百足のピートやセメタリービーに親しむヴァンダルーにとっては恐怖や嫌悪の対象にはならない。

 寧ろ、筋肉以外にも下半身の毛をモフモフしてみたいとか、額の複眼が宝石みたいで綺麗だなとか、綺麗な白い肌だなとか、左右一番前の脚は半ばまで人間の脚に似ているなとか、そんな事を考えていた。


(あ、そう言えば八本脚だ。……プリベルが怒るかな? いや、ただの人助けを兼ねた情報収集だし、大丈夫)

 触腕と節足は外見がかなり異なるが……数は同じである。


「改めて礼を。拙者はギザニア。アラクネ族のサムライの一人だ。それで貴殿は何者なのか、教えて欲しい。恩人に対する態度ではないのは分っているが……」

 命の恩人で、何故か友好的なカリスマ性(【魔道誘引】と【導き:魔道】スキル、【蟲使い】ジョブの効果)を感じるが、ヴァンダルーはそれで気にせずにいられる程普通の存在では無かった。


「良いですよ。キンバリー、俺が彼女に説明をしている間、皆をクノッヘン砦から連れて来てください」

「砦? もしや、あの骨の砦から来たのか!?」

「それも含めて説明しますね」

『旦那ぁ、時間をかけてゆっくり連れてきますかい? 三十分か、一時間ぐらい』


「気にせず速く連れて来てください」

『へぇ~い』




 ヴァンダルーから転生者関連の事を除いて、現在のタロスヘイムや沼沢地を越えて来た目的を聞いたギザニアは只管驚いていた。

「巨人種の国の滅亡と復興に、山脈外部との行き来が可能に成り、移住者まで……まさか沼沢地から向こうがそんな事になっていたとは夢にも思わなかった」


「俺達も同じ気持ちですね」

 そしてギザニアから沼沢地から南で何が起きているかを訊かされたヴァンダルーと、丁度その頃に合流したエレオノーラやヴィガロ達が覚えた驚きも大きかった。


 十万年前、ヴィダとアルダの戦争の結果敗北して女神やそれぞれの神と共に落ち延びたアラクネやノーブルオークは、沼沢地から南の土地で種族ごとに集落を形成して生き延びていた。

 女神ヴィダは眠りにつき、生き延びた原種吸血鬼達は女神の寝所を守るための番人と成り、アラクネを含めた各種族の神々も傷つき失った力を取り戻すために数万年に及ぶ長い休眠を必要とした。


 そして残ったアラクネやノーブルオーク達は助け合ってその黎明期を耐えた。

 元々はヴィダの下で戦った仲間だった事で、寿命や生態が異なる種族ながら助け合って最初の数万年は上手くやっていたらしい。

 リザードマンと巨人種の様に、生存域や好む環境が異なっていた事もプラスに働いたようだ。


 しかし数万年経つうちに各種族の集落では人口が増えて発展し、神々は傷が浅い者や力の強い者から目覚め、黎明期は過ぎ去った。

 そして余裕が出来た事で、種族間の利害対立が発生する様になり、小競り合いが起こるようになった。


戦争に発展する事は無かったが、それはその兆候がある度に『甲殻と複眼の邪悪神』ザナルパドナを含めた神々が神託を下す等して仲裁をしていたからに過ぎない。

だがこのままでは遠からず、大陸南部ではヴィダに従う者達同士の戦争が勃発してしまう。そんな時、一人の賢帝が歴史に現れた。


「それを鎮め、大陸南部に平和をもたらしたのが時のノーブルオークアークキング、ブーギ帝だ」

 ブーギ帝はヴィダと共に眠りについている原種吸血鬼を除けば当時最強の存在だった。やろうと思えば、彼は武力でノーブルオークを頂点とした一大帝国を築く事が出来ただろう。

 しかしブーギ帝はそれをせず、各種族間の問題を話し合いで以って解決したのである。


『我々は敵同士では無い、皆兄弟ではないか。お互いに和を重んじ、何時か来る暴虐の神アルダとその走狗との戦いに備えようではないか』

 そう訴えたのだと歴史には伝わっている。


 つまり、外部に敵を作る事により内部の結束を強めたのだ。実際に暴虐の神と呼ばれた『法命神』アルダは彼等にとって敵以外の何者でもないので、正確には外部に敵がいると思い出させたと評するべきか。

