表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四度目は嫌な死属性魔術師  作者: デンスケ
第五章 怪物の遠征編
137/515

百十八話 達成率は七割くらい

 三月。まだ冷えるが、春らしい温かい日差しも感じる頃、ヴァンダルーは炊き上がったサウロン米を皿に盛っていた。


 白い艶やかな米から上がる湯気の香りを嗅いだ瞬間、感動が全身に走る。

「おぉ……」

 自然と感嘆の声が出た。今のヴァンダルーにとって、どんな香辛料の香りよりも食欲を誘う香りに自然と体が震える。


 原種吸血鬼との殺し合いでも怒り以外で震えた事の無いヴァンダルーの反応に、それを見守る者達に動揺が走った。

「……プリベル、だったわね? あれは、ただの食べ物よね?」

「そのはずだけど……だんだん自信が無くなって来たよ」

『ところで、これは何かの儀式なのでしょうか?』


 元サウロン公爵領に行かず留守番をしていたエレオノーラの質問に、サウロン米を提供したスキュラ族のプリベルは歯切れ悪く答えた。

 そしてタロスヘイムのヴィダ神殿の聖職者にしてリッチのヌアザは、首を傾げていた。


『これまで御子は数え切れないほどの新しい食べ物を創り出し、若しくは再現してきました。しかし、ここまで喜びを露わにした事は無い筈』

「確かに、儂の記憶でも味噌の時も醤油の時も、カレーの時も喜んでいたが今ほどではなかった筈じゃ」

 ザディリスもヌアザに同意するが、プリベル達には別の衝撃が走った。


「……ヴァンダルー君、喜んでるの、あれで。オルビアさん、分かった?」

『いや~、全然。ゴーストに成ったからって、オーラとかスピリチアル? 的な物が見える訳じゃないからねー』

「意外とノリが良い子だけど、黙っている時は何考えているのか分かり辛いね」


 ペリベールが言う通り、ある程度親しくなるとヴァンダルーの喜怒哀楽はすぐ読めるようになる。無表情なのは変わらないが、彼は無口ではないし頻繁に身振り手振りで感情を表現するからだ。

 しかし、それを止めると途端内心が読めなくなってしまう。


「まだまだですわね」

「ヴァンの癖が分かってないな」

「そんな事じゃ、ヴァンダルー様の僕は務まらないわよ」

 だがそれでも内心を読めるグールのタレアやバスディア、吸血鬼のエレオノーラが得意気な顔をする。


「くぅっ!」

「いや、あたし等僕じゃないし。プリベルも黙って悔しがるんじゃないよっ!」

「だってっ! ボクより胸が大きいからって許せないよ!」

『え? そういう話だったの!?』


「いや、胸が大きいからどうと言うつもりは無いのだが」

「足の数なら負けないのにぃ!」

「八本足のスキュラに勝てる訳がないでしょう!?」

「絡めないでくださいますっ!?」


 無意識に蠢かせていたプリベルの触腕に、近くにいたタレアが巻き込まれている。

「良い気味じゃ。しかしアラクネぐらいじゃろうな、張り合えるのは」

 しょうも無い口喧嘩、若しくは一方的に絡まれ始めた自分の娘とライバル、そしてエレオノーラを横目に、ザディリスは白米の香りをヴァンダルーがしているように嗅いでみた。


「確かに良い香りじゃが……」

 インディカ米に近い南部米は、米だけで炊くと馴染みの無い彼女にとってはやや臭う。それと比べればジャポニカ米に近いサウロン米は、確かに良い匂いがする。

 しかしあそこまで喜びを……いや、感動を露わにする程だろうか?


