10年ぶりの再会が、殺し合いで何が悪いの?
壊れた瓦礫の破片を蹴飛ばしながら、私は誰もいない林の奥へと歩を進めていた。
足の裏に伝わる無機質な感触と、鼻腔を突く焦げた鉄の匂い。
10年ぶりに放った己の異能は、自分でも引くほどに荒れていたと思う。
あいつの落ちぶれた噂を聞いたときは、耳を疑った。
地下世界を牛耳っていたあの男が、名もない一般市民に負けて潜伏しているだなんて。
惨めで、情けなくて、反吐が出る。
そんな不様な姿で記憶に上書きされるくらいなら、いっそのこと私の手で引導を渡してやろう。そう思って顔を見に来たのだ。
「あんた、弱くなったのね」
そう口にして、全力の蹴りを叩き込んだ。
けれど、交わした拳の重さも、首元で止まった大剣の震えも、10年前と何一つ変わっていなかった。
変わっていたのは、あいつの頭と、まとう雰囲気の質だけ。
重傷を負ってリハビリ中?
ふざけないでほしい。
瀕死でなお、あんな凶悪な刃を振るう男のどこが「弱くなった」というのだ。
あいつは、相変わらず何も言わない。
昔からそうだ。勝手に抱え込み、勝手に背負い、勝手に消える。
「……私とエリゼは見捨てたくせに。あの小娘は守るの?!」
思わず怒鳴り散らしてしまった自分が、途方もなく愚かしく思える。
あんな男、とっくに切り捨てたつもりだった。
いまの私には彼氏だっているし、自分の居場所だってある。
それなのに。
あいつが少女に頭を置くような仕草を見せた瞬間、腹の底からどす黒い怨嗟が跳ね上がった。
私はまだ、あの日に取り残されたままだ。
引き止められもしなかった背中を思い出し、不機嫌に胸の内で唾を吐く。
去り際、あいつは追ってこなかった。
空になったその手に、二度と私を繋ぎ止める意志がないことくらい、嫌というほど分かっていた。
大虐殺の元英雄。
不愛想で、乱暴で、不器用な男。
……せいぜいリハビリでも何でも励むといいわ。
次に会ったときは、もっと容赦なく叩き潰してやるんだから。




