閑話14 ルチリアーノレポート下+α
グーバモンから師匠が大量に回収してきたアンデッド。その数に私は嬉しい悲鳴を上げた。
「師匠っ、あなたは最高だぁ!」
「もっと褒めてくれても良いですよ」
無表情のままふんぞり返っている師匠を顧みる時間も惜しい程、無数のアンデッドが王城地下の地下空間を改装した工房に並んでいる。
その全てが原種吸血鬼グーバモンの作り上げた手製のアンデッドだ。
「くふふふっ、涎が止まらん! 脱水症状を起こしそうだ!」
『心做しかゾンビ達が彼に怯えているように見えますよ、御子』
『よっぽど嬉しいのね、ルチリアーノさん。まるで新しい玩具を貰った子供みたい』
『やべぇぞ坊主! お袋さんの目がイカレちまった!』
後ろで失礼な事を言っているヌアザやボークスの言葉も、今の私の耳に入らない。私にとってこのアンデッド達は、それほど貴重な資料なのだ。
まずアンデッドの大半を占める、最近作られた量産型のゾンビジャイアントやヴァンパイアゾンビだが、これが素晴らしい。
「何と効率的な……必要な個所に必要な施術と加工を確実に行い、それでいて手を抜くところは抜いている!」
『……ぢゅ? 手を抜いては駄目なのでは?』
検査と施術の手伝いをしてくれている骨人がそう聞き返すが、私は「場合に依るのだよ」と答えた。
「それは勿論だが、グーバモンにとって彼等は量産品……例えるなら鋳物の武器だ。数を作って初めて意味がある。だから必要以上時間はかけられない。だが、手を抜き過ぎて役に立たないのでは意味が無い。
ここを……見たまえ!」
『お゛ごぼっ』
ゾンビジャイアントの核であるゾンビの頭蓋骨を縫合痕に沿って再び開き、脳を露わにする。そして右脳と左脳の間に挟むように差し入れ得られた小さな金属板を引き抜く。
「この金属板が、アンデッド自身の意思と感情、思考力を制限しているのだ! そして唯一はっきりと認識できる主人であるグーバモンの声のみに反応する様に細工したのだよ。
だが簡単な事ではない。このヒヒリュシュカカの聖印が刻まれた金属板が効果を発揮するためには、脳の決められた位置に適度な深さまで埋め込む、精密な施術が必要なのだ!」
この世界の医療知識や生化学は師匠が居た世界と比べて、ずっと遅れているようだ。だから私がグーバモンの施術をすぐ理解できたのは、師匠から脳の働きについて教わったお蔭だ。
とは言っても、地球やオリジンと言った世界でも脳について完全に解明した訳ではなかったらしいが。
恐らく、グーバモン達原種吸血鬼は異世界から召喚された勇者から脳の働きについて教わったか、ヒヒリュシュカカが知識を授けたのだろう。
『『『あ゛え゛げべぐぼ』』』
次に私はゾンビジャイアントの関節部分、死体と死体の間の継ぎ目を切り開いて筋肉や骨を露出させ、そこを指差して見せた。
「だが、ここを見ろ! 皮膚と浅い部分の筋肉を縫い合わせただけで、深い場所に在る筋肉や骨はバラバラだ! これでは素材にした従属種吸血鬼の怪力を活かしきれず、更に動く度にバランスを崩しやすくなる。
しかし、複数の死体の筋肉や骨格をバランス良く効率的に繋ぎ合わせるのは至難の業だ。私だったら何日もかかる大仕事だ」
恐らく、グーバモンなら一体を完全に仕上げるのに一日あれば十分だろう。しかしグーバモンは短期間で大量のゾンビジャイアントを仕上げるために、完成度を落としたのだ。
それでいて最低限ランク通りの戦闘力を持たせているのだから、素晴らしい。実際、このゾンビジャイアント一体でD級冒険者パーティーに甚大な被害を与える事が出来るだろう。
今ライフデッドとして首から下のみ保存されているテーネシアが作ったアンデッドとは大違いだ。