 そう思ったザディリスだが、その理由はすぐ分かった気がする。

「これだっ、これこそ本物の米だ!」

「うう、懐かしいっ!」

 そう言いながら涙ぐんでいる元々サウロン公爵領の農村でサウロン米を栽培していたカシムやフェスター。ゼノは静かだが、それは無言のまま感動の涙を流しているからだった。


「なるほど、思い入れか」

 そう理解したザディリスは、最近すっかり慣れた箸で白米を一口食べた。

「……うむ、まあ旨い」

 だが、ヴァンダルーやカシム達のように白米だけで食べ続けられるほどではないが。




 もぐもぐとサウロン米を咀嚼すると、南部米とは違う味わいが広がる。地球の白米と比べると、やはり味は若干落ちる……のかもしれない。

『実は、あまり覚えてないのですよねー。ジャポニカ米を食べたのって、もう三十年ぐらい前ですから』

 地球での伯父も流石に白米を食べる事を贅沢だとは言わなかったので、当時は普通に白米を食していた。


 しかし、オリジンで二度目の人生を過ごした軍事国家の研究所は、地球の欧州圏に該当する文化圏にあった。米が無い訳じゃなかったが、実験体だった彼に態々出す事は無かった。食事らしい食事が出た時の主食はほぼパンで、パスタが何回かあっただけのような気がする。

 それとなく米を希望した事もあるが、「負の感情が死属性魔術に良い影響を与える」と言う理由で叶えられる事は無かった。それ以後食事はブロック状の栄養補助食品、そして最終的には故意に不味くした流動食か、点滴になった。


 それに地球で天宮博人として生きていた時、朝の主食は実を言うとパン派だった。囲んで楽しい食卓が無かったため、さっさと済ませられるパンの方を好んでいたのだ。


 それでも地球のご飯の方が美味しかったように思えるが、それは多分炊き方の問題だろう。日本の炊飯器の性能が凄すぎたのだ。

『だから比べる事は出来ませんが、美味しいと思います』

「そう言って貰えると嬉しいよ」


 肉体が米を求めているので、【幽体離脱】で霊体だけ抜け出て礼を言いに来たヴァンダルーに、プリベルは笑顔でそう答えた。

 考えてみれば、このサウロン米を手に入れるためにヴァンダルーは彼女達の下を訪ねたのだった。


 ……もう一つの目的、味方に成ってくれる外部勢力を作る事は、スキュラ族が移住してきてしまったので完全には達成できていないが。

 イリス率いる『サウロン解放戦線』と繋がりが出来たので、それで良しとしよう。


『プリベルさん、ペリベールさん、スキュラの皆さん、本当にありがとうございます。ヴァンダルーったら、赤ちゃんの頃からご飯が食べたいって言っていたから……』

『うう、良かったですね坊ちゃん。このサムめは覚えておりますぞ、ダルシア様からオルバウム選王国に米があると聞いた時、『マジで!?』と聞き返していた時の事を!』


『私達も覚えてますよ、その時はまだこうして話す事も出来ませんでしたけど!』

『うう、良かったですねっ、私はパンの方が好きですけど、本当に『マジで!?』って言ってましたもん。本当に良かったですねぇ!』

『……母さん、皆、喜んでくれるのは良いけれど、もう少し忘却能力を発揮しても良いと思いますよ』

 ダルシア達はまだグール達の集落に滞在する前の事をよく覚えていたようだ。


『なんと、それほど主が昔からこの米を求めていたとは……』

『おぉん?』

 そして当時はただ人骨に宿っただけのネズミの霊だった骨人や、ボーンビーストだったクノッヘンは覚えていなかった。当時は人語を正確には理解していなかったので無理もない。


『へえ、そういう事も言うんだ。いつも子供らしくない丁寧な口調だから、赤ん坊の時からそうなのかと思ったよ』

『陛下も昔はヤンチャだったんですねー』


『それよりもよぉ、そろそろ米だけじゃ飽きてきたぜ』

「我もだ。肉を焼いても良いか?」

 タロスヘイムの英雄の一人、ゾンビヒーローの『剣王』ボークスと、グールの若長でバスディアの父親のヴィガロがおかずを所望する。


『じゃあ、カレーライスにしましょうか』

 平皿なので見た目も合うだろうと、霊体ヴァンダルーは鍋から温めた熟カレーを配るのだった。




 スキュラの自治区に隣接した関所を兼ねた小砦の指揮官、クルト・レッグストンは結局ヴァンダルーからのスカウトに応じた。

 元々応じなければアンデッドにしてでも連れて行くと言われては仕方がないと応じるつもりだったそうだ。しかし母国であるミルグ盾国のトーマス・パルパペック軍務卿が『悦命の邪神』ヒヒリュシュカカを奉じる吸血鬼と通じていたと知った事が、心変わりするきっかけだったようだ。


