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四度目は嫌な死属性魔術師  作者: デンスケ
第五章 怪物の遠征編
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百三話 残念がる半吸血鬼と、狂乱の原種吸血鬼

報告が遅れましたが、ブックマークが一万件を超えました! 

ありがとうございます!

 とりあえず、ヴァンダルーは鱗も無いのに『鱗王』の称号を手に入れた。

 本来『鱗王』の称号は、D級ダンジョン『リザードマンの巣』をソロで完全攻略した強者に、沼沢地の新たな支配者の証明として『五悪龍神』フィディルグが与えるものなので、鱗の有無はどうでもいいらしい。


 次に、どれほど効果があるかは不明だが『五悪龍神』フィディルグの加護を得ようと(正確には、差し出させようと)したが、フィディルグに「無理でした」と頭を下げられてしまった。

「はぁ……どういう事です?」


『それが、私の格が及ばないと言いますか……』

『加護というのは、通常上位の存在が下位の存在に与えるものですので……』

『例えると、狐が虎の威を借りられれば効果的ッス。でも虎が狐の威を借りて何の意味があるのか、みたいな……』

 信仰心が砕け散りそうな、分かりやすい加護の説明だった。


 しかも『五悪龍神』フィディルグが狐で、ヴァンダルーが虎であるらしい。


「なるほど。まだ完全回復していないから無理だと」

 実際には、【魔王の欠片】を完全に使いこなし魔力の総量でフィディルグを超えるヴァンダルーは、彼の状態が完全だったとしても格ではそれほど差は無い。寧ろ自前の肉体を持ち神の命に届く武器を持つヴァンダルーの方が、フィディルグよりも自由が効く分、上位と判断されてもおかしくない。

 しかし、ヴァンダルーはそう解釈していた。


 目の前で土下座して命乞いをしている存在にどれほど威厳が無くても、神なのだ。天地創造や凄い奇跡を起こし、恐ろしい祟りで人々を呪う存在だ。

 きっと完全回復したら自分より凄いのだろうと、無条件に考える。


『い、いえ、私など完全回復したとしても、程度は知れていますので』

 そう正直にフィディルグは答えたのだが、ヴァンダルーは「この期に及んで自分を小さく見せようとは、侮れない奴」と評価を上げていた。

 傍からは死んだ瞳で眺めているようにしか見えないので、フィディルグ本人も誤解された事に気が付かなかったが。


『しかし、加護を与えようとした時に魂に触れたのですが、何と言うか、その形が……』

『人間離れするにも程があると言いますか……』

『もしかして、我々悪神か邪神か、その眷属を吸収したりしてないっスかね?』

 それにフィディルグも誤解に気が付くどころではなかった。ヴァンダルーの魂がおおよそ人の物ではない事が分かったからである。


 魂の形や色は指紋の様に一つとして同じ物は無いが、それにしても形が奇妙過ぎるのだ。魔王の欠片を含めても。


「いや、覚えがありませんが」

『何か、呪われた品を身につけたとか、その直後に能力値やスキルが変化したとか、そんな事は?』

「それなら前に、呪われた本を読んだ時にありましたね。魔力が五千万増えて、舌が伸びる様になりました」

『『『それだ!』』』


 ハートナー公爵領のニアーキの町の魔術師ギルドに不法侵入してヴァンダルーが読んだ、曰く付の禁書。それに邪悪な神か、それに近い眷属が宿っていてヴァンダルーはそれを吸収したのだろうとフィディルグは推測した。


