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まず最初に、この小説は同作者の作品のキャラクター名などを使用した全く別の小説となっています。

また、この小説には後々からミリタリー色が強くなることが予想されます、大丈夫な方はどうぞお楽しみください。

夕方の薄暗い草原の中私は視界一杯に表示されたイルミネーション機能によって赤く発光する十字(レティクル)を人型モンスター『オーク』五体の内一体の頭部に重ねる。


《おいアキー、まだ撃たないのかー?》

「もう狙いは合わせていますから合図があればいつでも撃てますよ」

《よしよし、それじゃあ3カウントでアキは一匹やってくれ。残りは俺達がやる》

「わかりました」

《ようやくか!腕が鳴るぜぃ!》


パーティを組んでいる友人、クロウが無線で催促し私は完了報告をして、それを聞いた兄、アイトが三つ数字を数える。


《3………》


病的なまでに白く細い指を両腕を使って保持している狙撃銃、PGM 338の引き金(トリガー)にかける。

                    

―これは現実ではない―


《2………》


銃床(ストック)を肩に押し当て引き金をキリキリという音をたてて少しずつ引いていく。

      

―自分の命はHPゲージによって数値化されHPが0になって死亡しても何度でも生き返ることができる―


《1………》


息を止め、静かに引き金を引き絞る。

                 

―この世界なら現実で出来ないこと、出来なかったことをいくらでも好きなだけ出来る―


《着弾を確認!よくやった!》

《よっしゃ!突っ込むぜ!》


狙撃ライフルの銃口から発射炎と共に放たれた.338ラプァマグナム弾がオークの頭に穴を開けオークの近くの茂みから両手剣を担いだ少年と軽機関銃を構えた青年が飛び出すのをスコープ越しに見守りライフルのボルトハンドルを引き、次弾を装填する。

      

―このゲームの名前はリアル&ファンタジー、通称R&F。ほぼ無限といえる武器の種類を有しただの石から重戦車まで様々な武器、防具がある世界初のVRゲームだ―






目を開けると太陽と多数の人、プレイヤーと|ノンプレイヤーキャラクター《NPC》の姿があった。

視界を下、自分の体に向けると左右から灰色の髪の毛がバサリと落ちてくる。

今の体が現実の体と同じではないのをいいことにその場で数回ジャンプしてみる、現実ではやろうとするだけで周りの人に止められてしまう行為。

いつもは一回跳べば即息切れや目眩がして倒れてしまうがこの世界(ゲーム)の中では何回跳んでも息切れすることはない。

ひとしきり跳んでから私『アキ』は自分の目覚めた広い円形の広場を見渡し、周囲の目が自分に向いていることに気付く。


- ねぇねぇ、あの子なんであんなにジャンプしてるんだろうね…… -

- あの髪の色って設定したのかなぁ…… -

- お!今こっちみたぜ!参加権獲得できたことといいあの子といいとうとう俺にも運が回ってきたんだな!…… -


「ぅ……」


見られていることを認識した瞬間羞恥心で顔が熱くなり、顔を伏せ走り出した。今顔を見たらきっと真っ赤になっているだろう。

途中何度か転びそうになりながら広場近くの路地裏に入り、ため息を吐く。


「ハァ………即行やっちゃったよ…あんまり目立たないようにするって決めたばっかりなのに…」


しばらく経ってすぎた事は仕方ないと開き直り視界端の小さく『メニュー』と書かれている小さな四角形に触れると上部に『生命力:25/25』と『体力:33/35』と大きく中央部分に沢山のアイコンが表示された画面が現れる、私はその中から『装備・アイテム』の欄を触る(クリックする)。(ちなみに生命力は他のゲームで言うヒットポイント、体力はスタミナだと思って欲しい)

数秒遅れで表示された画面には数十個の小さな枠と選択したアイテムの3Dモデルを表示する大きな枠が隣接していた。左側の枠の左上から何個かは初期配布品の武器と防具で埋まっている。配布されたアイテムを確認しようと指を近づけたとき、新しい画面が目の前に出現し大音量の「プルルルル!」という音が鳴った。


「…うひゃあ!?うるさい!」


この音は現実の私の頭に取り付けられたヘルメット型の機械が私の脳の聴覚野に直接信号を送っているのでいくら耳を塞いでも小さくならない、そのため顔をしかめながら画面内の通話ボタンに触れる。