「軍務卿は国の為だと思っているだろうが、それでも越えちゃいけない一線ってものがある。……まあ、俺が今からする事も、軍務卿から見れば一線を越えた行為なのだろうが」

 そう言うと彼は部下の命を保証する事と引き換えに、ヴァンダルーに忠誠を誓ったのだった。


 後は彼の部下約百人を説得して小砦はヴァンダルーの手中に収まった。クルトの部下は殆どが前の戦争で降格された者や左遷された者で構成されていた。

そのため、「記憶を消された後解放されるのと、クルトさんと一緒に来るのと、どちらが良いですか?」と言うヴァンダルーの説得に、九割以上が後者を選んだのだった。


 無論、クルトの堅実な人柄やヴァンダルーに約束された待遇に惹かれただけではなく、廃人と化したマードック達を見て精神を弄られる恐怖に耐えられなかった者も少なくなかったが。


 その後は、それでも拒否した数人の兵士達を洗脳して情報漏洩を防ぎ、続いて引っ越し作業を開始した。

『そういう訳だから皆、このヴァン君の国に引っ越そう!』

 オルビアによって、タロスヘイムの南に在るリザードマンの沼沢地にスキュラ族を受け入れる事に成ったからだ。


 彼女達の信仰対象であるメレベベイルからの神託や、スキュラ連続猟奇殺人事件を解決した事でヴァンダルーは既にスキュラ族全体から信用されている。

 更に『触王』の二つ名を獲得した事で彼女達から好意を受け易くなっていたため、スムーズに話は進んだ。


 それに試してみたら【装蟲術】でスキュラも装備出来たので、それを利用して各集落の長を現地に連れて行き、プレゼンテーションを行ったのも良かったのだろう。元々彼女達はアミッド帝国の占領軍から逃れるためにこっそり移住先を探していたので、それを大沼沢地にする事を認めてくれた。


 後は只管ヴァンダルーが動いてピストン輸送である。


 勿論スキュラ族も着の身着のままでは困るし、そのままではヴァンダルーが装備できない夫や息子達も居るので、クノッヘンやサム、それに新しく部下になったマイルズ達に荷物を運んで何度も往復して貰う事になった。蟲を寄生させてもいいが、彼らの多くは一般人でヴィガロ達より圧倒的に身体能力が低いため、何かあったら困る。そのため、丁寧な方法をとる事にした。


 ルートは、丁度ヴァンダルー達が来る時討伐したハリケーンドラゴンの縄張りが穴に成っている。ハリケーンドラゴンの骨が混じっているクノッヘンが居れば、それ以下の魔物はまず寄って来ない。


「こんなに何回も境界山脈を越えちゃあ、ありがたみも何も無いわね!」

『はははっ、確かに! 境界山脈を越えた数ならもう坊ちゃんより上ですぞ!』

『おおぉぉぉぉん』


 荷物の運搬の為に、嫌悪感を抑えて空間属性魔術を使うグーバモンのアンデッドを作るべきかと思ったヴァンダルーだったが、サムやマイルズが楽しそうに肉体労働をしているのを見て、気にしない事にした。


 後サウロン領では、イリス率いる『サウロン解放戦線』を秘密裏に援助する事になった。

 レイモンドとリックの兄弟が率いていた『新生サウロン公爵軍』が瓦解したため、占領軍が勢い付かない様に頑張ってもらうためだ。


 主にイリスと交渉したのは対人能力が実は低い事が明らかに成ったベルモンドだったが、彼女は物わかりが良かったらしい。

「元々自分が犯罪者側になるのでアルダの信者を止めていたそうなので、改宗には快く応じて頂けました。ただ、彼女の父親を解放する事は譲れないそうです」


 イリスの父親、アミッド帝国との戦争で戦死したベアハルト卿はグーバモンの手の者に死体を回収された。そしてアンデッドにされていたのを、既にヴァンダルーが回収してある。