彼女はどうもアンデッドを芸術作品のように考えていたからか、作り上げたアンデッドの実用性(戦闘力)は高くなかった。その分、肌の仕上げや防腐技術などは見事だったが。
対してグーバモンは芸術作品ではなく優れた武具を収集するコレクターと言ったところだろうか。
『はぁ……』
しかし、残念な事に骨人はこの素晴らしさを理解してくれなかったようだ。
『主は一人で一体十分程で仕上げて仕舞われていますが』
「師匠は例外だ」
骨人と私の視線の先では、五人程に分裂した霊体の師匠達がテキパキと、流れ作業でゾンビジャイアントの仕上げを行っている。
全員が師匠自身であるため連携も完全。ただ単に仕上げるだけではなく、【魔王の欠片】を使って完成度を上げる事までしている。
「師匠とそれ以外を同じ土俵で語ってはいけない」
師匠はいまいち自覚していないが、彼はごく普通に余人が登れない土台に立っているので、師匠と他人を比べると感覚がおかしくなる。
『ふむ……とりあえず主は偉大だと』
「それが分かっていれば良い」
化け物と見るか、天才と思うかは、見た者の自由だ。私は勿論後者である。
因みに、今師匠の本体(そう言っていいか微妙だが)は何処に居るのかと言うと、タロスヘイムの英雄、ザンディアとジーナの調整を進めている。
二人は『剣王』ボークスのパーティーメンバーであり、ザンディアはレビア王女の妹、ジーナはヌアザが尊敬するヴィダ神殿の元神殿長。つまり、思い入れのある特別なゾンビなのだ。
態々レイモンドの中に隠れ、地下神殿まで転移してグーバモンを殺した理由の一つでもある。
『い゛ぎっ……いぎひっ……』
『あ゛ぁ……ひゅ……かひゅ……』
しかし、今の状態は良好とは言えない。単純に戦闘能力だけなら十分なのだろうが。
グーバモンは量産品とは違い、英雄アンデッドにはその当時注ぎ込める技術の限界まで注ぎ込み、機能美を追及する傾向があるようだ。
だが、その技術と創意工夫が戦闘力以外の物全てを蔑にしており、こそぎ落としていた。
……使役するアンデッドに対して機能や戦闘能力以外が損なわれているのを見て、「良好な状態とは言えない」とは、私も変わったものだ。
『もう少しの辛抱だぜ、嬢ちゃん、ジーナ』
『陛下、妹は、妹とジーナさんは良くなりますよね!』
「勿論です」
痛みに喘ぎ続けるザンディアと、呻き声と妙な息を吐き続けるジーナを心配そうに見つめるボークスとレビア王女に、師匠はそう言い切る。
自信が無い時は正直に言う事が多い師匠だから、二人は良くなるのだろう。アンデッドが良くなるというのもおかしいが。
「ザンディアは、死体に宿らせた霊からチューブで魔力を搾り取り、数種類の魔術を発動させる仕掛けを施した杖の動力源にしているようですね。疑似魔術師ゾンビ、って感じです。
痛覚が無いゾンビの筈なのに痛みを感じているのは、魔力を搾り取る時に霊が痛みを感じるからでしょう」
「霊から魔力を搾り取る仕掛けか。表社会には存在しない技術だな、恐らくグーバモンオリジナルで、希少な素材や霊薬が使われているのだろう」
「ジーナの方は、肺の代わりに魔力を消費してこの特殊な煙を作る装置を入れているようですね。それで分離後、上半身だけで空を飛ぶ事が出来ると。
そのせいで喋る事が出来ないみたいですね。魔術を使わせるつもりがないなら、別に問題無かったのでしょうけど」
「未知の魔術装置、それも貴重な代物だな。量産すれば、師匠が言っていた『気球』や『飛行船』の製作も夢ではないのではないかね?」
普通の魔術師なら、「何故態々そんな高度な技術をゾンビに使うのか」と言いたくなるような技術ばかりだ。私ですら若干そう思うのだから、よっぽどだろう。
「貴重なのは分かりましたけど、全て取り外して、後脳と脊髄に埋め込まれている金属板を抜いて、霊薬が混じった血を取り換えれば、とりあえず良くなるでしょう。