 そしてブーギ帝はノーブルオーク帝国を中心にした、各種族が協力し助け合う共和制を築き上げた。


 結局はノーブルオークが主導的な位置に在ったが、それは各種族の中でもノーブルオークが最も武力に優れていたから、当然の成り行きだった。


 そしてその共和制は数か月前まで上手く機能していた。それはブーギ帝亡き後も、歴代のノーブルオークの皇帝達が賢く公平に、和を維持する事に専念したからだ。

 だが先帝の第二子、ブギータス皇子はそれに不満を覚えた。


「奴が何を考えているのかは、拙者は知らない。だが先帝のフゴフ様が没すると、ブギータスは『ラヴォヴィファード』という今まで聞いた事も無い神の加護を得てクーデターを起こし、次の皇帝と成る筈だったブダリオン皇子と忠臣達を追い落としてしまったのだ」


 敗北したものの何とか逃げ延びたブダリオン皇子は婚約者であるクーネリア姫がいるアラクネ族を頼り、匿われている。

 帝国を乗っ取ったブギータスは兄の抹殺とブーギ帝が築いた共和制を破壊し、未知の邪神ラヴォヴィファードを奉じる独裁国家にするための戦争を仕掛けた。


 アラクネ族はブダリオン皇子を支持する種族と共に帝国と戦っているが、やはり旗色が悪い。

 そんな時、アラクネ族から見て北にある沼沢地の外延部に前触れも無く砦が出現したとの報告が入る。そこで初めてリザードマンの存在を思い出した(没交渉だった結果、忘れ去られていたらしい)アラクネ族は、戦況を打破するためにリザードマンと同盟を結ぶべく、クーネリア姫を中心とした使節団を派遣したのだ。


「ちょっと、何故姫を使節団の中心に据えるの? 重要人物じゃない」

 そうエレオノーラが口を挟むと、ギザニアは「仕方が無かったのだ」と答えた。

「姫は【糸念話】と言うユニークスキルを持っている。自分で出した糸と繋がった相手に、言語に関わらず意思疎通が可能になるスキルで、それでリザードマンと交渉する予定だったのだ」


「……糸電話みたいな名前のスキルですね」

「しかしその途中拙者を含めた使節団はブギータスの手の者に襲撃を受け、私は姫を逃がすために一族に伝わるオークを強制的に発情させる秘薬を自分に振りかけ、奴らをここまで惹き付けて……そして危ないところをヴァンダルー殿に助けられたのだ。

 このご恩は生涯忘れない。必ず報いてみせよう」


「先ほども言いましたが、人として、『ヴィダの御子』として当然の事をしただけです。気にしないでください」

 そう言いながら頭を下げるギザニアに、ヴァンダルーはそう答えた。答えたが、実際は彼女の恩返しに大いに期待していた。


(想定していたより大きな話に成りそうですし、アラクネ族との橋渡しをしてもらえれば他のブダリオン皇子派とも話し合えそうですし)

 直感に従って良かったと、ヴァンダルーは思った。思えば、あの胸騒ぎは『ヴィダの御子』の隠れた二つ名効果か、何かだったのかもしれない。


「だが……蟲の魔物にアンデッドにグールに吸血鬼? それに見た事も無いオーク。それも、全員が拙者より腕が数段上だと見受けた。そんな者達を率いるダンピール……凄まじいものだな、『ヴィダの巫女』とは」