「まあ、それぐらいなら構いませんけど。でもロドコルテの所に戻すのも何なので、一度破壊して霊を取り出して彼女に目に見える形で預けましょうか」


 ヴァンダルーはイリスの父親に対して何の思い入れも無いので、別に解放しても惜しいとは思わなかった。

 預けた後父親の霊が宿ったアイテムを使うか、浄化するために打ち壊して聖水をかけるのかは、イリスの自由だ。


 こうして『サウロン解放戦線』を食料や物資面で援助する事になった。イリス達はヴィダやヴィダ派の神々の信者として、そしてレジスタンスとしてアミッド帝国と戦う事になる。


 ……『魔王の欠片』製武具やブラッドポーションの援助を受けていて、スキュラ族が引っ越した後の自治区をアジトとして使える為、帝国に勝利できるかは兎も角、余程の事が無い限り壊滅する事は無いだろう。

 因みに、ハッジ達偽レジスタンスはタロスヘイムに運ばれた後鍛え直され、人材の援助として『サウロン解放戦線』に参加する事になるのだった。


 そして引っ越し等諸々が一段落ついた段階で、クルト達も小砦から離れた。後は討伐隊のアンデッドとクノッヘンから分離したスケルトンが適度に壊して小砦にマードック達の死体を幾つか残し、群れを成して移動すれば野良アンデッドの襲撃で砦が落ちたと誰もが思うだろう。

 記憶を消した兵士は数少ない生き残りという訳だ。


「だが、上層部の人間の内何人かは気が付くでしょう。軍務卿は確実に陛下が関係していると疑うはず」

『問題ないでしょう。気が付かれても疑われても、既にその時我々は大陸南部に戻った後。軍の再編に苦労している軍務卿には、精々唸っていただこう』

 既に口調が臣下のそれに成ったクルトに、チェザーレが答える。彼等兄弟は互いに以前と同じ態度で接する事に決めたらしい。


 ヴァンダルーが最も大変だったのは、その後だ。

 約五千人のスキュラ族の引っ越しは、彼女達を沼沢地に放してお仕舞とはいかない。住む場所とサウロン米を栽培する田んぼに、家畜であるカモやヒュージカピバラの飼育施設も必要だ。


 ただスキュラや彼女達の夫の中には大工等の職人が居たので、ヴァンダルーは彼女達の指示に従って木材等をゴーレム化して運び、住居の形に組み建てるだけで良かった。

「陛下さん、これって陛下さん以外にも出来る人居るのかい? 居たら俺ら廃業するしかないんだが」

「いえ、俺だけです。そして何時も建築だけやってはいられないので、廃業しないで頑張ってください」


 指示を出すだけでウッドゴーレムを家の形に出来るヴァンダルーの答えに、職人達は深く安堵するのだった。

 そして沼沢地をやはり【ゴーレム錬成】で水田に整備する。スキュラ族の自治区とは気候や日照時間が多少変わるが、土は良いそうなので味は変わるかもしれないが収穫は可能だろうとの事だった。


 後はサウロン公爵領とスキュラ自治区の関係を反面教師にして、特定の場所に特定の種族だけが固まらない様にした。沼沢地にリザードマンやスキュラが多いのは自然だが、そこにグールやアンデッドが加わる様にしたのだ。

 逆に、リザードマンやスキュラから代表者を出してもらい、交代制でタロスヘイムに暮らしてもらうようにする。


 人材の交流と、政治や軍事、商業に関わってもらう事で、関心を持ち続けてもらうようにするために。そして何より、共通する国への帰属意識を持ってもらうためだ。

 将来種族ごとに分かれて分離独立運動が始まって国がバラバラに成るなんて嫌すぎる。ダークエルフとのダンピールであるヴァンダルーは寿命が長い為、その『将来』にまだ生きているだろうから尚更だ。


 そして後はスキュラ族の戸籍の作成に所得税の納め方のガイダンス等が残っているが、スキュラ族の移住は三月を迎えた頃には落ち着き、こうして米の試食会などを開く事が出来たのだった。




 タロスヘイムへのスキュラ族の移住は落ち着いたが、それ以外のバーンガイア大陸の各地では落ち着くどころではなかった。


 まず元サウロン公爵領だが、春を迎えても大きく揺れていた。

 アミッド帝国に占領されている事に不満を持つ人々にとって希望の双璧だったうちの片方、『新生サウロン公爵軍』。そのリーダーのレイモンド・パリスとその弟でサブリーダーのリック・パリスが討ち取られてしまったからだ。