そう言う訳で衝立を設置するのでルチリアーノは下がってください」
「な、何故!?」
突然私を締め出そうとする師匠に、私は反射的に叫び返していた。
「乙女の柔肌や脳髄や内臓が露わになるからです」
「そんな素晴らしい物が見られるのに何故なのだ、師匠!? 二百年前の死者の様々な部位が現在どのような状態にあるのかを観察する事が、どれほど貴重なのか分からない師匠ではないだろう!?」
理不尽な理由で目隠し用らしい衝立を分身に並べさせる師匠。私は半ば以上悲鳴が混じった抗議の声を上げるが、それは逆効果だったようだ。
「いや、前アンデッドにしか興味が無いって言っていましたし」
「ちょっと待ってくれ師匠っ! それはそう言う意味では――ふげっ」
『良いからこっちに来やがれ!』
『ルチリアーノさんっ、妹は嫁入り前なんですよ!』
『恥を知りなさい、破廉恥な!』
ボークスに襟首を掴まれた私は、レビア王女とヌアザに理不尽に罵られながら衝立が設置されるのを見ているしかなかったのだった。
君らタロスヘイムの巨人種は、私から見れば常に半裸の様な物で、嫁入り前とか破廉恥だとか言うなら、普段からもっと肌を隠すべきだと思うのだが。
因みに、英雄アンデッド達の手術と調整が終わる頃には、グーバモンの魂は砕かれたようだ。
『ヴァンダルーの【魂砕き】、【神殺し】、【手術】のスキルレベルが上がりました』
生きとし生ける者全てに、魂は宿っている。それは疑うべくもない。
しかし、生ける者の何処に魂が宿っているのかは、古来より賢者の間でも論争が絶えなかった。
心臓がある胸なのか、脳がある頭なのか。
心臓や頭だとしたら、それらが複数ある魔物やヴィダの新種族の場合は複数の魂を持っているのか? それとも魔物やその血が流れている者の魂が宿る場所は別なのか。
【霊媒師】にも確認できないこの難問に、研究者達は頭を痛めてきた。
私も若い頃は知恵熱が出るまで考えたものだ。そして結局納得できる答えは出なかった。
聞けば、師匠が居た異世界でもその確かな答えは出ていないのだという。それどころか、『地球』では魂の存在すら確認されていないらしい。
意外な事だ。進んだ文明を持っているのに、魂の存在が確認されていないとは。
だが聞けば『地球』ではアンデッドの存在が未確認で、【霊媒師】も大体が詐欺師であるらしい。それなら無理も無いかもしれない。
……この世界に比べれば生きやすい場所の多い世界らしいが、私や師匠の様な者には生きにくい世界の様だ。
それは兎も角、私が興味を持ったのは、複合アンデッド……それも複数の死体のパーツを使いながら、魂を一つしか持っていない事が確実であるアンデッドだ。
「師匠が居た『地球』では、驚くべき事だが死んだ人間から取り出した臓器を生きている人間に移植する治療法があるらしい。神をも恐れぬ素晴らしい医療行為だが、私が興味を持ったのはその後の患者に起こる事だ。
何でも、移植した臓器の元の持ち主の記憶を夢に見たり、元の持ち主の癖が身についたり、生前好んでいた食べ物が食べたくなるらしい」
地球でも最初は『オカルト』、迷信や噂話の類の話だったらしいが、師匠が『地球』で死ぬ少し前には、それなりに根拠のある話だと言われるようになったそうだ。
その頃の師匠はその手の話にあまり興味が無かったからか、「脳以外の場所にも人の記憶が記録される可能性があるらしい」とあやふやにしか覚えていなかったが。
因みに『オリジン』でも同じ事が起こっていて、「移植した臓器に宿っていたドナーの魔力が影響を与えているのだろう」との学説が唱えられていたらしい。