「坊やっ、吐けっ、早く吐くのじゃっ!」

『坊ちゃんっ、変な物食べちゃダメじゃないですかっ! お腹壊しますよ!』

「いや、お腹を壊すだけで済んだら凄いと思うが……別に食べた訳じゃないのだろう?」

『それに、一年以上前の事ですし、今更吐き出せないのでは?』


 ザディリスとリタに逆さまに持ち上げられて上下に振られながら、ヴァンダルーは「あ、既視感を覚える」と呑気に考えていた。


『もしかしてお友達だったの? なら本当にごめんなさい。うちのヴァンダルーにも悪気があった訳じゃないのだけど』

『いえ、本に潜む奴に寝返り組は居なかったと思うので』

『それに禁術書の曰くを聞くと、その書を読んだ人間の精神を乗っ取る罠を張っていたようだし』

『ぶっちゃけると、吸収されてもそいつの自業自得ッス』


 謝るダルシアに、疑問が解決してすっきりしたフィディルグはそう答える。

 実際ヴァンダルーに喰われた『魔書の悪神』ブブルドゥーラは魔王残党の悪神でフィディルグとは仲間や友人ではなく、敵対的な関係にある。更に彼らに同族意識は無いも同然であるため、同じ異世界から来た存在が消滅したとしても、味方でなければ「敵が減った」としか感じない。


『ですが、多分それもあって加護を付けられないのかと』

 寧ろ、今の場合は「決して自分が残念だからじゃないよ」と言い訳する理由になってくれた事に感謝すらしていた。


「な、なるほど。まあ、無理な物は仕方無いだろう」

『そ、そーですね、仕方無いですよね』

「うむ、そろそろ頭を上げてもらってはどうじゃろう?」

 ヴィガロやリタ、ザディリスを含めたヴァンダルー以外の全員は、フィディルグにやや及び腰である。皆は魔力の総量から、二人の格の違いを見抜く事は出来ない。だから、当然『五悪龍神』であるフィディルグの方を恐れる。


 目の前で土下座しているのに何故恐れるのかと思うかもしれないが、その情けない存在が城より大きな怪獣だと思えば理由は察せられるだろう。

 どんなに情けなく哀れに見えても、ヴィガロ達にとって神は神なのである。


「じゃあ、代わりにリザードマンを含めたタロスヘイムの適した者に、あなたの加護を与えてください。その代わり、神殿に貴方の神像を置きますから」

 アルダ派の神々の像は全て撤去したので、ヴィダ神殿のスペースは幾らでも空いている。


『『『なんと、それは願っても無い事です』』』

 自分に対して祈る者が増えるという事は、そのまま力の回復が早まる事を意味する。そしてそれは、別に自分だけに祈る信者でなくても構わない。


「後、幾つか質問しますから答えてください」

『『『分かりました』』』


 そしてヴァンダルー達は、現在の人間が殆ど知らない十万年前の真実を知る事になる。

 既に魂を砕いたテーネシアからもある程度当時の情報は得ていたが、彼女はヴィダとアルダの戦争当時それ程高い地位にはいなかった。対して、フィディルグは有力ではなかったが一応部隊の指揮官だった。

 何より、テーネシアは正気を半ば以上失った状態だったので、昔の事になるほど記憶の欠落や歪みが酷かった。だが人とは違う精神構造をしているフィディルグの記憶はほぼ正確だ。


 ザッカート達生産系勇者の功績、そして魔王に滅ぼされてしまった顛末。十万年前吸血鬼の真祖の片親と成った時のザッカートの状態。

 そしてザンタークや他の従属神も多くがヴィダの側で戦い、今は敗れて散り散りになっているだろう事も聞いた。


 もっと孤立無援の状態でベルウッド達と戦ったのだと思っていたヴァンダルーにとっては、ヴィダに味方した存在も多かったという事実は嬉しい事だった。それに邪神悪神とされている存在の中にも、味方が居ると分かったのも大きな収穫だ。

 今味方でなくても、交渉が可能な場合もあると分かった事も。


「まあ、ヒヒリュシュカカとは交渉しませんけど」

 父の仇なので当然である。テーネシアによるとヴァンダルーを殺すように神託を下したそうだし、向こうも話し合うつもりは無さそうであるし。


 因みに、当然だがフィディルグはヴァンダルーの魂がザッカートやアーク等の生産系勇者の魂の欠片を強引に繋ぎ合わせた物である事は知らない。

 神であっても魂の、それも十万年以上前の来歴を見ただけで解る程の目は持っていない。


「そんな事になっておったのか。当時から碌な事をせんな、アルダの連中は」

「この事を外の人間に教えれば、アルダの信者を大混乱させられるんじゃないか? どうだ、ヴァン?」

「……俺達が訴えても無理でしょうね」

『そうね。ヴァンダルーはダンピール、バスディアさん達はグール、私は霊でレビアさん達はアンデッド。そして教えてくれたのは悪神さんだし』


 明らかにアルダの信者にとって良くて迫害、悪くて抹殺の対象である。融和派ならヴァンダルーの言葉を聞く事はあるだろうが、それでも自分の信仰対象とその英雄にとって都合の悪い真実を、それも自分達が物心つく頃から聞かされた事実とは異なる真実を信じるとはとても思えない。