 各地に散っている小隊規模のメンバーが残っているが、それを統括し指揮する立場の者達が殆ど居なくなってしまった。これでは組織として機能しない。

 しかしそれを救ったのが、残った『サウロン解放戦線』だ。リーダーの『解放の姫騎士』は各地で孤立していた『新生サウロン公爵軍』のメンバーを纏めつつある。


 人員以外にも謎の協力者から提供される物資に支えられている事も大きい。

 ただレジスタンス運動全体で見れば、サウロン公爵の遺児だったレイモンドを失った影響は小さくなく、オルバウム選王国との連携が危ぶまれている。


 そして占領軍はレジスタンスの大物二人を討ち取って順風満帆――だと占領下の人々やオルバウム選王国には偽装している。

 精鋭の討伐隊やスキュラ族自治区に隣接していた小砦がアンデッドの群れによって壊滅し、大規模なアンデッドの掃討作戦を行わなければならなかった事は、それなりに痛い。


 だが最も痛いのはスキュラ族が自治区から消えた事だ。将来的には締め上げて暴動を誘発して根絶やしにしてしまう予定ではあったが、それはアミッド帝国の皇帝マシュクザールの予定では百年以上の時間をかけて行うはずだった。

 その間スキュラ族から得られるはずだった税収や、生産される産物が産み出す利益が消えてしまった。


 百年の間に友好ムードを演出してスキュラ族の技術や農業のノウハウ等を手に入れる目算も、泡と消えてしまった。

 しかも無人になったスキュラ族自治区は、占領軍にとって重荷に変化する。大部分は今や無人の山地と沼だが、小規模だが魔物が跋扈する魔境とダンジョンが一つある。放置すると、魔物が増えて魔境の面積が一気に拡大してしまう危険性がある。

 謎のアンデッドも大量発生し砦を落としている以上、予算を組んで管理しなければならない。


 そして占領軍を派遣しているアミッド帝国とミルグ盾国では、それぞれの上層部が揃って唸っていた。

 様々な情報を集めた結果アミッド帝国の皇帝マシュクザールは、そしてまた代わったパイプ役の吸血鬼からの情報でミルグ盾国の現軍務卿トーマス・パルパペック伯爵は、一連の事件がヴァンダルーによるものだと確信した。


「何処までも引っ掻き回してくれる……っ!」

 そして場所も時間も違うが、そう同じ言葉を吐き捨てたという。


 そして大陸東部のオルバウム選王国だが、少し騒ぎに成っていた。何故ならレイモンドと繋がっていた他の公爵や軍人が協力者を失ってしまったからだ。

 レイモンドと協力関係にあったのは、既に脱出しているサウロン公爵の正子達と繋がる事が出来ず、順当に行けばサウロン公爵領を取り返しても大きな利権には与れない者達だ。


 そこで継承権を放棄しているものの公爵家の血を引くレイモンドにサウロン公爵領を取り戻させ、彼を新公爵に押し上げる。その恩とコネで利権に与ろうと画策していたのだ。

 それが泡と消え、しかし今更サウロン公爵家の正子達とコネを結ぶことも出来ず狼狽えていた。


 一連の事件で得をしたのはスキュラ族を除けば、何も知らない大陸の一般人かもしれない。

 グーバモンが倒され、彼自身が手下の吸血鬼達を激減させた事で、恐ろしい化け物が大勢減ったのだから。




『そういえば、ノーブルオークの帝国には何時行くの?』

「とりあえず、今年の作付けが終わって、稲の生育が落ち着いてからですかね。その間にザンディアやジーナの調整もしたいですし」

「ピギィ~」


 ダルシアに聞かれて思い出したノーブルオークの帝国だが、沼沢地の南端にレムルースや監視用ゴーレムを配置しても、動きらしいものは見られない。

 少し先送りにしても問題無いだろう。


「はいはい、肉団子ですね」

 頭の上に乗っている、少し前に卵から孵ったセメタリービーの女王の幼虫に特製の肉団子を食べさせる。一見消化に悪そうだが、働き蜂が唾液を混ぜて骨までツミレ状にしているのでとても消化に良い。