「ん?」

 エレオノーラやヴィガロ、ゴーバ達の強さを感じ取ったギザニアが感心した様子でそう言うが、ヴァンダルーは何か違和感を覚えた。


「フゴ、キング凄い! ところで俺、ムラムラしてきた!」

「ブフーッ! ブフゥー!」

「【消臭】!」

 しかし、違和感の正体に気がつく前にゴーバ達オーカスの鼻息とギザニアを見る目が危険に成って来たので、それどころでは無くなってしまった。


「す、すまない。まだ秘薬の残り香が纏わりついていたようだ」

 どうやらオークを強制発情させる秘薬は、オーカスにも有効であるらしい。


「ブフ? 落ち着いた。俺、今賢者」

『ところで、そんなにピンチなのに何であなた達の神は出てこないの? 数万年前は何回か出て来て仲裁してくれたんでしょ?』

 落ち着いた眼差しを遠くに向けるゴーバの横でオルビアが発した質問が、ヴァンダルーの意識を違和感から完全に逸らしてしまった。


「それは、分からない。何か事情があるのか、ラヴォヴィファードが何かしたのか、拙者には考えの及ばない深い考えがあるのかもしれない」

「ふむ、そんなものかも。しかし、それよりもノーブルオークの賢帝……」

「意外、なのか? 拙者達にとってはそうではないのだが」


「意外と言うか、想像の埒外じゃな」

「それにも驚愕したが、ノーブルオークが人間の言葉を話したそうだが、それは本当か?」

「我が記憶している限り、ブゴガンやその息子達は一言も話さなかったぞ」


「そのブゴガンと言うのは……十年以上前にノーブルオークの罪人が追放された話を聞いた事があったな。それなら理由は分かる」

 何でもノーブルオーク帝国では人間の言葉を話す事がそれぞれの家の家督を継ぐ条件であるらしい。しかし体質的に人間の言葉を発音できないそのノーブルオークは、家督を継ぐために秘密裏に作らせたマジックアイテムで人間語を話しているように偽装した。


 その不正を掴んだライバルである他家のノーブルオークを惨殺した罪で、追放されたらしい。


 恐らく、そのノーブルオークがブゴガンだろう。それ以外で追放刑に処せられたノーブルオークは暫く存在しないそうだし。

「権力闘争に負けたと言えなくもない理由ですね」

 当人の霊が語った理由とは若干異なるが、誤差の範囲だろう。


「ところで、一息ついたらクーネリア姫と合流するために移動したいのですが」

「ああ、だが追いつくのは難しいだろう。拙者が囮に成ってここまで逃げて来るまで、半日程経っているからな」

「アラクネの体力を褒めるべきか、オークの精力に呆れるべきか」


 クーネリア姫がアラクネ族の集落に真っ直ぐ戻ったとして、その差は一日分以上。ヴァンダルーが飛行すれば追いつけるだろうが、初めて訪れる魔境でそれをする気にはならない。

「秘薬で周辺のオークは全て拙者が惹きつけて来たから、姫達は安全なはずだ。あのノーブルオークも手下を急いで掻き集めて来た様子だったから、他の追跡部隊も居ないだろう」

 ギザニアもそう言うので、ヴァンダルー達は無理をせずクーネリア姫達を追い駆ける事にしたのだった。




・名前:ピート

・ランク:7

・種族:黒百雷大百足

・レベル:45


・パッシブスキル

飢餓耐性:2Lv

自己強化:従属:5Lv(UP!)

毒分泌(神経毒):顎角:6Lv(UP!)

風属性耐性:4Lv(UP!)

肉体強化:外骨格 角:6Lv(UP!)

怪力:5Lv(UP!)


・アクティブスキル

忍び足:1Lv

突撃:6Lv(UP!)

限界突破:7Lv(UP!)

鎧術:3Lv(UP!)

雷光:7Lv(UP!)


・ユニークスキル

竜喰い:2Lv(UP!)




・名前:キュール

・ランク:6

・種族:ディープブラッドスライム

・レベル:61


・パッシブスキル

打撃耐性:7Lv(UP!)

飢餓耐性:2Lv

捕食回復:6Lv(UP!)

身体形状操作:4Lv(UP!)

毒分泌:6Lv(UP!)

魔術耐性:1Lv(NEW!)

怪力:1Lv(NEW!)


・アクティブスキル

忍び足:4Lv

業血:3Lv(UP!)

限界突破:3Lv(UP!)

巨大化:2Lv(UP!)

格闘術:1Lv(NEW!)

8月22日に132話、25日に133話、29日に134話を投稿する予定です。

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