 しかも情報元が異形の悪神で、『動かぬ物的証拠』は一つも無い。

 存在するか不明だが、身に着けると嘘が吐けなくなる類のマジックアイテムを着けて訴えたとしても、「かわいそうに、悪神に唆されて偽りを真実だと思い込んでいるのか」と思われるのが関の山だろう。


「では、気分を変えて他の質問をしますね。貴方は現在ヴィダ側だそうですが、配下のリザードマンにヴィダを信仰させなかったのは何故ですか?」

 自分の復活も大事だが、ヴィダの復活も彼にとっては重大事の筈だ。だがリザードマン達にはヴィダを信仰していた様子が無い。人種より早く世代交代するにしても、祠の跡ぐらいは残っていても良いと思うのだが。


 フィディルグがリザードマンをダンジョンで発生させ、信者にしてから何万年も過ぎている。その間、全体の一割程度でもヴィダを信仰させれば女神の復活も進んだのではないだろうか。

 そう思ったヴァンダルーだが、フィディルグには彼なりの、そして切実な理由があった。


『それはそうなのですが、俺にとってそれはあまりに辛い事なのです』

『ヴィダはアルダから神格を剥奪されたようですが、それでもこの世界で最も知られた神の一柱。今でも彼女に祈る者は一定数居るはず』

『しかし、俺は名も無き悪神の一柱。自ら信者を創らなければ、祈る者は一人も居ないっス』


 つまり、知名度の問題らしい。今でも外にはヴィダの信者が新種族以外にも一定数居る。アルダの信者からも産み出した種族の是非は兎も角、ヴィダはアルダと同格の神としてそれなりの敬意は払われている。

 だが、フィディルグの名前は歴史に欠片も残っていない。名も無き悪神の一柱でしかない為、自然に信者が増える可能性は零。実際、目覚めたとき彼の信者は居なかった。


 だからリザードマンに自分への信仰のみを課したようだ。別の神に祈る者からの信仰でもそれなりに力には成るが、やはり自分一柱のみを信仰する者からの祈りの方が力に成るからだ。

 それにもしリザードマン達にヴィダへも祈らせても、フィディルグにとっては大きな献身だが、ヴィダにとっては雀の涙程度の力にしかならないらしい。

 極端な例えだが、コップ一杯の水の内半分を湖に注いでもあまり意味が無いのと一緒という事らしい。


「なるほど、理解できました。じゃあ、他の魔王の欠片についてですが……」

 魔王の欠片や、他のヴィダに寝返った邪神や悪神や『太陽の巨人』タロス等の神々、ヴィダの新種族の現在、大陸南部の現状、そして今のヴィダの状態に関して、次々に尋ねるヴァンダルー達だったが、フィディルグが知っているのは十万年前の戦いからヴィダと共に逃げる途中までだった。


『何分、その後何万年も眠っていたので、今他の連中が何をしているのかはさっぱり』

『特に、一応目の届く範囲内は探しましたが……この沼沢地の半分程度が俺の限界で。百年少々前に、何か聞こえた気がしたんスけど、その時には『暴邪龍神』ルヴェズフォルに封印されてたんで気のせいかも』

『ですが、ノーブルオークの帝国には多分『堕肥の悪神』ムブブジェンゲが居ると思いますぜ』


「ダコの悪神?」

『いや、堕肥。堕落し、肥えるって意味っス』

 一瞬半漁人や海産物の神かなと思ったが、実際には肥満等を司る悪神らしい。


 元々オークやノーブルオークは獣神ガンパブリオの下から寝返った猪の獣王が、魔王グドゥラニスから授かった力で生み出した魔物だ。まずはオークが作られ、後にそれを指揮する指揮官としてノーブルオークが作られたらしい。

