page17 向日葵
夢が醒めた。
しっかりと掴んだ手を、俺は離さない。
その向こうに、笑顔を見たから。
その笑顔は、まるで花のよう。
明るく黄色に咲く―――太陽の花。
page17 向日葵
あの空間を巡り巡って、辿り着いた。
俺は生きている。
微かな生への光、命の光を俺はしっかり掴んでいた。
目を開けると、そこはベッドの上だった。
ああ、そうだった。
昨日の晩、お酒に酔って布団に倒れたんだっけ。
ゆっくりと自分の状態を把握したあと、軽く伸びをする。
ふと、傍にあった小さなテレビ越しの自分に目が行った。
髪ボサボサ。自分の髪の毛にため息が漏れた。
まぁ、それでもいいかと思って、朝食の準備をすることにした。
手早く油を引いて卵を落とし、目玉焼き。
同時にチン、と言う音が鳴る。トースト。
コーヒーメーカーで沸いたコーヒーを注ぐ。できあがり、と。
そういえばと思って、最近貰ったジャムをトーストに塗った。
「なーん」
机につくと、蜜柑が泣き声をあげた。
どうやらご飯を待っていたらしい。
急いでミルクを注いで、蜜柑にあげた。
「なーん」
どうやら喜んでるみたいだ。
よかったよかった。
「―――ごちそうさまでした、っと」
手をパンと合わせて、食べ終える。
えっと・・・。
今日は休みなんだっけか。
朝の頭は、どうやら活発じゃないらしい。
休みだって言うことも忘れてた。
それと・・・うん。
また眠くなってきてしまった。
最近頑張ってるからだろうか。
心が休まってないからだろうか。
「寝れる時に寝とこ・・・」
そう呟きながら、私は布団へダイブした。
あれから二年ぐらい経っただろうか。
私は上京して、大学に入学して一人暮らしを始めた。
あれ以来“彼”とは逢っていない。
大丈夫だと、分かったから。
それにしても。
彼に背中を押されて飛び出して、本当によかった。
自分のしたいことが、やりたいことが、楽しくできる。
充実した毎日が、送れていると思うんだ。
「ありがとう」って言いたかったけれど、止めておいた。
待つことにしたんだ、彼を。
絶対に来るって信じてるから。
太陽の光が気持ちいい。
身体の中から暖まる感じ。
今年は降らないのかな?
雪。大好きな―――。
少しだけ開いた世界の隙間から。
ちょっとだけ覗いてみたんだ。
世界<そと>の景色。
それは広大で雄大で、広くてでっかくて。
これが自分がいる世界なんだって、驚いて。
けど、感動して。心が震えて。
抱きしめたくなって。
けれど本当は狭くて、小さくて。
自分の周りだけが自分の世界。
小さくて狭いけど、広大で雄大な世界。
天井も壁もない世界。
自分だけの世界。
自分だけが見れる、世界<そと>の景色。
それが、じぶんの、じぶんだけの、きれいな、せかい。
部屋の中に、静かな寝息が聞こえる。