「それで、複合アンデッドである君達と、ラムダで唯一生体移植を受けた二人に話を聞きたいと思ったのだが」
上下逆さまにされたまま私が長い前置きを話し終えると、エレオノーラとベルモンドは胡乱気な顔をした。
「貴方からヴァンダルー様の話を聞くと、途端胡散臭く感じるわね」
「流石に与太話ではないでしょうか?」
どうやら、二人にはその経験は無いようだ。
『ゆめ? 食べ物……?』
『ら~♪』
『たべ……る?』
『るるる~♪』
そしてラピエサージュと、私に巻きついているヤマタとは会話が成立していない。パウヴィナ嬢か師匠に通訳を頼むべきだったか。
これは師匠から聞いた『地球』や『オリジン』で起きた現象が、この世界でも起きるのか非常に重要な検証なのだが。
この世界と異世界である『地球』、そして『オリジン』。三つの世界に同じ現象が共通して起きるなら、他にも共通して同じ現象を起こせるかもしれない。
……それが分かったからといって、何か試したい事が現時点で在る訳でもないが。正直、アンデッドが存在しないらしい『地球』について、私は研究に取り組むほどの興味が無いのだ。
食文化は素晴らしいと思うが。
しかし、将来的に何か思いつくかもしれないので、確かめられるなら確かめておいた方が良いだろう。
ヤマタの場合臓器の一部ではなく、各首に他種族の女性の脳を含めた上半身を移植しているため、『脳以外にも記憶が記録されている』事を検証するにはあまり適当ではないが。
とりあえず、この検証の趣旨を話すとエレオノーラとベルモンドの態度は協力的に成った。ラピエサージュとヤマタは、あまり態度を変えてくれなかったが。
「悪いけど、特には無いわね。私は傷跡の皮膚やその下の組織を少し移植しただけだから影響が少ないのかもしれないけど。前よりも血が好きに成ったけれど、それは深淵種に変化したからかもしれないし」
しかしエレオノーラには心当たりが無いようだ。私は彼女と比べて格段に移植した部位の多いベルモンドに視線を向けるが、彼女も顔を横に振った。
「私も、テーネシアの記憶や嗜好に影響を受けた事は無いと思います。ただ、何度か密林の木々の枝を飛び移り走り回った夢を見た事がありますが、この尻尾の本来の持ち主の記憶なのか、それとも私の幼少期の記憶なのか判別がつきませんので」
ベルモンドに移植された尻尾は、猿型の魔物の尻尾だ。出現頻度が極めて低い為、タロスヘイムの誰も名前を知らなかった魔物だが、長い尻尾を持つ俊敏な魔物だったらしい。
しかし彼女は密林猿系獣人種の生まれだ。一万年も経っているためあまり覚えていないそうだが、生まれた集落を追い出される前の幼少期は、密林で生活していたらしい。
これではどちらか分からない。
「なるほど。ではまた時間を置いて同じ事を質問するかもしれないが、その時も協力してくれたまえ。
ん? 何か思いついたのかね?」
こちらを覗き込むラピエサージュとヤマタに若干の期待を持って質問すると、その期待の大きさに相応しい答えが返ってきた。
『ラピ、たべる゛う、にく、むし、くさ、なま』
「……なるほど」
ラピエサージュはどうやら、「嗜好が生きている時とは多分変わったのではないか」と言いたいらしい。
ラピエサージュには二百年前のA級冒険者、『氷神槍』のミハエルのパーティーメンバーだった女戦士の頭部に、女魔術師の胴体、そしてテイムされていたオーガの両肘から先と両膝から下、更に角竜型の魔物トライホーンの角を骨格に使い、翼竜の翼や蛇の尻尾、セメタリービーの毒針や毒腺を繋ぎ合わせている。
だから生肉や蟲、草を食べるのは私の言った現象ではないかという事だが……。
「君はアンデッド、ゾンビだからな」
アンデッドは、特にゾンビは肉ばかり食べる様に思われているが、他に食べ物が無ければ意外と植物も食べる。ただ凶暴性が高すぎるので、目の前の動く物を攻撃する事を優先するだけだ。