《お、繋がったな。アキ、今どこにいる?》

「に、兄さん!?」

《おう、俺だ。いやー大丈夫だってわかっててもどうしても心配でなー。どうだ、気分悪かったりしないか?》

「いえ、今のところは問題ありません」

《そうか、それならよかった。それじゃあこれからなんだが……》


通話を掛けてきた相手は私にこのゲームを教えた兄、『アイト』だった。

私は生まれつき体が弱く、学校にも行けず病院のベッドに横たわっているだけだった。そんな寝たきりの私が16歳、普通なら高校一年生である筈の年齢の誕生日に兄がこのVRゲーム『リアル&ファンタジー』の会場参加券を持ってきたのだ。

『リアル&ファンタジー』は世界初のVRゲームでこのゲーム専用に作られた高スペックCPUや演算装置、物理エンジンなどを使いほぼ現実と変わらないリアルなグラフィックを再現しながらラグや処理落ちは一切発生しない、夢のようなゲームだ。

しかし、そこまでして製作されたゲーム故に個人で所持するにはコストや場所が大きすぎるため、東京に特設会場を建設しゲームは五万枚の参加権を手にいれた者のみがプレイできるというとてもリアルラックが高くないととてもではないがプレイできないゲームだ。(当然ながら応募倍率は途轍もなく高い、そんな超貴重品を二つも当ててきた兄はもしかしたら底なしの運を持っているのかもしれない。)


そしてR&Fのコンセプトは『ゲームの常識を覆す完全自由型人生やり直しRPG』、フィールドはリアルタイムで状況が変化し、レベルにあったフィールドなど存在しない。LV1のプレイヤーが街から出てすぐの草原でドラゴンに食い殺されることも有り得るし、フィールドに存在していた巨大な廃墟が次の日には突風に飛ばされ更地になってたりもするらしい。

ついでにいうとR&Fの舞台は北極南極含む地球全土にオリジナルの大陸や島を追加したもので今私たちがいるのは日本の東京をモデルにした統合都市『トウキョウ』だ、見事にそのまんまである。

もうひとつは『フィールド開拓システム』、プレイヤーはオーストラリアの砂漠を緑化したりアマゾンの森を切り開き村や街をつくったりできるというプレイヤー自身がフィールドを好きなように変えることが出来るシステムだ。

そしてこのゲームの最大の特徴が『ゲームをクリアするまで現実に戻れない』という仕様だ。この特殊すぎる仕様はコンセプトの一つ『人生やり直し』であり、まさにゲームの常識を覆すシステムだ。この仕様は大手の病院や研究所と連携して徹底した安全管理を約束しているし、ゲームから帰ってきて職にあぶれた場合は家庭版R&Fの製作スタッフとして採用されるという終わったあとの事まで保障しているのでそこまで目立った批判はされていない。

尚ゲームをクリアする方法はこの世界のどこかにいる魔王の討伐という王道ファンタジーモノだ。

ゲーム開始時に設定する項目は四つ、一つ目はプレイヤーキャラクターの顔立ちや髪、目の色などの詳細設定だ。因みにキャラクターの基盤となる初期データは現実で本人をスキャンしたデータが使われるため性別や体格の変更はできないようになっている。


二つ目は初期クラスだ。R&Fには剣も魔法も銃も全てが揃っているので、従来のRPGの設定すると成長方向がほぼ決まってくる『ジョブ』に加えて成長しやすいアビリティや武器、習得できるスキルを自由に設定できる。これによってジョブは剣士だがグレネードランチャーを撃ったり魔導師にハンマーを持たせて魔法(物理)ができるようになっている。

私の場合は初期設定できるジョブ(一次職)を機械や兵器を扱う為の基礎アビリティ『DEX(器用性)』と『INT(知性)』の上昇が高い『工作師』を、スキルに湿度や風速、風向などの自然条件をゴーグルやスコープの視界越しに表示する『観測』と、寄せ集めの素材で道具や装備の製作(例えば鋭い石、ガラス、くず鉄と木材があればナイフが作れる)や修理ができるようになる『現地作業』を選択し、ライフル、スナイパーライフル、対物ライフル、の熟練度を上げたクラスだ。単体威力の高い大型ライフル類は武器耐久度が低いので壊れてもすぐに修理できる現地作業を取った。