 だがその猪の獣王は勇者ファーマウンによって倒され、封印されてしまった。その後、猪の獣王の後任を見つけられなかった魔王は、『堕肥の悪神』ムブブジェンゲを含める複数の部下にオークの指揮と生産を割り振ったそうだ。


 それで『堕肥の悪神』ムブブジェンゲがザッカートの誘いに乗った時に、当時仕えていたノーブルオークとオークを連れて寝返ったらしい。

「……ええー、あいつ等味方なんですか?」

「むぅ、なら追放なぞせずに処刑してくれても良かろうに」


 ブゴガンに大きな被害を受けたグール達のキングであるヴァンダルーとザディリス達は、嫌そうにそう言った。

 ブゴガンが権力闘争に負けて逃げた、実質追放されたノーブルオークで帝国には悪気は無かったのだろうが、いきなり「実は味方でしたブヒブヒ」と言われても反応に困る。


「沼沢地が落ち着いたらノーブルオーク肉食べ放題を企んでいたのに」

「皆楽しみにしていたのにな」

『……』

 最低でもランク6で、十万年前はランク10を超える個体も少なくなかったノーブルオークの、恐らく現在でも人間の中小国以上の武力を誇る帝国なのだが、フィディルグの脳裏には、ヴァンダルー達によって豚肉料理のビュッフェ会場と化す帝国の姿がはっきりと浮かんでいた。


『えー、とりあえず当時は味方でしたけど、今味方かどうかは不明なんで……』

『あの戦いの後、また勝手にやってる連中も居るかもしれないんで、断言はできませんが……』

『でも、一応確認してからの方が良いかと思うっス』


 かなり微妙な意見だが、フィディルグもムブブジェンゲの性格を保証できないらしい。これは元々魔王軍に属していた彼ら邪神悪神はお互いに隙あらば手柄を奪うため裏切るような関係だったので、横の信頼関係が存在しないのだ。ザッカートの誘いに乗って寝返った後はある程度コミュニケーションも取っていたが、「出身が同じだけの顔見知り」程度の関係だったらしい。


 中には例外的に仲が良い邪神や悪神同士も存在したが、それは大抵の場合関係を表す言葉の頭に「病的」の二文字がつく。


 やはり元々邪神悪神であるため、神である点を除いても精神構造が異なっているのだ。


 それにフィディルグは実例を知らないが、テーネシア達邪神派の原種吸血鬼のような例もある。一度は寝返ったが、ザッカート達生産系勇者が滅び、ヴィダも行動不能である状況で今も味方とは限らない。


「まあ、分かりました。時が来たら接触してみましょう」

『ん? 帰ったらすぐじゃないので?』

「その前に、ちょっと個人的に行きたい所がありまして。多分、そうかからないとは思いますが」

『そうですか』


「それより最後の質問ですが、ホムンクルスを創るのにあなたの力が役立ったりしますか?」

 役立つなら今すぐ寄越せ。言外に莫大なプレッシャーをかけて尋ねるヴァンダルーに、フィディルグが思わず後ろに下がりながら、答えた。


『ほ、ホムンクルス? 俺は錬金術には詳しくないので……』

『魔物を創る時も、リザードマンぐらいしか……後はダンジョン任せでして』

『た、多分ウロコなら、何とか出来ると思うっス』


「……ウロコ」

『ウロコは、私には生えてなかったわね』

 非常に残念な答えに、ヴァンダルーとダルシアは首を横に振ったのだった。




 『鱗王の巣』から帰還し、見事宝物と『鱗王』の二つ名を獲得したヴァンダルーにリザードマン達は完全な忠誠と服従を誓った。

 『鱗王』の効果なのか、リザードマン達の中にも『魔道誘引』の効果を受ける個体が増え始めている。この分なら、ヴァンダルーが存在する限りリザードマンはタロスヘイムの忠実な民として、千年でも二千年でも存在し続ける事だろう。


 そしてレベリングも終わったヴァンダルーは、エレオノーラと、そしてベルモンドの手術に取り掛かるのだった。



・名前:ヴァンダルー

・種族:ダンピール(ダークエルフ)

・年齢:8歳

・二つ名:【グールキング】 【蝕王】 【魔王の再来】 【開拓地の守護者】 【ヴィダの御子】 【怪物】 【鱗王】(NEW!)