「ピュギュピギュ」

 複眼がくりっとした白い幼虫に【鮮度維持】の魔術で保存していた肉団子を食べさせながら、ふとヴァンダルーは思い出した。


「そういえば母さん、メレベベイルがホムンクルスに関して『触手でなら力になれる』と言ってくれているのですが?」

『えーっと、触手以外の部分はどうなるのかしら? 母さん、スキュラさん達みたいに触手が生えるのは構わないのだけど、触手だけなのはちょっと……』

「ですよねー」


 「触手の生えた母さん」と「触手だけの母さん」、この二つには大きな違いがある。

 色々と影響を受けて価値観が変わってきたダルシアだが、流石に触手だけに成るのは嫌だった。そこに『五悪龍神』フィディルグの鱗が加わっても、同じである。


「ああ、後今日中に【ゾンビメイカー】にジョブチェンジする予定です」

 これでグーバモンに改造された英雄アンデッド達の調整も捗るだろう。




・名前:ヴァンダルー

・種族:ダンピール(ダークエルフ)

・年齢:8歳

・二つ名:【グールキング】 【蝕王】 【魔王の再来】 【開拓地の守護者】 【ヴィダの御子】 【怪物】 【鱗王】 【触王】

・ジョブ:ゾンビメイカー

・レベル:0

・ジョブ履歴:死属性魔術師、ゴーレム錬成士、アンデッドテイマー、魂滅士、毒手使い、蟲使い、樹術士、魔導士、大敵


・能力値

生命力:2,066

魔力 :1,071,505,533+(321,451,659)

力  :943

敏捷 :698

体力 :1,003

知力 :1,919



・パッシブスキル

怪力:5Lv

高速治癒:9Lv(UP!)

死属性魔術:10Lv(UP!)

状態異常耐性:8Lv(UP!)

魔術耐性:6Lv(UP!)

闇視

魔道誘引:2Lv(UP!)

詠唱破棄:6Lv

導き:魔道:4Lv(UP!)

魔力自動回復:6Lv

従属強化:7Lv(UP!)

毒分泌(爪牙舌):5Lv

敏捷強化:3Lv

身体伸縮(舌):5Lv

無手時攻撃力強化:大(UP!)

身体強化(髪爪舌牙):4Lv

糸精製:3Lv

魔力増大:3Lv(UP!)


・アクティブスキル

業血:3Lv

限界突破:7Lv

ゴーレム錬成:8Lv

無属性魔術:8Lv(UP!)

魔術制御:7Lv(UP!)

霊体:8Lv(UP!)

大工:6Lv

土木:4Lv

料理:5Lv

錬金術:6Lv

格闘術:6Lv

魂砕き:8Lv

同時発動:6Lv(UP!)

遠隔操作:7Lv

手術:5Lv

並列思考:6Lv(UP!)

実体化:4Lv

連携:4Lv

高速思考:5Lv(UP!)

指揮:4Lv

装植術:5Lv(UP!)

操糸術:5Lv

投擲術:5Lv

叫喚:4Lv

死霊魔術:5Lv(UP!)

装蟲術:5Lv(UP!)

鍛冶:1Lv

砲術:4Lv(UP!)



・ユニークスキル

神殺し:6Lv

異形精神:6Lv

精神侵食:5Lv

迷宮建築:6Lv

魔王融合:4Lv(UP!)

深淵:3Lv(UP!)

対敵



・魔王の欠片

吸盤

墨袋

甲羅(NEW!)


・呪い

 前世経験値持越し不能

 既存ジョブ不能

 経験値自力取得不能



・ジョブ解説:大敵


 死属性魔術師が神に呪われるか複数の強大な存在や組織に敵対対象として認識され、さらにそれらを敵として認識した場合ジョブチェンジできるジョブ。

 あらゆる敵に対して与えるダメージを増大させる【対敵】スキルを獲得し、能力値は生命力と力の上昇率が高く、逆に魔力や知力は上がり難い。

6月15日に閑話12 6月18日に閑話13 ルチリアーノレポート上 19日に閑話14ルチリアーノレポート下+αを投稿する予定です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
触手だけの母さん・・・何やら深いw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