三つ目に種族を決定する。種族にはバランスのいい『人間族』、エルフやサラマンダーなどの魔法に特化した種族である『精霊族』、基本身体能力が高く動物の耳と尻尾が生えている種族の『獣人族』、パーツを付け替えることで基礎能力が変動する『機械生命体』、獣人の耳や尻尾が竜や悪魔のものになっていて魔法の変わりに暗黒術と呼ばれる技を使う『魔族』などがあり、その種族の中からさらに細分化されている。私は基本身体能力の中で移動速度や蹴りの威力を定める『脚力』と物体を捕捉する距離や同じ距離のものを見たときにどれだけ鮮明に見えるかを定める『視力』が高い狼の獣人族にした。

そのため私の頭頂部からは狼の耳が、尾てい骨あたりから毛並みのいい大きな尻尾が生えている。

思えば、最初飛び跳ねた後に周りの人から見られたのも尻尾で服のスカートが持ち上げられている状態でジャンプしたものだから、どことは言わないが見えていたのかもしれない。


最後、四つ目に初期装備。初期に使用可能な武器は片手剣、両手剣、戦闘用斧、短弓、魔術杖、戦闘槌(バトルハンマー)、両手槍、扇、両手棍、ライフル、マシンガン、ハンドガンだ、熟練度を上げる毎に種類は増えていき、片手剣の熟練度を上げるとレイピアやサーベル(軍刀)を使えるようになる。防具は通常の服などの防護性が低く機動性が高い軽量装備、軍用戦闘服(BDU)などの防護性、機動性のバランスがいい中量装備、鎧などの防護性が高く機動性が低い重量装備がある。私はライフルとハンドガン、中量の野戦装備一式を選択した。


《おーい、聞いてるかー?》

「あ、ごめんなさい。聞いてませんでした」

《早速モンスター倒しに街の外行こうぜ!……って話だ》

「もう行くのですか…流石に早すぎる気がするのですが……」


前述した通りこのゲームに低レベル向けフィールドは存在しない。街から出て安定した狩りを行えるようになるためには道具も金も足りないのに我が兄者は街から出ようと言っているのだ。


《大丈夫だって様子見程度だから!》


………だめだ、この人完全にやる気だ、こうなった兄を止められる者はいない。覚悟を決めろ私よ。


「…ハァ、わかりました。何処で待ち合わせますか?」

《中央広場のでっかい噴水あるだろ、そこにしよう》

「わかりました、これから向かうので待っててくださいね」

《あいわかった!じゃあ切るぞ》


兄との通信を終え表層のウィンドウが消滅、隠されていたアイテム画面が姿を現した。

その中から装備品を検索し『一括装備』というボタンを押すと一瞬の浮遊感の後ずっしりとした重みが体に加わる。この感覚は暫く慣れなさそうだと思いながら一度通った路地裏の道をそのまま右に左に歩き続け数分、建物の連なった道から広場へと出る。

さっきのように目立たないよう装備したライフルを両手で抱え広場中心、噴水のへりに一人で腰掛けている青髪のプレイヤーに近寄る。


「お待たせしました兄さん」

「ん…あぁ、アキか」


立ち上がった痩せ型長身で青髪のプレイヤー、アイトは全身にゲームらしく肌が少し露出するようにリデザインされたOD色のBDUを着た私を見る。(BDUには尻尾を出す穴が開いていた。)


「肌の色とか変えてないんだな」

「まぁ変えてもいいんですが違和感が…」


このゲームはキャラクターエディット中に体を自由に動かし確認ができる。

しかし肌の色を変えてから自分の腕を見ると違和感が酷いのだ。それに、ただでさえ現実には存在しない狼耳や尻尾で違和感があるのに肌の色まで変えてしまうと「わたしはだぁれ?」状態になりそうだった。そのため、顔の細かい調整以外は現実のままのかなり白い肌と赤い目、灰色の髪の毛のままにしている。


「まぁ俺としても変えない方が見慣れてるからいいんだけどな、耳と尻尾以外。よし!じゃあ外いくか!」

「了解です」


私はオートマチック式のライフルに十五発の7.62mm弾が入っている箱型マガジンを差し込み初弾を装填して兄を追った。

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