・ジョブ:魔導士

・レベル:68

・ジョブ履歴:死属性魔術師、ゴーレム錬成士、アンデッドテイマー、魂滅士、毒手使い、蟲使い、樹術士

・能力値

生命力:1438

魔力 :815,878,554+(163,175,710)

力  :601

敏捷 :552

体力 :806

知力:1,663



・パッシブスキル

怪力:5Lv

高速治癒:8Lv(UP!)

死属性魔術:9Lv(UP!)

状態異常耐性:7Lv

魔術耐性:5Lv(UP!)

闇視

魔道誘引:1Lv

詠唱破棄:6Lv(UP!)

導き:魔道:2Lv(UP!)

魔力自動回復:6Lv

従属強化:6Lv

毒分泌(爪牙舌):5Lv(UP!)

敏捷強化:3Lv(UP!)

身体伸縮(舌):5Lv(UP!)

無手時攻撃力強化:小

身体強化(髪爪舌牙):4Lv(UP!)

糸精製:3Lv(UP!)

魔力増大:2Lv(UP!)


・アクティブスキル

業血:3Lv

限界突破:7Lv

ゴーレム錬成:8Lv(UP!)

無属性魔術:7Lv(UP!)

魔術制御:6Lv

霊体:7Lv

大工:6Lv

土木:4Lv

料理:5Lv

錬金術:5Lv(UP!)

格闘術:6Lv(UP!)

魂砕き:8Lv

同時発動:5Lv

遠隔操作:7Lv

手術:4Lv(UP!)

並列思考:5Lv

実体化:4Lv

連携:4Lv

高速思考:4Lv(UP!)

指揮:4Lv

装植術:4Lv(UP!)

操糸術:5Lv(UP!)

投擲術:5Lv(UP!)

叫喚:4Lv(UP!)

死霊魔術:4Lv(UP!)

装蟲術:4Lv(UP!)

鍛冶:1Lv

砲術:3Lv(UP!)



・ユニークスキル

神殺し:6Lv

異形精神:6Lv

精神侵食:5Lv

迷宮建築:6Lv(UP!)