『たべる~♪』
『さか、な、にく、ひと……たべ、る、とき……』
『かむ~くだく~♪』
ヤマタの方は、九人分の美女の上半身に意識を奪われがちだが、主体は根元のヒュドラだ。そのため彼女の場合は、ヒュドラらしくない行動が移植された部位からの影響という事になる。
こうして話す事や歌を歌う事もヒュドラらしくない行為だが、これはテーネシアから仕込まれた行為なので考慮外である。
「確かにヒュドラは物を食べる時丸飲みだろうが……私がヒュドラに詳しくないので、さてどう判断したものだろうか」
「とりあえず、離してもらってはどうですか?」
「顔色が凄い事に成っているわよ」
結果はすぐには分からないか。継続して調査と検証が必要だろう。
ああ、このままでは寿命が足りなくなるかもしれん。アンデッド化するのも心惹かれるが、その際記憶や思考力に損傷を受けるのは避けたい。私も吸血鬼になる事を考えるか。
師匠から延々【若化】を受ける選択肢もあるが……その際取り返しのつかない弱みを師匠に握られそうなので避けたい。現在に至るまで、【若化】の際に感じる快感と違和感に勝てた者は一人も居ないそうだ。
一人の王が没した。
彼は、誰もが称える偉大な王だった。
戦時には自ら剣を取って誰よりも多くの敵を討ち取り、兵の消耗を抑え、民を守った。
平時には民の見本となるべく清く正しい態度で過ごし、民と兵を飢えさせる事は無かった。
盟約を結んだ同盟国に対しても増長する事無く接し、誰からも愛された。
しかし、この偉大な王にも一つ失敗があった。後継者に関する問題を纏めきる前に没してしまった事だ。
王には二人の息子が居た。
長男は王の素質を受け継いだ秀才。彼が王位を継げば、王同様に帝国を導いてくれると期待を寄せた。
次男は武勇に優れるが粗暴さと短慮が目立つ問題児。
だが、王が没した時次男を次期王と担ぐ者が居た。
王が没してから一月経ったその日、兄弟はそれぞれの部下を引き連れ相対した。
手に武器を握り、鎧を纏って。
兄は問うた。弟よ、帝国を割り、この兄と骨肉の争いを繰り広げて、それでも王に成りたいのかと。
弟は答えた。兄上、あんたが王になったら一生日陰者に成っちまう連中も居るのさ、俺様の様になと。
兄は弟を叱った。何故自分の栄達よりも民の事を想えない! そんな者に王を名乗る資格は無いと。
弟は兄を嘲笑った。民? 家畜の間違いだろ。俺達の糧になる事が奴らの幸せってものだと。
兄は怒りを抑えて弟を諭した。そのような勝手が許されると思うのか? 同盟国も、そして何より神が決してお前を認めない! と。
弟は兄に対して侮蔑を返した。だから父上や兄上は駄目なのさ、何をするにも民、同盟国、そして神! そればっかりだ。俺なら同盟国の奴らを全て俺達の奴隷に出来る。そして、俺達には新しい神がいる、と。
弟が口にした新しい神という言葉にざわめく部下達を手で制した兄は、鞘から剣を引き抜いて弟に告げた。
「ブゴゴ、ブヒブヒヒ」
ならば、最早お前を弟とは思わん!
弟も兄に対して、大鎌の切っ先を向けた。
「ブッヒヒヒ! ブフフブヒ!」
そいつは最高だぁ! 遠慮無く殺してやるぜぇ!
「ムブブジェンゲ、ブゴオォォォォ!」
「ラヴォヴィファード、ブキャキャキャ!」
ノーブルオークの兄弟は、それぞれが奉じる神に祈り、御使いをその身に降臨させると、お互いの首を狙って駆け出した。
ここに、ノーブルオークの帝国を二つに割る内乱の幕が切って落とされた。
6月22日に五章キャラクター紹介、6月26日に間章スキュラ種族紹介&インタビュー・ウィズ・悪神 6月27日119話を投稿する予定です。




