風吹く魔法使い
天才的で風化魔法を見せるシンバ
戦士にとって命が分かれる古い格闘闘技場 その場は罵声と飛び交う口論で
支配されていた。名をマジックナイトコロッセウムという。
今、闘技場の底床に鍛え上げられた自足を踏みしめる者がいた。
赤い短髪の髪を無造作に仕上げ眼は愛らしくその奥に何者も入る余地のない
闘志と殺気がみなぎっていた。
若者が意志の無い眼で入場すると罵声は幼稚になり人を魂のある者と思わない
気配を持つ。皆その先に何があるのか分かっていた。
金塊と死の宴ー。
そういう物が謳われて皆が分かち合う。とりわけ若造とご容赦され
そうな男子は才能のありそうな眼と体躯をしていた。体躯はいいが無駄な脂肪
が無い健気な身体付きで筋骨のいいそれは武闘と瞬発力をフルに発揮するには
都合がいいように誰の眼にも見えた。その才能の塊は今日も賭けの材料と身分
が上の者のご容赦に預かろうとしていた
「若い者 遠慮するな!!」
「とりあえず殺すか殺されろ」
そんな幼稚で何も意志も人間味もない感受性が人をモンスターとでも言うような
罵声がまた大きくなり建設されて数百年経つ武道場を支配した。
その罵声は戦士達の耳に届き緊張感は死別に向かい上がり続けた。その場は連日
通り死別を迎える者の懇願が見えた。そんな気がした。
その一時ー。
勝負の鐘が王の使用人を通して打ち鳴らされると相手と若者は向き合い眼を合わせた
相手はぼさっとした髪を両方向に広げていた。体躯は若者の1.5倍はある。そして腕
と太ももは丸太のように太く、胸筋は常人の数倍は張り出していた。その胸が何も
手にしていない若者の顔面に当たり転倒すると思われた時、その体躯は三人をまと
めて殺すには十分に見えるにも関わらずー。
人差し指で軽く押したのみ 相手は場外の際までとんだ。
場内全体が息をのむ その瞬時巨体の男が失神した。それを皆確認するまで
時間がかかった。それは強烈な印象として国全体に残り、上層部の顔色が
変わったほどだ。その声は王であるメデンにまで伝わった。それがきっか
けとなりシンバという少年は王室に呼ばれた。王室に呼ばれたのは国が
困窮している事実を拭うためだ。こうして王室に使えたシンバは何事の
使命だと仰せつかったものを不思議がった。16年間奴隷として生きたのだ。
驚かない方がおかしい、知り合いは皆口をそろえて言った。
その旅は長路で騎兵達は疲弊していた。重厚な鎧や武器を抱えての長路なので
騎兵は辛抱したのだが、倒れ込む兵隊もいた。いかなる時も存在を疲弊して
消化してはいけない騎兵達にとって大業の試練だった。大業を成し遂げる喜びを
感味するように教育を施されていた兵隊たちだが長路の試練に苦行を覚えた。
そこで騎兵隊長は水分を騎兵隊に補給した。人徳が評価されている騎兵隊
モルベツはその日も兵に補給をした。これからだ、とシンバは思った。
これから戦と自分の限界を越えるのだ。
疲労し旅に挫折しかけた兵たちの片隅で余裕の表情と足腰で立ち呆けているのがシンバだった。体長は束の間の休息まで与えた。しかしシンバにはなぜだか分からなかった。
「なぜ、これくらいの運動量で挫折するのですか。僕には皆目分からない。足腰の訓練をしていないのですか?」
奴隷として食料も与えられず心身に錘をつけてきたシンバにとり、これほどの大業など足腰の負担にならなかったのだ。
その足腰と魔法の知恵は位の高い兵たちにとって神の所業だった。
その神と言われた本人はなにが常識なのか見当がついていない。
それはゴッドと呼ばれる男の誕生でもあった。
旅路の行方が分からぬまま兵が長路を再開した頃だった。後ろからついて歩くようにしたシンバは
サンクチュアリーナと呼ばれるでかい岩を見つけた。それは前方にあった。
「往きの旅はほぼ終わりだ。後はドラゴンの住む山中の洞穴を目指す」
誰かが叫んで景気をつけた。今までの苦労が神の恵みにより報われた。
皆一斉にそう思った。これから起こる戦など脳裏から離れた。
その時である。
読んでくれてありがとう!!




