page15 in black room.
夢から醒めても夢。
現実は暗闇世界と共に。
page15 in black room.
夢から醒めると、辺りは暗かった。
身体が宙に浮いている感覚。
周り全てが黒、黒、黒。
暗闇に染まっている。
―――ここは、どこだ?
見送った直後からの意識がない。
目が醒めたらこの場所に。
いや、“夢”から醒めたと理解して―――。
途端に、頭に電気が走るような感覚を感じた。
そして、全てを思い出す。
この場所の意味も。
“夢”を見終えたんだと確信した。
感じる。
聞こえる。
聞こえたのは、不確かな旋律。
感じたのは、重たい怒涛の圧力。
忘れていただけ。
思い出せなかっただけ。
俺を掴んだ空間は、迷う俺を引きずり込むためのもの。
彷徨っているだけだった。
現実の俺は意識をなくしている。
この世界は―――生と死の狭間だったんだ。
黒い空間を見つめながら、俺はため息をつく。
足を掴まれていたのは、もう死期が近いからか?
もう戻れないのかもしれない。
そう思うと、不思議と身体が軽く感じられた。
優利香と会うこともない。
香坂と会うこともない。
七海と怒鳴ることもない。
沢口とダベることもない。
大村と呑気に昼寝することもない。
もう―――。
暗闇が俺の身体を欲している。
蝕むように、喰らうように。
俺の身体は闇を受け入れていった。
死ぬんだ。
全てが終わると思ったとき、不意に声が聞こえた。
懐かしい声。
耳を傾けながら、沈む。
“最後に聞いた声”だと理解して。
手術中のランプが消えない。
いや、消えた時が一番の恐怖なんだ。
私はそう思いながら、手術室のほうを向いていた。
「なんでこんなことに―――」
「知らねェよ!なんでこんな―――」
沢口君が怒鳴った。
そう、誰もわからない。
気がつくと彼は傷だらけで病院へと運ばれていた。
この事件の真相なんて、誰も知らないんだ。
その時だった。
小さな足音が、病院を小さく揺らした。
駆けて来る音。
息を切らせて、少女は辿り着いた。
飲まれたまま、全てを包み込まれる。
目を開けているのに、視界が真っ暗。
あー、でも。
なんかいつも夢見てるのと同じ・・・。
いや、少し違う。
醒め、ない。
これ以上。
“夢”ではないんだ。
俺の身体が闇に包まれているのは、夢ではないから。
暗闇は、死。
俺を取り込んでるのは、死。
見えない視界もさらに薄くなり、意識が遠のいた。
その時だった。
「・・・ちゃ・・・」
何か聞こえた。
「・・・ちゃん」
懐かしい・・・声?
耳を傾けながら、俺は沈んでいく。
「涼・・・ゃん・・・」
“最後に聞いた声”。
俺が好きだった声。
離したくなかった。
彼女―――。
「涼ちゃん!!!」
叫び声が耳を貫き、脳を刺激した。
同時に彼女の手が、沈んでいった俺の手を掴んだ。