魔王融合:2Lv

深淵:1Lv



・魔王の欠片


・呪い

 前世経験値持越し不能

 既存ジョブ不能

 経験値自力取得不能




 熟した果実が砕けるような音を立てて、血と骨肉の欠片が飛び散った。

「ヒィィィッ、グーバモン様がっ、グーバモン様が乱心された!?」

「おっ、お鎮まり下さいませっ、グーバモン様っ!」

 飛び散った血と骨肉の元になった者も、それを見て引き攣った悲鳴を上げる者も、全て吸血鬼。それも貴種として最低でも数百年以上生きた存在だ。


 英雄伝承歌や聖人の逸話で主人公たちを苦戦させ、やっとの思いで退治される敵役達。そして現実では裏社会の更に奥に巣食う強大な闇の貴族。

 だが今は、たった一人の老人から悲鳴を上げて逃げ惑う哀れな者達だ。


「なんじゃぁ……儂のする事に文句でもあるのかぁぁ……貴様、さては裏切り者じゃなぁっ!」

 グーバモンは血走った目で適当な吸血鬼を睨みつけた。

「ひっ!? へぎゃべびぃっ!」

 次の瞬間、貴婦人然とした美貌の女吸血鬼の全身がぐにゃりと歪曲し、そのまま破裂するように砕け散った。


「逃げろっ! 殺されるぞっ!」

「うあああああああっ!」

「いやあああああああっ、だずげでええええええ!」

 普段は自分達が犠牲者に出させている、涙や鼻水や悲鳴を垂れ流して、貴種吸血鬼達が逃げて行く。


 それを追いもせず大きく肩を上下させるグーバモンは、吐き捨てるように言った。

「どいつもこいつも、裏切り者がっ、儂の、このグーバモンの血を与え、永遠の寿命をやったというのにっ、ビルカインの、狗がっ!」


 呪詛にも似た罵りだが、あの吸血鬼達が裏切り者であるという証拠がある訳ではなかった。

 そもそも、原種吸血鬼のビルカインが仲間のはずの彼に害意を抱いているという証拠も情報も無い。


 だがグーバモンはそう思い込んでいた。ビルカインは、テーネシアを傀儡に落そうとしたように、今度は自分を操り人形にしようとしているのだと。

 そして手下の中に、ビルカインに寝返った裏切り者が紛れ込んでいると。


 それらはグーバモンの猜疑心が作りだした妄想に過ぎないが、彼の曇った眼を覚ます存在は無かった。

 『悦命の邪神』ヒヒリュシュカカを奉じる原種吸血鬼同士の、辛うじて保たれていた信頼関係が崩壊した今、グーバモンにとって自らの血を分けた吸血鬼達ですら信じる対象ではない。


 何故なら多くの時間を趣味に耽溺してきたグーバモンは、優秀で忠誠心の高い『五犬衆』の様な側近や腹心を囲っていたテーネシアと違い、信用できる部下が存在しなかったのだ。

 実際、グーバモンは先程殺した吸血鬼達の名前も顔も思い出せなくなっていた。


「このままでは儂はあのビルカインに……どうすれば、どうすれば良いのじゃ?

 おおっ、そうじゃ! 何も信用のおけない者を周りに置く事はない! 手下共を全てアンデッドにすれば良いだけではないか!」

 そして偏り歪んだ精神は、最悪のアイディアを産み出した。


 それを名案だと疑わないグーバモンは、早速目の前の肉片を空間属性魔術でひょひょいと集め始める。

「こいつ等では儂の英雄アンデッドコレクションに加えるにはちと格が足りんが、まあ良かろう。儂は寛大じゃからのぅ、ヒヒヒッ。

 手下共も儂の愛しのコレクションに成れるのじゃ、きっと大喜びで儂に命を差し出す筈じゃ。何せ、奴らに永遠の寿命を与えてやったのは儂なのじゃからのぅ」




・名前:ザディリス

・ランク:8

・種族:グールウィザード

・レベル:70

・ジョブ:賢者

・ジョブレベル:51

・ジョブ履歴:見習い魔術師、魔術師、光属性魔術師、風属性魔術師

・年齢:297歳(若化済み)


・パッシブスキル

闇視

痛覚耐性:3Lv

怪力:1Lv

麻痺毒分泌(爪):2Lv

魔力回復速度上昇:7Lv(UP!)

魔力増大:2Lv(NEW!)


・アクティブスキル

光属性魔術:8Lv(UP!)

風属性魔術:7Lv(UP!)

無属性魔術:3Lv(UP!)

魔術制御:7Lv(UP!)

錬金術:4Lv(UP!)

詠唱破棄:4Lv(UP!)

同時発動:3Lv(UP!)

限界突破:3Lv(UP!)

家事:1Lv(NEW!)




・魔物解説:グールウィザード


 グールの中でも複数の属性の魔術に優れ、研鑽を積んだ者のみがランクアップできる種族。グール種族の誕生後殆ど出現しておらず、魔術師ギルドの書庫でもその存在を記した書物は殆ど収蔵されていない。


 ただ古の賢者の手記にその存在が記されており、その記述によると恐ろしい魔術の使い手であると同時に聡明な指導者であると記されている。

 だが、多くの研究者がスキルレベルの高いグールエルダーメイジと見間違えたのだろうと推測しており、その存在には懐疑的である。

ネット小説大賞に参加しました。宜しければ応援お願いします。


5月10日に104話、13日に105話、17日に106話を投稿する予定です。

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― 新着の感想 ―
真祖の生まれ変わりじゃなくて真祖の親の生まれ変わりか… 勘違いしてたわ。
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