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page16 紅色と光

夢から醒めたら暗かった。

けれど、その中に一つ光を見つけた。

光に俺は引っ張られたんだろう。




 

page16 紅色と光




 

暗い病院の中で4人。

必死で彼のことを待っていた。

赤いランプは消えてくれない。

もしかすると、このランプが消えたとき。

彼は―――。

「何心配してんの。大丈夫だよ、アイツなら」

「そう言ってるお前だって、身体震えてっぞ」

「―――っ」

七海さんが元気付けようとしてくれたけど、大村君が俯きながら呟いた。

みんな、心配してる。

その時だった。

小さな足音が聞こえたのは。




 

足音が次第に大きくなっていく。

暗い病院に、なんなんだ。

足音が止まるのとともに、人影が現れた。

人影は茶色のコートを身に纏い、息を切らせている。

「―――はっ・・・、はっ・・・」

着ていたコートが揺らぎなびいた。

黒髪が、それにつられてなびく。

彼女は―――。

「谷山・・・?」

「谷山さん・・・」

「谷山・・・さん」

「―――優利香ちゃん」

沢口君、私、七海ちゃん、大村君と、続けて口にした。

その場に現れたのは、谷山さんだった。

彼女は少し呼吸をしながら、それでも息を切らせて口を開いた。

「涼ちゃ・・・が・・・倒れたって・・・聞いたか・・・ら」

彼女は持っていた鞄を長椅子に置くと、手術室の扉へと向かった。

「谷山さ―――」

止めたけど、聞いていなかったんだろう。

真っ直ぐにしか、彼女の目は向いていない。

扉の前で、息を吸い込んで、吐き出して、もう一度吸い込んだ。

そして。




 

「涼ちゃん!!!」




 

思い切り、彼女は叫んだ。

瞳に涙を溜めて、叫ぶ。

「涼ちゃん、涼ちゃん!」

叫んでる。

私たちはただ、黙っていることしかできなかったというのに。

彼女と私とじゃ・・・、私達とじゃ違うのかな・・・。

「絶対・・・絶対また逢えるって・・・言ってたじゃんかァ!!!!」

そこまで叫ぶと、彼女は膝から崩れ落ちた。

溢れる涙を止めることなく。

涙を流して嗚咽を漏らして。

ぐちゃぐちゃになっていた。

当然だよね。

好きな人が、死ぬかもしれないんだから。

―――あれ。

あれ、あれ、あれ?

私、涼介くんのこと好きなのに・・・。

何で、涙の一粒も出ないんだろう。

心が痛くならないんだろう。




 

「涼ちゃん!」



私の声が、病院内に響いた。

めいっぱい叫んだ。

ダメなんだろうけど、それでも叫んだ。

彼に届くように。

「涼ちゃん!!」

何回か叫んで、私は崩れ落ちた。

叫んでもダメだって分かってる。

分かってるのに。

その結果が―――これか。

私の力じゃ、もうどうすることもできない。

それが心の中で分かった途端に、滝のように涙が流れた。

溢れて、止まらない。

顔がぐしゃぐしゃに、なる。

その時だった。




 

手術中のランプの点灯が、消えた。


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