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冒険者集う街・ゼナンのこぼれ話

思春期な冒険者ヴァルター・ローと守銭奴女神イェンカシアの話

作者: 菊華 伴

「だーかーらー、一度ぐらいいいだろぉ?」

「やぁねぇ、ボウヤはお呼びじゃないのよー。それよりサイクロプス倒しに逝ってらっしゃいよ」

「さりげなく死んで来い言ったよコイツ!」


 ここはさる山中の街道で、別名黒砂街道。他国から運ばれた胡椒や香辛料、黒曜石を積んだ馬車などが通るが故である。だらだら坂道が続くもののキャラバンには重要な道であり、通行止めになると流通が途絶えて場合によっては国際問題にもなりえる場所である。国と国を結ぶ道でもあり、関所や宿屋街もあるので、多くの人に利用されている。そんな事もあり普段から盗賊や狼などから人々を守るべく、冒険者を護衛に雇って通る商人や貴族、果ては旅人も少なくはない。

 ところが、そのよりにもよって重要な関所近くにあるホシロ谷にサイクロプスが住み着き、通行税と称して若い娘を欲しがっているという。

 『冒険者』に仕事を提供するギルドに討伐願いが出され、多くの冒険者がサイクロプスに挑んだ物のよくて大怪我、最悪の場合捕食されている為、未だ解決していない。

 その為、『ホシロ谷のサイクロプス退治』は、依頼斡旋所にて張り紙がはったりはがされたりしている依頼なのであった。


 ――2日前。

「ふざけんなよ!」

 ギルドの掲示板に張り出された依頼の内容を読み、憤慨したのはヴァルター・ローという15歳の少年。中肉中背で顔つきがちょっと整っているかな? というぐらいで一見特に目立ったものはない。『冒険者の街』と呼ばれるゼナン近郊では多くいるこげ茶色の髪に、砂漠地方の住人に多いという小麦色の肌と琥珀色というちょっと地味かもしれない見た目をしていた。

「あら、いつも女の子の事しか考えてない貴方にしては珍しいじゃない」

 そんな風に首をかしげたのは金髪の美女だった。乳白色の肌はシミどころか傷1つなく、二重目蓋で柔和な印象を持つ群青の瞳が大人の魅力を放っていた。めりはりのある体に白いローブを纏った彼女はお行儀悪くテーブルに腰掛けていた。しかし誰も咎めないのは、彼女がヴァルターにしか見えていないからだろうか。

「そりゃな。女の子喰ってるんだぜ? 許せるわけねぇだろ」

 そういいながら腰につるした剣に触れる。冒険の中で入手した神剣ユーロフィアは彼の言葉にあきれた、とでも言うようにかちゃり、と音をたてた。

「やっぱ女の子がらみだからなのね」

「当たり前だろ。男だったら無視だよ、無視」

「それでよく勇者候補生って言われるわよね」

「お前と契約できたからじゃね?」

 このヴァルターにしか見えない女性はこの世界に住まう八百万の神々の中の一柱でイェンカシアといい、ヴァルターと契約している。その為にこの少年は一部の人間から勇者候補生と呼ばれるようになったのだが……2人にはちょっと欠点があった。

 冒険者になって3年目のヴァルターは、15歳という事もあり思春期まっさかり。女の子が大好きで、しかもエロスな事に興味津々である。そして、神の一柱イェンカシアはというと……。

「力を貸してあげる。だけど……銀貨10枚ね?」

 という具合に何かにつけてお金を要求する。その所為でヴァルターは色々と危険な目にあっているが、全てをどうにかこうにか乗り切って冒険者としては比較的成功していた。ただ、イェンカシアの所為でお金はなかなか貯まらず、色々あって腐れ縁状態である。

 それは兎も角として。ヴァルターは出された依頼を見てため息をついた。自分が他の依頼を受けている間にこれは3度出されている。しかし、まだ果たされていない。

「ふふっ、鍛えなおしたばかりのコイツも暴れたいだろうしな。俺のカッコいいところを見せて是非お姉さんの1人でも」

「甘いわよ。この世界はお金で回ってるわ。お金が無きゃ腕があっても靡かないし、ボウヤじゃだれも相手にしないわよ」

 よだれをたらしかけつつ手をわきわきさせるヴァルターに、あきれた表情を見せるイェンカシア。そのつっこみを聞き流し、ヴァルターは依頼受理の受付に向かった。


 ギルドに4度目のサイクロプス討伐依頼が出た日、そこで彼は噂で聞いた『超再生』能力を持つカミィユ・ナーザと出会う。彼女の美尻(ヴァルター談)に一目ぼれした彼は触りたい衝動を抑えて握手を交わした。

 あと、『魔力自己回復』という珍しい能力を持つイザク・スザクとヤオヨロズ教の神官、小柄な盗賊の少女と臨時のパーティを組んで挑んでいる。

(あの盗賊の子とカミィユさん……。どっちも捨てがたいなー♪ あぁ、2人のお尻をなでなでしたい……)

 そんなこんなで現在。とりあえず、生きて帰れたら土下座してでも触らせてもらおうか、なんて思ってしまったヴァルターはにやけ顔で道を行く。そんな彼の頭を足蹴りにしながらイェンカシアは呟いた。

「その手で守りたいものを強く願いなさい。アタシは願いとお金でアナタに力をあげるから」


(終)


ここまで読んでくださり有難うございます。

時系列的に言えば先週投稿した作品のちょっと前ぐらいかもしれません。

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